体育の授業は俺たち二年F組の勝利と幕を下ろした。教室に戻れば、
クラスメートたちは拍手喝采で出迎えてくれた。夏休みの補習は免れた!と、喜んで。
「ここの皆は、補習を受けなくても良いぐらい頭がいいの。
だから逆に、体育の授業は得意じゃないの」
「このクラス以外は文武両道ってことか」
「うん、そうなの。頭脳だけならSクラスにだって負けないんだから」
『その通りっ!』
そこ、威張れるところなのか?まあ、成績が良いんなら自慢だろうな。うん。
「それじゃ、皆。今日の授業は終わりです。真っ直ぐ帰ってまた明日会いましょう」
『ウェーイッ!』
クラスメートたちは挙手して返事をした。それから各々と鞄を手にして帰っていく。
「って、先生は?」
「なんか、緊急会議らしいよ?」
「だからって、帰っても良いのか?」
そう問うと、葉桜は頷いた。
「先生がいないし、先生の代わりに委員長の私が進めて良い事になっているの」
「へぇ、そうなんだ。変わってるなこの学校は」
「なんたって四種族が一緒に通う学校だもん」
それもそうだな。納得する俺だった。
「兵藤くん、ありがとうね」
「ん?」
「体育の授業を参加してくれて。正直私だけじゃ勝てなかったよ。
兵藤くんが買って出てくれたから他の皆も出てくれた。
授業だってあなたが上級生の委員長を倒したから、勝てた」
「別に俺だけじゃないだろ?和樹や龍牙だって倒したんだ。今回の功労者は和樹だな。
一人で九人も倒したんだし」
当の本人は俺に手を振って教室から出て行った。龍牙も一緒に。
「まっ、体育の授業はあんな感じだと分かった。これからも俺はあの授業を受けるつもりだ」
「ほんと?」
「ああ、それなりに楽しかった。次の対戦相手は誰だか分かるのか?」
「えっと、体育の授業になってからじゃないと分からないの。
先に知って闇討ちしたり、されたりしたら大変だからって、先生が情報を漏らさないの」
徹底的なんだな。いや、だからこそなのかな?
「それじゃ、私も帰るね。兵藤くん、リーラさん。また明日」
「ん、またな」
「さようなら」
葉桜も教室からいなくなった。
「俺たちも帰るか」
「はい」
家に帰ろうと教室を後にする。
ガラッ!
と、扉を開けた。―――俺じゃない。廊下にいた誰かが扉を開けたんだ。そして、その誰かに―――。
「―――イッセーッ!」
勢いよく抱きつかれましたっ!思わず俺も反射的に抱きしめてしまった。
「(あれ・・・この感じ、前もどこかで・・・・・)」
どこか、懐かしい思いを抱きながらも、俺に抱きついてくるヒトを視界に入れる。
紅い―――ストロベリーブロンドよりもさらに鮮やかな紅の髪。
俺が知る真紅の髪の女性と似ている髪だった。その髪は一度だけ見たことがある。
忘れたことはない。あまりにも第一印象はあれだったため、名前もハッキリと覚えている。
「・・・・・リアス・グレモリー?」
「ええ・・・そうよ・・・・・」
紅の髪が上がった。俺に抱きついているヒトの顔が覗けた。
―――数年前、とある公園で俺を水の中に突き落とした少女と同じ顔だった。
「ようやく・・・・・ようやく・・・・・あなたと会えたわ・・・・・」
「・・・・・」
マジかよ・・・・・こんなところにあの時の女の子と再会するなんて・・・・・。
「―――リアス、抜け駆けはしないと約束しませんでしたか?」
「・・・・・はっ?」
冷たい雰囲気を持つ、眼鏡を掛けたクールな黒髪の女子生徒。
リアスと呼んだ女子生徒も見覚えがあった。確か・・・・・名前は・・・・・。
「イッセーくん。数年ぶりです。私のことを覚えておりますでしょうか?」
「・・・・・ソーナ・シトリー・・・・・?」
「はい、そうです。覚えてくれて嬉しい限りです」
リアス・グレモリーの襟を掴み、俺から引き剥がしながら言うソーナ・シトリー。
「・・・マジで?」
「信じられませんか?私たちが目の前にいることを」
「いや・・・・・驚いているだけだ。まさか、二人がここにいるとは思いもしなかった」
本心を漏らす。本当にいるとは思わなかった。本当にここで再会するなんてびっくりした。
「―――私たちだけじゃないですがね」
「・・・・・なに?」
その瞬間、ソーナの後ろから青い髪が見えた。ソーナがどけば、青い髪の正体が現れた。
「・・・・・」
さっきのソーナの意味深な発言は―――。
「「イッセーくん、久し振りッ!」」
「イッセーさま、お会いしたかったです!」
こういうことかっ!―――子供の頃、一度だけ一緒に遊んだ五人の女の子の内の三人が成長した姿で、
嬉しそうに俺に抱きついてきた!
