ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode2

夏休みになって二日目、外はギラギラと太陽の日差しが大地に降り注ぎ、

快晴過ぎるほど天気が良い。

 

「あー、外で寝るよりこっちのほうが良いにゃあ」

 

俺の膝に猫バージョンで座っている銀華がそう言う。

 

「イッセー、頭とか身体とか撫でて」

 

「了解、猫さま」

 

毛並みがよく、綺麗な銀の体毛を持つ銀華の体や頭を撫でる。

ゴロゴロと咽喉を鳴らして銀華は気持ち良さそうに目を細める。うん、今の彼女は猫まっしぐら。

 

「我も撫でる」

 

「おう」

 

黒い髪に頭を乗せて優しく撫でる。こっちもこっちで艶があり、撫で心地がいい。

 

「微笑ましい光景だねぇ・・・」

 

「ええ、そうですねぇ・・・・・」

 

のほほんと茶を飲んでいた和樹と龍牙が、なんかジジ臭いことを言っているな。

 

「さて、テレビでも見ましょうか」

 

「最近、面白そうなニュースが報道されていないからつまらないね」

 

と、龍牙がリモコンを手にとってテレビに電源を入れた。

 

「おや・・・・・早速面白そうなニュースが生放送されていますよ」

 

クスリとテレビを見て笑む龍牙。テレビに白い羽織りのようなものを羽織っている

一人の白い顎鬚が長い老人が映っている。背景にどこかの建物が見える。

 

『さて、夏と言ったら祭りじゃが、今年はデカイのがあるぞい。

川神院の恒例行事として八月に川神武道会を開催しているのは知ってのとおりじゃ。

じゃが、今年はとある事情で今回は大規模なものにしようと考えた次第じゃ』

 

「予算の削減・・・・・ではなさそうですね」

 

「もしそうなら小規模な武道会になるだろ」

 

『ワシら川神の遠い親戚が公私混合で行う祭りで、これはワシたち人間にとっても重要な行事だ。

何せ、人の王、つまりは次期人王を決めるためのことじゃからな』

 

っ!?

 

老人の言葉に俺は目を丸くした。和樹や龍牙にも視線を配れば、

あいつらも目を見開いて驚いていた。

 

『参加資格のことを説明しよう。年齢は無制限、参加者は人間のみじゃ。

人の王を決める祭りに悪魔や天使とか堕天使といった異種が人王になったら―――』

 

『―――いや、参加者も無制限(・・・)だ。鉄心』

 

テレビの向こう、虚空に現れた厳格な中年男性。―――兵藤源氏。あの人か・・・・・。

 

『源氏殿・・・・・しかし、それでは』

 

『俺が許そう、人王である兵藤源氏の俺がな。

それに、俺たち人間が他の種族に負けないことも証明する必要がある。

例え、悪魔と天使、堕天使、魔王や神すら倒しを得る可能性を秘めている俺たち人間の力を』

 

おいおい・・・・・それは天界と冥界に宣戦布告しているようなもんだぞ、あんた・・・・・。

 

『無論、どこぞのテロリストの参加も認める。

―――来るがいい、俺たち人間の力を見せつけ思い知らせてやろう。

そう、俺たち兵藤家と式森家の力をな』

 

大胆不敵に発言する兵藤家当主。それから祭りを行う日は八月二十日。予選と本選を分け、

本選はトーナメント式でRG(レーティングゲーム)を応用して戦う。

参加人数は16人まで。勝敗は相手の『(キング)』を倒すこと。

 

『なお、優勝した参加者の中で一人のみ俺の娘、人王の姫と婚約する権利を与える』

 

兵藤源氏の背後に大きな穴が開いた。その穴からゆっくり姿を現す二人の存在。

 

「・・・・・」

 

その二人の存在に釘付けになった。忘れるはずもない。

懐かしい・・・・・久しく会っていない俺の幼馴染たち。兵藤悠璃―――。兵藤楼羅―――。

 

『この二人のどちらでも両方とでも好きに婚約するがいい。

ああ、仮に女が優勝したら兵藤家の男と結婚し、全人類の女王として君臨してもらう』

 

マジかよ・・・・・。それ、兵藤家として良いのか?

