ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode6

『さぁ、今日が本選でございます!皆さま元気ですかぁー!』

 

デイジーが元気よく観客たちに話しかければ、観客たちはそれに応えて元気よく歓声を沸かせる。

俺たち予選に突破した四チームはドームのステージ中央に佇んで並んでいる。

その間、俺はずっと兵藤家のメンバーに視線を送られている。鬱陶しいにもほどがある。

 

『今日で次期人王が決まる記念の日となります。

その瞬間を一瞬でも見逃さないように見守りましょう。では、本選のルールをご説明致します。

ルールは昨日ご説明したようにトーナメント式で試合を行います』

 

ですが、とデイジーは付け加えた。

 

『決勝戦に進んだチームは特殊なフィールドで戦ってもらうことになっております。

当然そのフィールドで戦える選手は二チームのみだけです』

 

特殊なフィールド?気になる発言をするな。

 

『それでは、試合を開始するために「(キング)」の人は前に来てください』

 

前に・・・ね。さて、なにをさせられるんだか。俺を含めた四チームの『(キング)』は前に出た。

するとその瞬間。俺の目の前に大きなサイコロを模した物が魔方陣から出てきた。

 

『対戦を決めるためにサイコロを振って奇数と偶数を決めます。

ただし、この決め方は変わっています。もしも奇数が一人だけで偶数が三人であれば、

奇数を出したチームはシード戦となり、他の三つのチームはトーナメント戦で戦ってもらいます。

さらに四チームともが同じ奇数か偶数を出した場合は別のチームと組んで試合をし、

どちらかが勝てば組んだチームと決勝戦を行うこととなります。もしくは組んだチームが敗退し、

相手チームの一チームも敗退すれば、残った二チームで決勝戦に進むことになります』

 

あくまでトーナメント式は変わらないか。できれば他のチームと組んで挑んでみたいもんだな。

その時も奇数と偶数で決めるのかな?

 

『サイコロを持って下さい』

 

そう促され、サイコロを持った。

 

『では、どうぞ、振ってください!』

 

そう促され、サイコロを手放した。他の三人もサイコロを手放して奇数か偶数のどちらの目が

出るのか静かに見守った。サイコロは少しして動きが鈍くなりやがて―――止まった。

結果は―――。

 

奇数、偶数、奇数、偶数、

 

二手に分かれた。この場合、奇数と偶数と別れたら・・・・・こうなるだろうな。

 

『決まりました!四チームの対戦相手は「☆川神ズ」と「ロンギヌス」、

「デビル×デビル」と「兵藤家」と分かれてました!』

 

デイジーのアナウンスに観客が大盛り上がり。

 

「・・・・・」

 

川神百代が俺に視線を向けてくる。「負けない」と視線に乗せられているようだ。

 

「はっ、なんだよ。お前とじゃないのかよ?」

 

「残念だったな。戦いたかったら相手を倒してこい」

 

「当然だ。お前には訊きたいことが山ほどあるんだからな」

 

兵藤照が目を細めて言う。

 

『直ぐに本選を始めたいと思います。

まずは最初に「デビル×デビル」と「兵藤家」の二チームの試合からです。

他の選手の方々は選手控室で待機していてください』

 

そう言われて俺たちは踵を返してステージを後にしようとする。

 

「兵藤一誠!」

 

「・・・・・?」

 

兵藤照に呼ばれ、後ろに振り向く。

 

「いいか!俺さまたちが勝つからにはお前も勝ちあがれ!ぜってぇーだぞ!」

 

「・・・・・」

 

なんだ、そんなことか。なんと言うか、熱い男だな。

そう思いながらリアス・グレモリーたちに視線を向けた。彼女もこっちに視線を向けてくる。

 

「(無茶するなよ)」

 

「(ええ、でも、勝ってみせるわ)」

 

リアス・グレモリーの他に彼女と参加したメンバーにも一瞥して、

選手入場口に入り、選手控室に入室した。

 

「―――まさか、お前が兵藤家の男だとは思いもしなかったぞ」

 

「俺もお前があの時会うまで武神が女だとは思いもしなかったよ」

 

控室に入って早々、川神百代に話しかけられた。

 

「じゃあ、お互い知らなかった訳だな?」

 

「兵藤家と川神家は遠い親戚だと言うのはテレビで知った。それ以外は何も知らなかった」

 

「で、お前はどうしてこの大会に参加しているんだ?」と問うた。

兵藤家の男と結婚して女王になるつもりだったのか?

