ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode2

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)・・・・・無限の体現者と言われている二天龍より強いドラゴン。

俺、とんでもないドラゴンに目を付けられた?

 

『基本的にそいつは無害だ。お前に接触した理由は分からないな』

 

そうか・・・・・その言葉を聞いて少し安心した。心の中で安堵の息を漏らして、口を開いた。

 

「オーフィス、だったか?」

 

「ん、我、オーフィス」

 

「じゃあ、オーフィス。お前の手伝いって何だ?」

 

「グレートレッド、追いだす」

 

・・・・・グレートレッド?俺が知る限りその名の存在はただ一人だ。

 

「『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドのことか?」

 

「正解、我、グレートレッド追いだしたい。だから手伝う」

 

「どうして追いだしたい?」

 

「我、次元の狭間で静寂を得たい。でも、次元の狭間を支配しているグレートレッド、邪魔」

 

次元の狭間・・・・・ガイアが生まれた無の空間だった。いや、もう一匹いたな。

 

『グレートレッドとオーフィスは次元の狭間から生まれたドラゴンだ。

だが、次元の狭間の支配権を巡って戦っていたがオーフィスは敗北した。

前に説明したことだぞ?』

 

覚えているよ。でも、何でまたガイアを倒して静寂を得たいなんて、言いだすのか分からない。

 

『本人に聞けばいいことだ』

 

それもそうだな。

 

「どうしてグレートレッドを倒したいんだ?」

 

「次元の狭間で静寂を得たい」

 

生まれた故郷に戻りたいということでいいのか?

 

「ホームシックということなのでしょうか・・・・・」

 

「うーん、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)って聞いたことあるけれど、

実物で見たら・・・・・思っていたほど怖くないっすね」

 

「危険なドラゴン、とは思えないよね」

 

「家に帰りたい子供って感じだな」

 

「うん、しっくりくる」

 

皆がオーフィスの言動に想像していたのと違うと語り合っていた。俺もそうだけどな。

実際に会ったら小さい少女だし・・・・・・ほんと、伝説のドラゴンは人化になることが

流行っているのか?

 

「我の願いを手伝う」

 

そう言った直後、俺の足元に魔方陣が展開した。

 

「えっ?ちょ、オーフィスさん?」

 

何故に魔方陣を展開するんでしょうか!?これは・・・やばい!紫の宝玉が埋め込まれている

黒い籠手幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)を装着して、足元の魔方陣を消す―――!

 

カッ!

 

しかし、一歩遅く・・・俺の目は白一色に塗り替えられ、

 

「イッセーくんッ!」

 

イリナの叫び声を最後に、俺の意識は遠のいた。

 

「・・・・・」

 

白一色だった俺の視界は一変して黒くなった。いや、目を瞑っているわけじゃない。

目を開いて暗いんだ。

 

「・・・・・ここ、どこだ?」

 

「我の部屋」

 

ピョンとそんな感じで俺の肩から降りたオーフィス。改めて彼女の姿を肉眼で捉えた。

腰まである黒髪の小柄な少女。黒いワンピースを身に着け、細い四肢を覗かせている。

胸にペンダントを身に付けている少女。

 

「・・・・・俺、拉致られたのね」

 

周りを見渡せば壁に囲まれた空間、ベッドや椅子、テーブルしか無い殺風景な部屋だった。

 

「・・・・・」

 

「なんだ?」

 

ジッと見つめてくるオーフィス。いや、俺というより内にいるドラゴンたちか?

 

「―――クロウ・クルワッハ、アジ・ダハーカ、アポプス、ティアマット、

知らないドラゴンが二体」

 

「―――――」

 

この子、怖ろしい子!というか、クロウ・クルワッハしか告げていないのに

他の邪龍まで言い当てやがったか!

 

「ん、これならグレートレッド、追いだせる」

 

「いやいや、無理でしょう」

 

最強で最凶のドラゴンが集っても、勝ち目ないって。だから満足気に頷かないでくれるか!?

 

「邪龍を宿す人間、珍しい。ティアマットも、珍しい」

 

「まあ、俺が世界で初めてなんだろうけどさ・・・・・」

 

頬を掻きながら言う。だが、俺としては帰りたい。―――こいつから逃れることはできるか?

 

『無理だな。言っておくが俺たちよりも強いぞオーフィスは』

 

マジで?クロウ・クルワッハでも勝てないの?

 

『いまの俺の実力は封印される前の二天龍と同等だと思うが、

グレートレッドを倒せない限りじゃオーフィスを倒すことは無理だ』

 

・・・・・万事休すってやつか・・・・・。

 

「・・・・・ところで、そのペンダントは何だ?」

 

「我の宝物」

 

へぇ、宝物ね・・・・・。ドラゴンでも宝を認識するんだ?

 

「ああ、いるぞ。代表的に『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファーブニル。

五大龍王の一角で、世界中の宝を集めるドラゴンだ」

 

五大龍王・・・ティアと同じ龍王か。どんな奴なんだろう、会ってみたいな。

 

『いずれで会える。もしかしたらすぐかもな』

 

有り得そうだ。

 

ガチャッ。

 

扉が開く音が聞こえた。そちらに振り向くと―――。

 

「「・・・・・」」

 

あれ・・・・・見間違いか?ははっ、ここに幼馴染がいる幻覚が見えるなんてな―――。

 

「・・・ふふふっ、これは何の冗談だ?目の前に幼馴染がいるぞ、幻覚か?

