ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode7

 

 

―――清楚side

 

「よいしょっと」

 

一誠くんの家に住むことが決まってあれから少しずつ、身支度をしていた私だけど、

今日で何とか終わった。額に浮かんでいる汗を腕で拭いで、一息吐くと、

 

「これで全部か?」

 

私の後ろから声を掛けてくる男の子。「うん」と頷いて後ろに振り返る。

 

「ありがとうね。手伝ってくれたから早く終わったよ」

 

「なに、気にするなよ。寧ろ・・・・・」

 

「寧ろ?」

 

「清楚の部屋に来られて俺は嬉しかったよ」

 

そう言って微笑む男の子。私は今になっていままでこの家に入らせた人は家族以外、

彼が初めてだと気付いた。恥ずかしく感じ始め、顔が熱くなったのが分かった。

 

「もう・・・・・恥ずかしいことを言わないでよ・・・・・」

 

「ははは、悪いな」

 

そう言っても彼は微笑む。そんな彼の顔を見ていると安心感がする。

 

「(彼と、一誠くんと出会ってもう数ヵ月になるんだね)」

 

色々とあった。笑うこともあれば楽しいこともあった。辛いこともあれば悲しいこともあった。

 

「(そして、私は異性に恋した・・・・・)」

 

私の初恋の人、兵藤一誠くん。私の部屋に、私の目の前にいる彼こそが私の初恋の相手。

 

「少し、休憩にするか」

 

「うん、そうだね」

 

一誠くんの提案に私は了承した。彼が先に腰を下ろすとその背中に合わせるようにして

私は腰を下ろした。

 

「ん?」

 

「少しだけ背中を貸して?」

 

「ああ、いいぞ。俺も背中を借りる」

 

私の背中に重みが増した。私の背中に寄り掛かっているんだ。

いまこの瞬間、私は彼と二人きり・・・。

 

「(ふふ♪)」

 

嬉しい。こうして二人きりでいることは滅多にないからね。

時間が許す限り、一誠くんと一緒に・・・。

 

「・・・・・なあ、清楚」

 

「なぁに?」

 

「清楚と出会って数ヵ月が経つな」

 

―――一誠くん。一誠くんも私と同じ考えを・・・・・。

 

「うん、そうだね。一誠くんが来てから学校はもっとにぎやかになったよ」

 

「ああ、良い意味と悪い意味が同時にな」

 

疲れたとばかり溜息を吐く一誠くん。きっと悪い意味の方を思い浮かんで息を吐いたと思う。

毎日、毎日追いかけられているもん。カリンちゃんも風紀員長として、

お仕事が大変だってたまに聞くしね。

 

「両親には言ってあるのか?」

 

「うん、寮に移り住むって言っているよ。

流石にクラスメートの家で同棲するって言ったら、驚いて海外から帰ってきそうだし」

 

「ははは、そうだな」

 

朗らかに笑い声を発する彼。ただの雑談だけど、この瞬間こそがとても大事で、

のんびりと彼と過ごせる時間がとても幸せ。

 

「ねぇ、一誠くん」

 

「なんだ?」

 

「私は一誠くんがどんな人でも一誠くんだと受け入れるよ」

 

言った瞬間。一誠くんが静かになった。

 

「急に、どうしたんだ?」

 

「ううん、なんとなく言ってみたの。一誠くんって色々と凄いし

、恰好好いし、皆に頼りにされて、モテているんだもの」

 

「モテる?俺が?女子生徒と話したことがあるのは清楚とカリン、リーラ、イリナとゼノヴィアに

シアとネリネ、リコリス、リアス・グレモリーとソーナ・シトリー、

学校外だったら桜ぐらい・・・・・・ああ、モテているな、俺って」

 

「今頃気付いたの?」

 

「友達感覚で付き合っていたからな」

 

ははは、と渇いた笑い声が後ろから聞こえる。

そっか、まだ一誠くんの中で私のことは友達だと認識しているんだね。

 

「その中で一誠くんは好きな人がいるの?」

 

「・・・・・」

 

あれ、黙っちゃった。いるのかな・・・・・。ちょっと訊いて後悔したかも。

 

「・・・・・最低な発言していいか?」

 

「・・・・・はい?」

 

「まあ、訊いてくれ。俺は俺を好きだと好意を寄せる異性に愛する気持ちでいるんだ」

 

「・・・・・え?」

 

「それも何人もだ。ほら、天界に移り住めば一夫多妻制が可能だと教科書に載ってあるだろう?