 

「至極的単純な理由だ。私は強者と戦いたいたくて参加したんだ。人王なんて興味ない」

 

「我の弟が興味あるがな」

 

川神百代と話しているところに銀の超ロングストレートに額に×の傷跡がある女性が寄ってきた。

 

「彼女の仲間か」

 

「うむ。我の名は九鬼揚羽と申す」

 

「俺は兵藤一誠だ。まあ・・・兵藤家と関わりは薄いから、

強く兵藤家の一族の男だと言えないからな」

 

「むっ?それはどうしてなのだ?」

 

九鬼揚羽は首を傾げた。彼女の疑問を解消するために説明した。

今まで兵藤家のことを知らずに生きていた。知ったのはつい数ヵ月前。

兵藤家の浅い部分しか知らず、根本的なことは今でも知らない。

 

「そう言うわけだ」

 

「ふむ・・・・・そうだったのか。しかし、お前を無視しないと思うが?」

 

「そうみたいだな」

 

「一誠、始まるよ」

 

和樹に促され、二人から離れて席に座り、俺たちの目の前にある巨大なテレビを視界に入れる。

 

「兵藤家と彼女たちが直撃しするなんてな」

 

「ハッキリ、これはかなりきつい戦いになると思うよ」

 

映像を見れば、火山が噴火して膨大な量の溶岩に囲まれて、

孤立と化となっている平べったい岩に両チームがいた。

 

「あはっ、頂上決戦に相応しいステージだな」

 

「・・・何故にお前が俺の隣で座る?」

 

「いいじゃないか」

 

俺たち以外選手がいないため席はかなり空いている。皆、指定された席に座らず。

テーブルに座ったり壁に背中を預けて佇んでいたりしている。

俺も違う席で座って映像を見ていたら川神百代が俺の隣に座りこんできた。

 

「兵藤一誠、あの時のリベンジを果たしてやる」

 

「今回は複数で勝負だ。俺を倒したかったら皆を倒すんだな」

 

「ははっ!いいだろう、全員を倒してからお前を倒してやる」

 

不敵に笑む川神百代。さて、戦いの方はどうだっと。

『デビル×デビル』の戦いぶりを見ていると、魔法だけじゃなく、

体術や得物を使って攻撃しはじめる。そんな相手をしている兵藤家の戦いぶりというと―――。

 

禁手(バランス・ブレイカー)!』

 

一人の男が力強く発した。その瞬間、足元の地面が盛り上がって男の体に纏い始めた。

おお、なんだ?

 

「曹操、あれはなんだ?」

 

振り向かず背後にいる曹操に問うた。あいつなら分かるかも知れない。

神器(セイクリッド・ギア)の所有者を集めているほどだし、

 

「周囲の岩や石だけじゃなく、様々な鉱物すら体に纏って絶対的な防御力を得る『大地の鎧(アース・アーマー)』だ」

 

「ネーミングがどうも微妙だな」

 

鉱物を纏うか・・・・・。体に纏った鉱物の鎧のまま、男は地面に手を触れた。

すると、シトリー眷属のメンバーの足元の地面が鋭利な槍のように盛り上がって相手の体を貫いた。

 

「ふむ・・・・・面白い力の使い方をするね」

 

「鎧を破壊しても地面に鉱物がある限り、倒せることはできない。

倒すなら絶対的な一撃か水の中に沈めるのが良さそうだな」

 

「高熱の炎で炙って倒すという手もある」

 

・・・・・『英雄派』の三人がなにやら攻略の対処方法を話し始めたよ。

だが、その通りだった。リアス・グレモリーが滅びの魔力ですら、

鎧にダメージを与えても直ぐに修復した。あれではじり貧もいいところだ。

 

「兵藤家のリーダーの奴は動いていないな」

 

「別に『(キング)』も前線に戦えなんてルールはないんだ。

本来ならチェスの場合、チェックメイトにならないように他の駒を進めてゲームするもんだ。

あれが当たり前のことなんだよ」

 

「えー、じゃあ私は後ろに引っ込んで戦いを見てろっていうのかよー」

 

「お前が『(キング)』かよ」

 

何となくそう思っていたけどこの戦闘狂が『(キング)』なんて諸刃の剣もいいところじゃないか?

