ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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番外編Episode1

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「なあ、ほんっとうに大丈夫だよな?」

 

「何度も聞くなよ。何度も試したから問題ない。悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の製作者、

アジュカ・アスタロトにも手伝ってもらっているんだぞ」

 

「お前が関わっていることは碌なことが無いんだよ。あの件、忘れたわけじゃないよな?」

 

目を細め、アザゼルの研究に手伝わされている俺は―――カプセルの中で睨んだ。

俺を閉じ込めるカプセルは超長距離転移装置で地球の裏側にまで

一気に飛ばすという有り得なく、完成したら便利な装置になる。

ただ、この装置は既にどこかへ設置したもう一つのカプセルとでなければ

移動できない欠点がある。アザゼルが言うにはもう一つの装置はこの研究のために

借りたホテルに設置しているため、俺はそのホテルの中に飛ばされる予定だ。

 

「問題ない。色々と試してみたが、確かにアジュカと共に成功したんだ。

今までは無機物、魂が無い物でやっていたから今度は魂がある有機物を試したい訳だ」

 

「これで失敗したらお前、ヴァーリからフェンリルを借りて魔力が使えない空間で

走らせてやるからな」

 

アザゼルの顔に冷や汗が流れ出た。これ、決定だ。

 

「じゃ、じゃあ・・・・・はじめんぞ」

 

装置を起動させるアザゼルを見守る。ふと、俺が入っているカプセルに

電気エネルギーと魔力が伝わって、俺の視界は一瞬の閃光に包まれて視力が奪われた―――。

 

 

 

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォンッ!

 

「げほっ!げほっ!」

 

爆発で生じた煙で何度も咳し、転移先に設置されているカプセルが俺が辿り着いた

衝撃で壊れてしまったようだ。壊れたカプセルから抜け出て俺はようやく辺りを見渡す。

アザゼルが設置したホテルの中・・・・・じゃない?―――ここって、どこだ?

爆発の影響で散乱してしまった書類にフラスコ類の物、埃が被っている室内・・・・・。

もう、何十年もこの部屋は掃除されていなく使われていないと思わせる。

 

「・・・・・」

 

もう一つ設置した場所があった?そう思いながら改めて部屋の中を見渡すのだが―――は?

 

「なんだ、これは・・・・・」

 

壁に張られている新聞紙のような紙を見つけ、

俺は信じられないものを見る目で紙に載っている数字と文字を視界に入れた。

 

☓☓☓☓年 五月十一日―――(火)

 

「―――千年後・・・・・!?」

 

ちょっと待て。なんだ、この西暦は!?

今から千年後の世界にトリップしてしまったというのか!

待て待て待て!どうしたらこんな破天荒なことになるんだよ!?

前代未聞だろぉっ!?

―――取り敢えず、この世界の状況と情報が欲しい。

この場から抜けださないとと思って無機物に潜行し、

地上へと出て、空高く跳躍した瞬間・・・・・俺は信じられないものを目にした。

 

「なんだ、あれは・・・・・」

 

空高く、天まで伸びる巨大な塔が聳え立っていた。まるで宇宙にまで

建設されているのではないのか?と思ってしまう。

その塔の周辺には数多くの建物が見える。

 

「光陽町が・・・・・変わっているというか、無くなっている?」

 

というか、俺がいる場所はどこなんだ?駒王学園はあるのか?

 

「おっ・・・・・」

 

眼下に道を歩く人を見つけた。あの人に聞こうと地上に降り立って背後から訊ねた。

 

「あの、すいません」

 

「はい?」

 

振り返ったその人は、・・・・・えっ!?

 

「―――――清楚?」

 

目を疑った。俺が話しかけた人が清楚と酷似していた。

ただ、身長がやや高く、瞳の色が赤だった。まるで項羽のような女性だ。

 

「あの・・・・・私は清那と言いますが、どこかでお会いしたでしょうか?」

 

「・・・・・あ、え、っと・・・・・いや、知人と物凄く似ていたもので」

 

「ああ、そうなんですか。よくあることですよね♪」

 

笑顔までもが一緒だ。・・・・・名前、聞いとくか?

