ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode9

 

ヴァーリが去り、学校に現れた魔術師たちはあらかた、アジ・ダハーカの腹の中に収まった。

 

「少しは満足したか?」

 

『神と魔王、堕天使の親玉も戦えれば満足だ』

 

「うん、ダメだからな」

 

まだまだ満足し足りなかったようだった。聞いた俺がバカだったかもしれない。

 

ザッ・・・・・。

 

「―――兵藤一誠くん」

 

「ん?」

 

呼ばれて振り向くと、皆がいた。

 

「これは、どういうことなのですか?」

 

「どうとは?」

 

ミカエルの問いに分からないと首を傾げた。

 

「邪龍のことです。『魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)』アジ・ダハーカ。

太古の昔に退治されたと聞き及んでいました。

なのになぜ、あなたが邪龍を召喚することができたのかと聞いているのです」

 

「別に、アジ・ダハーカは退治されていなかったぞ。

封印されているところ俺が解いて、迎え入れた」

 

『その前に兵藤一誠と戦って、滅ぼされる寸前で倒されたがな』

 

「あの力じゃないと、お前に勝てないんだよ。勝ったとは思えないけどよ」

 

昔のことを思い出し、苦笑を浮かべる。

 

「あの力・・・・・?何のことだ?」

 

「教える気はないよ。いくら父さんと母さんの友達だからと言ってそれとこれは別の話しだ。

俺はまだ、信用と信頼をしていない。俺を―――父さんと母さんの子供と認識するまではな」

 

「・・・・・何言っているんだ?」

 

「俺は俺だ。兵藤一誠だ。兵藤誠と兵藤一香の子供と、

あの二人の子供だからと優遇されても嬉しくはない」

 

皆が沈黙した。

 

「確かに俺はあの二人の子供だ。でも、いつまでもあの二人の子供だからと接せられると、

嫌で堪らないんだ。俺を俺として見てくれないなんて、嫌悪感を抱く。だから―――――」

 

俺の周囲に巨大な様々な色の魔方陣が出てくる。

 

「俺はグレートレッドとオーフィス、このドラゴンたちと名を轟かせてみたい」

 

『っ―――!?』

 

アジ・ダハーカとオーフィスを含め、八体のドラゴンが出現する。

 

「こ、こいつらは・・・・・!」

 

「バカな・・・・・他にも邪龍の筆頭格のドラゴンまでいるとは・・・・・!?」

 

皆が驚くがどうでもいいと思った。こんなんじゃ、俺を俺として見てくれない。

 

「一誠くん・・・・・キミは一体・・・・・」

 

「兵藤一誠、邪龍や伝説のドラゴンを宿す人間だ。それ以上でも以下でもないよ」

 

指を弾き、皆を俺の中に戻す。

 

「それじゃ、俺は帰らせてもらう。皆、帰るぞ」

 

オーフィスを手招いて、肩に乗っからせる。青白い六対十二枚の翼を展開して、宙に―――。

 

「待て」

 

ここにきて、今まで黙っていた男が口を開いた。

 

「・・・・・なんだ?」

 

兵藤源氏、その男が近づいてくる。

 

「・・・・・」

 

運んでいた足が俺の前に停まった。

 

「一誠よ。お前は兵藤家に戻るつもりはないか?」

 

「・・・・・なんだと?」

 

「誠と一香が死に、お前はどんな生き方をしたのか分からないが、

お前の潜在能力は凄まじいようだ」

 

「・・・・・」

 

何を言いたいんだ?と怪訝に思っていると、兵藤家当主の妻が近づいてきて口が開いた。

 

「当主が言いたいのは、あなたは兵藤家次期当主になれる可能性を秘めた器だと仰りたいのです」

 

「・・・俺が、兵藤家の当主・・・・・?」

 

「ええ、そうよ。兵藤家に戻れば正式に修行だってできるし、あなたはより強くなれる。

あなたと同い年の子たちも強いわ。あなたの戦いぶりを見てあなた自身も

悪魔で例えれば、最上級悪魔並みに強いと確信しました」

 

コカビエルも似たようなことを言っていたな。

 

「それにあの子たちの婚約を決めないといけないのです」

 

「・・・・・あの子たち?」

 

「覚えていますか?悠璃と楼羅、二人の少女を」

 

「っ!?」

 

久しく聞いた懐かしい名の少女たち。あの二人が結婚・・・・・・?

 

「あなたは今まで知らなかったでしょう。あの二人は人王の姫なのです」

 

「人王の・・・・・姫?」

 

『冥界の魔王の娘、天界の神王の娘、そんで、

この人間界の王の娘と結ばれば、三世界の王となれるんだぜ?』

 

―――っ!