 

「まあ、それもあるし、力の温存のために戦わないてもある」

 

―――と、リアス・グレモリーに変化が起きた。口の端を吊り上げたと思えば、

滅びの魔力を発現した。魔力はどんどん大きくなり、形が人の手のように具現化していく。

その滅びの魔力で具現化した手で鉱物を纏った『兵藤家』の一人をリアス・グレモリーが捕えた。

あれは・・・・・魔力の質を変えたのか。

 

「・・・・・って」

 

ゴミのようにリアス・グレモリーが躊躇もなく掴んだ敵を流れ続ける溶岩に放り投げちゃったよ!

 

「あいつ、悪魔だな」

 

「正真正銘の悪魔だからな」

 

隣にいる川神百代の頬に薄らと汗が浮かんでいた。だが、驚くことがまだあった。

彼女は背中に十二の小型の魔方陣を展開した。

 

「(なにを・・・?)」

 

と、疑問に思った俺は次の瞬間、目を見開いた。背中の魔方陣から滅びの魔力が迸って、

次第に赤黒い翼へと形状していった。六対十二枚の翼を―――。

 

「(あいつ、この夏休みの間たまにトレーニングに参加していた理由が

こういうことだったのか!)」

 

新たな力を得るために、あんなキツイ修行をした結果があそこまで彼女を強くしたのか。

 

「(だが、魔力の消費は激しいようだな・・・・・)」

 

テレビ越しでも伺える彼女の顔の色。

精神的疲労・・・あの状態をするために集中しないとすぐに解けてしまうのかもしれないな。

赤く黒い翼を振り払うように動かしだした。

すると、翼から数多の羽が弾丸のように『兵藤家』のメンバーの体を貫く。

おおう・・・・・凄い攻撃だ。あっという間に敵を半分にまで減らした―――。

 

カッ!

 

兵藤照にも赤黒い羽が向かったその時だった。

あいつを守るように光のオーラが発生して赤黒い羽を一瞬で消失した。

リアス・グレモリーは一瞬だけ目を丸くするが、今度は翼自身で兵藤照に攻撃し始めた。

 

―――その翼もあいつを守る光のオーラによって先から削られて無効化される光景を俺は見た。

 

「(聖なる光・・・・・?いや、それだけじゃない―――)」

 

『兵藤家』のメンバーの体にも光が纏い始めた。その状態のまま、あいつらはさっきよりも

速く光速の速度であっという間に『デビル×デビル』のメンバーを瞬殺した。

 

『で、まだやるか?』

 

兵藤照がつまらなさそうに、魔力の翼が形を崩して跪くリアス・グレモリーに問うた。

 

『・・・・・降参します』

 

彼女自身もこれ以上の戦闘は不可能だ。これが彼女たちにとっても初めての敗北だろう。

 

「部長・・・・・」

 

「会長・・・・・」

 

二人の眷属悪魔が心配そうに呟いたのが耳に届く。

 

『試合終了!勝者は「兵藤家」チームです!

次は「ロンギヌス」チームと「☆川神ズ」チームです。ステージに赴いてください』

 

・・・・・まだ十分も掛かっていないというのに終わってしまったのか。

 

「強そうだな。お前の一族は」

 

「頭が残念というか、個性的な奴がいるようだからどううも印象が・・・・・」

 

席から立ち上がり、『ロンギヌス』と『☆川神ズ』と別れた俺と川神百代。

 

「勝負だ、兵藤一誠」

 

「掛かってこい、川神百代」

 

不敵に俺たちは拳を突き合わせた。

さあ、お前たちを乗り越えてあいつらと勝負するんだ。俺は―――、

 

 

―――○●○―――

 

 

中央のステージに佇む俺たち。横に並んで相手を視界に入れているとデイジーが喋り出す。

 

『続いて第一回戦二試合目は「ロンギヌス」チームと「☆川神ズ」チームです!アザゼルさん。

「☆川神ズ」のチームの「(キング)」は武神川神百代との情報がありますが?』

 

『ああ、その通りだ。武神・川神百代は人間の中で最強クラスの実力者だろう。

それは世界中の人族、人間でも認めるほどの力を有している。

しかも、川神百代が率いるメンバーもまた強敵揃いだ。数が他のチームよりも少ない。

にも拘わらず決勝まで進んできた。所謂少数精鋭ってことだろう。理想的な戦術だ』

 