私は幻覚を見ているのか?」

 

あー、向こうも幻覚を見ていると思っているよ。うん、きっとそうだ。これは―――。

 

「「幻覚に違いない」」

 

「違う」

 

俺と幼馴染の言葉にオーフィスが、ズバッと一刀両断!

 

「・・・・・本当なのか?」

 

「・・・・・そうみたいだな」

 

俺の問いに幼馴染が苦笑する。

 

「じゃあ・・・・・何でお前がここにいるんだ。―――ヴァーリ・ルシファー」

 

シルヴィアの銀髪よりも濃い銀髪、というよりダークなカラーが強い。

それに引き込まれるぐらいの透き通った蒼い瞳の少女が、

俺の幼馴染のヴァーリ・ルシファーがいた!

 

「それは私のセリフだ。どうして一誠が、お前がここにいる」

 

「・・・・・オーフィスに拉致された」

 

それしか言えないし、事実だし。ヴァーリは「なるほど」と何故か納得しているし。

 

「一誠の中にいるドラゴンたちの波動をオーフィスが感じ取った結果だろうな。

自分の目的を果たすために」

 

「ん、我は次元の狭間に帰る」

 

「・・・・・」

 

それ、何とかなるんだけどな・・・・・。

 

「で、どうしてお前がここに?『神の子を見張る者(グリゴリ)』のところにいるんじゃないのかよ?」

 

「・・・・・答え辛い質問だな。いや、いずれ知られるから言おうか」

 

ヴァーリは口の端を吊り上げて告げた。

 

「私はアザゼルから離れるつもりだ」

 

「だから、オーフィスと一緒にいるということなのか?何のためだ?」

 

「一誠、キミが行方不明となっている間、私はアザゼルたち堕天使に育てられていた。

一誠が私を助けてくれた後のことだよ?」

 

彼女は語り始めた。過去のことを。

 

「この歳になるまで私は白龍皇の力の使い方を学んだ。

魔法の知識も、他の神話体系のことも、神器(セイクリッド・ギア)のことも、何もかもだ」

 

「・・・・・」

 

「永い歳月の最中、私は強くなった。もしもキミが行方不明ではなかったら、

私を助けてくれたキミを今度は私がキミを守ろうと思っていた。

だけど、キミは行方不明のままだった」

 

苦笑を浮かべるも、ヴァーリは言い続ける。

 

「目的の一つができないなら、私は挑戦をしてみたくなったんだ。世界中の強者に、

この白龍皇の力はどこまで通用するのか、試したくなったんだ。そして同時に目標ができた」

 

「目標?」

 

「―――『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』と呼ばれし

真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドを倒し、私は『真なる白龍神皇』となりたいんだ」

 

な―――っ!?

 

「赤の最上位がいるのに、白だけ一歩前止まりでは格好つかないだろう?

だから、私はそれになる。いつか、グレートレッドを倒したい。―――と、そう思っていたのに」

 

ヴァーリの瞳は真っ直ぐ俺に向けられる。

 

「ふふっ、私の目標はキミになってしまった」

 

「お前・・・・・」

 

「あの時、コカビエルを連れて帰るために現れた私の目に飛び込んできたのは、

赤龍帝とは違う別の赤がコカビエルを倒した光景だ。あの時は震えたよ。一誠」

 

ギラギラと瞳に戦意が籠った。獲物を狙う鷹のような視線だと俺は理解した。

 

「好意を抱いている男が私の目標なんて、これほど面白いことはないよ。

もう、赤龍帝との運命の戦いなんかより私は一誠と戦いたい。

赤よりも紅よりも深い深紅の鎧を着た一誠と―――」

 

背中に青い翼を広げだすヴァーリ。マジ?ここで戦うの?お前が望むガイアはいないぞ?

 

「好きだからこそ戦う運命なのかな一誠」

 

「さあな。だが、戦ってさらに好きになることだってあると思うぞ?」

 

右手に幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)

左手に成神一成の神器(セイクリッド・ギア)―――赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を装着した。

 

「その籠手・・・・・赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)?」

 

「紛い物、偽物、コピーした赤龍帝の籠手だ。―――オリジナルより高性能になっているがな」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

「―――――『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』」

 

『Transfer!!!!!』

 

「さらに禁手(バランス・ブレイカー)ッ!」

 

カッ!

 

膨大な赤いオーラが俺を包む。そのオーラが鎧へと具現化していき、俺の全身を覆う。

そして―――、

 

「『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』ってな?」

 

龍を模した赤い全身鎧を装着した俺。が、右の籠手は黒い籠手のままだ。

不格好だが、いいだろう。

 

『有り得ん・・・・・神滅具(ロンギヌス)が二つも存在するどころか、

ドライグの力をそのまま具現化にしただと・・・・・!?』

 

青い翼から驚愕の声が聞こえる。もしかしたらアルビオンの声か?

 

「悪いけど、俺は帰らせてもらうぞ。今頃、あいつらが心配しているだろうしな」

 

「つれないことを言わないでくれ。―――楽しくなろうとしているのにさ」

 

ヴァーリは力強く言った。―――禁手(バランス・ブレイカー)と、その瞬間、

彼女の全身に白い鎧が覆っていく。

 

「『|白龍皇の鎧《ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル》』。

これが白龍皇の姿だよ一誠」

 

「ああ、白くて綺麗な鎧だ。ヴァーリに似合っている」

 

「はははっ、嬉しいな。―――それじゃあ、始めようか」

 

青い翼を大きく広げたヴァーリ。俺も翼を広げ、臨戦態勢に―――。

 

「―――何しているのですか?」

 

扉から声が聞こえた。そちらに振り向けば、背広を着た若い男。腰には二本の帯剣をしていた。

―――あの二本、聖剣と同じ波動を感じる・・・!?