もし将来、俺に好意を寄せる複数の異性ができたら俺は天界で住もうと考えているんだ。

そこで幸せになりたいんだ俺は。これが俺の本音だ」

 

一誠くん・・・・・。

 

「まあ、その前に俺がやるべきことがやり遂げてからの話になるだろうな」

 

「―――――っ」

 

彼がやるべきこと・・・・・一誠くんの両親を殺したという三人の悪魔と堕天使に復讐すること。

 

「・・・・・復讐して死ぬなんてこと、ないよね・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「私、嫌だよ?復讐して一誠くんが死ぬなんて・・・・・絶対に嫌」

 

徐に彼から離れて、それから彼の背に抱きつく。

 

「お願い、一誠くんを想う人たちを残して死なないで・・・・・お願い」

 

「・・・・・その願い、清楚も入っているのか?」

 

「―――――当然だよ、バカ」

 

ギュッと腕に力を籠めお仕置きとばかり絞める。すると・・・私の腕に何度も叩きだす一誠くん。

 

「ちょ、清楚・・・・・」

 

「なによ・・・・・」

 

「く、苦しい・・・・」

 

・・・・・あっ、

 

「ご、ごめんなさい」

 

私の腕が一誠くんの首を絞めていたのを気付き、慌てて力を緩んだ。

 

「だ、大丈夫・・・・・?」

 

「ああ・・・・・本当に力が強いんだな。一瞬、三途の川と花畑が見えたぞ」

 

「うっ・・・・・」

 

そ、そんな幻覚を見ちゃうなんて・・・・・危うく私は初恋の人を殺すところだった。

洒落にもなんないよ。笑い話じゃなくなるよ。

 

「さて・・・・・そろそろ移動しようか」

 

一誠くんがそう言った瞬間、一ヶ所に集めた私の私生活用品が入った段ボールと私たちの下に

魔方陣が展開した。

 

「ようこそ、清楚。俺たちの家に」

 

「はい、これからよろしくね。一誠くん」

 

「ああ、よろしくな」

 

光が眩しくなる頃に私の視界は白く染まった―――。

 

―――○●○―――

 

一誠side

 

よし、これで全部終わった。清楚、龍牙、そして和樹の移住の準備は終えて

リビングキッチンに赴いた。

 

「あっ、リーラ」

 

「一誠さま、丁度良かったです。彼女をこの家の案内をしていたのです」

 

リーラの隣に見知らぬ眼鏡を掛けた銀髪の女性がいた。あのメイドが和樹の専属のメイドであり、

リーラと上級家政学校にいた人か。

 

「初めまして、兵藤一誠だ。よろしくな」

 

「シンシア・フロストでございます。和樹さまの専属メイドでございます。この度、

この家にお住まいさせてもらいありがたく存じます。

このシンシア、和樹さま同様に兵藤さまの―――」

 

「ああ、いいよ。俺の世話はリーラにしてもらうから」

 

言いたいことが先に分かったので、遮って拒否した。

すると、彼女の眉が一瞬だけ動いた。ムカついたな。この人、

 

「キミが俺まで世話してもらったら和樹に嫉妬されちゃいそうだ。

『僕の専属メイドに世話してもらえるなんてどんな気分だい?』とかさ」

 

「・・・・・ですが・・・・・」

 

「この家は俺たちの家だけど、この家に住む限り皆家族当然だ。

だからさ、シンシアは和樹の専属メイドなんだから和樹の身の回りの世話をして欲しい」

 

「・・・・・」

 

「それに何となくだけど、和樹のこと好きでしょ?」

 

彼女にそう問うてみた。しばらくして・・・・・恥ずかしそうに、

シンシア・フロストが俺から視線を逸らした。おやおや・・・・・。

 

「ふふっ、なるほどな。俺と和樹は似た者同士のようだ」

 

「・・・・・と、言うと?」

 

「俺もリーラのことが好きなんだ。異性として、メイドとしてね」

 

「ありがたきお言葉です。一誠さま」

 

リーラ、当然のことじゃないか。主を想うメイドに俺も想いを応えないとな。

 

「それじゃ、リーラ。彼女の家の案内をよろしくね」

 

そう言って彼女の頬に軽く押し付けた。

 

「い、一誠さま・・・!」

 

「ははは、じゃあね」

 

羞恥で顔を赤くしたリーラから逃げるように、俺はリビングキッチンへと向かった。

 

「・・・・・」

 

中に入れば、プリムラがソファーに座ってジッと電源が付いたままのテレビを見ていた。

膝には猫になっている銀華の姿がいる。

 

