ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode8

『「兵藤家」チームから出てきたのは「兵藤家」の「(キング)」、兵藤照選手と名無しという

名の選手です。対して「ロンギヌス」チームからは「(キング)」の兵藤一誠選手と曹操選手です!』

 

デイジーの声を聞きながら歩を進める。

 

「望み通り、来てやったぞ兵藤照」

 

「来たな。落ちこぼれ」

 

「さっきの隕石を消滅させたのを見せただろう?もう昔の俺じゃないんだ」

 

「それがどうした。俺だってやればできるぜ、あんなもの」

 

そうか。まあ、どうでもいいがな。

 

「てめぇーを倒して俺が人王になってやる!」

 

「人王なんて興味ないけど、俺も負けられない理由がある。お前を倒してやるよ」

 

「人王になったとしても、お前の居場所は兵藤家にない!」

 

「兵藤家に俺の居場所がなくても俺には帰る場所がある。そこが俺に場所だ」

 

延々と平行線で会話が続く。まだ話が続くのかと思いきや、あいつが話を打ち切った。

 

「埒があかねぇな。もういい、さっさとお前を倒すことに限る。―――おい!さっさと始めろ!」

 

兵藤照の怒鳴りにデイジーが声を震わせた。

 

『ひっ、は、はい!それでは、これが最後の勝負となります!

「ロンギヌス」、「兵藤家」の両チームの「(キング)」が戦いますので事実、

どちらかのチームの「(キング)」が倒された瞬間に勝ったチームこそが優勝となり、

次期人王が決まります!―――両者、準備はよろしいでしょうか』

 

「ああ!」

 

「ん」

 

肯定と返事する。デイジーは肯定した俺たちに口を開いた。

 

『決勝戦第五回戦―――試合開始です!』

 

開始宣言が告げられ、俺はすぐに左手に赤い籠手を装着した。

そして、籠手の能力を発動しながら清楚に言った。

 

「悪い曹操」

 

「うん?」

 

「こいつだけは俺の手で倒したい。だから、曹操は手を出さないでくれ」

 

「二対一となるが?」

 

勝てるのか?と暗に聞く曹操。俺は当然と頷く。そんな俺に曹操は瞑目して口の端を吊り上げ、

「そうか」と呟いた。

 

「お前の力を見させてもらうよ。今後の対策にもなるしね」

 

そう言って曹操はデイジーに向かって「俺は棄権する」と言い、ベンチに向かった。

俺は―――兵藤照に飛びかかった。

 

「はっ!仲間割れか?一人だけ戦うことになるなんて可哀想にな!

―――あの時のようにいじめてやらぁ!」

 

拳が俺に突き出された。その拳をスレスレで頬を掠めて兵藤照に左拳を突き出した。

俺の拳をあいつは目で追い、簡単に拳が掴まれた。

 

「おいおい、お前の拳は遅いじゃねぇか?」

 

「お前の拳もそうだろう」

 

兵藤照の拳を掴んで見せた。

 

「はっ、ワザとだよ」

 

「そうか、実は俺もワザとなんだ。お前を捕まえるためにな」

 

―――ズリュリュリュリュッ!

 

「・・・・・はっ?」

 

「これで心置きなくお前を殴れる」

 

俺の背中に漆黒の龍の手が四本も生えた。

兵藤照が俺の背中に生えた腕を見て唖然となったその顔を―――

 

ドガガガガガガガガガガガッ!

 

思いっきり、盛大に殴り続けた。

 

「・・・・・がっ・・・・!」

 

「取り敢えず、俺をいじめた時の借りを返させてもらうか」

 

殴るのを止めて、四本の龍の手の平からどす黒い魔力が放たれた。

あいつは俺から拳を放してドームの壁にまで吹っ飛んだ。

 

「―――って、んなの効くかぁ!」

 

「おー、タフだな」

 

意外にピンピンとしていた。兵藤照は相方の男、名無しに言った。

 

「おい!お前も佇んでないで攻撃しろ!」

 

「・・・・・」

 

あいつはサイラオーグ並みに強いと見た時から感じていた。

兵藤照も強いがサイラオーグのちょっと下ぐらいだ。

 

「―――ふっ!」

 

先手必勝とばかり兵藤照の相方に飛び掛かった。すると、あいつも俺に飛びかかってくる。

 

ドゴンッ!