 

「失礼ですが、名前を窺ってもいいですか?」

 

「相手の名を聞きたいならば、あなたから名を名乗るべきだと思いますよ?」

 

朗からに高圧的な発言をされちゃったよ!?

 

「イッセー・D・スカーレット・・・・・です」

 

「イッセー・D・スカーレット・・・・・」

 

清那が俺の名を復唱した途端に、目を丸くした。

 

「え・・・・・?」

 

その疑問の声を発したのは俺だ。その理由は、

 

「父さんの名を偽る輩でしょうか?」

 

彼女の手に何時の間にか得物を手にしていて、俺の首を突きつけているからだ。

 

「と、父さん・・・・・?」

 

「ええ、ああ、私の名前は兵藤清那。私の父、イッセー・D・スカーレットと

母、兵藤清楚の間に生まれた娘です」

 

「なっ・・・・・!?」

 

俺はともかく、清楚が千年経っても生きているって・・・・・どういうことだ!?

 

「あなたは何者か知りませんが、よく見れば父さんの学生時代に酷似していますね。

どこかの組織が父さんの命を狙う輩が作りだしたクローンですか?

それとも、幻術で顔の容姿を変えているのでしょうか?」

 

驚く俺を余所に彼女は冷たい声音で発現する。

 

『おい、兵藤一誠。お前、気付いていないのか?』

 

―――何がだ?いま、混乱で思考が危ういくなんているんだけど?

 

『んじゃ、教えてやるよ。―――お前、囲まれているぞ?』

 

っ!?

 

内にいるドラゴンに教えられた直後に俺はようやく理解した。

塀や屋根、空、電柱に何時の間にか複数の男女がいて俺を見下ろしていた。

 

「おい、清那。俺たちを呼ぶほどだから

お前の身に何があったのかと思ったけど・・・・・そいつ、誰だ?」

 

「ドラゴンの気配・・・・・感じる」

 

「んー、どことなく、パパに似ているねー?」

 

「あっ、本当っす!」

 

・・・・・こいつらは・・・・・。

 

『ハハハ、どいつもこいつも、ドラゴンの波動を感じる。

―――真龍と龍神、グレートレッドとオーフィスの力を感じるぞ』

 

ああ、俺も気付いている。隠そうとしないから直ぐに分かったよ。

―――こいつら、千年後の俺の子供だ。

 

「ごめんね、この人は私だけじゃちょっと厳しいから・・・・・」

 

「良いって、俺たちは家族だ。家族のためなら協力は惜しまない。で、どうすんだ?」

 

「取り敢えず静かに―――捕縛しよう。近所迷惑にならない程度で」

 

清那がそう言った瞬間、周りが一斉に動き出した。ある者は真っ直ぐ向かって、

ある者は魔方陣を展開して、ある者は武器を手にして襲いかかってくる!―――ネメシス!

 

『了解だ』

 

俺の周囲の虚空から鎖が飛び出してきて、俺に向かってくる者たちを

あっという間に拘束した。

 

「なっ!?」

 

「この鎖は―――!」

 

「どうなっているの!?」

 

体験したか、見覚えがあるようだな。

 

「ふん!」

 

が、やはりというか鎖を強引に引き千切った奴がいた。

 

「お前は一体何者だ?」

 

「そう言うお前もな」

 

「敢えて答える気はないと、―――だったら、力づくで吐かせる」

 

目の前の奴―――俺と同じ真紅の髪に赤い瞳の少年が闘気を纏い始めた。

おいおい、そんなこともできるのか。

 

「一撃でKOだ」

 

「ならば、俺は一瞬だな」

 

不敵に漏らし、闘気を纏う。そして、俺と奴は飛び掛かり、交差して通り過ぎた。

一拍して、ダメージが食らった痛みが感じ始めた束の間、あいつは地面に倒れ込んだ。

 

「な・・・・・んだ・・・・・と・・・・・!」

 