 

『以上だ。参加したい者どもは世界各地に駅や町、都市に参加書を設置する』

 

『結局、源氏殿が全て話してしまったのぉ。まあいいわい。

源氏殿、この後、ワシの家で話をしないかの?』

 

『ふむ・・・そうだな。酒でも交わして話をしようか』

 

二人はカメラからいなくなる。あの二人も続いていなくなった。

そこでテレビの電源が切れた。龍牙が切ったのだ。

 

「これ・・・・・四大勢力戦争になりそうだね」

 

「きっと、冥界と天界もこの放送を見ていたかもしれませんよ」

 

「テロリストもな」

 

俺たち三人は互いの視線を交わして沈黙する。

 

「一誠、当然参加するよね」

 

「ああ・・・・・当然だ。―――あの二人の顔を見ていたら、

参加しないわけにはいかないだろう!」

 

ドゴンッ!

 

テーブルを思いっきり殴るように拳を振り下ろした。

その瞬間、テーブルが真っ二つになった。

 

「龍牙、和樹。お前らの力を貸してくれ」

 

真っ直ぐ二人を見据える。当の二人は当然とばかり薄く口の端を吊り上げて首を縦に振った。

 

「式森の名を出されちゃ、出ない訳にはいかない。それに、キミの力になりたい」

 

「僕もです。一誠さん、共に優勝しましょう」

 

二人とも・・・・・ありがとう。

 

「―――だったら、仙術をマスターしないとダメね♪」

 

膝に座っている銀華が俺に言った。ああ、勿論だ。分かっている。

 

「―――なら、残りのメンバーは当然我らだな?」

 

ザッ!と格好良く現れたガイアとオーフィス、清楚、イリナとゼノヴィア。

ガイアの言葉に俺は―――。

 

「いや、ガイアは俺の中にいてくれ。お前の力は必要だ。オーフィスも同じな」

 

「むっ、まあ・・・確かにあの力はお前の中でないと使えないな」

 

「我、イッセーのために頑張る」

 

二人は快諾してくれた。

 

「ゼノヴィア、お前はパワーばかりでテクニックが不足だ。

そっちの方面に鍛えなきゃ話にならない。俺と参加したいなら、

まずはそっちをどうにかしないと」

 

「む・・・・・了解した」

 

「イリナと清楚、お前たち二人は悪い。ハッキリ言って戦力不足だ。

俺たちの応援に撤してほしい」

 

「うん・・・・・分かっているよ。でも、無茶しないでね?」

 

「幼馴染としては歯痒い思いだわぁー!ああ、主よ!どうか私に力を与えてください!

幼馴染の力になりたいのです!」

 

本当に悪い。今回だけはどうしても勝たないといけないんだ。

 

「一誠さんを含め、ゼノヴィアは候補として四人ですね・・・・・」

 

「強力なメンバーじゃないと勝てないかも」

 

和樹の一言に俺は無言で頷く。カリンも候補に入れている。残りの11人は誰に・・・・・。

 

ブーッ!ブーッ!

 

携帯のバイブが鳴りだした。携帯を掴んで操作する。

 

「もしもし?」

 

『イッセー、私よ。テレビ、見てたわ。私たちもあなたの力になる。一緒に優勝しましょう』

 

いきなり電話にかけてきたリアス・グレモリーからの参加意思の言葉。

そうだ、忘れていた。実力者が。

 

「・・・・・俺が選んでいいか?今回だけは実力者がどうしても必要だ」

 

『ええ、いいわよ。誰?』

 

「・・・・・赤龍帝だ」

 

『イッセー?でも、イッセーは・・・・・』

 

ああ、分かっている。かなり弱い。それも蟻みたいにな。

 

「まだ祭りの期間はある。あいつを強化してやるよ。この際、形振り構ってもいられないし

藁にも縋りつきたい思いなんだ。どんな奴でも俺は強いと思った奴をメンバーに加える」

 

『そう・・・・・あなたの意志は伝わったわ。直ぐに彼を連れて一緒に行くわ』

 

「分かった」と言って通信を切った。それから皆に向かって言う。

 

「と言うわけだ」

 

「・・・・・本当に赤龍帝が必要ですか?」

 

「腐っても天龍だ。あいつを鍛えてやればリアス・グレモリーは喜ぶだろう」

 

「・・・・・まあ、あなたがそう言うのであれば・・・・・」

 

龍牙が少し不安そうに言った時、また携帯が鳴りだした。誰だ?