『対する「ロンギヌス」チームは16人。予選での戦いぶりは凄まじいと一言でした』

 

『だろうな。現世であんな暴威を振る舞われたら予選のようにこの町は壊滅状態になる。

できれば暴れて欲しくない奴らが揃っているぜ。俺が一人で相手にしたくないほどだ』

 

自殺行為にも等しいからな。それと無謀もいいところだ。

 

『堕天使の総督であるアザゼルさんでもですか?』

 

『当然だ。なにせあいつらの殆どが―――』

 

アザゼルが面白可笑しそうに意地の悪い笑みを浮かべて口を開いた。

 

『「ロンギヌス」のチームメンバーは最近発見した二つの新種の神滅具(ロンギヌス)を含め、

いまでは十七種となった神滅具(ロンギヌス)の内の十二種、

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」、「白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)」、「獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)」、「黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)」、「煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)」、「黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)」、「絶霧(ディメンション・ロスト)」、「魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)」、「幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)」と「無限創造龍の錫杖(インフィニティ・クリエイション・メーカー)」、「時空間と次元の自由航路(スペースタイム・ディメンション・ルート)」と「神愛護珠(ゴッド・ラブ・ディフェンス)」の所有者ばっかりだからな!』

 

あっ、あいつ、バラしやがったよ。もう、バレているだろうけどさ。

 

『・・・・・まさか「ロンギヌス」と言うのは・・・・・」

 

『ああ、「神滅具(ロンギヌス)」の集団だから「神滅具(ロンギヌス)」を四つ所有している

「ロンギヌス」チームの「(キング)」兵藤一誠が「神滅具(ロンギヌス)」の名を取ってチーム名にしたんだ』

 

『えええええええええええええええええええええええええっ!?』

 

うん、デイジー良いリアクションするよ。観客からもざわめきが生じている。

一応、神滅具(ロンギヌス)の知識を覚えているようだな。

 

「お前ら・・・・・そんな奴らだったのか」

 

唖然と川神百代が俺を見て呟いたのだった。

 

「ははは、悪いな。―――あっという間に勝たせてもらうぞ」

 

宣戦布告とばかり、『そ、それでは、試合を開始します!』と、

デイジーが発した直後に足元で光る魔方陣の光に包まれながら言った。

―――光が晴れ、視界が回復した頃に目の前に広がった光景は―――、

 

「おおー、綺麗な銀河世界だなー」

 

しかも、皆とバラバラにされた。俺ただいまボッチです。・・・・・さ、寂しいよ。

 

『主、我らがおります』

 

「うん・・・・・そうだね。ありがとうメリア」

 

そうだ。俺には家族がいるんだ。うん、大丈夫。平気だ。

 

「さて・・・・・探すとする前に敵を片付けるか」

 

後ろに振り返る。そこには一人の黒髪の少女がいた。

 

「あちゃー、いきなり「ロンギヌス」の兵藤一誠くんと会っちゃったよん」

 

「御愁傷さま。俺は兵藤一誠だけどお前は誰?」

 

「私は松永燕だよん。短い間だけどよろしくね。好きな食べ物は松永納豆!」

 

松永納豆・・・・・?ああ、あの納豆か。

 

「これはビックリ、あの松永納豆を販売している家の人と出会えるなんて嬉しいな」

 

「おや、その発言は松永納豆を食べて呉れている人だね?」

 

「あれ、甘くて納豆独特の風味がないから美味しいよな。

俺、料理を作るのが好きだからさ、納豆を使った料理を模索して作っているんだ」

 

「―――ほほう?」

 

松永燕の瞳がキランと煌めいたのが幻覚なのだろうか?

 

「その料理のレシピ、私にも教えてほしいなー」

 

「じゃあ、携帯番号を教えてくれ。メールで送る」

 

「うーん、それは大会が終わった後でいいかな?」

 

それもそうだな。と思いながら『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』の状態となり臨戦態勢になる。

 

「うわ・・・・・天使なんて初めて見たよん」

 

「悪いな。お前はその場から動けないぞ」

 

「え―――?」

 

瞳を怪しく輝かせた。その光に浴びた松永燕の体に変化が起きる。

 

「か、体が・・・・・!?」

 

「お前の首下以外、停止させた。解除するには俺を気絶させるか倒すしかないぞ」

 

「ははは・・・・・無理があるよ。それって」

 

「だな」

 