 

「おや・・・・・赤龍帝ですか?」

 

男は意外そうに発した。ここに二天龍が揃うということは、

天龍同士の戦いが始まるということと道理だ。

 

「いや、彼は赤龍帝ではないよ」

 

ヴァーリは否定した。「では?」と背広を着た眼鏡の男が首を傾げた。

 

「私が好意を抱いている兵藤一誠だ」

 

「兵藤・・・・・ああ、あの兵藤ですか?」

 

眼鏡から覗く瞳に興味深々と光が宿る。というか、ヴァーリの話の半分をスルーしたな。

 

「彼もチームに加わるのですか?」

 

「・・・・・チーム?」

 

「おや、知らないのですか?」

 

「オーフィスに拉致られたんでな」

 

溜息を吐きそう告げると、背広を着た眼鏡の男は苦笑を浮かべ出した。

 

「それはそれは、お気の毒に。ああ、私の名前はアーサー・ペンドラゴンです」

 

「アーサー?あの、アーサー・ペンドラゴン、アーサー王の・・・・・?」

 

「ええ、私は英雄アーサー王の末裔です」

 

おおう・・・・・英雄の末裔の人間かよ・・・・・こいつは驚いた。

 

「その腰の剣、聖剣だな?」

 

「はいその通りです。一本は地上最強の聖剣、聖王剣コールブランド。

もう一本は最近発見された最後のエクスカリバー、支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)です」

 

「七本目の聖剣エクスカリバー・・・・・というか、そんなに話していいのか?」

 

まさか、行方不明の最後の聖剣がアーサーの手に渡っていたことに驚きを覚えながらも、

一応は敵という立場にも拘らず親切に教えてくれる。それに疑問が浮かび問うと・・・、

 

「ええ、そちらに最近、聖剣使いがいると耳にしました。

さらに面白い剣を生みだす悪魔もいると」

 

ゼノヴィアと木場祐斗のことか。いち剣士として興味があるんだろう。

 

「ヴァーリ、鎧を解いてください。作戦会議が始まりますよ」

 

「・・・・・しょうがないな」

 

不満そうにヴァーリは鎧を解いた。作戦会議・・・・・?いや、その前に・・・・・。

 

「俺は帰って良い?」

 

「ダメだ」

 

「ん、ダメ」

 

ヴァーリとオーフィスにダメだしされた。・・・・・クロウ・クルワッハ。

 

『機会を伺うしかあるまい。オーフィスが傍にいるのでは、手も足も出ない』

 

・・・・・最悪、悪あがきでもするか。クロウ・クルワッハの言う通り、

機械を伺うことにし、ヴァーリたちとどこかへと向かった。

 

―――ガイアside

 

「・・・・・オーフィス・・・・・だと?」

 

「はい、一誠さまをどこかへと連れ去られてしまいました。私の責任です」

 

家に戻ってきたリーラたちが何やら焦った表情を浮かべていると思えば・・・・・

あいつが現れて一誠を連れて行ったと、一誠の従者であるリーラから話を聞かされる。

 

「(オーフィス・・・・・あいつ、なんのために一誠を連れ去った・・・・・?)」

 

次元の狭間で共に生まれ、共に生き、次元の狭間の支配権を巡って戦ったドラゴン。

我が勝ち支配権を得てあいつを追いだしたが、

 

「(よもや、あいつはあの二人の子供だと知っていて我から遠ざけた?)」

 

いや、決めつけるのは早計だ。それにあいつは我と一誠が共にいることすら知らないはずだ。

ただ、偶然にもオーフィスの目が一誠に留まったに過ぎないはず・・・・・。

 

「(奴の狙いは大方、次元の狭間だろう)」

 

奴から一誠を取り戻すためにはどうすればいい?

オーフィスが望むものをくれてやれば一誠は我の所に戻るか?

 

「(もしそうならくれてやろう。愛しき男が戻るのであれば、あいつに次元の狭間くれてやる)」

 

我はそう思った。いや、決意した。―――その時だった。

 

「ただいまー」

 

「「「「っ!?」」」」

 

我の愛しい男の声が聞こえた。我は耳を疑い、声がした方へ振り向けば―――!

 

「・・・・・はっ?」

 

話題になっている男、一誠が部屋にいた。それは問題ない。

愛しい男が戻ってきたのだ。喜ぶべきなのだ。―――が、

 

「どうして・・・・・そいつまでいるんだ・・・・・一誠・・・・・」

 

「えーと・・・・・懐かれたと言うべきか憑かれたと言うべきか・・・・・」

 

一誠の肩に当然とばかり乗っているやつがいた。我の問いに一誠は困った顔をして告げる。

なぜだ、なぜ、そいつがいるのだ。

 

「―――グレートレッド、久しい」

 

「オーフィス・・・・・!」

 

見間違うわけもない・・・・・。

一誠の肩に乗っているやつは無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィスであった。

 

「・・・・・一誠、説明してくれるのだな?」

 

「あ、ああ・・・・・」

 

心配していたのに、一誠のために次元の狭間を手放そうとしていたのに、

なぜあの状況になっているのだ!