 

「もしもし」

 

『イッセーくん、ソーナです』

 

・・・・・あれ、俺・・・彼女に電話番号を教えたか?

 

『あなたの携帯番号については後ほど教えますので今は問わないでください』

 

「・・・人の心を読まないでくれるか?・・・それで、どうしたんだ?」

 

『祭りの件についてです。私もイッセーくんの力になりたいのです。

ですから、私の眷属から「女王(クイーン)」の椿姫をあなたのメンバーに加えてください。

彼女の能力は・・・すでにお分かりですよね?」

 

あれか・・・・・確かに彼女には不意を突かれた。実力はともかく能力は使える。

 

「分かった。彼女の力を借りる」

 

『分かりました。では、彼女と一緒に・・・ああ、イッセーくん』

 

「ん?」

 

『―――サイラオーグにも声を掛けましょうか?』

 

―――強者だ!

 

「頼む」

 

『分かりました。きっと彼も二つ返事をするでしょう』

 

それだけ言って彼女は通信を切った。―――するとまた、携帯が鳴りだした。今度は誰だ?

 

『おう、俺だアザゼル先生だ』

 

何でこの人が電話をしてくるのかなぁ・・・・・。でも、聞こう。

 

「どうしたんだ?」

 

『なに、どうせお前のことだ。祭りに出るんだろう?そんなお前にグリゴリから一人、

お前のメンバーに加えて欲しい奴がいるんだよ。まだ空いているか?』

 

アザゼルたちグリゴリから・・・・・?

怪訝になって取り敢えず肯定と頷いて言うと、アザゼルは―――。

 

『きっと戦力になるだろう。今から連れて行ってやる。待ってろよ』

 

一方的に言われて切られた。・・・・・なんなんだ?

 

「一誠、誰から?」

 

「アザゼルからだった。アザゼルがグリゴリから一人メンバーに入れて欲しいと頼まれた」

 

「グリゴリから派遣ですか・・・・・?一体、誰なんでしょうね」

 

俺も知りたいところだ。もう・・・・・掛かってこないよな?

 

カッ!

 

リビングキッチンに神々しい光が唐突に生じた。何事だ!?と思いながら見覚えのない

魔方陣を睨んでいると―――。

 

「突然の訪問に申し訳ないです。兵藤一誠くん」

 

光の中から現れた二人の存在。

1人は六対十二枚の金色の翼を展開している天使―――大天使ミカエル。

 

「「ミ、ミカエルさま!?」」

 

教会組のイリナとゼノヴィアがいきなり現れて天使長の前に跪いた。

 

「人間界に流れた情報を我々、天界も耳に届きました。

人王、兵藤家現当主の彼の発言に宣戦布告と見なし、

私たちから選り抜いた一人の戦士をあなたのメンバーに加えて欲しく参じたのです」

 

やっぱり宣戦布告と受け取られているよー!?

マジで四大勢力が戦争を起こすことにはならいよな!?」

 

「―――デュリオ、ご挨拶を」

 

ミカエルに呼ばれたもう一人が一歩前に出た。

姿は神父の恰好で金髪に緑の瞳と言う端正な顔立ちの青年。

歳は・・・・・俺より三つか四つ上ぐらいだろうか?

 

「ちわー、自分はデュリオ・ジェズアルドと言いまっす」

 

「デュリオ・ジェズアルド・・・・・!?」

 

「そんな人が、イッセーくんのメンバーに・・・・・」

 

ん、二人の反応が凄まじいな。そんなに凄い奴なんだ?ミカエルは微笑み、

デュリオのことを説明する。

 

「彼は十七種の神滅具(ロンギヌス)の中で二番目に強いと言われ、天候を操り、

いかなる属性を支配できる能力の『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』の所有者でもあります」

 

な・・・・・っ!二番目に強い神滅具(ロンギヌス)の所有者だと・・・・・!?