信じられないといった表情であいつは身体を震わせながら起き上がろうとする。

 

「嘘、あの一瞬であいつがやられるなんて・・・・・」

 

「こいつ、ただ者じゃないっすよ・・・・・本気でやらないと勝てないかも」

 

「じゃあ、本気で?」

 

と、何人かが顔を見合わせる。だが、清那は首を横に振った。

 

「ダメだよ、ここであの力を解放したら、父さんたちに怒られちゃうよ」

 

「どんな力を解放するんだ?」

 

と、何気なく問うたけど・・・・・教えてくれるわけが―――。

 

「えっと、感卦法とか龍化とかするっすよ?」

 

「ちょっ!なに暴露しているんだよぉおおおおおお!」

 

「え?・・・・・あっ!?」

 

・・・・・あいつ、絶対天然でどこか抜けているだろう。

というか、感卦法と龍化って・・・・・。

 

「―――こんなもんか」

 

右手に魔力、左手に気を、相反する力を融合させて感卦法を発動し、

身体の表と裏に魔力と気を纏う。

 

「嘘・・・・・」

 

「こいつ、感卦法までできるのか・・・・・?」

 

「―――感卦法」

 

黒髪の少年が俺と同じことをする。

 

「清那姉、迷惑とかそんな事を考えていると、私たちが倒されると思うよ」

 

「九音・・・・・」

 

「ここは私が」

 

九音と言われた少年が俺と対峙し―――腰辺りに九本の尾を生やした。

それはまるで狐の尻尾のようだ。

 

「私は兵藤九音。以御お見知りおきを」

 

「名乗られたからには名乗らないといけないか。イッセー・D・スカーレットだ」

 

「・・・・・父と同じ名。あなたは一体、何者でしょうか?」

 

「知りたければ、俺を負かすことだろう?」

 

―――俺も九本の狐の尾を生やす。九音の目が大きく目を見開いた。

 

「母と同じ尾を・・・・・」

 

「んじゃ、これもそうか?」

 

体が黒と金の衣服へと変わり、

真紅の髪と金色の双眸は黒に変色。胸に狐を模した顔、腰には変わらず

金色の九本の狐の尾が生えているが、それとは別の九本の尾が俺の四肢、

胴体に巻きついている。それと、頭に狐の耳が生えているだろうな。

 

「黒装九尾の・・・・・甲縛だと・・・・・!?」

 

「ますます、訳が分からなくなったか?」

 

「・・・・・ええ、どうして父と母、私以外の力をあなたが持っているのか、

疑問で仕方がないです!」

 

九音が飛び掛かる。俺も迎撃とばかり飛び掛かって、九つの尾を振るい、妖力を放ち、

激しい激闘を繰り広げるが―――。

 

「はぁっ!」

 

あいつが作った一瞬の隙を突き、仙術を纏った一撃を食らわせた。

 

「ごふっ・・・・・!?」

 

「戦闘経験が浅いな」

 

吐血をし、崩れ落ちる九音。これで二人目か。

 

「次は、どいつだ?」

 

『・・・・・っ』

 

顔を強張らせ、緊張の面持ちで俺を睨む。それがしばらく続くかと思いきや、

 

「―――まいったね。子供たちが倒されていたり、苦戦しているじゃないか」

 

「っ!?」

 

俺の身体に魔力で具現化した鎖が巻きついていた。い、いつの間に・・・・・!?

 

「力が断続的に感じるから様子を見に来たけど・・・・・これはどういうことだい?」

 

俺の背後に誰かが降りてきた。この声って・・・・・まさか。

 

「お、お父さん・・・・・」

 

「最初に言うよ。修行不足だ。まだまだ経験が足りなかったようだね。

帰ったら地獄の模擬戦をするから覚悟死なよ?」

 

清那たちが途端に青ざめた。

 

『か、勘弁してください!』

 

「だーめ♪」

 

・・・・・なんだか、黒くなってやいないか?