笑みを浮かべ、翼を素早く動かして彼女の体を槍のように鋭く貫いた。

 

「が・・・・・っ!」

 

「まずは一人」

 

翼を引き抜いて、付着した血を振り払って汚れを落とす。

松永燕は戦闘不能と見做されたようで、光に包まれてこの場から姿を暗ました。

 

―――和樹side

 

「や、ゲオルグ」

 

「式森和樹か」

 

浮遊魔法で飛んで味方と合流を果たす僕。

もう、散り散りにさせられるなんて思いもしなかったよ。

 

「誰かと戦っていた?」

 

「ああ、今しがたな」

 

ゲオルグの前に金髪の少女が血だらけで立っていた。手にはレイピアを持っていた。

 

「レイピアなどと武器で俺に勝てるわけがないのにな」

 

「しかも僕たちがいるのは積もっている雪。足場が不安定過ぎて移動がし辛いのも難点」

 

これはしょうがない、と僕は納得する。

 

「くっ・・・!魔法使いと言う奴か・・・・・!」

 

「俺は英雄の末裔でもあるがな。まあいい。さっさと倒れてもらおう」

 

ゲオルグは周囲に幾重も魔方陣を展開した。そして―――魔法を放った。

 

―――椿姫side

 

皆さんと散り散りにさせられましたか・・・・・。

兵藤くんはともかく、『英雄派』のレオナルドが―――。

 

ゴガアアアアアアアアアアアアァアアアアアアァアアアアアアァァッ!

 

「(・・・・・大丈夫そうですね)」

 

遠くに聞こえる獣のような咆哮。あの子が魔獣を創造したようなので直ぐに思考を切りかえる。

 

「―――見つけたわ!」

 

横から聞こえてくる少女の声。得物を構えて横に振り向けば、

赤毛のポニーテールの少女が私と同じ武器、長刀を持って駆け寄ってきた。

 

「私は川神学園の川神一子!いざ、尋常に勝負!」

 

そう名乗りながら彼女は勢い良く飛び上がって長刀を振り上げた。

 

「てやぁあああああっ!」

 

「・・・・・」

 

眼鏡を触れて呟く。

 

「『追憶の鏡(ミラー・アリス)』」

 

私の目の前に装飾された鏡が出現した。

 

「いきなり鏡が出てきた!?でも、こんなもの―――!」

 

川神一子は躊躇もなく鏡を破壊した。

 

ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

―――愚かなことを。割れた鏡から波動が生まれ、彼女を襲った・

 

「きゃあああああああああああっ!?」

 

彼女の全身から血を噴き出して倒れた。

先ほどの鏡は私の神器(セイクリッド・ギア)でカウンター系の能力です。

この能力で一度、兵藤くんにダメージを与えた唯一の自慢です。

こんな私でも彼にダメージを当てたことがとても嬉しい。

 

「どうですか?あなたが鏡を破壊した時、攻撃した衝撃の倍の力がそのまま自分に跳ね返った

自分の攻撃の味は」

 

「っ・・・・・!」

 

「無暗にただ猪のように突っ込むだけなら誰だってできます」

 

呆れた風に・・・いえ、彼女の行動に呆れ魔方陣を展開する。

 

「私と交えるほどのことではなかったようです。さようなら―――」

 

―――アーサーside

 

ギギンッ!ガギンッ!ギィィィンッ!

 

「中々やりますね。とてもただの人間とは思えない剣術の腕の持ち主です」

 

ツインテールに結んだ黒髪の少女と剣戟を交えている私に、

一瞬でも隙を作らせてはいけないという緊張に体を強張らせている目の前の少女。

 

「―――ここにいたのか、アーサー」

 

「ジークですか」

 

私が派閥にいた『英雄派』のジーク。周りからジークフリードと呼ばれている彼が

雪を踏みながら現れた。

剣を交えていた彼女に一瞥してジークは不思議そうな顔で口を開いた。

 

「まだ倒していないのか?」

 

「いえいえ、彼女はとても素晴らしい剣術の持ち主でしたのでつい、遊んでいました」

 

「・・・キミが言うほどの腕前か。僕も参加して良いかな?」

 

腰に体験している六本の内の一つを抜き放ちながら笑みを浮かべるジーク。

 

「いいですよ。一緒に短い間ですが楽しみましょう」

 

冷笑を浮かべ彼女に問う。

 

「それでは、続きをしましょう」

 

―――龍牙side

 

「うわっと!?」

 

「むっ、雪が邪魔で動き辛いな」

 

額に×の傷跡がある女性と戦っている僕ですけど、そう言いながらも一瞬で近づく

その速度はなんです!?