 

「・・・・・私の出る幕はなさそうだな。イッセー、私は辞退させてもらうよ。

彼ならばイッセーの力になれる」

 

ゼノヴィアが自ら辞退した。お前がそんなこと言うほどこいつは強者だってことなのか・・・。

 

「兵藤一誠くん、よろしいでしょうか?」

 

「ああ・・・・・いいけど、そっちこそいいのか?神滅具(ロンギヌス)所有者を天界から連れて来てさ」

 

「ヤハウェさまからの指示でもありますし、彼は暇さえあれば人間界にある食べ物を巡って

どこかへ行ってしまうのですよ。なので、彼を効率よく使ってください」

 

天使長とは思えない発言だな最後の方は。俺はデュリオの顔を見て口を開く。

 

「ミカエルは言っているけどお前の本心はどうだ?」

 

「自分は別に良いっすよ。それに人間界にいられるんで、

好きに美味しいものを食べれるんでラッキーだと思っています」

 

「デュリオ・・・・・あなたと言う人は・・・・・」

 

物凄く呆れる顔をするミカエル・・・・・こんな奴が他にも天界にいるのか。いや、教会か?

 

カッ!

 

と、そう思っているとまたしても魔方陣が現れた。今度は複数だ。光と共に現れたのは―――。

 

「イッセー、お待たせ」

 

「・・・・・よう」

 

「イッセーくん、連れてまいりました」

 

「こんにちは、兵藤くん」

 

「久し振りだな、兵藤一誠」

 

リアス・グレモリーと成神一成。

ソーナ・シトリーと、生徒会副会長であり彼女の『女王(クイーン)』、名は真羅椿姫。

サイラオーグ・バアルと最終試験で見た全身に金毛が生えて、腕や脚が太く、口が裂けて鋭い牙。

尻尾が生えて、首の周りに金毛が揃って額に宝玉みたいなものがあり、

五~六メートルはありそうな巨大な獅子、ライオン。

 

「ラ、ライオン!?」

 

「いえ・・・・・これは・・・・・」

 

清楚が驚く声に、ミカエルは否定するが普通の獅子とは違うと気付き、

ジッとサイラオーグの獅子を見詰めていると

 

「よう、待ったか?」

 

声と共にまた魔方陣が出現した。光と共に現れたのは二人の存在。

一人は堕天使の総督アザゼルだ。もう一人は日本人だ。背恰好は成神とほぼ同じぐらい。

その辺にいるちょっとイケメンな日本男性って具合だ。年は成神より一つか二つ上か?

ただ―――。

 

「・・・・・」

 

傍らに大型の黒い犬を従わせていた。真っ黒だ。漆黒の毛色と言っていいだろう。

金色の瞳がギラギラと輝いている。

・・・・・身に纏うオーラの質から普通の犬ではないことが分かる。異形の類―――。

いや、神秘的なものも感じれるな・・・・・。

 

「お?へぇ、ここにミカエルがいるなんて珍しいじゃなねぇか。

しかも、神滅具(ロンギヌス)所有者を引き連れてか。お前も俺と同じ考えのようだな。

いや、ヤハウェの差し金か?」

 

「ええ、どうやらお互い同じことを考えているようですね。

皮肉にも各勢力に所属している神滅具(ロンギヌス)の所有者がこうして集うとは・・・・・」

 

各勢力に所属している神滅具(ロンギヌス)の所有者・・・・・?

じゃあ、アザゼルの隣にいる男も所有者なのか・・・・・?

 

「初めまして、『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』の幾瀬鳶雄といいます。こっちは(ジン)。『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』で神滅具(ロンギヌス)そのものだと思ってください。

俺の神器(セイクリッド・ギア)は独立具現型だから、意志を持っているんだ」

 

あっ、やっぱりそうなのか。だけど、これは凄い。

一気に神滅具(ロンギヌス)の所有者と出会えるなんて驚きだ。

 

「うわ・・・・・超豪華なメンツだよ。もう一度見られるかどうかかなり貴重な光景だよ」

 

「ここに白龍皇がいたら、もっと凄いですよね」

 

あ・・・・・そういえばそうだな。あいつも、神滅具(ロンギヌス)の所有者の一人だ。

 

「(あの人、テロリストも参加して良いとか言っていたな。

・・・・・まさか、あいつらが参加するとはとても―――)」

 

ピンポーン。

 

家のインターホンが鳴った。リーラがお辞儀して訪問者を出迎えに行った。

 

「しかし、あの男の発言にはちょっといただけなかったな。

おかげで、血気盛んな俺の部下どもが参加するって言い出したぞ」

 

「こちらも似たようなものですよ。今回の祭りに参加すると言いだす者たちが現れました。

中には『熾天使(セラフ)』の者までも・・・・・」

 

「俺たちの部下がそうならルシファーたちのところも同じ状況になっているかもな。

これ、あの時の続きになっちまうじゃねぇか?」

 

「それだけは何としてでも避けたいところです。

なので、それは彼に何とかしてもらう必要がありますね」

 

ミカエルが俺に視線を向けてくる。って、俺かよ!?

