ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode4

次期人王決定戦当日。俺たちは新幹線から降りて次期人王を決めるために行う場所に到着した。

 

「うわ・・・・・凄い人だかりだね」

 

新幹線に降りて開口一番。和樹が唖然と駅のホームを見て呟いた。

俺たちの周りは大勢の人間たちが混雑していて、外へと出るために、お土産を買うために、

人は歩き続けている。

 

「背が小さいレオナルドは肩車しないとはぐれてしまうかもな」

 

「・・・・・」

 

ひょいとレオナルドを片方の肩に乗せて、落とさないように腕で支える。

 

「我の特等席」

 

もう片方の肩ではオーフィスが乗り出した。

そしたら、隣に座るレオナルドを無言で視線を送りだした。

・・・・・レオナルドが震えているからやめなさい。

 

「そんじゃ、行くとするか。お前ら、はぐれんなよ」

 

アザゼルが先陣切って俺たちを導いていく。

ロンギヌスチームの他にも『ヴァーリチーム』のメンバーもいる。

野放しにするわけにはいかないとアザゼルが言うんで一緒に来ていた。

 

「京都かー。初めて来たよ」

 

「僕は馴染みのある場所です」

 

「何故なの?」

 

「僕の兄が経営している店の本拠地がここなので」

 

九十九屋のことか。なるほどな。そう言うことなら龍牙が一番詳しいだろう。

 

「一誠さま、理事長であるサーゼクスさまが用意してくれたホテルで泊ることになっております」

 

「そうか、ここから近いのか?」

 

「遠くはないようです。詳しくはアザゼルに訊けと」

 

了解、そうさせてもらうよ。アザゼルの先導に続く俺たち。

周りを見渡せば雅な町で多い京都だが、異様な力が充満しているのが凄く感じる。

 

「ピリピリしてしょうがないな。これ、人騒がせが起こるんじゃないか?」

 

「穏やかな町なんですがね。大事件が起きらないと良いんですが・・・まさかと思いますけど

テロを起こしませんよね?」

 

龍牙が曹操たちに警戒心を抱いた。物凄くその可能性がある奴らが隣にいるからな。

そう思ってもしょうがない。

 

「『英雄派』と『ヴァーリチーム』は何もしない。そう進言してあるし今回は手を出さない。

が、『真魔王派』がどう出るのかは知らないがな」

 

「来るならくるでこっちは構わないぜ?なにせ、

この京都には三大勢力のスタッフが集結しているし、警備は魔王と神の来訪並みにかなり厳重だ。

もう、ここで戦争をしてもいいような感じでな」

 

「・・・・・この町で戦争を間違ってでもしないでください。

この町には九尾の御大将を筆頭に様々な妖怪がいるのですから」

 

「ああ、そっちの方も話しを通してある。妖怪側も協力態勢の状態だ。

それに『禍の団(カオス・ブリゲード)』に対抗して協力態勢を得た。

ったく、こんなに早く妖怪側に協力を得ることになるとは

お前ら兵藤家と式森家は面倒なことをしてくれるぜ。ついでにテロリストどもな」

 

「「知るか!」」

 

俺と和樹が異口同音で逆切れした。つーか、愚痴るなら曹操たちに言え!

 

「まあ、警備を厳重にする理由は他にもある。俺の他にも後日、冥界にいるルシファーたちや

天界にいるヤハウェたちがここに訪れる他、他の神話体系の神々が来る」

 

「オー爺ちゃんと天空の神さまと海の神さまと骸骨のお爺ちゃんと

お猿のお爺ちゃんとインドラのおじさんも?」

 

「・・・・・お前は本当に驚かせてくれるよな。ああ、お前が言った奴ら全員来るだろうよ」

 

おお・・・・・実に十数年振りの再会だ。楽しみだな。早く会いたいな。

と、思っていて京都駅から数分歩いたところに大きな高級ホテルが姿を現す。

その名も「京都サーゼクスホテル」

 

「・・・・・もしかしなくてもあのホテルなのか?」

 

「ああ、そうだ。駒王学園の生徒が京都に旅行で来る時に泊る場所があのホテルだ」

 

「確かにそうだな。実に一年振りだ」

 

「はい、そうですね」

 

上級生であるサイラオーグ・バアルと真羅椿姫が肯定した。俺たちも京都に旅行で来る時は

あのホテルに泊ることになるのか。名前だけどうにかならないだろうか?

