ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode4

 

 

『ねぇ、イッセー。プールに行かない?』

 

「無理、人間界の存亡が掛かっているのにプールに行けれるか。シアが赤点三つ取ったら

神王が暴れ出しかねないんだぞ」

 

翌日、リビングキッチンで昨日のメンバーと勉強会をしている時にリアス・グレモリーから

プールの誘いの連絡が届いた。って、プールかよ。余裕でいいね。

こっちは神王の暴走を防ぐためにも勉強会だぞ。

 

『赤点二つまでなら大丈夫のはずよ?』

 

「天界のイメージが暴落しても知らんぞ」

 

『・・・・・それは・・・・・なんとなかるんじゃない?』

 

「『犬の遠吠え』の意味は?」

 

突然の問題に彼女は直ぐに答えてくれた。

 

『弱い犬が相手から遠く離れたところで、尻込みしながら吠え立てることから。

主に、勝ち目のない相手を陰でののしることのたとえとして使われる・・・・・よね?』

 

「シアの場合『犬が山で吠えるから鳴き声がよく聞こえる』って言い出したんだぞ」

 

そう告げるとリアス・グレモリーからの声が聞こえなくなった。

電話の向こうでは、脳裏に手を額に当てているイメージが沸く。

 

『・・・・・ごめんなさい。私の軽率だったわ』

 

「誘ってくれるのはありがたいが、こっちもこっちで忙しい。また今度な」

 

『ええ・・・・・』

 

通信を切り、テーブルに置いた。さて・・・・・。

 

「「「・・・・・」」」

 

燃え尽きた、とばかりのこの三人をどうしようかなぁ・・・・・。

 

「あ、頭が・・・・・」

 

「もうパンパンよぉ・・・・・」

 

「うぇーん・・・・・わからないよぉ・・・・・」

 

ゼノヴィアとイリナ、リシアンサスが頭を抱えて意気消沈状態・・・・・。

 

「・・・流石に、これ以上勉強漬けだと身に入らないようですね」

 

「朝からやって数時間だもん。流石に疲れると思うよ」

 

「しばらく休憩にしたほうがいいかも。一誠くん、どうかな?」

 

まあ、皆の言う通りだな。一理あるし・・・・・ここらへんで休憩にするか。

 

「んじゃ、休憩するか」

 

「はい!私、学校のプールに行きたいっす!」

 

さっき断わったばっかりなんですけど!?

 

「お、お前な・・・・・」

 

「だって、リアスちゃんが羨ましいもん!」

 

「・・・・・お前らは?」

 

「うーん、水着なんて用意していないから」

 

「そうだね、あるとすれば学校の姉弟の水着だし・・・・・」

 

あー、こいつらも水着があればいくということか。

 

「リーラ」

 

「すでにご用意しております」

 

流石、と言うべきだ。呼びかければ、何時の間にかハンガーに掛かっている多種の男女の

水着があった。

 

「い、何時の間に・・・・・」

 

「サイズはどれも揃えてございます。まだ未使用なので自分の水着として着用しても構いません」

 

「いいのですか?」

 

「はい、構いません」

 

うん、用意周到と念には念をだ。用意した甲斐があったもんだ。皆が立ち上がり、

水着に群がる光景に俺は携帯を操作する。・・・・・出るか?―――しばらくして、

 

『もしもし、イッセー?』

 

繋がった。

 

「ああ、急に悪い。さっきの話しを撤回だ」

 

『え?』

 

「俺たちも学校のプールに行く。いいか?」

 

『・・・・・ふふ、ええ、いいわ。待っているわよ?』

 

快諾したリアス・グレモリーの顔は微笑んだと俺は感じた。

それから待ち合わせを決めて、通信を切った。

 

「お前ら、話は着いた。行くぞ」

 

―――駒王学園Inプール

 

「誘ってくれてありがとうな」

 

「これぐらいは当然よ」

 

学校のプールの入り口でリアス・グレモリーと合流を果たす。

 

「さ、皆中に入って。先に皆が入っているから」

 

「ああ、そうさせてもらう。家で水着を着てきた。直ぐにプールへ直行できるからな」

 

「そう・・・・・ところでイッセー?その猫と、その子は誰なのかしら?」

 

ああ、こいつらか・・・・・。俺の方に乗っかっているオーフィスと、

俺の頭に乗っている猫化の銀華。そりゃ、気になるわけだ。

「二人とも、自己紹介だ」と一匹と一人に催促する。

 

「我、オーフィス」

 

「銀華にゃん」

 

一人と一匹が挙手して名乗った。うん、よろしい。

 

「・・・・・イッセー、いま・・・オーフィスって名乗らなかったかしらその子」

 

「正式名称『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスでございます」

 

「・・・・・もう、あなたには驚かされてばかりだわ。

あなたは本当にドラゴンに好かれるタイプのようね」

 

「自慢の一つになるかもしれないな」

 

笑みを浮かべると、リアス・グレモリーは溜息を吐いた。

 

「それで銀華って猫の妖怪なのかしら?」

 

「ああ、それも猫魈だ」

 

「・・・・・そう」

 

途端に、彼女の表情に曇りが・・・・・。小猫のことを思っているのかな?

