ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode7

 

 

駒王学園In二年F組

 

―――ガラッ!

 

「あっ、リーラさん・・・・・あれ、一誠くんは?」

 

「一誠はしばらく学校を休学をします。なのでしばらく学校には来ません」

 

「・・・・・はい?」

 

教室に現れ、一誠がいないことに清楚たちは呆然とした。

 

「え、どういうこと?どうして一誠がしばらく学校に現れないの?」

 

「申し訳ございません。家の事情で口にしてはいけないのです」

 

小さくお辞儀をして言えないというリーラだが。

 

「あの、一誠さんは何時頃になったら学校に来るんですか?」

 

「それは・・・・・分かりかねます」

 

「一誠と暮らしているのにどうして分からないのだ?」

 

「・・・・・」

 

次々と問い出され、リーラは答え辛くなった。ついには―――。

 

「黙秘権を使います」

 

「「「「なんでっ!?」」」」

 

絶対に言わないと口を固く閉ざしたのだった。その頃、一誠はというと―――。

 

 

―――木漏れ通りIn一誠side

 

 

「かれこれ歩き続けているが・・・・・手掛かりというか、

聖剣を盗んだ奴すらの情報もない状況でどうやって見つけるんだ?」

 

聖剣奪還初日、イリナとゼノヴィアと町に歩き続けて探索していた。

何故か白いローブを着るように言われ、言う通り着て歩いているのだった。

俺の疑問をイリナが解消してくれる。

 

「実を言うとね?私たちの前に何人か神父が潜入捜査をしていたんだけど、こ

とごとく殺されているの。だから、私たちが神父の恰好をして街中を歩き回っていれば、

向こうから現れると思っているの」

 

「神父が殺されている?神父を殺したそいつがコカビエルとは思えないんだが?」

 

ゼノヴィアは同意見だと頷いた。

 

「ああ、私もそう思っているんだ。が、同胞を始末したのはコカビエルではなくとも、

こうして歩きまわっていれば、同胞を殺した奴が現れる。

そいつを捕まえてコカビエルと関係があるか吐かせる算段だ」

 

「俺たち自身が囮ということか。見つかるといいんだがな」

 

「そうね。それにしても・・・・・綺麗な町ねイッセーくん」

 

木漏れ通りをキョロキョロと顔を動かして周囲を見るイリナ。

そっか、イリナにとって初めて訪れる町だったな。

 

「この町は木漏れ通りと言って、悪魔と天使、堕天使、人間の四種交流を象徴とする町なんだ。

俺もこの町に住んでまだ日が浅いけど、ちょっとだけどこに何があるのか分かる」

 

「四種交流の象徴の町か・・・・・確かに、悪魔の気配もちらほらと感じるな」

 

「天使の気配を感じる人もいるわ。一般人として暮らしているのね・・・・・これも、

ヤハウェさまがお決めに成ったことなのね」

 

物珍しそうに二人は感嘆を漏らす。まあ、外国から、県外から来た人間にとって

かなり珍しい町なんだろう。それがいま、二人の言動で証明している。

 

「―――あっ、あれは!」

 

「「ん?」」

 

ダッ!と突然イリナがどこかに向かって駈け出した。

俺たちは首を傾げ、頭上に?を浮かべるものの、手掛かりでも見つけたのか?と思い、

イリナの後を追った。しかし、俺の予想とは違っていた。

 

「お客さん、この絵を買ってはどうかね。この絵は由緒正しい聖人が描いた有名な物だよ?」

 

「買ったわ!」

 

「いや、買っちゃだめだろう!?」

 

イリナは下手な画を一目惚れしてしまい露店で画を売っている人物に購入を勧められていた。

 

「イッセーくん!止めないで!この絵は絶対に聖なるお方が描かれた絵に違いないの!