 

―――○●○―――

 

―――一誠side

 

えっと、どうして俺がオーフィスと一緒に帰って来たかというとだな。

その理由は数時間前に時間が遡る。

 

『・・・・・』

 

なんだ・・・こいつらは・・・・悪魔と天使、堕天使、人間までいるぞ。

ヴァーリについていけば、周りから視線を向けられ、浴びて落ち着けない。

 

「なんだ、あの人間は」

 

「白龍皇と一緒にいるということは、あいつもあの女の仲間か」

 

「・・・・・」

 

何やら勘違いされているしぃー!?俺は仲間じゃないぞ!幼馴染だけどさ!

そう思いながらヴァーリに続くと、

 

「私の後ろに立ってくれ」

 

ドーナツ状のテーブルに置いてある一つの席に座ったヴァーリがそう告げる。

俺はその通りにヴァーリの背後に立った。アーサーも一緒だ。

すると、俺の隣に三国志の武将が来ているような鎧を身に纏った男と、

猫耳としっぽを生やしている黒い着物を着た女性、魔法少女のような格好をしてる少女がいた。

 

「お前さん、名前は何だってんだ?」

 

急に小声で話しかけてきた隣の男。軽々しく話しかけてくるということは、

そんなに悪い奴じゃないんだろう。と、俺は感じで告げた。

 

「兵藤一誠だ」

 

「へぇ、兵藤一誠か。俺っちは美猴だぜぃ。よろしくな。んで、こっちは黒歌だ」

 

「よろしくにゃん。で、この子はルフェイ・ペンドラゴン。アーサーの妹にゃん」

 

「よろしくお願いします」

 

「(黒歌・・・・・?)」

 

美猴と言った男の発言に俺は目を見開いた。こいつが、小猫の姉で銀華の妹・・・・・。

 

「さて・・・・・揃った事だ。会議を始めようか」

 

学生服を着た黒髪の青年が開口一番に言った。

その上から漢服らしきものを羽織っていて、ただ者ではないとハッキリと伝わる。

 

「人間が勝手に始めないでくれないかしら?」

 

「それはすまない。だが、誰かが言わないと始まらないだろう?」

 

・・・・・仲が悪い?いや・・・対立しているようにも思える。なんなんだ、この集まりは。

 

「まあいいわ。それでは、今回の作戦について新しく入ってきた

白龍皇に言ってもらいましょうかしら?」

 

「いいだろう」

 

腕を組んで威風堂々と髪を纏め、眼鏡を掛けた女性の言葉に返答する。

 

「この場にいる者たちの耳に入っているだろう。『神の子を見張る者(グリゴリ)』の堕天使の幹部である

コカビエルが単独で四種交流を象徴とする学園でエクスカリバーを利用して戦闘を起こした件を。

そのことに冥界の魔王と堕天使の総督、天界の神、とある人間の一族が数日後に駒王学園に

集って会談を始める」

 

「好都合に私たちの敵が集うってわけね」

 

女性が不敵の笑みを浮かべる。ヴァーリは何の仕草もしないまま言い続ける。

 

「もしも、私たちの存在を知らしめる上に、魔王と堕天使の総督、

神ととある一族を倒すのであれば、この会談の最中に奇襲をするのが一番だろう」

 

「ふむ。だが、そう易々と事は進めることができないと思うぞ?」

 

青年がヴァーリの発言に疑問をぶつけた。その疑問に対してヴァーリは言った。

 

「情報ではリアス・グレモリーの眷属にハーフヴァンパイアがいるそうじゃないか。

その人間の血を流すヴァンパイアは『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』と

時間を停止させる『神器(セイクリッド・ギア)』を所有している。

その『神器(セイクリッド・ギア)』を利用して魔王たちを停止させれば問題ないだろう」

 

「それは素晴らしい考えですわね。そのハーフヴァンパイアの能力を利用すれば、

邪魔者を停止させることができ、憎き魔王を滅ぼせれることに専念できるわ」

 

魔王を恨んでいる?つまり、あの女性は悪魔だというのか・・・・・?

というか、この話を聞いて嫌な予感がしてしょうがないぞ。

ヴァーリは確かめるように気乗りな女性に尋ねるように告げる。

 

「襲撃するのであれば、会談の日にするしかないぞ?」

 

「勿論そのつもりです。この私、カテレア・レヴィアタンが直々に魔王レヴィアタンを殺し、

私が魔王として名乗りましょう!」

 

カテレア・・・・・レヴィアタン・・・・・!?現魔王の肉親か何かかよ!?

どうしてそんな悪魔が自分の肉親を殺そうとするんだ・・・・・!

 

「あなただけ襲撃させる訳にはいかないだろう。魔法使いの者たちも襲撃に参加させたらどうだ?

会談の時に結界を張られるだろうし、私が襲撃できるように転移魔方陣を密かに用意する」

 

「そうね。お願いしましょうか」

 

カトレア・レヴィアタンは不敵の笑みを浮かべて同意した。

おいおい、俺はとんでもないところに立ち会っているんじゃないかよ。

 

「では、会議はこれにて終了。でいいですわね?」

 

「ああ、問題ないよ」

 

「私もだ」

 

「ふふふっ、レヴィアタン・・・待ってなさい。

あなたは必ずこの私の手で倒して見せるわ・・・!」

 

彼女が席に立ち、この場から去ろうとすれば、ゾロゾロと彼女の後を追う集団・・・って、

あいつらは全員悪魔なのか!?