リアス・グレモリーは小さく息を吐き、気を取り直して俺たちを更衣室へと案内してくれた。

俺と和樹、龍牙は下に水着を履いているのでただ脱ぐだけだ。

そんな時だった、和樹が俺の体を見て口を開いた。

 

「家でもそうだったけど、一誠の体って傷だらけだね」

 

「・・・・・修行が厳しかったんだ」

 

ホロリと思わず涙を流した。ああ、あれはマジで死を見たんだ。流石は地獄こと冥界だ。

リアルで三途の川を何度も見たぞ。

 

「ごめん、物凄く罪悪感が感じた」

 

「泣くほど辛い修行をしてきたんですね・・・・・」

 

申し訳なさそうな表情をする和樹と、同情の眼差しを送る龍牙。

 

「でも、傷跡を消さないの?できるんでしょ?」

 

「自分への戒めだ。この傷を見て油断しないように、過信しないようにしているんだよ」

 

「そういうことですか・・・・・」

 

着替えをロッカーの中に仕舞い外へと赴くためにドアを開く。

そしたら、一人の男子と出くわした。

 

「ん、って、兵藤!?」

 

「ああ、成神か」

 

「どうしてここにいるんだ!?つーか、式森と神城も!」

 

「リアス先輩に誘われてね。僕たちはその誘いに乗ったんだ」

 

和樹の発言に俺と龍牙は肯定と頷いた。

 

「来るんなら早く来いよ・・・・・」

 

「ん?何でだ?」

 

「プール掃除をしていたからだよ」

 

成神一成の背後から木場祐斗が現れて教えてくれた。あーそういうことだったか。

 

「「「俺(ぼく)たちのためにプール掃除してくれてありがとう」」」

 

「ふざけんなぁっ!」

 

朗らかに笑う俺たちに、他人の苦労を蔑ろにするかのように発言した俺たちを怒る成神一成。

木場祐斗に至っては苦笑を浮かべていた。

 

「・・・・・なにやっているの?」

 

呆れた声で話しかけてくる女の声が聞こえた。そちらに振り向くと・・・・・赤を基調とした

露出が高い、水着を身に包んだリアス・グレモリーがいた。

 

「・・・・・うん」

 

「な、なに・・・・・?」

 

「いや、何時も制服姿しか見ていないから、新鮮さを感じた。―――似合っているぞ?」

 

「―――――っ!?」

 

リアス・グレモリーの顔に照れた感じで赤く染まった。

それからモジモジと体を動かして俺から顔を背けた。

 

「・・・・・嬉しい」

 

「元々お前は綺麗なんだ。水着でさらにお前を引き立てる。サーゼクスも自慢の妹をもったな」

 

「あ・・・・・う・・・・・」

 

彼女が顔を俯かせ始めた。心なしか、顔がトマトのように真っ赤になった。

 

「おやおや・・・・・」

 

「へぇ、あの先輩がねぇ・・・・・」

 

温かい目で龍牙と和樹はリアス・グレモリーを見た。

木場祐斗も珍しいように彼女を視界に捉える。

 

「待たせたな一誠」

 

「おっ、来たな」

 

と、言いながら俺は成神一成をプールに突き落とした。

ザッパーンッ!と水しぶきが生じたと同時にガイアっちが姿を現す。

 

「・・・・・」

 

「ふふ、どうだ?我の姿は」

 

ガイアとリーラ、それに清楚とカリン、イリナとゼノヴィアとオーフィス、

リシアンサスとネリネ、リコリスが水着姿で登場だ。

 

「・・・・・言葉が出ないほど、可愛くて綺麗だ」

 

そう呟く俺。ガイアは露出度が高い黒いビキニで佇んでいて、リーラは白を基調としたビキニ、

清楚は花柄の可愛い水着、カリンはあまり露出が無い緑色のワンピース、

イリナとゼノヴィアは教会に所属しているからか、清楚と青と白の水着を着ている。

オーフィスは黒のフリルが付いたワンピースを身に付けている。

リシアンサスはオレンジ色のビキニを着用し、

ネリネとリコリスは水色と青のスクール水着のような水着を着ていた。

 

