ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode3

 

 

その日の放課後。俺は一人でとある山に飛んで来ていた。どうしてなのかって?

―――呼ばれたんだよ。あいつに。

 

『イッセーくん、彼女が来てほしいそうです。一度くらい顔を出してあげたらどうでしょうか?

悪魔に優しいイッセーくん』

 

って、ソーナ・シトリーに言われたんだよ!

くそっ、絶対にからかった事を何時か後悔してやる・・・・・!

 

バサッ!

 

えーと、別荘がある山・・・・・・。

 

『あそこではないか?ドライグの気配を感じる』

 

内にいるクロウ・クルワッハが話しかけてきた。ああ、あれか。木造建ての別荘。

目を凝らして見てると、表に誰かがいる。その中で一番目立っているのが赤い髪だ。

別荘から離れた場所に降り立ってそこから歩を進める。

急な斜面の道だが、気にせずに歩いていくと、

 

「よっ、はっ」

 

「おりゃ!おりゃぁぁ!」

 

「・・・・・」

 

ジャージに着替えたグレモリー眷属がいた。何をしているのかと思えば・・・・・。

 

「まるで子供の稽古のようだな」

 

「そう言うこと言わないでちょうだい。一応、必要な事よ?」

 

クルリと俺に振り向くリアス・グレモリー。だけどなぁ・・・・・。

 

「あいつの場合は体術、格闘で攻撃した方が良いと思うぞ。

木場だって本気も出さずに隙だらけのあいつと相手にしているんだからな。

これは当然だけど、一朝一夕で剣術を身に付くわけがない」

 

最小限の動きで男子に相手をしている木場と大振りで木刀を振り回す男子を見て溜息を吐く。

あっ、木刀を落とされた。

 

「よく来てくれたわね。来ないのかと思ったわ」

 

「ソーナ・シトリーに一度ぐらいは顔を出してきなさいって言われたんだ。

俺自身も、どうしているのか気になっていたからちょうど良かったがな」

 

「ふふっ、そう」

 

なんか嬉しそうだな。笑むリアス・グレモリーは木場に顔を向けて頷いた。

木場は頷いて一本の木刀をこっちに投げ渡してきた。

 

「なんだ?」

 

受け取りながら怪訝になって訊く。どういうことだ?と、

 

「イッセー、あなたは剣術に心得が?」

 

「いや、殆どないな。なんなら、やってやろうか?」

 

「そうね、お願いするわ」

 

承諾をもらって木場たちに近づき木刀を拾って木場に対峙する。

 

「お手合わせ願う。グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』」

 

「うん、よろしくね」

 

涼しい顔で俺と対峙する。

―――――次の瞬間、俺は木場の背後に移動して木刀を素早く振り下ろした。

 

ガッ!

 

しかし、後ろに木刀を回してアッサリとガードされた。

 

「ま、当然だろうな」

 

「・・・・・まさか、いきなり僕の背後から攻めるなんて驚いたよ。それに物凄く速いね。

あの時もそうだったけど、僕の目でも追い掛けられなかったよ」

 

「まだ本気も出していないぞ?ほら―――――本気か全力で来い。じゃないと俺はお前を殺すぞ。

俺は殺す気でお前と相手をするんだからな」

 

「・・・・・そうみたいだね。キミから殺気を感じるよ」

 

真剣な表情で俺を尻目で見る。涼しい顔じゃ無くなったな?ああ、それでいいんだよ。

 

「・・・・・ふっ!」

 

「はぁっ!」

 

俺たちは高速で動き合い、相手の体に一撃を与えんと木刀を振る。

剣術はあんまり得意じゃないが、力任せじゃなく、最小の動き、テクニック、スピード重視が主だ。

後は実戦経験で詰めていけばなんとかなる。と、思いながらしばらくやっていると、

リアス・グレモリーから待ったの声が掛かった。

 

「あなた、本当に剣術の心得がないの?祐斗と同等のスピードで剣を交えれるなんて

凄いとしか言えないわ」

 

「剣の師匠はいないけど、実戦でやれば自然と、って感じだ。

それに剣術って速さと技量が求められる。俺はその二つを高めて今に至っているんだけど」

 

「そう・・・・・まあ、あなたはあの二匹のドラゴンに鍛えられているものね。

その実力は納得するものでしょう」

 

ん、そういうことだ。頷いて木場に顔を向けて言った。

 

「で、まだ続けるか?」

 

「個人的にそうしたいけど、イッセーくんの修行が終わってないからね」

 

「俺?」

 

「ああ、違うわ。この子のことよ」

 

リアス・グレモリーが、男子生徒に視線を向けた。ああ、こいつのことか・・・・・。

 

「赤龍帝のドライグか」

 

「成神一成。それが現赤龍帝の名前よ」

 

「なんだ、晴れて悪魔になったのか」

 

「ええ、兵士(ポーン)の駒を八つ消費して悪魔になったの」

 

駒を八つ・・・・・。それほどの秘めた何かがあるということなのか・・・・・・?だが・・・・・。

 