って、離れた場所にあるホテルも「京都セラフォルーホテル」って名前のホテルもあるし!

 

「もしかして、『京都アザゼルホテル』なんてないよな?」

 

まさかなーと思ってアザゼルに問うた。そしたら・・・・・。

 

「良く分かったな?勿論あるぜ!」

 

訊いてくれて嬉しそうに反応する堕天使の総督。とあるホテルに指した。

 

「京都アザゼルホテル」

 

・・・・・こいつも京都に影響されていたんだな。

いや、堂々と人間界に歩けれるからこうなることは当然だったかもしれない。

アザゼルについていくとホテルの玄関入口に立つボーイになにやら紙のようなものを見せると、

ホールの方まで丁寧に説明してくれた。きらびやかで豪華絢爛な造りのロビーを見て、

俺たちの反応は薄い。

 

「リーラ、イリナたちもこのホテルに?」

 

「その通りです。他にも神王さまたちもこのホテルにやってまいります。・・・・・お覚悟を」

 

「うん・・・・・頑張るよ」

 

あの親バカの王たちのことだ。祝杯だぁ!とか言いだして俺を巻き込んで騒ぐに決まっている。

 

「部屋割は男女別と感じな。本来は3~4人で一部屋だったんだが、

今回は特別にサーゼクスが一緒に寝れるように手配をしてくれた。問題ないよな?」

 

俺たちは肯定と頷く。でも、一人だけ不満そうな顔をする人物がいた。――ヴァーリだ。

 

「私は一誠と寝たいぞアザゼル」

 

「文句言うな。お前はテロリストで白龍皇の前に女だぞ。恥じらいを持て、羞恥を感じろ」

 

はぁ・・・と溜息を吐いたアザゼル。うーん、確かに一緒に寝るのはダメかな。

と、思っているとヴァーリが目元を細めて声を殺して言った。

 

「・・・・・そんなんだから結婚なんてできやしないんだ」

 

「よし、ヴァーリ。表に出ろや」

 

ヴァーリの発言にアザゼルが額に青筋を浮かべた。え・・・・・アザゼルって独身だったのか?

それは意外だな。

 

「アザゼルさん、本当のことを言われたからって怒らないでください」

 

「鳶雄!てめぇもかよ!?」

 

思わないところから言われてアザゼルは牙を剥いた。

 

「女心も分からない男に結婚なんてしたくないと思う」

 

「実際にハーレムだけ築くだけで、結婚相手がいないヘタレ総督・・・というわけでしょうね」

 

・・・・・俺の中のアザゼルの評価が一気に下がるなー。

というか、ヴァーリと幾瀬鳶雄って息が合っているな。

 

「う、うるせっ!俺は趣味に生きる男なんだ!お、女なんて腐るほどいる!」

 

「「「最低な発言です!」」」

 

「んなっ!?」

 

「女の敵ですね」

 

「ぐはぁっ!」

 

清楚と真羅椿姫、カリン、リーラがゴミを見る目で突っ込んだ。

うわー、かなり心にダメージを食らったんじゃないか?

四つ這いになって落ち込む堕天使の総督に俺はそう思ったのだった。

 

「一誠くん、女の敵を放っておいて行こう?」

 

「うん、こんな人が堕天使の総督で教師なんて見損なった」

 

「行きましょう。私たちの部屋は屋上です」

 

女性陣はスタスタとロビーからいなくなろうと歩を進めた。

 

「・・・・・自業自得ってわけじゃないんだけど・・・・・」

 

「気の毒、その一言に尽きる」

 

「同情はしませんがね」

 

男性陣も動き出す最中でもアザゼルは落ち込んでいて動こうとしなかった。

仕方なく翼で包んでアザゼルも連れていく。こいつがいないと次に進めないからな。

 

―――○●○―――

 

「おお・・・・・広いな」

 

男子部屋は畳で敷かれた大きな空間の部屋だった。布団を敷いて寝るようだが問題ない。

 

「ほら、お前は何時まで落ち込んでいるんだよ」

 

ポイ、とアザゼルを放り投げた。「いてっ」と言い、その場で胡坐を掻いた。

 

「たく、最近の女は口がうるさくて敵わねぇな」

 

「女の経歴を知れば誰だってあんな反応だと思うが?」

 

「・・・・・まあいい。お前ら、輪になって座れ」

 

スルーですか。アザゼルにそう言われ、輪になって座る。

 

「いいか。今回の大会、人王を決めるために行われたこれは、

表はそうだが裏では面倒なことが関わっていると俺は踏んでいる」

 

「面倒なこと?」

 

「ああ」とアザゼルは頷く。

 

「ただ優勝するだけで人間界の王になるんだぞ?一体どんな奴らが参加しているのか

俺も予想がつかない。それは兵藤源氏が参加者を無制限にしたからだ。

神だって出る可能性がある」

 

「その時は曹操の出番ということで」

 

「あほか!テロリストがどっかの神話体系の神を殺したら絶対面倒事が起きる!