「って、銀華は?」

 

「ああ、あいつは―――」

 

と、その時だった。背中に柔らかい感触が伝わった。後ろに顔を振り向けば―――、

 

「にゃん♪」

 

笑みを浮かべ俺の頬に擦りつけてくる銀華がいた。

 

「な・・・・・」

 

リアス・グレモリーが銀華を見て目を丸くした。

あー、多分あいつの顔とそっくりだから驚いているんだろうな。

 

「ねーねー、どう?私の水着姿」

 

「ぶっ・・・・・!?」

 

彼女の全身を見れば、露出度が高過ぎるスリングショットを身に付けていた。

 

「め・・・、目を向けれない」

 

「あ、あれは刺激が強過ぎです・・・・・・」

 

和樹と龍牙が銀華から視線を極力外す。思春期の男として当然の反応だ。

 

「・・・・・あなた、何者?」

 

「にゃ?私は銀華。猫又の上位種の猫魈の妖怪。よろしくね、リアス・グレモリー」

 

「・・・・・」

 

ジッとリアス・グレモリーが見詰める。

黒歌と関係があるのだろうか?なんて、思っているのだろう。険しい表情である。

 

「・・・・・黒歌姉さま・・・・・?」

 

ポツリと呟く声。この声は・・・と銀華の背後を見れば、

スクール水着を着ている塔城小猫がいた。

 

「あら、あなたが白音ね?」

 

「―――――っ!?」

 

「じゃなかった。いまのあなたは塔城小猫、そう名乗っていたわね」

 

絶句と目を見開く塔城小猫の前で跪く。視線と視線を合わせるようにして。

 

「初めまして、と言うべきね。私は銀華。あなたのもう一人のお姉さんよ」

 

「・・・・・私の姉・・・・・・?」

 

「ええ、私の妹は黒歌とあなた、塔城小猫なの。私を含めて三姉妹なのよ」

 

ナデナデと驚愕の色を浮かべたまま体を固まらせる塔城小猫の頭を撫でていると、

彼女は首をフルフルと横に振る。信じられないと、首を振って・・・・・。

 

「・・・・・嘘です。だって、私には姉が一人しか・・・・・」

 

「―――嘘じゃないわ。なんなら、黒歌の過去を話して証明してあげるわよ?

特にはぐれ悪魔になった本当の理由を」

 

「・・・・・本当の、理由・・・・・?」

 

「あの子があんなことになり、あなたがこんなことになった責任は少なからず私にもあるわ。

母とあなたたち姉妹を捨てるように世界へ旅に出た私も・・・・・」

 

背を向けているため、銀華の表情が見えないが、きっと真剣な面持ちで言っているだろう。

 

「真実を知りたいなら今度・・・家に来なさい。そこで全てを話してあげる。

黒歌が、あの子が泣きながら私に懺悔した話をね」

 

塔城小猫は視線を逸らさず、銀華の話に耳を傾ける。

 

「さて、話はこれで終わりにして」

 

「・・・・・え?」

 

「姉妹水入らず、一緒に泳ぐわよ♪」

 

楽しそうに弾んだ声音を発した彼女が、塔城小猫をプールへと放り投げた。

 

ザッパーンッ!

 

着水した塔城小猫を見て銀華もプールの中へと飛びこんだ。

それが呼び水となって各々と和樹たちがプールの中へと入っていく。

 

「イッセー」

 

「言いたいことは何となくわかる。どこで彼女と出会ったか?

どうして彼女の存在を教えてくれなかったのか?

どうしていまになって彼女をここに連れてきたのか?そんな感じだろう?」

 

「・・・・・」

 

沈黙は是也だリアス・グレモリー。

 

「会ったんだよ」

 

「・・・・・誰に?」

 

「黒歌とだ」

 

プールでじゃれ合う姉妹猫を見詰めながら呟けば、リアス・グレモリーは目を丸くした。

そんな彼女に顔を向けて警告を告げる。

 

「リアス、何も言わず俺の言う通りにしてくれ」

 

「・・・・・私に何をしろと?」

 

「お前の眷属のハーフヴァンパイアが四種会談の日に狙われる。

だからハーフヴァンパイアを守れ」

 

「―――――なぜ、あなたが知っているの?いえ、何を知っているというの?」

 

彼女のその問いに、俺は瞑目して首を横に振った。

 

「今は言えない。だが、必ず起きることだ。俺は確信している」

 

「・・・・・」

 

「リアス、俺の話を信じるかどうかはお前次第だ。俺は警告した」

 