「現段階でこいつはまだまだ雑魚だな」

 

「んなっ!?」

 

「まっ、これから修行とか死闘とか、戦闘とかし続けたら何時の間にか強くなるだろう。

それまでは苦労するだろうが」

 

「そうね・・・だからあなたを呼んだの。この子の相手をして欲しくて」

 

・・・・・そういうことか。

 

「ドラゴン同士の戦いをしてくれって?明らかに月とスッポン以上の差だぞ。

象と蟻、ドラゴンとトカゲぐらいに」

 

「そこまで言うか!?」

 

成神が食って掛かった。当然だ、とばかり言ってやった。

 

「俺は小さい頃から修行してきたんだ。悪魔に転生したばかりのお前と違ってな」

 

そうだ。俺はこいつと何か全てが違うんだ。

天龍を宿した悪魔がなんだ。それがどうしたってんだ。

 

「それで、本当にこいつと戦えって?」

 

「ええ、お願い。ドラゴン同士の戦いなら刺激的にもなるから」

 

「こんな見るからに平凡に過ごしてきた奴が、一朝一夕でどうにかなるもんかねぇ?」

 

成神から数メートル離れて対峙する。

 

「取り敢えず、俺は悪魔がら嫌いだからよ。お前を殺す気で戦う」

 

金色の六対十二枚の翼を背中から展開して、構える。

 

「・・・・・っ」

 

ジリッ、と俺に畏怖の念を抱いたのか、恐れ戦いたのか後退りする。

 

「先に忠告するぞ。腕と足、俺は躊躇もなく斬る。だから、両手足には気をつけろ」

 

「はっ!?どうしてそこまでされなきゃならないんだよ!?」

 

「危機感が鈍いと、判断能力が疎くなる。ほら―――やるぞ」

 

翼を動かした―――刹那。成神に向かって伸びていく金色の翼。成神は目を丸くして直ぐ、

俺に背中を見せて逃げだした。

 

「おい、フザけているのか?敵に背を向けるとどうなるかその体に叩きこんでやるぞ」

 

翼が刃物状と化となり、一気に成神の四肢を襲わんとした。まずは―――その右腕だ。

 

ズバンッ!

 

あいつの腕は、二の腕から完全に離れた。その瞬間。

 

「ぐぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

激しい激痛に成神は悲痛を上げた。だが、俺は容赦なく、今度はあいつの左足を斬った。

するとまたあいつは倒れながら悲痛を上げる。

 

「言ったはずだ。両手足には気をつけろと」

 

そう言いながらも右足を斬った。

 

「お前はただ避ける事だけ専念すればいいだけだった。

さっきだって、お前が何とか反応できるかなり遅い速さで翼を動かした。それがなんだ。

お前の取った行動は逃げる?フザけているのか?

お前が逃げたら、誰がリアス・グレモリーを守るんだ?」

 

「ぐうううううううっ!」

 

「お前は『(キング)』を死んでも守るための『兵士(ポーン)』だろう?どうして逃げるんだ。

学校の体育の授業に参加していないのか?学んでいないのか?」

 

成神の胸倉を掴んで持ち上げる。こいつの表情は涙と鼻水でグシャグシャだった。

 

「お前は何の覚悟も抱いていない、ただの木端悪魔か?」

 

切断した両足と片腕を翼で拾って、それぞれの傷口にくっ付けながら翼を包む。

 

「悪魔に転生した以上、お前は強くならなければならない。誰よりも強くな」

 

胸倉を掴む手を放す。地面にドサリと落ちた成神の両足と腕は完全にくっ付いていた。

翼を消失させて成神を見下ろす。

 

「十日と言ったが。一朝一夕でライザー・フェニックスに勝てる見込みはない。

今のお前の気持ちじゃあな」

 

―――○●○―――

 

―――――レッスン1姫島朱乃との魔力修行

 

「そうじゃないのよ。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。

意識を集中させて、魔法の波動を感じるのですよ」

 

あれから俺は、リアス・グレモリーたちの修行の様子を見ることになった。

主に、成神と金髪の少女の悪魔、アーシア・アルジェントのだ。

黒いジャージ姿の姫島朱乃が魔力の使い方を指導していた。

 

「・・・・・」

 

俺も何となく試してみた。今まで神器(セイクリッド・ギア)の能力で戦っていたから、

魔力があるのか今疑問が沸いた。えーと、魔法の波動っと・・・・・。

 

「こんな感じか」

 

手の平に禍々しくどす黒い魔力の塊が具現化した。我ながら、なんていう色の魔力なんだろうか。

 

『それがお前の色という事であろう。もう一つ、魔力を出してみろ』

 

「こうか?」

 

ポンと、もう片方の手の平に魔力の塊を出した。色は―――白だ。

 

『お前の魔力の色は黒と白。お前は心に光と闇を抱いている。

だから、俺たちはお前を気に入っている』

 

「・・・・・そうか」

 

『お前は俺たちが鍛える。だからお前は安心して身を委ねろ』

 

なんだろう・・・・・最後の言葉がとても卑猥に聞こえる。

 

『くくく・・・・・』

 

 

―――レッスン3 小猫との組み手

 

「ぬががああああああああああああああああああっ!」

 

ドゴッ!