 

吹っ飛ばされた。ドームの壁にまでだ。ああ―――俺がだ。

 

「・・・・・やっぱり、あいつは他の奴らより違うな」

 

壁から離れてあいつの相方に一瞬で懐に飛び込んだ。

拳をうねりを上げるように腹部へ突き刺した。

 

「・・・・・」

 

反応は―――薄い。それどころか、痛みさえも感じていないのか顔の表情に変化もない。

 

「・・・・・お前、名無しなんて偽名だろ?本当の名前は何だよ?」

 

呆れて名前を問うたら、返事は俺の腹部に拳を突き刺したものだった。

 

「・・・・・っ!」

 

重・・・・・!こいつ、なんて拳を・・・・・・!

 

「おら!相手は俺だけじゃないんだぜ、余所見している暇はあんのかよぉ!」

 

俺に飛び掛かってくる兵藤照。青白い『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』の状態となって―――。

 

ビガッ!ドガガガガガガガガガガガッ!

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

青白い落雷を京都ドーム中に放った。兵藤照と名無しに命中するも

 

「効かないか・・・・・」

 

名無しの体に怪我ひとつもついていなかった。というか、兵藤照もタフだな。

あれだけの電流を受けてもまだ立つのか。

 

「・・・・・」

 

「ん?」

 

刹那―――。

 

ビガッ!ガガガガガガガがッ!

 

「―――!?」

 

俺の真上から膨大な電流が落ちてきた・・・・・!?

 

「くっ・・・!本当になんだよお前って!」

 

落雷から逃れて十二枚の翼で攻撃を開始した。

―――ところが俺の目に信じられないものが飛び込んできた。

 

バサッ!

 

「な・・・んだと・・・・・!?」

 

俺と同じ六対十二枚の翼が生え出した。色は違う。黒だ。

 

ガガガガガガガッ!ギャインッ!ギィンッ!ギャンッ!ガギンッ!ギンッ!

 

刃物状となっている俺の翼と互角に剣戟を繰り広げる。さらに手の平から青白い魔力を放てば、

あいつも俺と同じ真似をして―――魔力を放ってきた。

 

「(どうなってる!?こいつ、俺と同じ真似をしているようにしか思えないぞ!)」

 

肉弾戦で挑めば俺と同じ動きをして対応して来て、魔力合戦をすれば同等の魔力を放ってくる。

攻撃の仕方も酷似している。しばらく名無しと戦っているとおかしな点に気付いた。

 

「(まるで俺自身と戦っているような感覚だ)」

 

名無しを捕まえようと腕を伸ばす。名無しも俺と同じ動作をして手と手を掴み合い、

力の根競べをし始める。

 

「だったら、俺が次にすることを分かっているんだろうな?」

 

背中に龍の手を四本生やしてな無しに殴りかかった。

案の定、名無しも背中に龍の手を四本生やして俺に――――。

 

「甘い!」

 

俺と名無しの手が虚空に開いた穴の中に突っ込んで名無しの顔の近くに別の穴がら開いて、

計八本の腕が飛び出て顔にクリーンヒットした。

 

「・・・・・なるほど、そういうことか」

 

名無しの瞳をようやく見えた。―――紫の瞳だった。

 

「お前、俺のマネをするけどできることとできないことがあるらしいな」

 

俺の動きと背中から翼と腕を生やす真似を見せてくれた。魔力も放つ芸道も。

 

「特殊な力は真似できないか」

 

名無しは膝蹴りをしてきた。でも、俺が腹部辺りに穴を広げて、名無しの膝を防ぎ、

別の穴を名無しの腹部辺りに広げれば膝が飛び出し自分の腹部を貫いた。

 

「お前の対処方法は読めた。―――攻めさせてもらうぞ」

 

振り回される刃物状と化となっている六対十二枚の翼から避け続ける。しかし――、

 

ドッ!

 

「ちっ!」

 

片腕をやられた。片翼だけ青白い翼を出して両断された腕を再生させる。

 

「本当に、お前は誰なんだろうな?」

 

質問しても答えは帰ってこない。帰ってくるのは―――無慈悲な攻撃だった。

 

―――○●○―――

 

―――アザゼルside

 

「・・・・・どうなってやがる」

 

あいつが押されているなんて初めて見るぞ。

 

「イッセーくん、どうしちゃったの・・・・・?」

 

「相手があの子の見よう見真似をしている。実力も同等・・・それ以上かも」

 

「兵藤家にあのような者がいたとは・・・・・」

 

くそ・・・・・とんだイレギュラーなやつがいたか・・・・・!