それだけ言い残してプールに飛び込んだ。さて、思いっきり楽しむとしようか。

 

―――○●○―――

 

 

プールに入って数時間後、家に帰ろうとする俺たち。

十分、勉強での疲れとストレスを発散したのでイリナとゼノヴィア、

リシアンサスは大満足と晴々とした表情で笑んでいた。

校舎を出ようとした俺の視界に銀が映り込む。校門のところだ。

 

「お前・・・・・」

 

「やあ、久し振りだね。―――一誠」

 

ダークカラーが強い銀の長髪、透き通った青い瞳の少女、俺とイリナの幼馴染である彼女、

ヴァーリ・ルシファーがいた。

 

「ヴァーリ・・・・・」

 

「こうして会うのは初めてだねイリナ。久し振り」

 

「う、うん・・・久し振り。だけど、どうしてここに・・・・・?」

 

イリナの言う通りだ。どうしてここに?オーフィスを連れ戻しに来たか?

 

「アザゼルの付き添いとして来ているんだ。

その暇つぶしに一誠やイリナ、私のライバルである赤龍帝を見に来たわけだが・・・・・まあ、

本音は一誠とイリナに会いに来たかな」

 

「俺たち?」

 

「ああ、私と付き合って欲しい。

久し振りに会う(・・・・・・・)幼馴染のキミたちとゆっくり話をしたい」

 

そう言われ俺とイリナは顔を見合わせる。

あいつが変な組織に所属しているということはイリナとゼノヴィア、リーラ、ガイアと

俺しか知らないことだ。初めて会ったのはコカビエルとの戦いの時だ。

それ以外、彼女と会っていないと和樹と龍牙、リシアンサスとネリネとリコリスは

思っているはずだ。こいつは、俺とイリナに二度目の再会と風に話しかけているのがよく分かる。

―――ここで事を冒す訳にはいかないか。

 

「イリナ、いいか?」

 

「うん、いいよ」

 

「だ、そうだ」

 

「それじゃ、三人だけ話せる場所に行こう。

ふふっ、三人で遊ぶのは実に数年振りだからワクワクするよ」

 

ヴァーリは笑みを浮かべ踵を返した。オーフィスをガイアに任せて、

皆と別れてイリナと共にヴァーリとどこかへ向かった。

 

 

―――木漏れ日通りInフローラ

 

 

「うん、この店のデザートは甘くていいな」

 

「そうだろう?デザートを食べる時はこの店がいいんだ」

 

「そうか、なら俺もこの店でデザートを食べるとしよう」

 

あれから俺たちはフローラで話し合うことにした。

 

「ヴァーリって女の子だったのね。改めて驚いたわ」

 

「それはこっちも同じだ。イリナが女の子だったなんてな」

 

「お互い、やんちゃに遊んでいたからな。

二人とも、女の子らしいことしていなかったから、俺たちは気付かなかったんだ」

 

うんうん、と俺は納得とばかり頷く。イリナは苦笑を浮かべだした。

 

「ははは、そうね。それもゲームをしたり、木のぼりしたりして」

 

「川でずぶ濡れになってまで水遊びをしたな」

 

「公園で砂を山にして遊んでいたよな」

 

デザートを食べながら懐かしい話しを語り合う。

 

「それが今となっては、二人は綺麗で可愛い少女に変身だ。

俺は自慢できる幼馴染がいて嬉しいぞ」

 

「「・・・・・」」

 

微笑みながら言ったら、二人は突然沈黙した。どうしたんだ?

 

「イリナ、今のは殺し文句だとは思わないか?」

 

「ええ、私もそう思うわ」

 

ヒソヒソと話している・・・・・聞こえてんぞお前ら。

 

「だから、私はイッセーくんのことが好きになったのよね」

 

「私を救ってくれた一誠に好意を抱くのも頷ける。イリナ、キミはどこまで一誠と進んでいる?」

 

「えっ・・・!?えっと、その・・・・・」

 

「まさか、キスすらしていないのか?」

 

意外そうにヴァーリが喋る。イリナに至っては、顔を赤くして顔を俯くだけだ。

 

「わ、私は神に身も心を捧げているの。だから・・・・・」

 

「ほう・・・・・では、一誠を私が貰っていいのだな?イリナは身も心も神に捧げると言うなら」

 

「なっ・・・・・!?」

 

「私は悪魔と人間のハーフだ。だから、この身と心は全て一誠に捧げる。

イリナは一誠に恋すら抱かず、神に全てを捧げるんだ。だから当然の発言じゃないか?」

 

意地の悪い笑みを浮かべてイリナに言うヴァーリ。おいおい・・・・・。

 