この人だって言っているほどだもの!」

 

キラキラランランと輝かせ、とっても危ない目を俺に向けて言ってくる。

 

「アホか・・・・・画を買うよりも重要なことがあるだろう?」

 

「私にとっていまこの画を買うことこそが重要だもの!」

 

おーい、聖剣よりそっちが大事って神王とヤハウェが聞いたら困った顔をすんぞ。

 

「ダメだ。逆に荷物となる。邪魔だから買っちゃダメだ」

 

「私が持つもん!」

 

「まだ言うか。俺から見てもあれは素人が描いたような絵だったぞ」

 

「そんなことないもん!」

 

「じゃあ、誰かわかるのか?私には誰一人脳裏に浮かばない」

 

「・・・・・たぶん、ペトロ・・・・・さま?」

 

「ふざけるな。聖ペトロがこんなわけないだろう」

 

「いいえ、あんなのよ!私にはわかるもん!」

 

「ああ、どうしてこんなのが私のパートナーなんだ・・・・・。主よ、これも試練ですか?」

 

なんの試練だか聞いても良いか?と思いたくなるほどの発言だった。

ゼノヴィアは本当に頭を抱え落ち込み始めた。

そんな彼女に心外だと機嫌を悪くしたイリナだった。

 

「ちょっと、頭を抱えないでよ。あなたって、沈むときはとことん沈むわよね」

 

「うるさい!これだからプロテスタントは異教徒だというんだ!我々カトリックと価値観が

違う!聖人をもっと敬え!」

 

「何よ!古臭いしきたりに縛られているカトリックの方がおかしいのよ!」

 

「なんだと、異教徒」

 

「何よ、異教徒!」

 

露店の前で喧嘩をし出す二人。周囲にいる人々も何だ?と奇異な視線を向け始める。

そんな視線に耐えきれず、

 

ゴンッ!

 

「「っ~~~!?」」

 

両成敗とばかり、二人の頭に拳を振り下ろして窘める。

頭を押さえて痛みを耐える二人は涙目で俺を睨んでくるが、

 

ガシッ!

 

「おら、そろそろ探しに行くぞ」

 

「えっ?あっ、イ、イッセーくん!?待って!私はあの画を―――――!」

 

「仕事に戻るぞ」

 

「そんなぁーッ!?私まだあの画を―――――」

 

「イリナ、路銀のことも考えてくれ・・・・・パン一つも買えなくなって空腹のままで

仕事なんてできるわけがない」

 

ズルズルとイリナとゼノヴィアと引き摺ってこの場からを離れる。俺がいなかったら

間違いなくこいつ買っていたぞ。こいつの芸術感覚は明らかにおかし過ぎる!

―――初日からこんなんで大丈夫なのかよ・・・・・?

 

「私の画ぇぇぇええええっ!」

 

 

―――○●○―――

 

 

その日の夜。結局、手掛かりというものは得ることができなかった。

家に戻って夕食はイリナとゼノヴィアと共に食べて風呂に入って自室にのんびりと過ごしていた。

 

「うわ・・・・・この件数は何なんだ?」

 

電源を切っていたから分からなかったが、軽く十件を超えるメールが送られている。

そのメールの送り主が清楚たちだった。

 

『どうしてしばらく学校に来ないの?』

 

『教えてください。手伝えることがあれば僕たちも手伝いますよ』

 

『リーラさんが黙秘権を使って教えてくれない。どういうことなんだ?』

 

『イッセー教えろ!』

 

『イッセー、皆から聞いたけどしばらく学校に来ないですって?どんな理由なの?』

 

『イッセーくん、具合でも悪いのですか?もしそうならお見舞いに参ります』

 

『お父さんから聞きだしても教えてくれないっす!イッセーくん、理由を聞かせて!』

 

『イッセーさま、一体なにを抱えているのですか?私たちに言えない秘密なのでしょうか?』

 

『このままイッセーくんに会えないなんて嫌だよ。ねぇ、教えて?』

 

『兵藤くん、教えてください。皆さんが心配していますよ』

 

それから俺が返事を送らなかったせいなのか、清楚たちからのメールが多数届いていた。

 

「(絶対リーラは苦労しているよな)」

 