「リシアンサス、ネリネ、リコリス・・・・・・」
「はいっす!」
「はい!」
「うん、覚えてくれたんだね。私、嬉しいよ!」
小豆色の髪に頭と左手首にリボンを巻いている少女、リシアンサス。
整った顔立ちで、お嬢様と呼ぶにふさわしい清楚な美少女。背が小さく、
腰まで長く伸びた髪の色は蒼色。少し吊り目がちな瞳の色は赤の少女、ネリネ。
ネリネと同じ容姿だが、声の高さが違う事で見分けつくリコリス。
「神の悪戯か・・・・・?まさか、あの時あった五人がこうも揃うなんてよ」
「私とネリネ、シアは二日前に転校してきたばかりだよ」
「・・・・・先生が言ってた転校生ってお前らの事だったのか」
・・・・・まさか、あの時の人たちもこの世界にいるということなのか・・・・・・?
「それよりもイッセー。あの時どうして逃げるようにいなくなったの?私たち心配したのよ?」
「そうです。突然のことで驚きました。説明を求めます」
「「「・・・・・」」」
リアス・グレモリーとソーナ・シトリー、他の三人もジッと見つめてくる。
どうしようか、と俺は悩んだ。
「―――うむ。是非とも私も知りたいね」
第三者の声が聞こえた。直ぐ近くだった。教室の扉の方へ顔を向けたら―――。
「サーゼクス・グレモリー・・・・・」
「ほう、私の事も覚えてくれてたのかい?嬉しい限りだよ」
リアス・グレモリーと同じ髪の男性が笑みを浮かべて佇んでいた。
一度しか会ったことがないが、間違いなくリアス・グレモリーの兄がいた。
「なぜ、あなたがここに・・・・・」
「おや、知らなかったのかい?私はこの学校の理事長をしているのだよ」
「・・・・・マジで?」
「ああ、マジだよ。だからキミたちを、この学校に通わせることができたのだよ」
・・・・・まさかな。
「リーラ・・・・・今回の学校の編入、お前の仕業だな?」
突然、学校に行きましょうと言うから、どうも不思議に思ってはいた。
だが、こういうことだったか!彼女は肯定と頷いた。
「はい、密かにサーゼクスさまと話し合い、一誠さまと私と共に通うことを条件に、
学校を通えるようにしてくれました」
「あの時の感謝の気持ちだと受け取って欲しい。学校に必要な費用は全てこちらが受け持つ。
だから、キミは思う存分学校生活を満喫してほしい。―――あのお二人の子供である兵藤一誠くん」
「っ・・・・・!?」
やっぱり、父さんと母さんを知っているヒトか・・・・・!
あの時、逃げて正解だったようだけど、
「さて、教えてほしい。キミはどうしてあの時、逃げたのかを。どこで生きていたのかを」
今があの時の清算をしなくちゃいけないようだ。
「・・・・・」
リーラに視線を向ける。彼女はただ俺を見詰めるだけだった。
「・・・・・明日でいいか?今日は色々と驚くことばかりで整理がつかない」
「分かった。では、明日の放課後でいいかね?」
その問いに頷く。サーゼクス・グレモリーも頷いた。
「待っているよ。キミの両親を知る者たちと一緒に待っているからね」
それだけ言い残し、魔方陣を展開して直ぐに姿を消した。
「では、私たちもするべきことがあるのでこれにて失礼します」
「イッセー。絶対に明日学校にきてちょうだい。待っているから」
「イッセーくん、じゃあね!」
「また明日、必ず・・・・・」
リアス・グレモリーとソーナ・シトリー、ネリネとリコリスがどこかへ行ってしまった。
「・・・・・シアは行かなくていいのか?」
「うん!私、天使と悪魔のハーフだから、
リンちゃんたち悪魔のお仕事をしなくても大丈夫っす!」
悪魔と天使のハーフ・・・・・かなり希少な存在じゃないか・・・・・?