 

「あー、やっと終わったぜぃ」

 

美猴が両腕を上げて背伸びする。どうやら退屈で仕方なかったようだな。さて・・・・・。

 

「黒歌、と言ったな」

 

「ん?何かしら?」

 

彼女はこっちに振り向く。・・・・・似ているな。銀華に。

 

「―――白音と銀華」

 

「っ!?」

 

二人の名を呟けば、耳をピンと立てて目を見開く。どうして知っているんだ?って顔だ。

 

「二人とも元気だぞ」

 

「・・・・・あなた、どうして二人のこと知っているの」

 

最大に警戒されている。その警戒を解くためにも説明しようと口を開く。

 

「白音・・・・・いや、今では塔城小猫と名乗っているお前の妹と同じ学校で学んでいる。

グレモリー眷属として、悪魔として元気に過ごしている」

 

「・・・・・」

 

「銀華は悪魔に無理強いで眷属悪魔にされそうなところを助けた。

彼女は俺の家で暮らしている。今でもお前と白音のことを気にかけている」

 

「・・・・・そう」

 

黒歌は瞑目した。美猴とアーサー、ルフェイは不思議そうに様子を見守っている中、

ヴァーリは席を立ち上がった。

 

「その証拠に―――」

 

携帯を取り出して操作をし、画像を引き出す。別々だが小猫と銀華の写真だ。

黒歌は俺からゆっくりと携帯を取って二人の写真を見詰める。

 

「・・・・・」

 

しばらくして、彼女は携帯を返してくれた。

 

「銀華から聞いたよ。黒歌がはぐれ悪魔になった理由を、優しい白音の姉さんだってことも」

 

「・・・・・そのこと、白音には?」

 

「まだ伝わっていない。銀華が言おうとしているけどね」

 

「あの自由奔放の猫が・・・・余計なことを言わないでほしいにゃん。

―――会いに行き辛くなるじゃない」

 

・・・ああ、やっぱり銀華、お前の言った通りだ。黒歌は優しい姉猫であり妹猫だよ。

実際に会って分かった。

 

「銀華に伝えることはあるか?」

 

「え?」

 

「いや、俺はオーフィスに拉致されてここに連れて来られたし、

俺は別にヴァーリの仲間ってわけじゃないし帰るつもりだからさ」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

その発言に四人が沈黙した。

 

「えっと、つまりお前さんは敵だってことかい?」

 

「さっきの会議を聞いて俺は敵側だなぁーと思ったぞ。

―――色々と聞かせてくれてどうもありがとう」

 

「あ、あの・・・・・じゃあ、どうしてここにいるんですか?」

 

「オーフィスに拉致されたって言っただろう?逃げようにもオーフィスから逃げられないし」

 

「だからあなたは大人しくしているのですね」

 

「そう言うこと」

 

肯定と頷く。帰れるのならば今すぐにでも帰るつもりだ。でも・・・・・。

 

「帰さない」

 

当のオーフィスが何時の間にか俺の肩に乗っているし。それはそれとして・・・・・。

 

「それと美猴とか言ったな?」

 

「なんだぃ?」

 

「俺、お前を見て懐かしく感じるんだけど・・・・・どこかで会ったか?」

 

ジィーと美猴の顔と体を見て問う。雰囲気的にも誰だっけか、懐かしく感じる。

 

「いんや、俺っちはお前と会うのは今日で初めてだぜぃ?誰かと空似なんじゃねぇの?」

 

「・・・・・空似。美猴って妖怪?」

 

「おう、俺っちは猿の妖怪だぜぃ?先代の孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ」

 

猿の妖怪・・・・・―――――あっ!

 

「お猿のお爺ちゃん!」

 

「・・・・・へっ?」

 

いきなり美猴に向かってそう言ったらこいつはキョトンと唖然となった。

そんな事を気にせず俺は笑みを浮かべて美猴の肩をポンポンと叩いた。

 

「ああ、そうだ。お前ってお猿のお爺ちゃんに似ているんだった。

だから雰囲気も似ているんだな」

 

「なあ・・・・・お猿のお爺ちゃんって誰のこと言っているんだぜぃ?」

 

美猴がそう尋ねてきた。そう言われてもな・・・・・。

 

「えーと、インドラのおじさんと何時も一緒にいるお猿のお爺ちゃんしか分からない」

 

「イ、インドラ・・・・・?帝釈天のこと言ってんのか?お前」

 

「さあ、特徴的に言えば、サングラスにアロハシャツを着ていて・・・HAHAHAと笑っていたな。

お猿のお爺ちゃんは一つ一つ繋がっている珠を首にかけていたな。

そんで長い棍を持っていたし、煙管を口に咥えて金色の雲を乗せてくれたこともあったな」

 

脳裏に思い出しながら言う。すると、美猴の様子が可笑しい。

 

「お、おめぇ・・・・・ジジイと会っているんじゃねぇかァッ!?」

 

顔中に冷や汗を流して叫ぶように言ってくる美猴だった。心なしか顔を青ざめている。

 

「まさか、闘戦勝仏とインドラ・・・帝釈天と会っていたとは・・・・・驚きですね」

 

「銀華・・・あんた、とんでもない子と一緒に住んでいるじゃないの・・・・・・」

 

「お名前しか聞いた事ないんですけど、そんな有名な人と出会っているなんて凄いですね!」

 

・・・・・あの二人が有名なのか?神王と魔王も驚いていたけど・・・・・。

 

「普通に海に連れて行ってくれたんだけど?『夏は海だぜぃ坊主』と言って」

 

「海!?あのジジイが海に連れて行ったのか!?」

 

「うん、海の神さまがいるところに」

 

「今度はポセイドンですかぁ!?」

 