少し罪悪感が感じだした。リビングキッチンにいる彼女に労いでも言おうと体を起こした。

 

コンコン。

 

「ん?開いているぞ」

 

扉からノック音が聞こえた。俺の言葉を聞きドアが直ぐに開いた。

 

「イッセーくん・・・・・」

 

黒い戦闘服のままのイリナが入ってきた。

 

「あれ、風呂に入らなかったのか?」

 

「入ったけど、着替えるものがなくて」

 

「あー、なるほどな」

 

ちょっと待ってろ、と俺はベッドから降りてクローゼットの扉を開いて中を漁った。

えーと、これでいいか。

 

「ん、これでも着てろ」

 

俺の白いワイシャツをイリナに放り投げながら言った。彼女は受け取ると、

戸惑いの色を浮かべた。

 

「え?これって・・・・・イッセーくんのワイシャツ?」

 

「ああ、その上にでも羽織るように着ればいいさ。

その姿、肌の露出はないけどイリナのボディラインがハッキリと浮かんで分かるぞ」

 

「―――――っ!」

 

ボンッ!とイリナの顔が羞恥で赤くなって、俺に背を向けながらワイシャツを着込んだ。

それから彼女は言った。

 

「・・・・・イッセーくんのエッチ」

 

その言葉に真っ直ぐイリナに真剣な眼差しを向けた。

 

「ちょっと待とうか。どうなったら俺が変態に成るんでしょうか」

 

「だ、だって・・・この姿をしている時の私を見ていたじゃない」

 

「不可抗力と言っておくぞ。それにその姿でいるイリナが全面的悪い。

白いローブを脱いだら下はそれじゃないか」

 

うっ・・・、とイリナはぐうの音も出せなかった。言葉を詰まらせ何か言いたげに俺を睨む。

 

「・・・・・なぁ、イリナ」

 

「・・・・・なによ」

 

なーんか、警戒されてんな・・・・・。

 

「どうして俺はグレートレッドに鍛えてもらっていると思う?」

 

「え・・・・・?」

 

突然そう言われたら、誰だって唖然するよな。どうしてそんなことを?みたいにさ。

 

「俺は父さんと母さんが死んでとある理由でグレートレッドに鍛えてもらっているんだ」

 

「理由って・・・・・なに?」

 

「父さんと母さんを殺した悪魔と堕天使の三人に復讐するためだ」

 

「っ!?」

 

イリナは絶句した面持ちを伺わせてくれた。死因は殺人と言われているだろうが、

その殺人者を俺は会っているんだ。そう、あの時、家の中でな・・・・・。

 

「イッセーくんのご両親は悪魔と堕天使に・・・殺された?」

 

「血塗れの俺の家族の傍にいたんだ。殺したのは俺たちだと、俺に言って・・・・・」

 

「そんな・・・・・」

 

「だからだ。俺が姿を現さず、行方不明になっていたのは次元の狭間でグレートレッドと

生活を送って、鍛えさせてもらっているんだ。

父さんと母さんを殺したあの三人を殺して復讐をするために」

 

「・・・・・」

 

俺の言葉を静かに耳を傾けてくる。

 

「イリナ、時間の流れって残酷だな。俺が復讐者となっているのに、

久し振りに再会した幼馴染は教会の人間に成っていた。

復讐者の俺は闇で、教会の人間のイリナは光だ」

 

「―――――」

 

「もしも俺が―――」

 

口を開いた次の瞬間、イリナが抱きついてきてベッドに押し倒された。

 

「イリナ・・・・・?」

 

「違う・・・・・イッセーくんは闇じゃない・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「だって、イッセーくんは親から虐めに遭って子を助けたじゃない・・・・・」

 

・・・・・あの子か。いま思い出せば懐かしい奴だなイリナと三人で遊んだ子供だ。

 

「俺自身じゃないよ。父さんと母さんがあの子を虐めていた親から助けたんだ」

 

「それでも!あなたは確かにあの子を助けた!」

 