ちったぁ、状況の深さを考えろ!」

 

そうは言われてもな・・・・・俺にとってどうでもいい事だし、

他の奴らだって関わりのない話だしな。龍牙が挙手して問いかけた。

 

「じゃあ、僕たちはどうすればいいんでですか?」

 

「・・・・・とにかく、優勝をしてもらわないとこっちが困る。絶対にだ」

 

「当たり前のことですよね?」

 

「当たり前のことをして欲しんだよ。じゃなきゃ、いまの四種交流に罅が生じるのは必然だ」

 

四種交流に罅・・・・・?そこまでひどい状況になるのか?

 

「この場にいる全員が知っているだろうが、今現在、四種交流を認めて、和平を結んで

積極的に動いているのは堕天使の総督である俺と五大魔王、新王と神、最後に式森家と

人王の兵藤家だ。俺とルシファーたち、ヤハウェは今現在の人王の兵藤源氏と中心に四種交流を

果たしているが、兵藤源氏が人王を辞退して新しい人王を決めるためにこの大会を開いた。

だが、もしもだ。兵藤家以外の種族や神が人王になったら四種交流が滅茶苦茶になる。

人王は人間、兵藤の人間じゃないとダメなんだよ。だから兵藤一誠。

お前には何がなんでも優勝して、人王の娘と婚約してもらわないと俺たちが困るんだ」

 

「・・・・・他の兵藤家の人間でもダメなのか?二人と結婚しなくても」

 

「いや、これは俺たち三大勢力のトップ同士で秘密裏に決めたことなんだ。

どうしてもお前を人王になってもらいたい。理由は分かるか?」

 

分かるわけがない、と首を横に振る。アザゼルは真摯な態度で言った。

 

「あの二人の子供と理由もそうだが、お前はガキの頃に他の神話体系の神々と会っている。

それに俺とルシファーたちやヤハウェが認めている男なんだよお前は。

その上、お前は兵藤一族の人間だ。知らない奴より知っている奴に人王となって

俺たちと交流をしてもらった方が何かとやりやすいんだよ」

 

「・・・・・」

 

「お前じゃなく、とんでもねぇ野望を抱いた奴が人王になったら、俺たち三大勢力が最悪の場合、

戦争を起こす可能性だってある。そうならないためにも、お前に優勝してほしい。

人王となってくれ」

 

・・・・・深い事情と現在の状況の危うさ、それに戦争勃発の可能性・・・・・か。

 

「(とんでもなく、大変なことになっているな)」

 

「そのためにも俺は神滅具(ロンギヌス)所有者の幾瀬鳶雄を派遣したんだ。

大方、ヤハウェもデュリオをメンバーに加えて欲しい理由は同じ考えなことだろう。

だが、好都合にも白龍皇のヴァーリや赤龍帝の成神一成、サイラオーグ・バアルの他にも

神滅具(ロンギヌス)の所有者である曹操たちもメンバーになってくれた。神器(セイクリッド・ギア)の相性にもよるが、

このメンバーは最初で最後の最強メンバーだと俺は思っている。

他の奴らも負けていない能力と実力も有しているしな」

 

世界を何度でも征服できそうな俺たちが集まったしな。どんな神でも倒せそうな気がするよ。

 

「さて、おい、女どもも入ってこい。これから二日後の予選についてミーティングをするぞ」

 

この部屋の扉の向こうにいるであろう清楚たちにアザゼルは促した。

一拍して、部屋の扉が開いて女性陣が入ってきたのだった。

 

「(二日後か・・・・・いよいよだな)」

 

どんな予選になるか分からないが、負ける気は一切ない。どんな相手だろうと―――。

 

ドクンッ!