あれ、ルフェイまで驚いているし。アーサーも少なからず驚いている。

 

「あなた・・・・・どうやったら他の神話の神に会えるんですか」

 

「いや、何せ子供の時だったし・・・・・そんなに驚くこと?」

 

「・・・・・何も知らないで会っていたんですか。とんでもない人ですよ。色々な意味で」

 

眼鏡をずらしながらアーサーは言う。けど、本当にどんな人なのかしらなかったからな。

 

「あ、あの・・・まさかだと思いますが、他の神話の神と会っていませんよね?」

 

「ん?えーと、天空の神さまに骸骨のお爺ちゃん、他にも―――」

 

子供の頃にあった神さまの名前を言い続けていると、

 

「いいです。もう、いいです」

 

ルフェイに止められた。さらにアーサーが顎に手をやって呟きだす。

 

「・・・・・天空の神ゼウスに冥府の神ハーデス。それにお見えにかかれない神ばかり・・・」

 

「夏になったら骸骨のお爺ちゃんの傍でスイカを食べていたなー。

傍にいると冷たくて涼しいんだ。

体から発する冷気でエアコン変わりしていたことが懐かしいや。はははっ」

 

「何この子・・・・・冥府の神をエアコン変わりにするなんて、

魔王でも神でもできないことをしているにゃん」

 

「実際、その魔王と神も会っている」

 

それがトドメとばかりアーサーたちが沈黙した。

 

「・・・・・豪華なメンツと出会っているこの子は一体何者なのよ」

 

「兵藤一誠としか言えないんだけど・・・・・俺のことを詳しく知りたいなら

近所に住んでいる神王と魔王に聞いてくれ」

 

「・・・・・もう、この子は驚きの宝庫にゃん。近所に神王と魔王ってなに?

マジで人間のように暮らしちゃっているわけ?」

 

「魔王なんて趣味聞いたら主婦のようだったぞ。神王なんて娘に椅子で殴られているし」

 

「・・・・・魔王と神王の貫禄、ないんじゃない?」

 

「大丈夫、俺もそう思っている。ところで、帰って良いか?

家族が心配して帰りを待っているからさ」

 

これで何度目か。そう訊くと上から「ダメ」と却下される。

 

「どうしても?」

 

「これ、絶対。我の願いを手伝う」

 

「いや、それを何とかするから帰らせてくれ」

 

それでもダメと却下される俺だった。

 

「・・・・・強行突破、してもいいか?」

 

青白い六対十二枚の翼を展開する。

 

「天使・・・・・?いえ、それにしては色が変ですね」

 

「ああ、元々金色だったんだけどね。元に戻らないんだ」

 

ヒョイとオーフィスを肩からおろす。―――退散!

 

「ダメ」

 

ドンッ!

 

逃げようとしたその瞬間、オーフィスに腕を掴まれて床に叩きつけられた。

 

「いやいや、オーフィスから逃げようなんて無理だぜぃ?」

 

「無謀もいいところにゃん」

 

嘲笑染みた笑みと言葉をする黒歌と美猴。くそっ・・・・・やっぱ、強いな・・・・。

 

「なにやら、面白いことをしているじゃないか」

 

「あ?」

 

俺の真上にさっきの青年が現れた。誰だ?と思いながら立ち上がればヴァーリが口を開いた。

 

「何の用だ、曹操」

 

「なに、彼の翼を見て興味が沸いたんだ」

 

トントンと何やら長い柄で叩いている青年。曹操・・・?まさかな・・・・・?

 

「キミの名前は何だ?」

 

「・・・・・兵藤一誠だ」

 

「兵藤一誠・・・・・ふっ、なるほどな」

 

小さく笑んだ曹操と言う青年。

 

「キミは兵藤一族の者だね?」

 

「―――――っ!?」

 

どうして、そのことを知っている・・・!?目を見開いて曹操を凝視すると、

あいつは首を縦に振って頷き始めた。

 

「我々の情報網は広いんでね。一応、知っていることは知っているのさ」

 

「・・・・・お前、誰だ?」

 

「俺か?俺は曹操。三国志で有名な曹操の子孫さ。一応ね」

 

―――曹操。ここにきてまた英雄の子孫か。

 

「兵藤一誠、俺たちの、『英雄派』の仲間にならないか?

キミなら俺たちの仲間になる素質がある」

 

「・・・・・英雄派?派閥のことか?」

 

「ああ、『英雄派』は英雄の子孫と末裔、魂を引き継ぐ者や

神器(セイクリッド・ギア)神滅具(ロンギヌス)を宿す集団でもあるんだ」

 

・・・・・マジかよ。そんな集団がどうしてここにいるんだ?

 

「ヴァーリたちもそうなのか?」

 

「いや彼女たちは別だ。『ヴァーリチーム』と俺たちの間では呼んでいる。

他にも『真魔王派』という悪魔のみの集団の派閥が存在する。

先ほどのカテレア・レヴィアタンたちのことを差すね」

 

「真魔王派?現在の魔王たちとどう違うんだ」

 

「最後まで徹底的に戦を唱えた悪魔たちが冥界の隅に追いやられた者たちだ。

そう、キミたち兵藤一族と式森家が三大勢力戦争に介入して終戦に導いたせいで、

納得のいかない悪魔たちが大勢いた。それが彼女たち『旧魔王派』なのさ」

 

あー、なんかすみませんね。それしか言えないぞ。

 