バッ!と顔を上げた。瞳を潤わせていた。怒り、悲しみで顔を歪ませている。

 

「私が教会に所属した理由は、そんなイッセーくんを見て、

将来は誰かのために役に立ちたい大人になろうと決めたからなのよ!」

 

イリナ・・・・・お前・・・・・。

 

「だから・・・・・だから自分を闇だなんて、言わないでよぉっ・・・・・」

 

嗚咽を漏らす。イリナと言うただ一人の少女が俺のなんかのために泣いてくれる。

 

「・・・・・ごめん」

 

彼女の背中に腕を回して耳元で声を殺して謝罪する。するとイリナも俺の背中に腕を回してきた。

 

「・・・・・今夜、イッセーくんと寝たい」

 

「・・・・・分かった」

 

俺とイリナはお互いの額をくっ付け合った。そして徐におかしいように笑みを浮かべる。

 

「昔こうやって向かい合って寝たよな」

 

「うん、私の家とかイッセーくんの家とか泊って一緒に寝たね。

その度にイッセーくんのおばさまがなんか嬉しそうに笑っていたよね」

 

「なんでだろうな」

 

「さあ、今になっても分からないよ」

 

だよな、と苦笑を浮かべる。

 

「ねぇ、イッセーくん。好きな人、いる?」

 

「急にどうしたんだ?」

 

「久し振りに会った幼馴染のことが気に成るじゃない」

 

・・・・・それを言われるとイリナはどうなんだ?って疑問が沸くんだけどな・・・・・。

 

「って、イッセーくんにはシアさまや魔王の娘の婚約者候補だったわね。聞いて野暮だったわ」

 

「いや、あいつらに好意を抱いていない」

 

「そうなの?」

 

「いきなり決められたんだ。向こうが俺に好意を抱いても俺は抱いていない状態なんだ」

 

素直にそう言った。だが、もしかしたらあの三人に好意を抱くかもしれない。

それまでは今のままの状態だ。

 

「そう言うイリナはどうなんだ?」

 

「えっ?うーん・・・・・小さい頃だったらいたかな」

 

ほう、幼い頃か。何時も俺たち三人はやんちゃに遊んでいたからな。

男だと思っていたんだけど実際は少女だった。

 

「そうか、その子は今どうしているんだろうな」

 

「・・・・・そうだね」

 

イリナの腕が背中から俺の首に動かして絡めてきた。さっきよりも体同士の密着の度合いが―――。

 

「もしその子がイッセーくんだったら・・・・・イッセーくんは迷惑かな?」

 

「・・・・・はっ?」

 

「ううん・・・・・やっぱりなんでもない・・・・・」

 

「おやすみ」と彼女はいい俺の胸に顔を押し付けながらそのまま寝だした。

しばらく、彼女を見ていた俺は耳元で呟いた。

 

「迷惑じゃないさ。イリナ、お前も俺の家族に成って欲しい」

 

俺も「おやすみ」と彼女の頬に唇を軽く押し付けてそれから瞑目した。

 

「・・・・・イッセーくんのバカ」

 

と、そう言うイリナが顔を赤くしたのを俺は知らなかった。ただ、心の中で苦笑するだけだった。

 

 

―――○●○―――

 

 

イリナとゼノヴィアと共にエクスカリバー奪還を果たすために行動して二日目、

 

「そんじゃ、今日もブラッと町中を歩きまわりますか」

 

「今度は人気のない場所で歩いて回ろう」

 

「うん、そうね」

 

今日は違う場所で探索することにした。できるだけ人気のない場所を中心に。

 

「しかし、どうしてお前までついてくるんだ?」

 

頭の上に乗っている動物に問いかけた。銀色の毛並みに青と金のオッドアイの猫だ。

―――猫の妖怪、猫又の上位妖怪である猫魈の銀華。

 

「人を探すなら仙術を使える私の出番というわけにゃ。

ただ歩いて探すより、相手の気を覚えてその気を頼りに探せばすぐに見つかるわ」

 