 

「っ!?」

 

なんだ・・・・・今のは?一瞬、とんでもない力が感じたような・・・・・。

 

「一誠・・・・・どうしたの?」

 

「・・・・・いや、何でもない」

 

気のせいか、と思い心配してくる和樹にはぐらかす。

それから女性陣も加わりアザゼルの話に耳を傾ける。

二日後の予選のために・・・・・。

 

―――その日の夜

 

遅れてやってきたイリナたちもホテルに到着して俺は出迎えていた。

グレモリー眷属とシトリー眷属、神王と魔王一家。

そして、何故かいるデイジーとシアの護衛と来たのだろう瑠璃=マツリがいた。

 

「おー一誠殿!出迎えとは嬉しいぜ!」

 

「俺しか適任いないんでな。当然だろう。皆は屋上にいる」

 

「そうかい、それじゃ私たちも行くとしようか」

 

フォーベシイの発言に俺は踵を返して、皆をホテルの中に案内する。

皆がチェックインすれば二手に分かれて最上階までエレベータに乗った。

 

「イッセー、あの子はどう?」

 

禁手(バランス・ブレイカー)の維持状態が五日間ぐらいまでできるようになった。

体力の向上も成功しているし、中級悪魔ぐらいなら倒せるんじゃないか?

真羅先輩も禁手(バランス・ブレイカー)に至ったぞ」

 

「椿姫が・・・・・そう、イッセーくんありがとうございます」

 

「ありがとう」

 

二人に感謝された。ギブアンドテイクってやつなのにな。それに・・・・・。

 

「だけどな・・・・・」

 

「はい?」

 

「なーんか、真羅先輩が俺を見る目が変なんだよ。

まるでお前らが俺に好意を抱くような感じでさ」

 

「「・・・・・」」

 

「俺、なんかしたっけ?」と、二人に問うたら「「知らない!」」と不機嫌になって

顔を逸らされた。解せぬ・・・・・。しばらくして最上階についてエレベータの扉が開き、

廊下に出れば別のエレベータから神王たちも出てきた。俺が先導して男部屋と女部屋へ案内する。

すると、女部屋から真羅椿姫が現れた。

 

「あ、会長―――」

 

「―――椿姫。少し話があります」

 

ソーナ・シトリーが出会い頭に真羅椿姫の肩を掴んで有無を言わさなかった。

 

「か、会長・・・・・?」

 

「ふふふ・・・私がイッセーくんに好意を抱いていることを知っているあなたがどうして

イッセーくんに好意を抱いたのかいつ好意を抱いたのかきっちりと話してもらいましょうか。

いえ、そもそも私だってイッセーくんの家に泊ってイッセーくんの傍にいたかったのに

私に秘密でイッセーくんの家にずっとイッセーくんの傍にいたあなたの話をきっちりと話しを

聞かせてもらいましょうか椿姫」

 

真羅椿姫に全身からオーラを放ちながら詰め寄る

今のソーナは魔王ですら倒せそうな勢いがあるぞ。

 

「あ、あの、そ、その・・・・・!」

 

慌てふためく真羅椿姫だがチラチラと俺を何度も見てくる。・・・・・しょーもない。

 

「ソーナ・シトリー」

 

「・・・・・なんでしょうか」

 

「―――――」

 

ソーナ・シトリーの耳元で小さく、誰にも聞こえないように彼女だけ聞こえるように呟いた。

言い終わり、耳元から離れてソーナ・シトリーの顔を覗きこめば・・・・・顔を赤くしていた。

 

「なっ?」

 

「・・・・・分かりました。そういうことでしたらもう椿姫に追求しません」

 

「女部屋はこちらでしたね?」と顔を赤らめたまま彼女は先に部屋の中へ入って行った。

その様子にリアス・グレモリーは怪訝になって訊いてきた。

 

「・・・・・イッセー、彼女になんて言ったの?」

 

「機嫌がよくなる呪文」

 

それだけだと、言って神王たち(男)を部屋の中に案内した。

 

「夕食は男部屋で用意されるから荷物置いたらこっちに来てくれ」

 

「ええ、分かったわ」

 

リアス・グレモリーたちも女部屋へと入る。あっ、あの中に黒歌と銀華がいたな。

まあ、問題ないか。

 

「「白音ぇー!」」

 

「ね、姉さまぁ!?」

 

「・・・・・大丈夫、だよな?」

 

―――三十分後

 