 

数ヵ月前、俺を眷属悪魔にしようとした悪魔の言葉が脳裏に過った。

そうか、人王という存在は―――兵藤家のことだったのか・・・!

 

「あの子たちと結ばれた瞬間、人間界の王として君臨するのです。

それは兵藤家だけじゃなく、他の者でも可能です」

 

「な・・・・・っ!?」

 

「人王になるための儀式ともいえる戦いは夏に行われる予定です。

テレビにも放送されますでしょうし、もしあなたが人王になりたいのであれば、

参戦してください。ルールは後に全世界に知らせます」

 

「兵藤家の者として、参加するのだぞ一誠」

 

兵藤源氏がポンと俺の頭に手を置いた。

 

「・・・・・大きくなったものだな。あんな弱虫だった頃のお前と比べるとえらい違いだ」

 

「・・・・・」

 

「では、帰るとしよう。和馬よ、送ってくれ」

 

「分かりました。それじゃ和樹、一誠くんをサポートするんだぞ」

 

それだけ言い残して兵藤家と式森家の面々は、

足元に出現した魔方陣の光と共に姿を消したのだった。

 

「・・・・・」

 

踵を返して、翼を動かして空へ飛翔する。

 

―――○●○―――

 

―――数日後。

 

「・・・・・で、どうしてお前がここにいるんだ」

 

「なーに、俺はこの学校の教師として務めることになったんだ。

挨拶とばかりお前に会いに来たのさ、兵藤一誠」

 

放課後、教室に入ってきた一人の教師に、俺たちは驚いた。

なんせ、相手は堕天使の総督アザゼル。着崩したスーツ姿で登場した男に怪訝な顔で問えば、

教師になっただと?

 

「オカルト研究部顧問の先生としてな。だからお前らも、よろしく頼むぜ」

 

『はぁ・・・・・』

 

なんともいえない返事で返す俺たち。

 

「さーて、兵藤一誠」

 

「なんだよ・・・・・しかもその気持ち悪い笑みは止めろ」

 

「気持ち悪いは余計だ。お前さんをちーとばかし調べさせてほしいんだわ。

特に神器(セイクリッド・ギア)をよ」

 

ニヤリと笑みを浮かべ、片手に小型の魔方陣を展開する怪しい中年男性。

 

「一香の神滅具(ロンギヌス)を受け継いだと聞いたんだが、

青白くなっている理由が知りたくてしょうがないんだ。少しばかり展開して見せてくれよ。

あと、新種の神滅具(ロンギヌス)の方もな」

 

「・・・・・あんた、もしかして神器(セイクリッド・ギア)マニアか?」

 

「おうよ、そんでもって人工の神器(セイクリッド・ギア)も作っているんだぜ」

 

人工の?それは凄いな。

 

「まあ、俺も気になっていたし・・・・・少しだけだぞ」

 

バサッ!と青白い翼を十二枚展開して大天使化になった。

 

「んじゃ、調べさせてもらうぜ♪」

 

なんか、嬉しそうに言うアザゼルだった、

 

「・・・・・んー、なるほどな。こいつは珍しいな」

 

しばらくして、アザゼルが小型の魔方陣を消した。どうやら何か分かったようだ。

 

「この神器(セイクリッド・ギア)、通常より強い亜種になっているぞ」

 

「亜種?この翼が?」

 

「ああ、俺も見るのが初めてだ。この神器(セイクリッド・ギア)の亜種版はよ」

 

ふーん、亜種に変化したのか・・・・・。

 

「一つ聞くが、お前は禁手(バランス・ブレイカー)状態でどれぐらい戦える?」

 

アザゼルの問いかけに俺は答える。

 

「個々によって違うが、最低でも三ヶ月は保てる。

使い慣れている『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』なら一年は保てる」

 

「さすがと言うべきか。そんで、使い方は分かってんのか?」

 

「父さんと母さんの神器(セイクリッド・ギア)の本来の使い方とは全く違うと思うけど、

色々と模索している。他の神滅具(ロンギヌス)もな」

 

「・・・こりゃ、俺が鍛える必要はなさそうだな」

 

「いまさらいらない世話をされてもな」

 

肩を竦める。

 

「・・・・・もしかしたら、お前を狙って襲いかかる輩が出てくる可能性もありそうだな」

 

「その時は必ず殺してやる」

 

「殺すな。俺たちにとってもあいつを捕えたいんだよ」

 