「へぇ、猫の妖怪ってそんなことができるんだ?」

 

「そうよ?一誠、仙術を学びたいかしら?」

 

「ああ、ぜひ学びたいな。探索にも便利そうだ」

 

しかし、彼女は「それだけじゃない」と付け加えた。

仙術は、対象の相手の行動は気や生命で把握できて理解し、操ることもできる。

逆に相手の気を操って乱したり断つことで生命ダメージを与え行動不能もできる。

もちろん、対処方法は限られているから大概死ぬらしい。

 

「もしかしたら、一誠も仙術を扱えるかもしれない。試してみる価値はあるわよ」

 

「そうか、じゃあ家に戻ったら教えてくれ、銀華師匠」

 

「ふふふ♪人に何かを教えるのって初めてだから楽しみにゃん♪」

 

目を細め、ニンマリを口の端を吊り上げて二つの尻尾をユラユラと嬉しそうに揺らした。

さて、それから俺たちは歩き続けた。

周りから奇異な視線が送られるが、顔を隠しているので正体は分からないだろう。

 

できれば今日は足をつかみたい。―――と、励んでみたものの、

いたずらに時間だけが過ぎるだけで、もう夕方だ。

 

「んー、今日も現れなかったか」

 

「一先ず、イッセーくんの家に戻って体勢を立て直したら、夜にまた探しましょう?」

 

「そうだな。イリナの言う通りにしようか」

 

イリナの提案にゼノヴィアが賛成した。俺も同意と頷いて踵を返した―――。

 

「待って」

 

突然、銀華が待ったを掛けた。猫耳をピクピクと動かし始めたかと思えば―――。

 

「上!」

 

銀華がいきなり叫ぶように言った。俺たちが上空を見上げた時、

長剣を構えた白髪の少年が神父のような服を着込んで降ってきた。

 

「神父の一団にご加護あれってね!」

 

ギィィィィィン!

 

俺が素早く金色の翼を生やして、少年神父の一撃を防いだ。

 

「お前は―――!」

 

ゼノヴィアが一瞬目を丸くしたが、聖剣を巻いていた布を取り払って構えた。

 

「知っている奴か?」

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。

十三歳でエクソシストになった天才。悪魔や魔物を次々と滅していく功績は大きかったから

別名『白狂狼』なんて異名で呼ばれていたわ」

 

同じくイリナも聖剣を刀に変えながら少年神父のことを説明してくれた。

 

「だが、奴はあまりにやり過ぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。

フリードには信仰心なんてものは最初からなかった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意。

そして、異常なまでの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」

 

目を細め、聖なるオーラを放つ長剣を見てゼノヴィアは呟いた。

 

「『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』・・・・・なるほど、

今までの神父を殺してきたのはお前ということか」

 

「はいはい!そぉーでございますぜぇ?ちょいとこのエクスカリバーちゃんで

神父って腐れ外道をザックリと突き刺したり刺したりと殺って()いたんデスはい!」

 

「なんてことを・・・・・!」

 

「んー、今回は期待大の予感ですねぇー?なんせ、聖剣の使い手と天使が相手だから俺は興奮して

イッちゃいそうだっぜ!」

 

フリードという神父は姿を消した。速い・・・っ!

 

「が、追えれないスピードではないな!」

 

翼を動かしてイリナを守るように包んだ。次の瞬間、翼に衝撃が伝わった。

 

「なぬっ!?」

 

「はぁっ!」

 

フリードが姿を現したところで、ゼノヴィアが斬りかかった。

その攻撃にフリードは聖剣で受け止め、鍔迫り合いをする。

 

「フリード・セルゼン。反逆の徒め。神の名のもと、断罪してくれる!」

 

「ハッ!俺の前で憎ったらしい神の名を出すんじゃねぇや!ビッチが!」

 

「戦闘狂のあなたには天罰を下すわ!アーメン!」

 

苛立たしいそうに叫ぶフリードの横からイリナが飛びかかった。

フリードはゼノヴィアを強引に押し返してイリナに斬りかかった。

 

「ひゃっはー!」

 

「「はぁぁっ!」」

 

二人は相手を斬らんとばかり、聖剣を激しく振るった。そこにゼノヴィアも加わった。

 

ガキンッ!ギィィン!