 

これで十回目の巨木との熱い抱擁に成功する成神。うん、正直に言うと・・・・・いや、

これはあまりにも・・・・・。

 

「「・・・・・弱っ」」

 

小柄な白い髪の女子生徒、塔城小猫と同じ言葉を発して成神の実力のレベルに呆れる。

 

「成神、もう少しは粘れよ。ただ突っ込むんじゃなくて相手の動きを観察して、

攻撃パターンを読み、かわし、隙をついて攻撃をするか最大の一撃を放て。武器を持っている

敵なら武器を破壊して相手の心をへし折ってやれ」

 

「・・・・・」

 

パシッ!

 

「不意打ちなんて甘いぞ?」

 

拳を突き出してくる小猫に軽く受け止めて拳を掴んだまま小猫を腕を上げて地面に叩き付けた。

 

「ぐっ・・・・・!」

 

「こ、小猫ちゃん!」

 

「軽いな。ちゃんと飯を食べているのか?羽のような軽さだったぞ」

 

「・・・・・食べています」

 

と、俺に飛び掛かってきた。さっきので火が付いたのか小猫は拳を、足を身体全体を

使って攻撃してくるが受け止め、かわし、いなし続けていく。

 

「うーん、まあまあだな」

 

そう言いながら、小猫の顔面に向かって拳を振るった。

―――が、途中で拳を開いて小猫の腕を掴んだ。

 

「っ!?」

 

「よっと」

 

強引に引き寄せて、対面になるように抱きかかえて座ってみた。

 

「・・・・・」

 

「ははは、猫みたい可愛いな。悪魔とは思えないや」

 

胡坐を掻いた俺の足に乗った途端に大人しくなった彼女にそう言った。

笑みを浮かべながら頭をナデナデ、顎下をくすぐるようにナデナデ、背中もナデナデ・・・・・と、

猫のように撫で始めた。

 

「・・・・・」

 

さて、こうしているが小猫の反応は・・・・・。

 

「ふ・・・・・」

 

おっ・・・・・?

 

「ふにゃ・・・・・」

 

 

―――――小猫が蕩けた。

 

 

―――――レッスン4 リアス・グレモリーと、

 

「ほーら、イッセー!気張るのよー!」

 

「おおっス!」

 

「頑張れー」

 

「お前は降りろコラ!」

 

険しい山道を駆け登り、背中に岩、身体に縄で巻き付けている成神。俺とリアス・グレモリーは

岩の上で座っている。こいつが山道を駆け登っては降りての繰り返す。舗装されていない

山道でだ。何十往復もした頃にリアス・グレモリーは終了の言葉を告げた。

だが、それは一瞬だった。

 

「次は筋トレね。腕立て伏せいくわよ」

 

「へ、へーい・・・・・」

 

ノロノロと疲れた体で腕立て伏せの姿勢をした成神の背中に容赦なく岩を載せる。

さらにその上にリアス・グレモリーが乗り、俺も乗る。

 

「って、お前は降りろよ!?」

 

「それだけ元気があるならもう一つぐらい岩を載せても大丈夫そうだな」

 

「今のイッセーにはこれが限界そうだからしないわ。さーて、腕立て伏せ三百回。

いってみましょうか」

 

「オースッ!」

 

「頑張れー」

 

「てめぇは本当に降りろよ!?」

 

何を言うか、これぐらいは俺だってしたんだぞ?できなくてどうするんだ成神。

 

―――夜。

 

「お前ら、夕食の時間だ。今日は特別に俺が作ってやったから残さずに食えよ。

カロリー控えめにスタミナ増強の料理、疲労を少しでも回復できるように料理を作ったからな」

 

テーブルに豪華な食事が盛られている。グレモリー眷属の面々が色々と食材を

調達してくれたから準備する手間が省けた。ありがたやありがたやだ。

 

「・・・・・これ、貴方が全部・・・・・?」

 

「まあな。帰る前についでと作ってみた」

 

『・・・・・』

 

「そんじゃ、俺は帰る。リーラやプリムラたちが待っているからな」

 

この場から去ろうと、皆の前から踵を返して歩を進める。

 

「―――イッセー」

 

「ん?」

 

なんだ、と後ろに振り返る。俺の視界にリアス・グレモリーが立っていた。

 

「また、学校が終わったら来てくれるかしら・・・・・」

 

リアス・グレモリーは真っ直ぐ俺に向かってそう言った。対して俺は直ぐに踵を返し、

 

「気が向いたら」

 

それだけ言い残して、

 

「明日、お前を鍛えてやるよ」

 

「っ!」

 

俺はこの場から離れた。たくっ・・・・・今回だけだからな。


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