現在、広い居間で夕食を食べ、演歌を歌うアザゼルとユーストマの声に耳にしながら

雑談していた。

 

「イッセーくんイッセーくん。私たちは応援しかできないけど頑張ってね」

 

「私も、イッセーくんのために一杯応援するっす!」

 

「イッセーさま、頑張ってください。応援します」

 

リコリスやシア、ネリネが話しかけてくる。ああ、ありがとうな。頑張るよ。

 

「ところで、どうしてデイジーが震えているんだ?」

 

シアの隣で震えるデイジーを見て疑問をぶつけた。

雨に濡れる捨てられた子犬のように震えている彼女を抱きしめたい衝動を抑えて・・・・・。

 

「ううう・・・・・私、大会のアナウンスをすることになったんです」

 

あれま、それはとても緊張する仕事じゃないか。高校生がそんなことするなんてさ。

 

「あう・・・ダメ、緊張して料理が咽喉に通らないです」

 

「かなりの重症っぽそうだな。ほら」

 

片翼だけ翼を展開させてデイジーの背中を安心させるように撫でた。

 

「あ・・・・・温かいです。それに何だか安心します」

 

「少しは気分が落ち着いたか?」

 

「はい、ありがとうございます兵藤くん」

 

「名前で呼んでいいぞ。もう、短い付き合いじゃないんだからさ」

 

苦笑してそう提案を述べれば、少し恥ずかしそうにコクリと首を縦に振ったデイジー。

 

「い、一誠くん」

 

「おう、デイジー」

 

笑みを浮かべてデイジーに向けた。これでまた彼女との距離が近づいた気がした。

 

「・・・・・」

 

周りを見渡す。各々と京都料理を満喫しているが、流石に敵と馴れ合うつもりはないと、

曹操たちやリアス・グレモリーたちは線を引いて食べているが・・・・・。

 

「(こんな光景はもうすぐで終わる)」

 

そしたら次は敵同士となる。なら、そうなる前に―――この瞬間を楽しむとしよう。

 

―――○●○―――

 

―――当日

 

 

ヒュ~ドンドンドンドン!

 

 

晴天の空に大量の花火が火花を散らす。それが合図の如く京都の、日本の住民のみならず、

世界各地からやってくる観光客や選手たちがここ京都ドームに訪れる。

 

「それじゃ、お前ら。優勝してくれよ。お前らが世界の運命を握っているって

過言じゃないんだからな」

 

「そんな大げさな・・・と言いたいところだが、俺も優勝する目的がある。必ずなってやるよ」

 

アザゼルから釘を刺される。言われなくてもそうするつもりだ。

他の奴らにも視線を向けると仲間たちに応援の言葉を送られていた。

 

「それじゃ一誠。行こうか」

 

「ああ、ロンギヌスチーム。出発だ」

 

と、アザゼルたちから踵を返して俺たちは受付に赴いた。

 

「おはようございます。選手の方々ですか?」

 

受付係の男性にそう問われ肯定と頷く。

 

「では、チーム名と『(キング)』の名を仰ってください」

 

「チーム名はロンギヌス。『(キング)』は俺、兵藤一誠です」

 

「・・・・・確認しました。

どうぞ、これを選手の皆さんの腕に嵌めて選手控室に待機してください」

 

そう言って人数分の黒い腕輪みたいなものを渡された。選手控えまでスタッフに案内される。

 

「これ、参加者専用のものかな?」

 

「そうだと思うよ。なにやら魔法が掛かっているしね」

 

皆に腕輪を配りながら訊けば、和樹が腕輪を見詰めて言った。

 

「ついでに俺の腕輪に番号が記されている。―――91番だってよ」

 

「僕たちが何番目に参加した番号のことでしょう。どうでもいいことですがね」

 

そうこう話しているとスタッフが歩みを停めた。

 

「他の選手の方々もいるので、ぐれぐれも騒ぎを起こさないようにご了承を願います。

番号が記されたテーブルがありますのでそこにお座りください」

 

それだけ説明して来た道に戻るスタッフ。

あの人も大変だなぁーと他人事を思って言いながら扉に触れた。

 

『・・・・・』

 

選手控室に入室すれば―――。静かに座っている参加者たちが俺たちを出迎えてくれた。

 

「おおう・・・・・これは凄いな」

 

「ああ、この場にいる全員が並々ならぬ強さを感じる」

 

「ふふふっ、世界中の強者がここに集結しているわけだ」

 