 

聖剣の刃がぶつかり合う度に火花が散る。二人は強いが、あのフリードって奴も強い。

しばらく見ていてもいいが・・・・・それだと退屈だな。そろそろ―――、

 

「俺も手を出すとしよう」

 

瞬時でフリードの背後に回って頭を掴んだ。

 

「はい?」

 

「取り敢えず、痺れろ」

 

ビガッ!ガガガガガガガガガッ!

 

「あばばばばばばばばばばっ!?」

 

魔力を天に昇るほどの雷に変えてフリードにダメージを与えた。攻撃を止めれば、

全身から黒い煙を立ち昇らせる。掴んだ頭を離せば、バタリと倒れた。

 

「強いのね、イッセーくん」

 

イリナが話しかけてきた。強い・・・か。その言葉にどうしても嬉しくも、喜びも感じなかった。

 

「いや、弱いさ」

 

「自分を過小評価か?」

 

「過大評価、過小評価はどうでもいい。俺は俺を必要とし、

俺を愛してくれる皆を守れる力が欲しい。だから―――」

 

徐に、翼を動かした。薙ぎ払うように周囲に動かせば、翼に何かが直撃した感触が伝わった。

 

「近づくなら、もう少しタイミングを計って動け」

 

壁にぶつかった二人の少年に言った。ゼノヴィアとイリナは目を丸くして唖然となっていた。

 

「何時の間に・・・・・」

 

「気付かなかったぞ」

 

「姿を消していた。多分、あれの能力なんじゃないか?」

 

二人の少年の傍にある刀剣。あの刀剣からイリナとゼノヴィアの聖剣と酷似した波動を感じる。

 

「『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』、『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』だわ!」

 

「フリードと聖剣を奪いに来たということか」

 

二人は直ぐに二つの刀剣に気付いた。あっ、やっぱりそうなのか?

 

「じゃあ、あの二つの聖剣を奪えば、終わりということだな?」

 

「ええ、まさか・・・こんなに早く終わるなんて拍子抜けだわ」

 

イリナが溜息を吐いた。おいおい、早く終わって良かったじゃないか?

 

「だが、まだコカビエルが残っている。奴を―――」

 

ゼノヴィアが堕天使の幹部の名を口にしたその時だった。

 

「俺がなんだって?」

 

「「「―――っ!?」」」

 

俺だけじゃなく、イリナとゼノヴィアが目を大きく見開いた。

この圧倒的なプレッシャーは・・・!

上空を見れば―――装飾の凝った黒いローブに身を包む若い男。

背中には・・・・五対十枚の漆黒の翼を生やしていた。

 

「まったく、強大な魔力の波動を感じたかと思えば、

フリードたちが呆気なくやられていたとはな」

 

・・・奴が堕天使の幹部、神の子を見張る者(グリゴリ)のコカビエルだと思ってもいいだろう。

あの時の三人の堕天使より実力が桁違い過ぎる。

いや、次元が違い過ぎると言っても過言じゃない。

 

「とりあえず、フリードだけでも回収するか」

 

指をパチンと弾いたコカビエル。その直後だった。

気を失っているフリードの下に魔方陣が展開して、姿が消えた。聖剣も一緒にだ。

それだけじゃない、奪われていた残りの二本の聖剣も魔方陣によって消えた。

 

「六対十二枚の翼・・・・・誰だ?ミカエルたちの新しい熾天使(セラフ)の者か?」

 

「生憎、俺は天使じゃない。人間だ」

 

「―――ほう?つまりその姿は『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』、『神滅具(ロンギヌス)』か。

くくくっ、これは面白いものを目にしたぞ。

―――あの女の神器(セイクリッド・ギア)を宿す人間と出会うことになるとはなぁ」

 

あの女・・・・・?