このままじゃ、あいつじゃない奴が人王になっちまう!

 

「お、お父さん」

 

ん?誰だ?声がした方へ振り向くと、フォーベシイの娘たちがいた。その傍にプリムラがいた。

 

「おや、どうしたのかね?」

 

「それが・・・・・リムちゃんが気になるようなことを言うんです」

 

「気になること?プリムラ、私にも教えてもらえないかな?」

 

あの人工生命体・・・・・プリムラが気になることってなんだろうな。

兵藤一誠と謎の兵藤家の一人の戦闘を見ながら耳を傾ける。

 

「イッセー」

 

「イッセー?一誠ちゃんがどうしたのかい?」

 

あいつがどうしたんだ?

 

「イッセーといるヒト、私と同じ感じがする」

 

「・・・・・なんだと?」

 

プリムラと同じ感じだと・・・・・・?怪訝になり、兵藤源氏に話しかけた。

 

「おい、あいつは誰なんだ?兵藤一誠と絶賛戦っているあの男だ」

 

「・・・・・」

 

俺の質問にあいつは聞こえていないのか、真っ直ぐ兵藤一誠たちの試合を見詰める。

その態度が俺を怪しく感じさせる。とても、嫌な予感も抱かせる。

 

「兵藤源氏!お前の一族の者ならあいつのことを熟知しているはずだ!

だが、プリムラは自分と同じ感じがすると言っている!説明をしてもらうぞ!」

 

「・・・・・」

 

あいつは沈黙を貫いた。こいつ・・・何か隠していやがるな!光の槍で脅かしてやろうか!?

 

「―――人工生命体だ」

 

「なんだと・・・・・?」

 

「そこの人工生命体3号の弟にあたる人工生命体だ。正式名称で言えば4号と言おう」

 

「「「「「「「「―――――っ!?」」」」」」」」

 

人工生命体・・・・・4号・・・・・!?

 

「・・・・・そいつは、本気で言っているのか」

 

「その人工生命体3号は奇跡と偶然で生まれた唯一無二の存在。

そう何度も奇跡が起こるわけがない。―――と、思いながらも俺たち兵藤家と式森家も

同じ生産の仕方で、無から有へ生み出すことに挑戦した。するとどうだ。奇跡は起きた。

―――不安定な人工生命体三号ではなく、安定した無限に等しい魔力を宿した

人工生命体が誕生した」

 

「・・・・・なぜ、そのことを報告しなかったのだ」

 

フォーベシイが非難する目で兵藤家と式森家の当主たちを睨んだ。

対して兵藤源氏は溜息を吐いた。

 

「本当ならば、自然に感情を覚えさせてから報告しようと思った。

外に出して町や自然を見させて、食べ物の味を堪能させ、人と妖怪を触れさせて

人間らしい感情を覚えさせていたのだ。だが、最上級機密のはずの無限の力を有する

人工生命体のことがどこかで漏れ、俺たちが気付く前にこの大会に登録させられていた」

 

「なぜ・・・・・そんなことに?」

 

「大方、次期人王をあの人工生命体にさせて裏から兵藤家を支配しようとする輩の仕業だろう。

俺たちもその存在に気付いていたが、尻尾を掴ませないでくれる。結局、この様だ」

 

・・・・・・はぁ、どこの勢力も問題を抱えているもんだな。

 

「私の・・・・・弟?」

 

「ああ、そうだ。大会が終えたら話すがいい。向こうは無口だがな」

 

「うん・・・・・わかった」

 

人工生命体4号・・・・・裏からあいつを操っているのは誰だ・・・・・?