「さて、兵藤一誠。俺たちの仲間にならないか?一緒に悪魔と魔王、堕天使、

人間の敵となる存在を倒そう。そして、俺たち人間がどこまでやれるのか挑戦をしよう。

よわっちぃ人間同士でさ」

 

手を差し伸べてくる曹操。悪魔と堕天使・・・・・を倒す。ああ、魅力的な事だな。

 

「・・・・・確かに俺は悪魔と堕天使が嫌いだ」

 

「それで?」

 

「お前の仲間になるのなんて、それとこれは別の話しだ。

悪いが、そのオファーを断わらせてもらうよ」

 

―――刹那。

 

「俺は、家に帰りたいんでな」

 

龍化―――。と呟くと俺の身体がどんどん膨れ上がり、尾が生まれ、翼が背中から出現した。

口元が牙むき出しとなり、手の爪が鋭利になって天井を壊しながら俺の体は巨大化していく。

 

「これは・・・・・」

 

「一誠、お前と言う男は・・・・・」

 

ギェエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

俺は三頭の龍へと変化した。眼下にいる曹操とヴァーリは目を見開いて俺のことを見上げるが、

逃げるならば全力でしないとな!

 

バサァッ!

 

翼を羽ばたかせて宙に浮かぶ。

辺りを見渡せば・・・・・森だらけの地域で俺がいた場所は巨大な城が佇んでいた。

 

「・・・・・異空間のようだな」

 

『ならば、次元の狭間に出れるだろう』

 

「そうと分かれば、帰るとしよう」

 

虚空に穴を広げてその穴の中に潜った。しかし、俺は気付いていなかった。

背中にオーフィスが乗っていたことを―――。

 

―――○●○―――

 

「と、まあ・・・こんな感じで戻ってこれたんだけど、オーフィスまで連れて来てしまったんだ」

 

「グレートレッド、倒す」

 

「オーフィスもこんな感じでさ。次元の狭間に帰りたいそうなんだ」

 

あらかた説明を終えた。そんで、今度はしっかりと俺の頭を抱え込むように離れないとばかり

しがみついてくるオーフィスをどうしようかと悩む俺である。

 

「なあガイア。たまにでもいいからオーフィスを故郷へ帰らせてくれないか?」

 

「・・・・・」

 

綺麗な眉が吊り上げては腕を組み、不機嫌な顔をする。

 

「嫌だ。我から一誠を奪う奴の願いなど誰が聞くものか」

 

「・・・・・まあ、そう言うと思ったけどさ。俺、このままだとまたオーフィスに

連れて行かれかねないんだけど」

 

「また戻ってくればいいではないか」

 

「戻ってこれたのはあいつらが警戒心を抱いていなくて隙を突けれたからだ。

二度目はできないと思う」

 

頭を掻きながら困ったな、と思い悩む。

 

「・・・・・」

 

オーフィスが俺の肩から降り始めた。どうした?と様子を見ていると棚に置かれている

写真に手を伸ばして掴んだ。あれは、リアス・グレモリーのアルバムの中で唯一、

俺が父さんと母さんと一緒に写っている写真だった。

 

「オーフィス?」

 

「・・・・・懐かしい、誠と一香」

 

「「っ!?」」

 

彼女はいまなんて言った?俺の両親の名前をどうして知っている・・・・・?

目を丸くして驚いているとオーフィスは顔をこっちに向けてきた。

 

「お前、誠と一香のなに?」

 

「・・・・・父さんと母さんの子供だ。俺の名前は兵藤一誠」

 

質問をしてくる彼女を素直に答えると、胸に下げていたペンダントを手に取り開いた。

そのペンダントを首から外したかと思ったら俺に見せてくれた。

 

「―――――っ」

 

ペンダントには一枚の写真が収まっていた。その写真には目の前にいる

オーフィスと・・・・・父さんと母さんが写っていた。

 

「我、誠と一香と約束した」

 

『俺たちの間に子供が産まれたらオーフィス、お前も家族にならないか?

きっと賑やかな毎日が送られるぞ。お前の寂しさが無くなるぐらいにな!』

 

「「・・・・・」」

 

父さん、母さん・・・・・。

 

「我、約束を守る。我、この家に住む」

 

「「はっ?」」

 

「我、故郷に戻ることは諦めない。でも、誠と一香の約束、これ大事」

 

突然この家に住むとそう言うオーフィス。

 

「よろしくお願いします」

 

「「・・・・・」」

 

ぺこりと頭を下げた最強のドラゴン。そんな言動するオーフィスにガイアと顔を見合わせた。

 

「どうしよう・・・・・?父さんたちと交流を持っていた事は驚いたけど

悪いドラゴンじゃないんだろう?」

 

「・・・・・こいつは無害に等しいからな。しかし、あいつらと出会っていたとは

驚いた・・・・・」

 

オーフィスのペンダントに収まっている写真に目を向けながら呟く彼女だった。

 

「なぁ、オーフィスの願いは次元の狭間で静寂を得ることだ。

このまま彼女を敵に回したらガイア、唯一ガイアと戦えるドラゴンに付き纏とわれて、

俺たちはおちおち暮らしていけれないぞ?」

 

「ガイアさま、私も一誠さまに賛成です。

聞いた話では何やら怪しげな組織にいるそうではないですか。

オーフィスがその組織の切り札だとすれば、厄介なはずです」

 

「最後のエクスカリバーと聖王剣コールブランドを持つ所有者がいる。

警戒をするに越したことではないか」

 

「『旧魔王派』、『英雄派』、そして・・・『ヴァーリチーム』。

この三つの派閥と最強のドラゴンがいたら、絶対危険極まりないわ」

 