 

『あの二人もまた神器(セイクリッド・ギア)の所有者でしたからね』

 

―――っ!

 

脳裏にヤハウェの言葉が過った。この力は、神滅具(ロンギヌス)はお母さんの形見・・・だとすれば!

 

「お前・・・・・あの人のことを知っているのか?」

 

「ん?お前・・・・・あの女のなんなのだ?」

 

コカビエルは興味深々と訊いてきた。

その言葉は間違いなくお母さんとお父さんを知っている言い方だった。

 

「・・・・・俺の名前は兵藤一誠だ。母、兵藤一香と父、兵藤誠の間に生まれた子供だ」

 

二人の子供だとハッキリと告げた。コカビエルはしばらく無言になって、

確かめるような目つきで俺を見据えた。

 

「・・・・・くっ」

 

不意に、コカビエルが・・・・・。

 

「くっはっはっはっはっはっはっはぁっ!はーっはっはっはっはっ!」

 

笑いだした。仕舞には腹を抱え出す。なんなんだ?と目を細めて怪訝な顔で見上げていれば、

コカビエルの口が開いた。

 

「あの二人の子供か!まさか、あの女の力を受け継いでいたとはな!

これは面白い、実に面白い!―――兵藤一族よ!」

 

「・・・・・兵藤一族?」

 

なんだ・・・それって、どういうことだ?困惑している俺をコカビエルは笑みを浮かべていた。

 

「なんだ、自分の出世のことを知らんのか?お前の父と母はそれはそれは強かったぞ。

あの三大勢力戦争―――俺たち堕天使や悪魔と魔王、神と天使が世界の覇権を巡っていた

戦争の最中に乱入してきた人間どもと一緒に戦っては、よりにもよって戦争を終戦に導いた

腹立たしい兵藤家の人間どもの一族だった」

 

「「「―――――っ!?」」」

 

父さんと母さんが三大勢力戦争を終結に導いた人間・・・・・?兵藤家、兵藤の一族・・・・・。

 

「確か・・・・・式森とかいう魔法使いの人間どもも一緒にいたな。奴らも強かった。

あの時の戦争がいままで戦ってきた中で、一番楽しかったなぁ・・・。

混沌と化となったあの時の戦場を。ははははっ!いま思い出しただけで、歓喜に震える・・・!」

 

式森・・・・・?魔法使い・・・・・?おい、そいつって・・・・・・。

 

「(式森和樹―――お前なのか?)」

 

「兵藤一誠といったな?俺はこれからサーゼクス・グレモリーとリアス・グレモリーの根城である

駒王学園を中心にしてこの町を暴れさせてもらう。

そこで、エクスカリバーを巡る戦いをしよう!」

 

「なっ、そんなことしたら、堕天使と神、悪魔の戦争が再び勃発するわよ!

あなた、正気なの!?」

 

「俺は正気だ。だから兵藤一誠。深夜、駒王学園に来い。

この町を全て破壊されたくなければ俺と戦い、倒す術しかないぞ。

ふははははっ!夜になるのが待ち遠しいな!あの二人の子供ならば、さぞかし強いだろう!」

 

哄笑を上げながらコカビエルは魔方陣を展開して姿を暗ました。

だが、俺は追い掛けることをしなかった。あいつの口から発せられた事実に思考が追いつけない。

 

「イッセー!」

 

遠くから聞き慣れた声が聞こえた。振り向けば―――紅髪を激しく揺らしながら駆けてくる

リアス・グレモリーが視界に入った。彼女だけじゃない、清楚たちまでいた。

 

「・・・リアス・グレモリーか」

 

「どうする・・・・・?」

 

「・・・・・一先ず、神王さまに報告をしよう」

 

いいな?とゼノヴィアが視線で問いかけてきた。

 

「ああ・・・・・俺もあの二人に問わなければならないことができた」

 

二人を抱え、翼を羽ばたかせて家に向かって飛翔した―――。

 

 


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