「関係ない。俺はそう思って今まで生きていたんだ」

 

アザゼルは徐に「はぁ・・・・・」と深い溜息を吐きだした。

 

「復讐してもなんにもならんぞ」

 

「理解している上でだ」

 

翼を仕舞いながら言う。

 

「・・・・・そうかよ。まあ、お前がそう言うんなら止めやしねえ」

 

呆れ顔で嘆息するアザゼルは俺を見詰める。

 

「だが、復讐の権化と化だけはなるなよ。

お前を止めるのに魔王全員でやらないとダメっぽそうだからな」

 

「保険として神も予約しておいた方がいいんじゃないか?俺、止まる気はないからさ」

 

「・・・・・ダメだこいつ、何とかしないと」

 

頭を抱えるアザゼル。失礼な、俺は言ったことを本気でやる方なんだ。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・清楚?」

 

「ダメ・・・・・だからね?」

 

「は?」

 

「・・・・・」

 

むー、と俺を睨むように見詰めてくる清楚。

 

「いや・・・・・清楚?」

 

「・・・・・」

 

「えー・・・・・」

 

―――数分後、

 

「努力するから、その訴えるような目を止めてくれ・・・・・」

 

とうとう俺が折れた。

 

「約束だよ・・・・・?」

 

「・・・・・努力する」

 

「ダメ、絶対にならないで」

 

「・・・・・」

 

清楚・・・・・お前はなんだそこまで俺のことを・・・・・。

 

「くくく、お前でも女には敵わないってことか。こいつはいい」

 

「・・・・・何が可笑しいのかな?」

 

ビシッ!

 

どこからともかく取り出した縄を思いっきり引っ張って強度を確かめた。

そんな俺にアザゼルが後ずさった。

 

「ちょ、おまっ、その縄を一体何に使うつもりだ!?」

 

「んー、調子に乗っているどっかの堕天使でも縛ろうかなって」

 

「じょ、冗談じゃねっ!?」

 

ダッ!とアザゼルが青ざめた顔で教室からいなくなった。

おいおい・・・・・逃げたら―――追いかけたくなるだろう?

 

「あはははー♪待てー♪」

 

俺もアザゼルを追い掛ける。ターゲットは・・・・・もう下か。

ふふふっ・・・・・・。足元に穴を広げて俺は穴の中に落ちる。

 

「みぃーつけた」

 

「んなっ!?」

 

「はっ!」

 

縄を放った。狙い違わず、アザゼルの体に巻き付いた―――が、

 

「縛られてたまるか!」

 

六対十二枚の黒い翼を展開して、縄を無残に切り裂いた。

 

「へぇ・・・・・抵抗するんだ?」

 

「当たり前だ!お前、あの後のカトレアがどうなったか知らないだろう!」

 

あの後のカテレア?それは知りたいな。

 

「ルシファーたちは困惑しているぞ。

カテレア・レヴィアタンが全身に縄を縛られたまま・・・・・」

 

そう言いかけたあいつは、途端に体を震わせた。

 

「いや、これ以上は言えねえ。俺もあんまり言いたくもない」

 

「―――へぇ?」

 

なんか、面白いことを聞いたな。

それじゃ、目の前の堕天使を縛ったらカテレア・レヴィアタンの二の舞となって見られるのかな?

 

「全力でお前を捕まえよう」

 

「何故だっ!?」

 

絶句すアザゼルを余所に幾重の魔方陣を展開して、縄を出す。

 

「そうだ、そんで朱乃と一緒に模索しよう。うん、それがいいな」

 

笑みを浮かべ、頷くと、

 

「何をやっているんだね?」

 

第三者の声。振り向けばサーゼクス・グレモリーがいた。

 

「サ、サーゼクス!良いところに来た!こいつを止めてくれ!」

 

「アザゼル?何を・・・・・」

 

と、俺と幾重の魔方陣から出ている縄を見たサーゼクス・グレモリー。

 

「・・・・・」

 

サーゼクス・グレモリーはこの光景を眺めて「ふむ」と漏らしたかと思えば、

アザゼルに顔を向けた。―――笑顔で、

 

「なんだ?」

 

「教師たるものの。生徒と交流をするのも大切なことだ。―――頑張りたまえ」

 

足元に赤い魔方陣を展開してサーゼクス・グレモリーは姿を消した。

 

「「・・・・・」」

 

あいつ、逃げたな・・・・・。きっとアザゼルも心の中で思っただろう―――。

 

「さてと、狩りを始めようか」

 

嬉々と笑みを浮かべて俺は―――アザゼルに飛びかかった。

 

 

 


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