 

ガチャ。

 

「一誠さま、お客さまです」

 

「客?誰だ?」

 

「それは・・・・・」

 

言い辛そうなリーラだった。だけど、これ以上来訪者を待たせる訳にはいかないと彼女は

扉を開け放って―――。

 

「久し振りだね、一誠」

 

ヴァーリ・ルシファーを招いた!

 

「ヴァ、ヴァーリ!?」

 

「カッカッカッ!オイラたちもいるぜぃ!」

 

「お邪魔します」

 

「にゃん、久し振りね」

 

「お、お久しぶりです」

 

というか、ヴァーリチーム全員じゃないか!?

 

「・・・・・なんとまあ、向こうから奴さんが現れてくれたよ。呆れるぜ」

 

「久し振り、アザゼル。だが、私たちだけじゃないよ」

 

「なんだと・・・・・?」

 

ヴァーリの意味深な発言にアザゼルが怪訝な面持になった。

彼女の言葉がまた別の人間たちが中に入ってきた。

 

「―――やあ、あの時以来だね。兵藤一誠」

 

「―――――っ!?」

 

学生を着た黒髪の青年だった。学生服の上から漢服らしきものを羽織って手には槍を持っていた。

その男は一度だけ会ったことがある。

 

「―――曹操」

 

「なんだと!?」

 

「彼が・・・・・『英雄派』。しかもあの槍は・・・・・」

 

ミカエルが警戒の色を浮かばせた。ミカエルだけじゃない。

俺以外の全員が臨戦態勢の構えになった。

当たり前だ、あいつらは―――テロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲード)』なのだから!

アザゼルが苦笑しだした。

 

「―――こいつはまいったな。まさか、最強の神滅具(ロンギヌス)であり神滅具(ロンギヌス)の代名詞になった源物。

黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』がテロリストの男の手に宿っていたとはな」

 

『っ!?』

 

最強の神滅具(ロンギヌス)・・・・・。一番目ってことか・・・!

 

「俺だけじゃないけどね、神滅具(ロンギヌス)所有者は」

 

口の端を吊り上げる曹操の横から二人の人間が現れる。

子供と、魔法使いのようなローブを羽織っている眼鏡を掛けた青年、それに白い髪の男もいた。

 

「『絶霧(ディメンション・ロスト)』と『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』。二人とも上位神滅具(ロンギヌス)の所有者だよ」

 

『―――っ!?』

 

殆どの皆が新たな神滅具(ロンギヌス)所有者の登場に驚愕の色を浮かべた。

俺もその一人で思わず呟いてしまった。

 

「・・・・・ちょっと待とうか。これは何の冗談だ?

この場に十七種の内の十一種の神滅具(ロンギヌス)

それを所有している奴らが集まるなんてどういうことだよ?」

 

「いや、十二種だ」

 

アザゼルが訂正の声を発した。十二・・・・・?

 

「赤龍帝の成神一成が持つ『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、

白龍皇のヴァーリ・ルシファーが持つ『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』、

俺の部下の幾瀬鳶雄が持つ『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』、

デュリオ・ジェズアルドが持つ『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』。

曹操たちが持つ『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』と『絶霧(ディメンション・ロスト)』と『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』、

兵藤一誠が持つ『幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)』と『無限創造龍の錫杖(インフィニティ・クリエイション・メーカー)』と

時空間と次元の自由航路(スペースタイム・ディメンション・ルート)』と『神愛護珠(ゴッド・ラブ・ディフェンス)』。最後に―――」

 

サイラオーグの隣にいる獅子に視線を向けた。

 

「サイラオーグ・バアルが持つ神滅具(ロンギヌス)、『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』だ」

 

「・・・・・マジで?」

 

「ああ、マジでだ。その上、どうやら独立型の神滅具(ロンギヌス)のようだな」

 

訂正―――十二種の神滅具(ロンギヌス)が集結していました。

 