「あっ、もうこんな時間!ごめんねイッセーくん。
せっかく再会したのにスーパーに行って買い物しないといけないっす」
「・・・そうか、また明日な」
「うん!じゃあね、イッセーくん!」
元気にシアは挨拶をして俺の前からいなくなった。
「・・・・・まさか、俺は悪魔と遊んでいたなんてな」
「後悔・・・・・しているのですか?」
「・・・・・いや、あの時の自分に驚いている。
悪魔と堕天使を嫌う俺が、ああも普通に会話したんだ。この思いが薄れないようにしないとな」
「一誠さま・・・・・」
これだけは譲れないんだ。大切なものを奪われたこの気持ちを、
奪ったものに対するこの気持ちを、忘れては、薄れてはダメなんだ・・・・・。
―――○●○―――
―――翌日。
昨日の約束通り、俺は放課後、今までのことを説明するために教室に残った。
しばらくして、このクラスの扉が開いた。
「ぼぉーうぅーずぅーっ!」
和服を身に包んだ中年の男性が叫びながら俺に飛び込んできた。
「またあんたかぁっ!?」
二度と関わりたくない奴が真っ先に来やがった!拳を思いっきり突き出せば、
中年の男性も拳を突き出して来て俺の拳とぶつけあった。
「(・・・・・っ!?)」
あの時はまだ子供だったから、吹き飛ばされたものの。今回はしっかりと吹き飛ばされなかった。
でも、拳から伝わる重みに思わず目を見開いた。―――このヒト、強い・・・・・っ!
「・・・・・あの頃のままのようだな」
「なに・・・・・?」
「真っ直ぐで純粋な魂が籠ったこの一撃。あの頃のままだな」
ニカッ、と笑みを浮かべ始めた中年の男性。そう言われ毒気が抜かれた。
「―――ユーストマ?」
「っ!?」
ビクッ!とユーストマと呼ばれた中年の男性が体を跳ね上がらした。顔に汗が流れ始めたぞ。
「あなた・・・・・あのお二人の子供に何をしているのですか?」
ギギギッ、と中年の男性は後ろに向いた。俺もそっちを見れば・・・・・腰まで伸びたブロンドに
澄んだ青い瞳の女性が目を細めて中年の男性を見詰めていた。
「ヤ、ヤハウェさま・・・・・こ、これはそのだな・・・・・」
「・・・・・」
「―――申し訳ございません!」
あっ、土下座した。ヤハウェと呼ばれた女性は嘆息した。
「神王というものが、子供のようにはしゃいでは困りますよ。―――気をつけなさい」
「へ、へい!」
・・・・・時代劇の最終シーンを見ているかのような感じだな。
「しかし・・・・・揃いも揃って強大な力を有している人たちだらけだな」
10人近くの男女が教室に入って来て俺を見詰めてくる。懐かしそうにな。
「兵藤一誠くん、彼女たちはそれぞれ冥界と天界を統べている魔王と神だ」
「魔王と神・・・・・」
「そうよ、兵藤一誠くん」
俺の呟きに反応したのは赤い長髪に紫の瞳の女性だった。
「私は冥界を統べる五大魔王の一人、ルシファー。
そして、あなたが子供の頃に会った彼は、五大魔王の一人、フォーベシイよ」
「やぁ、数年振りだね」
細い身体の銀の長髪の中年の男性が笑みを浮かべ手を振る。ネリネとリコリスの父親だったな。
「それで、彼女たちも私とフォーベシイと同じ五大魔王よ」
ルシファーが三人の女性に目を向けながら言う。
その中、青いロングヘアー、金の瞳の女性が口を開いた。
「私はレヴィアタン。五大魔王の一人なの。よろしくね♪」
レヴィアタンという魔王が名乗れば、揉み上げが長く、腰まで伸びた緑の髪、
茶色の瞳の女性が口を開く。
「五大魔王の一人、アスモデウス。あなたのご両親とは友好的な関係だったわ。
あの二人の子供であるキミと会えて嬉しいわ」
口元を緩ませるアスモデウスという女性。
最後は深緑色の髪をポニーテールに結んだ紫の瞳の女性。腰に刀を帯剣している。
「ベルゼブブだ。五大魔王の一人と称されている」