真剣な面持ちで発するリーラとゼノヴィア、イリナも心に危険性を抱いていたようだった。

彼女たちの発言にガイアは瞑目しだす。

 

「グレートレッド、お願い」

 

オーフィスが写真を持って黒い瞳をジッとガイアに向ける。―――しばらくして、

 

「・・・・・オーフィス、条件だ」

 

徐に三本の指を立てた。

 

「我らの、一誠の味方と成れ、それがひとつ目の条件」

 

「・・・・・」

 

「次にいまお前がいる変なところから離れろ。それが二つ目の条件」

 

最後に、と彼女は言った。

 

「我はグレートレッドではない。ガイアと呼べ」

 

そして、「この三つの条件を呑めば、許してやらんわけでもない」とガイアが付け加えて言った。

そんな彼女にオーフィスの返事は・・・・・。

 

「・・・・・分かった。我、その条件を呑む」

 

首を縦に振って頷いた。彼女の条件を全て、呑むとオーフィスがハッキリと言った。

 

「良かったわねー」

 

「ああ、だが問題は残っている。謎の組織とやらを神王さまに説明しないと」

 

「いや、そのことは言わないでくれ」

 

ゼノヴィアの言葉に待ったを掛けた。「どうしてだ?」と彼女に首を傾げられる。

 

「俺が仲間じゃないことはすでにあっちでは知れ渡っているはずだ。

もしかしたら計画を変更している可能性も高い。

だから、神王や魔王たちに刺激を与えて警戒をさせてそれで空振りだなんてことが遭ったら」

 

「・・・・・何も知らせず、自然にいさせるべきだってこと?」

 

イリナの発言に頷いた。

 

カッ!

 

その瞬間。この部屋に幾重の魔方陣が出現した。光とともに現れる数人の男女。

 

「あの子がオーフィスに連れ去られたって本当!?」

 

「・・・ルシファー?」

 

冥界にいるはずの魔王が現れた。彼女だけじゃない、レヴィアタン、ベルゼブブ、アスモデウス、

そして何故かいるフォーベシイとユーストマと天界にいるはずのヤハウェ。

 

「あれ・・・・・いるじゃない」

 

「どうなって・・・・・」

 

「いえ、ちょっと待って下さい。あの子は・・・・・」

 

ヤハウェがオーフィスを視界に捉えた。対し、オーフィスは

 

「久しい、神と魔王」

 

挨拶をした。

 

「まさか・・・・・あなたがオーフィス?」

 

「ん、我、オーフィス」

 

肯定と認めた。そんなオーフィスを愕然とする面々。

 

「お、女の子・・・・・」

 

「以前は男の老人でしたが・・・・・どうして彼の周囲のドラゴンは女性ばかりなのでしょうか」

 

「だけど良かったよ~。兵藤くんが連れて行かれただなんてもしものことが遭ったら・・・」

 

実際に連れて行かれましたけどね。

 

「しかし・・・・・どうしてオーフィスがここにいるのだ?」

 

「ああ、俺たちと一緒に住むことになったんだ。なぁ、オーフィス」

 

「ん、我、この者と一緒に住む。これ重要」

 

と、そう言うとヨジヨジと俺の背中に昇り始めて肩に乗っかった。

ここがお気に入りの指定位置になったご様子。

 

「・・・・・真龍と龍神があの子と一緒に住むことになるなんて・・・・・」

 

「聞いた話では、最強の五大龍王、ティアマットを使い魔にしたとか・・・・・」

 

「あの人たちの子供だけあって、どれだけ凄いの?」

 

「流石と言うべきなのでは?『魔王にも神にも人王にも凡人にもなれる男』は伊達ではないと」

 

「―――ぐはっ!」

 

冥界と天界までその名が伝わっていたのか・・・・・っ!

 

「ううう・・・・・もう、恥ずかしくて外に出られない!」

 

あまりの事実と恥ずかしさに俺はキッチンの方に隠れた。

 

「え、ど、どうしたの・・・・・?」

 

「いえ、お気になさらずに。御心配をおかけしました」

 

「は、はあ・・・・・・」

 

キッチンで隠れていると、リーラたちのやりとりの声が聞こえる。

それからしばらくして、ルシファーたちの気配が感じなくなった。

神王と魔王はまだ残っている。が、あの二人もこの場からいなくなった。

 

「一誠さま、よろしいですよ」

 

「・・・・・」

 

彼女に呼ばれてキッチンから顔を出して皆に近づき開口一番に放った。

 

「俺、冥界と天界にへ行けない」

 

「ははは・・・・・かなり恥ずかしい名前だもんね」

 

「すでに様々な異世界に住む者たちの耳に届いているだろうな」

 

ゼノヴィア、聞きたくないことを言わないでくれよ・・・・・。

 

「だけど、本当に言わなくてもよかったの?」

 

俺の幼馴染が尋ねてきた。その問いに俺は言った。

 

「本当に襲撃してくるのなら―――四種の種族のトップ会談の日だ。

だから、この場にいる俺たちだけで襲撃に備える。四種のトップを囮にしてな」

 

「か、神にまで囮にするとは・・・・・」

 

「罰が当たるわ。絶対に・・・・・」

 

「俺は神に祈ったことは一度もない。何時だって俺は自分の力で生きたつもりだからな」

 

神にまで囮にする俺を恐れ戦く教会組にそう言う。

そうさ、これからも俺はそんな感じで生きていく―――。

 

 


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