 

「さてと、清那たちと戦っても無傷でいるキミは・・・・・」

 

俺の顔を覗き込む者。―――中年の男性、式森和樹だ。

 

「・・・・・一誠・・・・・?」

 

「・・・・・まともに話せそうな奴が来てくれて助かったよ、和樹」

 

「―――――っ!?」

 

そう言うと、和樹は大きく目を見開き、俺の肩に力強く掴んで口を開いた。

 

「ちょっ、マジで!?え、どうしてここにキミがいるんだい!?

家にいるはずなのに、なんで!?」

 

「えっと、お父さん・・・・・・その人、知り合いなの?」

 

恐る恐ると声を掛ける―――銀髪の少年。

ああ、こいつ、和樹の息子なんだ。髪が銀だから分からなかった。

シンシアとの子だからか。

 

「知り合いも何も・・・・・いや、お前たちに説明しても理解しがたいだろう」

 

自分の息子から視線を外し、俺に視線を向けてくる。

 

「家に来てもらうけど、いいよね?」

 

「ああ、俺も色々と知りたいからな」

 

「じゃあ、帰ろう」

 

指を弾いた和樹の足元に巨大な転移用魔方陣が展開し、

この場にいる俺たちは光と共にどこかへと転移した。

 

 

 

魔方陣の光と共に俺たちは建物の玄関ホールらしき空間に現れた。

俺が今住んでいる家と違うようだ。周りは石壁でできていて、

住んでいる家の玄関ホールより数倍広い。

 

「これを飲まして回復させて。僕はこの子を彼に会わせないといけないから」

 

「・・・・・分かりました」

 

ガシッと和樹の手が俺の腕を掴んだ反対側に、高級な小瓶を清那に二つほど渡してから

俺を引っ張ってどこかへと連れていく。

 

「名前、一応聞くけどさ。兵藤一誠だよね?」

 

「イッセー・D・スカーレットだ」

 

「うん、そう言うと思った。間違いなくキミは―――一誠だよ」

 

レッドカーペットに敷かれた玄関ホールを歩き、和樹はとある大きな扉を

開け放つと開口一番に言った。

 

「一誠、大変だよ!」

 

とな。和樹の視線の先を見れば、何人ものの女性たちに囲まれながらテレビを

見ている真紅の後ろ髪が見えた。その後ろ髪が動き、

 

「どうした、和樹―――――」

 

顔がこっちに向いた。歳は三十代だろうか・・・・・ダンディーに顎に髭が生えていて、

少し老けているが、金の双眸に強い意志が籠っている。

ああ・・・・・見間違うわけがない。あいつは―――俺だっ!

 

「・・・・・」

 

この世界の俺が俺を凝視する。それは信じられないものを見ているものだ。

 

「なあ、和樹?俺、とても疑い深いものを視界に入れているんだが。

はは、若い頃の俺が目の前にいるぜ」

 

「え?」

 

この世界の俺の発言に、

女性たちが一斉にこっちに振り向く―――って、えええええええええ!?

 

「せ、清楚に・・・・・カ、カリンに・・・・・も、百代に・・・・・ギ、ギンガ?」

 

まあ、次の瞬間だ。この部屋中に絶叫が響き渡ったんだ。

もう鼓膜が破けるんじゃないかってほどにうるさかった。

絶叫が収まると、この世界の俺が一瞬で俺の前に移動してきた。はやッ!

 

「間違いない・・・・・ガイアとオーフィスの力、それにゾラードたちを感じる」

 

「それはこっちも同じ気持ちだよ」

 

「・・・・・ということは、考えられることは一つだ。

お前、俺と同じ体験をしているんだな」

 

「同じ、体験?」

 

首を傾げると、物凄く深い溜息を吐いた。

 

「あのクソアザゼルの研究に手伝ったせいで千年後の未来に来てしまい、

千年後の自分と出会うことだよ。

俺もお前と同じぐらいの年頃の時に、千年後の世界に飛ばされ、

その世界にいる俺と出会っているんだ。

だから、お前がこれからこの世界で何をしようとしているのか、

どうやって帰れるのか俺は全部知っている」

 

「本当か!?」

 

「ああ。―――テファ」

 

この世界の俺はとある女性を呼んだ。

テファってもしかして・・・・・と視線をとある方へ向ければ、

 

「はい、あなた」

 

成長したテファニアがいた!千年経ってもそれ相応に老けていないってどういうことだ?