五大魔王の自己紹介が終わった。そして、今度はヤハウェと呼ばれている女性が口を開きだした。
「私は天界を統べる神、ヤハウェです。兵藤一誠くん、今後ともよろしくお願いします」
邪のない笑みだった。あー・・・・・このヒトが神だったのか。
「あなたが神だったのか。よかったよ」
「はい?」
「あなたに山ほど言いたいことがある家族がいるんだ。出会えてよかった」
両手の甲をヤハウェに見せびらかした。その直後、俺の手の甲に紫と金の宝玉が浮かび上がった。
『久しいな。ヤハウェ』
『お久しぶりですね』
とっても低い声音でヤハウェに挨拶をした。
当のヤハウェはビックリした表情で目を見開いて信じられないようなものを見る目で呟き始めた。
「・・・・・ゾラードとメリア・・・・・あなたたちなのですか?」
『ああ、そうだ。どれだけ弁解しても問答無用に封印された我らだ』
『よくもまあ、封印してくれましたね』
怒気が籠っているよ・・・・・。今までの鬱憤を晴らそうとしているかもしれない。
「どうして、あなたたたちが兵藤一誠くんのなかに・・・・・」
「その事も含めて説明するよ」
苦笑を浮かべ、そう言うと、彼女は頷いた。
「まずは何を聞きたい?」
「では・・・あなたは今までどこで生きていたのか、教えてほしいわ」
ルシファーが問うてきた。さらに言い続ける。
「あなたの家は爆発を起こして全焼した。
でも、あの二人は何かに守られているかのように殆ど無傷だったわ。
ただし、胸の傷以外は。でもね?あなたの姿はどこにもいなかった。爆発に巻き込まれたのか、
誰かの手によって連れて行かれたのか、私たちはそう予感をした」
そう言う彼女を引き継ぐようにベルゼブブが口を開く。
「しかし、ある時だ。フォーベシイと護衛としてついていったサーゼクスとセラフォルー、
天界の神王、ユーストマは堕天使の総督と人間との会議をしていた時、強大な魔力を探知した。
加えて、勝手に会議へ連れていった娘と妹がいなくなっている事に気付き、
四人は会議を抜け出して魔力を感じた場所へと赴いた。すると」
「私たちが必死に探し続けていた子がそこにいたの。そう、それはあなたよ兵藤一誠くん」
レヴィアタンが真っ直ぐ俺を見詰めた。
「だけど、保護しようと試みたユーストマたちからあなたは逃げた。どうしてなのですか?」
ヤハウェは首を傾げて言う。彼女たちの話しを静かに聞いた俺は、溜息を吐く。
「捕まったら、保護されたら俺はある目的が達せれなくなる。だから逃げたんだ」
「目的・・・・・?」
「―――俺の父さんと母さんを殺した悪魔と堕天使の三人組を殺すことだ」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
全員が驚愕の色を浮かべた。
「悪魔と堕天使が・・・・・!?」
「あの二人を殺しただと・・・・・」
「名前は悪魔の名前はシャガとシャーリ、堕天使はヴァン。
それが父さんと母さんを殺した張本人だ」
五人の魔王に睨みながら言う。
でも、五人は俺の睨みより、信じられないと言った感じで呟き始める。
「はぐれ悪魔の中で超危険人物の二人が・・・・・っ!?」
「あの二人を殺した・・・・・ですって・・・・・」
「・・・・・居場所を知っているのなら教えてほしい。この手で俺は仇を討ちたい」
そう言うとルシファーが首を横に振った。
「・・・・・残念だけど、私たちも行方を探している方なのよ。
それにあの二人は最上級悪魔で、私たち魔王でも手を焼かすほど強いわ」
「それに強く
「堕天使のヴァン・・・・・あの者もまた
「そう・・・・・あの二人が殺された理由も頷けるわ。
あの二人もまた
「そうなのか・・・・・?」
「ええ・・・・・ですが、どういうことでしょうか。
あの二人の
「・・・・・え」