まさか、あいつらじゃねぇよなおい。

 

―――○●○―――

 

―――一誠side

 

「疲労も苦痛も感じないって・・・・・どんだけハイパーなやつなんだよ?」

 

すでに30分は経過している。だけど、目の前の名無しは腕が両断されても魔力で腕へと

具現化して再生したり、深い傷を負ってもすぐに再生・・・・・・面倒のこの上にない。

兵藤照の横やりもあるから対応が難しくなる。

 

「・・・・・そろそろ、あの力を使うか」

 

そう呟いたその時。突然の真紅の光。真紅の光は俺の全身から発したのだった。

 

『ようやく力を使うか』

 

膨大な真紅のオーラは、蜃気楼のように全長百メートルは超える真紅のドラゴンの姿を映した。

 

「悪いな。だが、これでケリを付けてやる」

 

『いいだろう、この「真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)」グレートレッドの力を存分に使って敵を倒すがよい!』

 

「ああ!」

 

真紅の光が深紅へと変わり、俺を包みこみ始めた。

 

『我、夢幻を司る真龍なり』

 

内にガイアから声が聞こえた。その声に続くように俺も発する。

 

「我、夢幻を司る真龍に認められし者」

 

『我は認めし者と共に生き』

 

「我は真龍と共に歩み」

 

「『我らの道に阻むものは夢幻の悠久に誘おう』」

 

真なる深紅龍神帝(アポカリュプス・クリムゾン・ドライブ)ッ!!!!!

 

最後は力強く言葉を発した次の瞬間。深紅の光が、より一層に輝きを増した。

深紅の光は鎧と化と成り、俺の全身を包む。

俺のいまの姿は、全身が鮮やかな紅よりも深い紅の全身鎧。

腰にはドラゴンのような尾がある。

背中にドラゴンのような深紅の翼が生え、体に金色の宝玉が幾つも埋め込まれてある。

頭部には立派な深紅の角が突き出ている。

 

『ひょ、兵藤選手が深紅の鎧を着ました!アザゼルさん、あの鎧は一体何でしょうか?』

 

『説明しよう。兵藤一誠は「真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)」グレートレッドの力を鎧に具現化にすることが

できるんだ。この先、あの姿になれるとしたら兵藤一誠だけだろう。

グレートレッドと心を一つにしないとできない現象だからな』

 

解説どうも。

 

「『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド・・・だと」

 

兵藤照が信じられないものを見る目で声を震わせる。

だが、表情は憤怒の形相に変わり、認めない!とばかりあいつが口を開いた。

 

「てめぇ、本当にあのドラゴンの力を使えるっていうのかよ・・・落ちこぼれのくせによぉッ!」

 

「昔の俺じゃないって言ったはずだ。それに―――まだ、この力をさらに昇華させた力がある!」

 

刹那―――。全身の宝玉から深紅と漆黒のオーラが奔流と化と成って出てきた。そのオーラは俺をまた包み込み、宝玉から二つの声が聞こえる。

 

『我、夢幻を司る真龍「真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)」グレートレッドなり』

 

『我、無限を司る龍神「無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)」オーフィスなり』

 

『我は無限を認め、夢幻の力で我は汝を誘い』

 

『我は夢幻を認め、無限の力で我は汝を葬り』

 

『我らは認めし者と共に生く!』

 

『我らは認めし者と共に歩む!』

 

2人の呪文のような言葉の後に俺も呪文を唱えた。

 

「我は夢幻を司る真龍と無限を司る龍神に認められし者。

我は愛すべき真龍と龍神と共に我等は真なる神の龍と成り―――」

 

「『『我等の力で全ての敵を倒す!我等の力で汝等を救済しよう!』』」

 

「『『D×D!』』」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

眩い深紅と黒の閃光が辺り一面に広がっていく。余りの閃光に兵藤照と名無しは腕で顔を覆う。

そして、閃光が止んだ時。周りから見れば、俺は真なる深紅龍神帝(アポカリュプス・クリムゾン・ドライブ)をベースにした鎧を

装着している。深紅と漆黒の二色のドラゴンの姿を模した全身鎧(プレート・アーマー)

立派な角が生えた頭部、胸に龍の顔と思われるものが有り、

特に胸の龍の顔は意思を持っているかのように金と黒の瞳を輝かせる。

瞳は、垂直のスリット状に黒と金のオッドアイになっていて、

腰にまで伸びた深紅と黒色が入り混じった髪。

 

「それは・・・・・!」

 

「―――D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)または『W×D×D(ダブル・ドラゴン・ドライブ)』。真龍であるグレートレッドと龍神であるオーフィスの力を鎧に具現化したものだ」

 

「んだと―――!?」

 

兵藤照の目が剥いた。かなり驚いている様子だと分かる。

 