 

「時に質問してもよいか?」

 

「なんでしょうか」

 

「もしもお前たちが優勝したら誰が人王となる?」

 

何故そのことを?心の中で首を傾げて疑問を浮かべるが、別に言っても問題はないだろう。

 

「僕たちの『(キング)』兵藤一誠だよ」

 

「そうか・・・百代と話していたあの少年か」

 

「それがなにか・・・」

 

「なに、もしかしたら長い付き合いになるかもしれぬからな。知っておいて損はないだろう」

 

長い付き合いってどういうことなのかな・・・・・一誠さん、あなたは女性に恵まれているけど

同時に女難にも恵まれているそうですよ。

 

「さて、お前を倒すとしよう」

 

「いえ、僕は倒されませんよ?逆にあなたを倒します」

 

「ほう、ではお前が私の夫になるということだな?」

 

・・・・・へ?それはどういう意味だ?と目を丸くしていると彼女は腕を組んで言った。

 

「我は、我を倒した男しか婚約をするつもりはない。なので、我を倒したお前が我の夫となる」

 

「・・・・・」

 

「では、尋常に勝負と―――」

 

「ごめんなさい!」

 

踵を返して彼女から遠ざかった!そんな人と相手にしていたのか僕は!

 

「(こんな人、一誠さんに任せた方がいい!どこだ、どこにいるんだ一誠さん!)」

 

―――清楚side

 

「うう・・・・・寒いよぉ」

 

学校の制服、それも夏服だから雪山の寒さに流石にキツイよ・・・・・。

 

「靴も濡れて冷えちゃっているし、このままじゃ凍え死んじゃう」

 

敵も味方もいないこの場でどうしろと言うのかしら・・・・・。

 

「一誠くん・・・・・会いたいなぁ・・・・・」

 

彼に抱きしめられる温もり、彼の肌に直接触れて感じる温かさと安心感、

彼に覆い被されて感じる―――。

 

「って、私、こんな時に何考えてるのよぉっ!」

 

脳裏に浮かんだあの時の記憶を振り払うように頭を振って、羞恥で赤く、

熱くなった顔を両手で添えた。

 

「・・・・・もう、私って一誠くんから離れない体と心になっちゃっているよ」

 

一誠くんがすることはすべて正しい、とそこまで思考がおかしくなったわけじゃない。

でも、彼から離れたくないって想いがどんどん強くなる。

 

「ふふふ・・・・・一誠くん・・・・・」

 

私の後ろに赤い長髪に眼帯を付けている女性が戸惑っていることにも気付かず、

笑みを浮かべ続ける私だった。

 

―――○●○―――

 

―――アザゼルside

 

圧倒的・・・・・とまでは言わないか。戦場が戦場だ。

冷たい場所にい続ければ体力が消耗していく。そりゃ、動きも鈍くなる。

 

「まっ、それでもあいつらの勝ちには揺るがないだろう」

 

「まだ終わっていないから分からないけれどね」

 

隣に座っているルシファーが独り言のように呟いた。俺も頷いて「そうだな」と口にする。

戦場を有利に活用する手だってあるし、それを利用して勝利することだって可能だ。

 

「まあ、肉弾戦が強い武神だとはいえ――あいつらに勝つことはまず難しいだろう」

 

「身体能力は凄まじいけど、やっぱり上には上がいるものよね」

 

「私たちよりも強い神だっている」

 

できればその神と戦いたくないもんだぜ。苦笑を浮かべると―――

 

『試合終了!勝者、「ロンギヌス」チーム!』

 

あいつらが勝ったアナウンスを娘っ子が流した。

俺は、そのアナウンスに心の中でガッツポーズをした。―――よし、勝ったか!

 

『これより、三十分後に決勝戦を行います。

それまで観客及び選手の皆さんは自由にお過ごししてください』

 

そう言うなり、娘っ子は俺たちにお辞儀をしてどこかへと行ってしまった。

まっ、行くところが分かりきっている。

 

「俺たちも行こうぜ」

 

ルシファーたちを誘えば二つ返事で頷いた。お前ら、今このアザゼル先生が行くぜ!

 

 


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