「見た限り、悪魔と天使、堕天使も出場しているな」

 

91と書かれたテーブルだから・・・・・一番後ろか。選手が通れる道を確保された空間に進んで

俺たちが座るテーブルへと赴く。その時、俺の視界にとある少女が映り込んだ

 

「(―――川神百代)」

 

やはり、彼女も出場していたか。まあ、分かりきっていたことだ。

 

「ね、ねぇ・・・・・一誠」

 

「どうした?」

 

「あそこ・・・・・変な人がいるよ・・・・・」

 

変な人?和樹が指す方へ視線を向けると・・・・・どこかの戦隊ものの衣装を身に付けている怪しげな五人が座っていた。

 

「・・・・・一人だけさ、物凄く覚えのある魔力を感じるんだけど・・・・・」

 

「ああ・・・・・俺もそう思う」

 

絶対に知り合いと思いたくない。他人の振りをしようと後ろから回って席に着いた俺たち。

 

「(それにしても、数が多いな。俺たちの後ろに空いている席がまだある)」

 

見ただけで100が超えていることが分かる。

 

ガチャ。

 

扉が開いた。また違う選手たちがゾロゾロと入ってくる。

今度は魔法使いみたいな選手の集団だった。続いて―――曹操と同じ服を着た集団が登場する。

 

「・・・・・お前たちもか」

 

当の曹操は苦笑した。あー『英雄派』か。同じ派閥の人間が参加するなんてそりゃ、

苦笑するもんだ。それからしばらく、次々と選手たちが入ってくる。

 

「はっ・・・・・?」

 

その中で、信じられない選手たちが入ってきた。

 

「なんで・・・・・お前らまで?」

 

「―――あの時言ったわよね。あなたの力になりたいと」

 

「ですので、私たちも密かに参加しました」

 

威風堂々と歩いてくるリアス・グレモリーとソーナ・シトリー。成神一成と真羅椿姫抜きで参加だと・・・・・?いや―――まさか。

 

「私の眷属とソーナの眷属と一つにして参加しているの。『デビル×デビル』それが私たちのチーム名」

 

「イッセーくんのサポートをするために結成したチームです。力及ばずながらもあなたを決勝戦に導かせてもらいます」

 

彼女たちはそれだけ言い残して後ろに回って席に着いた。

 

「(・・・・・ありがとう)」

 

密かに彼女たちに感謝する。そう思っている間にでも選手たちが入ってくる。そして、最後に一つだけ空席となっているテーブルが一つ。

 

『・・・・・』

 

その最後の席に座る選手たちがいま―――入ってきた。威風堂々と―――、

 

「へぇ、こいつらが俺さまの踏み台となる奴らか?」

 

じゃなかった。堂々と人を見下した態度で最後の席に座る選手たち。

その発言にこの場の空気が一変して重くなった。

 

「まあまあ、そんな事言ったらダメだろう?言うんなら心の中で言えって」

 

「・・・・・」

 

「二人とも、失礼だぞ。仮にも戦友となる者たちだ」

 

「戦友ねぇー?こんな弱小どもが俺たちと張り合えるとは思いもしないがな」

 

「見掛けに油断して負けたら、俺たち四天王と十二柱の名が地に墜ちると言うものだぞ?」

 

中には常識人もいるようだ。

それにしても四天王と十二柱・・・・・どこかの勢力のトップに誇る実力者か。

 

「はぁ?俺たちが?俺たち―――兵藤家の中で選り抜きされた四天王と十二柱の俺たちかが?」

 

『―――っ!?』

 

兵藤・・・・・!?こいつら全員が兵藤家の、兵藤一族の参加者だと・・・・・!?

あいつらの会話にこの場がざわめきだした。今回の主催者に関係する者たちが参加する。

これは可能性がないわけじゃない。事実、兵藤源氏も言っていたことだ。

 

『―――来るがいい、俺たち人間の力を見せつけ思い知らせてやろう。

そう、俺たち兵藤家と式森家の力をな』

 

「・・・・・」

 

だが、相手が誰であれ負けるつもりはない。

 

「ん?おお、良い女がいるじゃないか」

 

兵藤家の一人が視線をどこかに座る女に向けた。

そいつはテーブルに座らず、目に止まった女の方へと近づこうとした―――。

 

バチンッ!