『―――グレートレッドとオーフィスの力を合わせての具現化した鎧か。

兵藤一誠、お前はなんてやつだよ』

 

アザゼルの声音に苦笑が籠っている。それとも畏怖の念か?まあ、どうでもいいな。

 

「いくぞ、―――一分で決める」

 

真っ直ぐ二人に飛び掛からず、空に飛んだ。両手の平の間に魔力を集中させて、

威力を最大限に抑えて、下に向かって放った。その速度は神速の如く。

避ける暇もないまま兵藤照と名無しは―――、

 

ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

レーザーのように真っ直ぐ京都ドームのど真ん中を貫いてできた穴の中へと

吸い込まれるように落ちた。

 

―――ドクンッ!

 

「っ・・・・・!?」

 

この時になってまたアレ(・・)か・・・!いや、今は目の前のことを集中しよう。

あれじゃ、倒れたかどうか分からない。そう思い、俺も穴の中へ飛びこんだ。

しばらく暗闇の穴に落ちていくと

 

ドタンッ!

 

「ぐほっ!?」

 

「ん?あ、悪い。いたんだ」

 

「て、てめぇ・・・・・!」

 

俺たちが落ちる場所に兵藤照がいた。

・・・・・威力を抑えたから、思っていたより元気そうだった。

 

「場所が変わったけど、お前をここで倒してやる」

 

「やってみろ!」

 

と、あいつは全身に闘気を纏って精神を集中させていた。

 

「俺は自身の闘気を纏って、外部からの攻撃を一切遮断する!

今まで俺の体に傷を付けた奴はいない!」

 

兵藤照が真っ直ぐこっちに飛び掛かった。その際に地面を深く抉り、衝撃波を生じる。

あれをまともに受けたらただじゃ済まなさそうだ。

それにその状態のお前を傷つけた奴がいないのか?

だったら―――と足を停めて両腕に炎を纏った。

 

「―――お前の技、借りるぞ。ナツ・ドラグニル!」

 

腕を螺旋状に振るって爆炎を伴った強烈な一撃を放つ。螺旋状の爆炎は真っ直ぐ兵藤照に襲う。

 

「滅竜奥義・紅蓮爆炎刃ッ!」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

螺旋状の爆炎を受け止める兵藤照。だが、少しずつ後ろに下がっていき―――。

 

「この野郎がぁああああああああああああああああああああああっ!」

 

あろうことか、俺の攻撃を吹き飛ばした。だが、それでいい。

俺は奴の隙をついて淡い光を纏った拳を兵藤照の腹部に突き刺した。

 

ドゴンッ!

 

「効くかよ!」

 

兵藤照の腹部に遮るかのように闘気のバリア、膜のようなものが俺の拳を受け止めた。

 

「なるほどな・・・・・じゃあ、目には目を、歯には歯を―――」

 

両手に仙術のオーラを纏って再度、兵藤照の腹部に殴った。

 

「気には気だ!」

 

それでもあいつの闘気がバリアのように発揮して俺の拳を防いだ。

 

「無駄無駄!この闘気は俺の気が無くならない限り絶対に破れはしねぇ!」

 

「―――いや、これでいい」

 

「・・・んだと?」

 

―――次の瞬間。兵藤照の顔に当惑の色が浮かんだ。

 

「なんだと・・・・・」

 

闘気に包まれて全身に輝く兵藤照。だが、その闘気が激しく揺らいだ。

―――仙術で気を激しく乱しているからだ。

 

「仙術って知っているか?」

 

「なに・・・・・?」

 

「なんだ、兵藤家は仙術を教えていないのか?

それとも―――自分たちも仙術を扱えないから教えることができないのかな?

仙術は、対象の相手の行動は気や生命で把握できてわかるし、操ることもできる。

逆に相手の気を操って乱したり断つ事で生命ダメージを与え

行動不能もできる。もちろん、対処方法は限られているから―――大概死ぬ。それが仙術だ」

 

―――――っ!?