信じられないと、今度は俺がヤハウェの顔を見詰めた。
彼女は小型の魔方陣を展開して操作をし出した。
「・・・・・『
それが兵藤誠と兵藤一香が所有していた
その上、ゾラードとメリアを宿しているとは・・・・二匹の魂が
『
それも
この二つの
真剣な表情のヤハウェがそう言うと教室が静寂に包まれた。
「・・・・・
「有り得ない・・・他者から
「というか、最後の二つの
現段階で15種しか発見されていなかったのに、
ここにきて16、17種の
・・・・・父さんと母さんの形見といえるものが俺の中に・・・・・。
「・・・・・それはそうと、話が反れていないか?」
「あっ、そうでしたね。あなたが逃げた理由は分かりました。
それで、あなたはどこで生きていたのですか?」
「次元の狭間」
『・・・・・は?』
「だから、次元の狭間」
二回も言ってようやく皆は反応した。
「えっ、ちょっと待って・・・・・次元の狭間って・・・・・・どうやって?」
「父さんと母さんが次元の狭間に家を建てていたらしいんだ。
その家に俺とメイドが住んでいる。後もう一人も」
「次元の狭間に家って、普通常識じゃありえないわよ・・・どうやって家なんか・・・・・」
「いや、あの二人は常識に捉われない人間たちだった。
常識に拘った私たちの盲点だったかもしれない。―――有り得ないことをするあの二人をな」
そ、そこまで非常識だったのか・・・・・?俺の父さんと母さんは・・・・・。
「・・・・・ねぇ、次元の狭間に住んでいるって言ったけど、
次元の狭間に何がいるのか知っているわよね?」
「
「ええ、そうよ。大丈夫なの?あのドラゴン。
次元の狭間を泳ぐことが好きなドラゴンだから無害に等しいけど・・・・・」
「ん、大丈夫。一緒に住んでいるし」
『・・・・・はっ?』
また皆が唖然となった。そして、言った。
「俺とリーラはグレートレッドさんと住んでいる。俺の師匠でもあるんだ」
『・・・・・』
すると、皆が頭や額に手を当て始めた。
「親も親なら子も子なの・・・・・・?」
「常識を覆す一族は健在か・・・・・」
「普通、真龍と暮らして弟子になるなんて・・・・・絶対にあり得ないわ」
なんか・・・・・物凄く失礼なことを言われている。
「・・・まさかとは思うけど、他にあり得ないことしていないよね?」
「・・・・・そう言われてもな。父さんと母さんが殺されて、
グレートレッドさんと一緒に暮らし始めて、リアス・グレモリーたちと出会って、修行の毎日、
学校を通い始めたのは昨日からだ」
過去を振り返って述べる。
中にクロウ・クルワッハたちのこともあるけど・・・言わない方がいいかもしれないな。
「そう・・・・・あの二人が死んでからあなたは修行をしていたのね」
「うん、あの悪魔と堕天使の三人を殺すために」
俺は笑みを浮かべた。
ゾク・・・・・ッ!
『―――――っ!』
そしたら、皆の顔は強張った。ユーストマが尋ねる。
「・・・・・坊主、復讐か?」
「この憎悪、恨み、殺意。全ては、父さんと母さんを殺した悪魔と堕天使に向ける」
何時しか、俺の体から禍々しくどす黒いオーラがにじみ出てきた。
「・・・・・あなたは・・・・・」
「だから、俺は悪魔と堕天使が嫌いだ。でも、死ぬ程ってわけじゃない。
両親を殺した悪魔と堕天使じゃないし、過度な嫌悪を向けないつもりだ」
「・・・・・ネリネちゃんやリコリスちゃん。リアスちゃんやソーナちゃんもかい?」
フォーベシイが悲しそうに漏らす。
「・・・・・この気持ちだけは譲れない。俺の目的を果たすまでは」
教室から出ようとする。
ガラ・・・・・ッ。
「「「「「・・・・・」」」」」
廊下に出れば、リアス・グレモリーたちがいた。全員、悲しげな表情を浮かべた。
「そういうことだから」
それだけ言って俺は家に帰路する。