 

「あ?結界だと?」

 

これ以上の進行を阻むかのように見慣れない魔方陣が出現した。

選手同士のトラブルを防ぐための防衛システムなのだろう。

 

「―――くだらねぇな」

 

次の瞬間。拳を魔方陣に突き出し、ガラスのように魔方陣が粉砕された。

 

「(あれは軽い力で突き破ったようだな)」

 

底が知れない、ってやつか。

そう思っていたら、兵藤家のメンバーの腕に嵌っている腕輪が光り出し、

 

「なんだこりゃ!?」

 

形を変えて男の全身に纏わりつき、天井に伸びて兵藤家のメンバーたちは

拘束された状態で吊るされた。

そんな中、クールそうな眼鏡の男が吊るされたまま首を縦に振った。納得したとばかりにだ。

 

「・・・・・なるほど、この腕輪は拘束するためのもののようですね。

あなたのおかげでこの腕輪の理由が分かりました」

 

「って、感心してんじゃねぇよ!なんとかしろ!」

 

「無理ですね。仮にも『(キング)』の立場であるあなたが愚行をしたのです。

当主が言ってたじゃないですか。『兵藤家の者として愚かなことをするな』と」

 

・・・・・あいつが『(キング)』なのか?まるで、成神一成のような奴じゃないか。

しかし、兵藤家はバカがいたのか・・・・・。

 

「このままでは一寸先は闇だな。あみだくじで決めたことが仇になったようだ」

 

「はぁ・・・・・先が思いやられる」

 

「う、うるせぇ!黙って俺に従っていろってんだ!」

 

・・・・・俺の中の兵藤家のイメージが・・・・・斜め下に下がる一方だ。

ブラブラと天井に吊り下がる兵藤家のメンバーたちに何ともいえない気持ちになる俺だった。

 

―――○●○―――

 

―――アザゼルside

 

堕天使の総督アザゼルだ。

いま、俺は冥界と天界のトップ、魔王と神王、神と共にVIP席で京都ドームを眺めている。

 

「あわわわ・・・・・ほ、本当に私がアナウンスを・・・・・」

 

神王の兄の娘がマイクを前にして緊張していやがる。

まあ、一介の高校生が大イベントのアナウンス係をするんだ。緊張するのも無理はない。

 

「おい、娘っ子。兵藤一誠のお守りを忘れてんのか?」

 

「え?あ、そうでした・・・・・」

 

胸元に下げている青白い羽飾り、あの羽は兵藤一誠の翼の羽だ。

あいつから離れても消失しないとは興味深い。このドームに来る前に渡されたお守りらしいが。

触れると安心すると言う効果があるようだ。その証拠に・・・・・。

 

「・・・・・」

 

さっきまで頼りなさそうな顔に緊張で体を震わせていた娘っ子が、

羽飾りを握った途端に安心しきった表情を浮かばせる。

 

「デイジー、時間です」

 

「はい!」

 

おお、気合の入った声だ。今度俺も羽を貰おうかな。主に実験材料として。

 

『―――皆さま、長らくお待たせしました。次期人王決定戦の予選の開始時間となりました!』

 

開始宣言ともいえる発言が発せられて一拍、ドーム中から歓喜の歓声が沸いた。

空にまで轟くほどの叫び。

 

『まず最初に、今回の人王決定戦を開催した主催者の方々とその関係者を発表します。

まずは冥界に住まう悪魔たちを統べる魔王。五大魔王の一人、ルシファーさま、ベルゼブブさま、

レヴィアタンさま、アスモデウスさま、フォーベシイさまです』

 

最初に呼ばれた五人の魔王が自分の名を呼ばれた時に立ち上がった。

 

『続いて堕天使を束ねる堕天使のトップ。

神の子を見張る者(グリゴリ)』の堕天使の総督アザゼルさまです』

 

紹介されて俺も立ち上がる。おーおー、ここからだと見えるぜ。

 

『天界に住まい、悪魔払い、シスターやエクソシスト、世界各地に存在する教会を束ねる

『聖書に記されし神』ことヤハウェさまと神の補佐、大天使長ミカエルと共に天使を束ねる王、

神王ユーストマさまです』

 

ヤハウェとユーストマも立ち上がる。さて、残すのは二人だけだ。

 

『そして、最後に全人類の王ともいえる存在。人王の兵藤源氏さまです。

続いて人王を補佐する式森家当主の式森和馬さまです』

 

呼ばれて紹介された二人の人間が立ち上がる。観客から歓声が沸いて俺たちはしばらく佇んだが、

席に座った。

 

『それでは次に移りたいと思います。次期人王決定戦に参加した

総勢千人以上の選手の入場です!』

 

歓喜が湧く。そんな中、中央のステージに巨大な魔方陣が出現した。

 

『悪魔、天使、堕天使、人間の他にも様々な種族の選手が参加しています。

その中で異例中の異例の参加者が最初の登場です!