 

兵藤照の顔は絶句の面持ちになった。

 

「お前を殴れば殴るほど、お前の闘気、気は乱れに乱れまくって、生命にダメージを与え続けて、

行動不能にすることが可能だ。いや、こうしようかな」

 

全身に―――仙術のオーラを纏った。

 

「お前が俺を触れる度にお前の気は乱れる。この状態は攻防一体だな。

真龍と無限のドラゴンの鎧も合わせっているから、今の俺はほぼ無敵だ。

―――それでも、くるか?」

 

「・・・・・っ」

 

あいつの答えは―――。

 

「上等だ!ボコボコにしてやる!」

 

「・・・・・」

 

あいつと名無しは俺に攻撃を仕掛けてきた。俺もタダ殴られるのは性に合わないから

激しく殴り合いを続けた。もう、ただ単純に全身を武器にして相手を叩きのめす。

それしか考えず、殴りったり蹴ったりしていった。

 

「うおおおおおおっ!」

 

ドンッ!

 

「ぐはっ!―――やろう!」

 

ガンッ!

 

延々と殴り合う俺たち。しかし、そう長くは続かなかった。

 

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

 

全身で息をし汗だくの兵藤照から闘気が感じなくなった。当然だ。

俺は仙術であいつの気を乱しているから、兵藤照を包んでいる気の衣ともいえるものだって

維持することが難しくなる。というか、もうすでに解かれているけどな。

 

「て、てめぇ・・・・・っ!」

 

「お前を何がなんでも倒す」

 

ザッ!

 

「くそっ、おい!お前ももっと攻撃しろ!」

 

「・・・・・」

 

あいつか・・・・・対処方法は分かっている。俺の攻撃のマネをするが、

仙術まで真似できないようだ。右手に『幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)』を装着して二人を迎え撃った。

 

―――○●○―――

 

―――清楚side

 

一誠くんを信じ、彼を見守ることどれぐらい時間が経ったのか分からない。

穴の中へ向かった彼と落ちた相手の二人は今、魔方陣を介して中の映像をテレビのように

京都ドームに映しているので、どうなっているのか分かる。

今では、『兵藤家』が一誠くんと戦っている。でも、圧倒的に一誠くんが有利だった。

 

「(それにしても・・・・・)」

 

私はある方に視線を向けた。映像越しだから小さくて今まで気付きもしなかった。

古ぼけた鳥居とその真下に石で作られた台の上に棺桶がある。

それに大量の札が張られ厳重に鎖で縛られている。

 

「(なにか封印をしてある・・・・・?)」

 

あんなところに棺桶があるなんて誰もが気になるはず。その時だった。

一誠くんは急に動きを停めて胸を抑えた。

その隙を逃さないと名無しに隙を突かれて一誠くんは蹴り飛ばされた。

―――その方向に―――。棺桶がある方へ。

 

ガッシャアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

一誠くんと棺桶が激突してその際、一誠くんの右の籠手が札と鎖に触れた。

その瞬間、ガラスが割れたような音が聞こえ、鎖が千切れてしまい、

棺桶に張られている札も消失した。

 

『あ?なんだあれはよ・・・・・』

 

兵藤照も気付いたのか、怪訝な顔で棺桶があった場所に視線を向けた。

そして、一誠くんも気付いたようで棺桶を見始めた。

 

『っ!』

 

不意に、彼が胸を抑えだした。ダメージが蓄積して痛みが感じたのか?と思っていたら―――。

 

『ぐうううううううっ・・・・・!』

 

一誠くんが跪きだした。なに、彼にに何が起こっているの!?

 

「一誠!」

 

「おい、いきなりどうした―――」

 

『ガタンッ!』

 

―――っ!

 

私と皆が当惑しているその時だった。棺桶が勝手に開いて―――黒い長髪の女性が起き上がった。

 

「な、なんだあいつ・・・・・棺桶から出てきたぞ・・・・・」

 

見ればわかる。だけど、棺桶から出てきた女性の体にも大量の札が貼られているのが気になる。

 

「・・・・・」

 

女性は完全に起き上がって、一誠くんに向かって落ちた。

彼を覆い被さるように落ちた瞬間、女性の全身に張られた札が一誠くんの右手に触れて

一瞬で弾け飛んだ・・・・・。

 

『・・・・・』

 

弾け飛んだ札を一瞥して女性は―――一誠くんに触れた。

というより・・・彼の背中を覆い被さるようにして抱きついた。

な、なんなの、あのヒト!

 

『何だか知らねぇが、あいつが苦しんでいるチャンスを逃す訳ねぇよな!』

 

兵藤照が笑みを浮かべて仲間の人と一緒に飛びかかった。

 

『大人しくしておれ、妾の魂と妾の肉体を一つになるためにこの子が必要じゃ』

 

刹那―――。

 

ドゴンッ!