「で?テロリストどもはどうしてここに現れたんだ?」

 

「私は一誠の力になりたいと思ってね。曹操たちを問答無用に連れてきたんだ」

 

ヴァ、ヴァーリ・・・・・・お前って幼馴染は・・・・・。ちょっと感動してしまったぞ。

 

「・・・・・愛は盲目って奴なのかねぇ・・・・・?」

 

「アザゼル、愛は偉大ですよ?ですが・・・・・よく私の前に現れましたね。ジークフリート」

 

「ははは、僕としては現れたくなかったですがね」

 

ミカエルの怒気が含んだ言葉に苦笑を浮かべる白髪の男。なんだ、知り合いなのか。

 

「それに・・・・・あなたの腰にある剣は・・・・・聖王剣コールブランドと

最後の聖剣エクスカリバーの『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』ですね」

 

「ええ、そうですよ。ですが、返す気はないのでご了承を願います」

 

アーサー・ペンドラゴンが笑みながら言った。・・・もう、この場は混沌と化となっているよ。

 

「一誠、祭りに向けてメンバーを集めているんだろう?なら、私とアーサー、と曹操、ジーク、

ゲオルクとレオナルドをメンバーに入れてくれ、実力と能力は申し分ないよ」

 

ヴァーリの言葉に一瞬だけ頭が真っ白になった。

そう言えば、さっきも力になりたいとか言ってたよな。・・・・・でもな、

 

『はぁっ!?』

 

改めて俺たちは驚くよヴァーリ。

 

「お前・・・・・正気で言っているのか?」

 

「『どこぞのテロリストも参加を認める』と、兵藤家現当主は言ったじゃないか。大丈夫だ。

祭りに参加している間、私たちは危害を加えない。―――なんなら」

 

何時の間にか持っていた首輪を俺に突き出すヴァーリ。

・・・・・嫌な予感。と、彼女と首輪を交互に見ていたら―――。

 

「一誠、これを私の首に嵌めてくれ。そして祭りまでの間、私はお前の性処理として―――」

 

「ごめんなさい。分かったから、それだけは勘弁してくれ」

 

一秒も掛からず俺は土下座をした。

 

『はやっ!?』

 

周りから突っ込まれるがな!

 

「当然だろ!?幼馴染相手にそんなことできるか!

こいつ、言ったことを必ずやり通すんだぞ!?」

 

周りの皆に逆切れして言うと、イリナが思い出したかのように呟いた。

 

「・・・・・そう言えば、ヴァーリって意外と頑固だったわね」

 

「そういや・・・・・そうだったな」

 

ヴァーリと同じ幼馴染であるイリナや心当たりがあるのかアザゼルも納得した。

 

「・・・しょうがない。祭りの間、俺はこちらの監視をしてやる。兵藤一誠、お前はヴァーリだ」

 

曹操たちはアザゼル。俺はヴァーリたちを監視役か・・・・・まあ、いいか。

 

「い、一誠・・・・・本当に彼らもメンバーに?」

 

「まあ・・・神滅具(ロンギヌス)の所有者だし、敵であるこいつ等の情報も得れるから」

 

俺もどうかと思うが・・・・・こいつ等の力を借りて優勝したい自分がいる。

 

「不謹慎だが、俺は嬉しいぜ。神滅具(ロンギヌス)の殆どが一ヶ所に集まっているんだからな!」

 

「アザゼル、あなたと言う人は・・・・・」

 

子供のようにキラキラと目を輝かせるアザゼルに嘆息するミカエル。

 

「えっと・・・・・残り1人は空いていますが・・・・・どうします?」

 

「一誠と僕と龍牙、カリンを候補に入れて・・・後は真羅先輩と成神、サイラオーグ先輩、

デュリオさんと幾瀬さん、ヴァーリにアーサー、

曹操とジーク、ゲオルグ、レオナルド・・・うん、あと一人だ」

 

もう十分過ぎるほど、強者揃いなんだけど・・・・・まだ必要なのか?

 

「俺から一人、いいか?」

 

「曹操?誰だ?」

 

挙手する曹操。心当たりの奴がいるのか?

 

「―――彼女だ」

 

とある人物に指した。俺はその指された人物に視線で追えば―――、

 

「・・・・・私?」

 

曹操が指す人物。―――葉桜清楚だった。はっ?彼女・・・?曹操、どういうつもりだ?