「プリムラ、面白いか?」

 

「・・・・・分からない」

 

・・・・・感情が疎いプリムラにはまだ分からないか・・・・・

。隣に座って紫色の髪を撫でるとこっちに顔を向けてきた。

 

「いま、幸せか?」

 

「・・・・・」

 

無言になった。これも分からないか?と思っているとプリムラが口を開いた。

 

「・・・・・分からない。でも、イッセーや皆がいるとここが熱くなる」

 

胸に手で触れて告げるプリムラ。・・・・・そうか、

 

「嫌な感じか?」

 

「・・・・・」

 

俺の問いに首を横に振った。なら、それでいいんだ。

 

「その感じがいつか分かる時が来るだろう。プリムラ、いまは今を生きよう」

 

「・・・・・今を生きる?」

 

「ああ、そうだ。今を生きれたら明日も生きれる。楽しいことも悲しいことも、

辛いことがあるだろうけど、それを受け止めてこそ、人は生きるという実感を得るんだ」

 

この言葉が届くかどうか分からないが、言わないよりはマシだ。

 

「プリムラも生きているんだ。だから、もっと楽しいことや面白いことをして、

それから色んなことを学んで人に役に立つことや喜んでもらうこともして

明日に向かって生きてくれ」

 

それが俺の願いだと付け加えて言った。

 

「・・・・・分かった」

 

「よし、良い子だ」

 

優しく抱きしめてしばらく、プリムラから離れてトレーニングルームへと赴く。

二階に上がる階段の裏に存在するエレベータに乗り、地下へと降りる。数十秒ぐらいか、

エレベータが停止し扉が開いた。

 

ドッゴオオオオオオオオオン!

 

激しい爆音が俺を出迎えた。

 

「おーおー、やってるな」

 

天井の方を見上げれば、金色の全身鎧を着た一人と宙に浮く一人が激しく戦っていた。

神城龍牙と式森和樹だ。うーん、見ていると二人は強いな。

和樹は幾重の魔法を弾幕のように放って龍牙に攻撃し、

向かってくる魔法を神速の速度で回避しながら和樹に迫る龍牙。

 

「邪魔したら野暮そうだな」

 

踵を返して俺はまたエレベーターに乗り込んで家に戻った。

 

「部屋でのんびりでもするか」

 

エレベータから降りて開口一番に呟く。

レッドカーペットが敷かれた二階に上がるための階段に登って真っ直ぐ廊下を歩く。

右の角に曲がって歩を進めば俺の部屋がある。自分の部屋の扉に辿り着き、扉を開け放った。

 

「・・・・・」

 

中に入った瞬間、俺のベッドを占領する小さな存在がいた。オーフィスだ。

 

「ん、イッセー、来た」

 

「なにしているんだ?」

 

「何もしてない、我、ここにいただけ」

 

「そうか」と呟き、本棚から一つの本を取り出してベッドに寝転がる。

 

「ガイアは?」

 

「次元の狭間、泳いでいる」

 

「オーフィスも行けば良かったのに」

 

「我、次元の狭間同様にここで静寂を得る」

 

なんとまあ、ボッチ的な発言をするな。

 

「オーフィスは楽しいか?」

 

「楽しい・・・・・?」

 

「あー、分からないか。うーん、この家にいて笑うことができるか?」

 

そう尋ねるとオーフィスは首を傾げる。

 

「我、人間の感情、よく分からない」

 

プリムラ同様、感情に疎いな・・・・・・。

 

「でも、これは分かる」

 

「ん?」

 

心の中で苦笑を浮かべる俺に「なにがだ?」と思い、オーフィスを見詰めていると、

寝転がる俺に跨って、覆い被さってきた。

 

「我、イッセーと家族」

 

「・・・・・」

 

ジィとオーフィスの黒い瞳は俺の瞳を見据える。その瞳に感情の色が無い。

ただ純粋に俺を見ていることが何となくわかる。笑みを浮かべ、言った。

 

「ああ、俺とオーフィスは家族だ」

 

「ん、我とイッセーは家族」

 

彼女の黒い髪を撫でると、オーフィスは気持ち良さそうに目を瞑る。まるで猫のようだ。

 

「寝るか?」

 

「寝る、このまま」

 

「そっか、それじゃおやすみ」

 

コクリとオーフィスは頷き、俺の胸の上で瞑目したスヤスヤと眠りだした。

その姿に愛くるしくて俺はずっと俺が眠たくなるまでオーフィスの頭を撫で続けたのだった。

 

 


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