 

二人が吹き飛ばされた。―――女性の腰に生える九本の狐のような尻尾によって。

壁にまで吹き飛ばされた彼は苦虫を噛み潰したような気持ちを声に出した。

 

『お前・・・・・何者なんだ・・・・・!?』

 

『この子の魂に憑依していた妖怪、と言おうかのぉ』

 

憑依・・・・・?それに、妖怪って・・・・・!一体、いつから―――!

 

『この子の父と母が死ぬ前から魂に憑いていた』

 

―――っ!?私の心を読んだかのように答える妖怪。どんな理由で彼と一つになるの!?

 

『肉体と一つになるにはこの子と同化をする必要がある。

妾の魂はこの子の魂に憑いている状態であるからな』

 

妖怪が小さく口の端を吊り上げたような感じがした。

 

カッ!

 

一誠くんと一誠くんに覆い被さる女性を中心に光が生じた。

 

「―――――」

 

ただ、その光景を見守ることしかできない。

彼を覆い被さっていた女が光の粒子と化となって一誠くんの中へ入っていく。

 

『九本の狐の尾・・・・・・?まさか・・・・・あの棺桶にいた女は―――!』

 

兵藤照が驚愕の色を浮かべだした。九本の狐・・・・・まさか、九尾?と、

予想を脳裏に浮かべていると、一誠がゆっくりと立ち上がった。

 

『お前の敗因を言ってやろうか』

 

『んだと・・・・・!』

 

何時もと変わらない口調で一誠くんは喋る。

手に淡い光を纏って―――一瞬で音もなく兵藤照の目の前に移動して、

 

『一つ、お前は俺を見下し過ぎる』

 

兵藤照の顔を殴って吹っ飛ばした。そんな彼を兵藤照の相方が接近して

一誠くんに殴りかかった。

 

『二つ、お前だけじゃなくて、お前たち兵藤家は世界を知らない』

 

対して彼は腕を軽く振って、兵藤照の相方を吹っ飛ばし、

兵藤照の腹部に深く拳を突き刺せば、兵藤照は血反吐を吐きだした。

 

『そして、三つは―――』

 

再び兵藤照の相方が一誠へ飛び掛かった。一誠くんは兵藤照を上に向かって蹴り上げ、

両手の間に闘気を集束する。

 

『俺の幼馴染の人生を、次期人王のために商品扱いにしたお前ら兵藤家に』

 

兵藤照の相方を腰に生えている龍の尾で拘束して、上に思いっきり放り投げ、

集束した闘気を兵藤照と相方に向かって放った。

極太のエネルギー砲となった一誠くんの闘気は―――、

 

『怒りを覚えさせたことだぁああああああああああああああああああっ!』

 

轟音を轟かせながら一誠くんの一撃は兵藤照と相方に直撃した。

最後の力と全身の闘気を両手に集中させて抵抗する兵藤照と、

背中に六対十二枚の翼を展開させて防御態勢になる相方の姿を伺わせるあの人たちに―――彼は

両腕に魔力で具現化した炎と雷を纏って―――!

 

「滅龍奥義!九焔爆炎雷刃っっっ!」

 

両腕とを螺旋状に振るった!最初は一つの螺旋状だったけど、

途中で分身したかのように九つに増えて、爆炎の螺旋状は真っ直ぐ上にいる二人に向う。

 

「くっ―――」

 

兵藤照の顔が歪んだ。

 

「くそがああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

一誠くんの最大ともいえる一撃によって、あの人たちは―――、兵藤照と相方は―――、

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

穴から膨大な熱量と質量で雷を纏った螺旋状の炎が出てきた。

それがなくなったら今度は『兵藤家』のリーダーともう一人の人が京都ドームの上から

落ちてきた。

 

『し、試合終了・・・・・勝者、「ロンギヌス」チームの兵藤一誠』

 

落ちてきた二人を見て、デイジーさんの震えた声音が耳の中に入ってくる・・・・・。

 

『優勝は・・・・・「ロンギヌス」チームです!』

 

刹那―――。大勢の観客大きな歓声が絶え間なく聞こえた。そして―――、

 

『お前ら、勝ったぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

 

彼の、一誠くんの、笑顔と雄叫びが映像に映った。

 

 

 


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