俺が怪訝な顔で清楚に指すあいつを見ていると、曹操は告げた。

 

「彼女は西楚の覇王・項羽の魂を受け継ぐ英雄なんだ」

 

―――っ!?

 

な、なんだと・・・・・!?秦末期の楚の武将で劉那と戦いの破れた有名な人物じゃないか!

その武将の魂を受け継いでいるのが・・・・・葉桜清楚だと・・・・・!?彼女を見ると

彼女自身も唖然として言葉を失っていた。

 

「私が・・・・・項羽の魂を受け継いだ人間・・・・・?」

 

「その通りだ先輩。俺の先祖である曹操より生まれる遥か前に劉那と戦い敗れた武将の魂を

受け継ぐ存在だ。いずれ、あなたを『英雄派』に勧誘する予定だった」

 

「っ!?」

 

曹操の言葉に清楚は俺の背後に回って隠れた。

 

「彼女は鍛え上げれば強くなるよ。俺は断言する」

 

「・・・・・強くなれるの?弱い私が」

 

「弱い英雄なんていやしない。あなたがその気になれば強くなれるよ?

兵藤一誠を守れるぐらいにね」

 

嘘・・・・・言ってなさそうだな。その上、気になったことがようやく解消した。

それならば納得できる。彼女の身体能力とかな。

 

「項羽・・・・・調べてみる価値がありそうだな」

 

「うん、私もそう思う」

 

なら、一緒に調べようと清楚と約束した。

 

「さて、残るのはチーム名だな」

 

「んじゃ、俺が決めていいか?」

 

「変な名前だったら縛るからな?」

 

ビシッ!と縄を見せ付ければ、首が千切れんばかり縦に振ったアザゼル。

 

「ま、まあ、そのまんまな名前だ。―――ロンギヌス。

お前ら殆どが神滅具(ロンギヌス)所有者の集まりだからな。

人間や悪魔、堕天使に属する人間、天界、教会に属する人間が神滅具(ロンギヌス)を所有している。

こんなこと、神器(セイクリッド・ギア)が作られて以来、初めてのことだ」

 

ロンギヌス・・・・・か。

 

「皆どうだ?」

 

メンバーに問えば、首を縦に振りだした。異論はないとばかりに。

 

「んじゃ、決定」

 

「・・・・・助かったぜ」

 

「縛られるだけで何を恐れているのですか?」

 

「じゃあ、お前は縛られろ。絶対に堕天するぞ」

 

ん?ミカエルが所望なのかな?縄を見せ付ければ、ミカエルは首を横に振った。

 

「いえ、遠慮しましょう」

 

「残念。―――堕天し甲斐があったのに・・・・・」

 

「あなたは恐ろしい人ですね・・・・・」

 

珍しく冷や汗を流したミカエルだった。そうか?基本的に優しいんだけどな。

 

「で、アザゼルはここに泊んの?」

 

「ああ、悪いがそうさせてもらうぜ」

 

「別に良いさ。さーて、赤龍帝くん」

 

「な、なんだよ・・・・・」

 

シュバッ!

 

「・・・・・へ?」

 

「お前は弱いからなー。特別な部屋でお前をみっちり調教―――じゃなかった鍛えてやる」

 

一瞬で成神一成を亀甲縛りに縛ってやった。

 

「おおおおおおおおおおおおおおい!?いま、調教ってハッキリ言ったよなゴラァ!?

言い直し切れてすらいなかったぞぉ!」

 

ん、そうだったけ?まあ、気にすんな。

 

「黙って引きずられろ。現実世界が一時間過ぎている頃には、十日間過ぎている特別な異空間で

お前を弄ぶ―――じゃない、鍛えてやる」

 

「ぶ、部長ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!ヘルプ・ミィィィィィィィ!

俺、殺されちゃううううううううううっ!」

 

「うるさい」

 

「あふん!」

 

縄を引っ張って黙らす。

 

「おら、ロンギヌスチームも来い。特訓するぞ。祭りまで時間は有限なんだからな」

 

『りょ、了解・・・・・』

 

逆らえないと感じたのか、黙って俺に着いてくる面々であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・アザゼル、彼は怖いですね」

 

「俺の中で絶対に怒らせたくない奴ワーストワンだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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