「・・・・・っ」

 

イリナは俺の隣で俯いた。このままじゃあ、関係が悪化になりそうだ。

それは俺が良しとしない方向へと。

 

「ヴァーリ、聞いてもいいか?」

 

「なんだい?」

 

「お前は本当に俺たちに会いに来たのか?オーフィスを連れ戻そうとしないのか?」

 

俺の問いにヴァーリは「ああ」と今更何かを気付いたかのように漏らした。

 

「確かに、私たちのトップであるオーフィスが消失したことでパニックになっているよ。

責任はあの場にいた私と彼に背負わされたけど、私にとってどうでもいいことだ」

 

「どうでもいい・・・・・?」

 

「あの時も言っただろう?私は世界の強者と戦いたいと。

だから、それができるのであれば、周りがなんと言おうとどうでもいいんだ」

 

「だからあなたは私たちの敵となるの・・・・・?」

 

イリナは寂しげに問うた。が、ヴァーリは首を横に振った。

 

「私の中では幼馴染であるイリナと一誠を敵に回さないつもりだ。

まあ、一誠の場合は私の目標だからライバルと言う関係になるかな?

ふふっ、好意を抱く男をライバルとなる運命は面白く楽しい。

お互いの力を出し合ってぶつけあって気持ちを知れそうだ」

 

「・・・・・ちっちゃい頃のヴァーリとは思えない発言だわね?

いつも、『一誠一誠』ってカルガモの子供のようについていったあなたが」

 

「あー、そう言えばそうだったな。男なのにどうして俺の後ろについてくるんだ?

って疑問だったよ。今となってはその理由が分かったけどな」

 

クスクスと笑んでいたら、ヴァーリが気恥ずかしそうに俺から視線を逸らした。

あら、可愛い仕草だ。

 

「・・・あの時は一誠のことが好きだったんだ。当然の行動だ。

イリナだって私と同じ感じでいたじゃないか。怪我した時なんて、

一誠に背負ってもらって家に着いても離れたくないと―――」

 

「わーっ!それ以上言わないでぇ!」

 

イリナが顔を真っ赤にしてヴァーリの話しを遮る。

ほほう・・・だからイリナは自分の部屋まで送っても離れようとしてくれなかった訳だ。

 

「うん、お前ら可愛過ぎるだろう。抱きしめていい?」

 

「何時でも来い」

 

「え、えっと・・・・・人気のないところなら・・・・・」

 

一人はノリノリで、1人は満更ではないと反応する。

 

「まあ、それは後ほどと言うわけでヴァーリ。本当に襲撃するのか?」

 

「変更はない。寧ろ、お前が今回の襲撃に関わりはないだろうと

『真魔王派』は判断して油断しまくっている」

 

「一応、リアス・グレモリーには警告してある。そう上手くはいかないはずだがな」

 

「私が敵だということを知っているのは?」

 

その問いに俺は隠さず言った。てっきり神王と魔王にも告げているのだと思っていたヴァーリは

不思議そうに首を傾げた。

 

「どうして言わないんだ?」

 

「お前たちが作戦を変えてくるかもしれないからだ。余計な刺激を与えず、

囮にしてお前らを対処するつもりだ」

 

「ほう・・・・神と魔王を囮にするとは凄いことをするな。流石は私が認めている男だ」

 

「ヴァーリ、俺と戦いたいなら会談の日だ」

 

「ああ、私は楽しみにしているよ。是非ともあの深紅の鎧を着たキミと戦いたい」

 

徐に立ち上がるヴァーリ。

 

「久々に二人と話せて良かった。また今度ここで昔話を語ろう」

 

「一人の幼馴染としてなら歓迎する」

 

「ふっ、勿論だ」

 

スタスタと彼女はフローラからいなくなった。

残った俺とイリナはなんとも言えない空気に包まれる。

 

「・・・・・イッセーくん」

 

「なんだ、イリナ」

 

「私・・・・・ヴァーリに悔しいと思っている」

 

・・・・・・イリナ?

 

「あんなに堂々と言えるヴァーリが羨ましくて悔しい」

 

俺の腕に顔を押し付けてきた。

 

「私だって、私だってイッセーくんのことが・・・・・・」

 

好き、とイリナは声を殺して呟いた。俺は無言で彼女を抱きしめ背中を撫で、

 

「言っただろう。お前も俺の家族になってくれって」

 

「イッセーくん・・・・・うん・・・・・」

 

暗に告白した。彼女も快諾して俺の胸に顔を押し付けてくる。

―――周りから嫉妬の視線を浴びていることを気付きながらも、

しばらく俺はこの状態で座ったのだった。

 


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