そのチームの名は―――ギガント・ジャイアント!』

 

カッ!と光と共に現れた参加者―――そいつは人間の百倍の身長を誇る巨大な人間、

巨人族だった。

 

「おいおい・・・・・こいつぁとんでもねぇ奴らが出てきやがったじゃないか」

 

「そうね・・・・・」

 

「どうやって参加したのか気になるところだわ」

 

「大方、オーディンでしょうね」

 

この会場の他のVIP席にいるであろうジジイか。つーか、

あいつらが人間界を思いのまま支配されちゃ、こっちがいい迷惑だぜ。本当に頼むぞ、お前ら。

 

『さぁ、続いて他の選手の入場です!』

 

そうアナウンスが流れれば選手入場入口から大勢の参加者が現れる。

しっかし、百組以上のチームをどうやって絞るんだ?兵藤源氏の奴はよ。

―――っと、あいつらが出てきやがったな。姿を見るや、レヴィアタンが腕を大きく振りだした。

 

「兵藤くん、頑張ってねー!」

 

「レヴィアタン。それじゃ、誰のことを言っているのか分からないわ」

 

「あ、そっか。―――イッセーくん!頑張ってぇー」

 

たく、贔屓な応援は止せよ。観客が聞こえるぞ。誰にいているのか分からないだろうけどよ。

 

『さて、選手の皆さんが揃いました。ここで改めて今大会のルールを御復習いしましょう。

予選と本選を分け、予選で「RG(レーティングゲーム)」を応用した戦いに勝ち抜いたチームは

明日、本選に出場する権利が与えられます。本選も「RG(レーティングゲーム)」を応用して戦います。

一つのチームに参加できる人数は16人まで。勝敗は相手の「(キング)」を倒すこと。以上です』

 

『さらに』と娘っ子が付け加える。

 

『本選に出場できるのはたったの・・・・・四組のみです』

 

ザワッ・・・・・!

 

四組・・・・・・かなり絞ったな。さて、そこまでどうやって絞るのか訊いてやろうじゃないか。

 

『では、百組以上いるチームを四組まで絞る試合を兵藤源氏さま、ご説明をお願いします』

 

「・・・・・」

 

娘っ子の言葉に兵藤源氏が立ち上がった。

 

『まず、「RG(レーティングゲーム)」で試合を行う。これは知っての通りのことだ。

でなければ、この日本が壊滅的危機に陥ってしまうのでな。安全な場所で死闘を繰り広げられる。

これほど世界に優しいバトルフィールド上はないであろう』

 

だな、人間同士が争うならそこでしてほしいもんだ。

 

『さて、予選の試合のルールを説明しよう。至極的単純だ。相手の「(キング)」を倒す。誰でもいい、

チームの中に「(キング)」と九人の選手で本選に出場権利の四組になるまで戦い続ける。

―――それだけだ』

 

『これからすぐに予選を始めたいと思います。決まったチームは前に出てください』

 

兵藤一誠は必然として残りは誰が出るのかねぇ?頬杖して誰が出るのか予想する。

赤龍帝と白龍皇のコンビは見たいと思うし、ここで神滅具(ロンギヌス)所有者が全員ってのも

また面白い。中央にいる選手たちを眺めていると決まった奴らは前に出てきた。

そして俺は笑みを浮かべた。

 

「式森和馬」

 

「なんだい?アザゼル総督」

 

「兵藤一誠のチームのみ俺だけ映像を映させてくれないか?」

 

「わかりました。なんなら、撮りましょうか?」

 

「そうしてくれ」と頷く。くくくっ、兵藤一誠。

それとお前ら。お前らの戦いを見させてもらうぜ?

 

『それでは、予選を始める。皆者、心して掛かるがいい』

 

兵藤源氏の言葉に呼応したかのように、予選に参加するチームたちの足元に魔方陣が展開した。

その瞬間、あいつらは光と共に姿を消した―――。

 

 

 

 

 

 

 

 


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