 

「彼女から魔法を教われ、虚無魔法だ」

 

「ハルケギニアの?」

 

「そうだ。どんな経緯で習得したのか、教えないがな。

そっちのテファもその内、虚無魔法を習得する」

 

なるほど・・・・・。

 

「なあ、千年後の俺。どうして人間の彼女たちがまだ生きているんだ?」

 

「それか。当初の俺も驚いたが、理由は簡単だった。こいつら、人間を辞めたんだ」

 

人間を辞めたって・・・・・他の異種族に転生したのか?

 

「その理由も、お前なら理解できるはずだ。だから、誰一人死んでいないんだ」

 

この世界の俺は嬉しそうに微笑んだ。ああ・・・・・やっぱりこいつは俺だな。

その気持ちはよくわかるよ。

 

「それじゃ、虚無魔法を教えるね?世界扉(ワールド・ドア)の呪文を。

その後、色々とお話をしましょ?」

 

この世界のテファが柔和に笑んだ。それから彼女から呪文を教われ、

俺も試しに呪文を唱えて発動すれば、異世界に繋げれる扉を開けることができた。

 

―――○●○―――

 

時間は過ぎ、夜となった。俺は呆然と目の前の光景を見つめた。

千年後の俺は和樹たちが立食パーティを提案して、

俺のことを紹介する事と成ったのだが・・・・・。

 

「やはりというか、人数が桁違いに多い」

 

「ははは!リゼヴィムおじさんの事件以降、色々と俺も遭ったからな。

俺を慕う人間も増えちまったんだ。

 

「お前、何していたんだよ」

 

「ふっ、それは教えられないな。教えたらつまらないだろう?今後のお楽しみだ」

 

この世界の俺は腕を俺の背に回して口を開いた。

 

「お前ら、薄々気付いていると思うが、こいつは千年前の俺自身、

旧名は兵藤一誠で偽名はイッセー・D・スカーレットだ。

仲良くし過ぎないように気をつけて会話しろよ」

 

「おい、なんで仲良くし過ぎちゃいけないんだよ」

 

「狼の群れに羊を放り込められる気持ちを浮かべてみろよ」

 

「納得しました!」

 

襲われるんだと悟り、

気持ちのいい返事をしたわけだが・・・・・うん、俺を見る視線が物凄い。

 

「それじゃ、パーティの開始だ」

 

この世界の俺が高らかにグラスを持った手を掲げると、一気に騒がしくなった。

 

「わぁー!学生時代のイッセーくんっす!」

 

「懐かしいですね!」

 

「可愛い!」

 

あいつの言った通り、俺は羊のような立場になった。

 

「初めまして、って可笑しいかな一誠くん?」

 

「ある意味会っていると思うけど・・・・・清楚だよな?」

 

「うん、ふふっ。子供の一誠くんが過去からきたなんて、驚いちゃったよ」

 

清楚に微笑む清楚・・・・・。

 

「項羽は?」

 

彼女に問うと、何故だか・・・・・清那に顔を向けた。

 

「私からいなくなっちゃって・・・・・私の娘になっちゃったの」

 

「はっ?」

 

「清那、おいで?」

 

清楚が清那に呼び掛ける。清那は歩み寄れば、清楚は彼女の頭を撫でる。

 

「清那自身が、項羽の存在なの。項羽の魂が私の娘に受け継がれている。

あの豪快な性格はすっかり無くなっちゃっているけどね」

 

「か、母さん・・・・・」

 

「ふふっ、でも私の自慢の娘よ?ああ、でもごめんなさい?

あなたを敵と勘違いしちゃって攻撃したみたいね?」

 

「あー、それは気にしなくていいよ。ちょっと千年後の俺の子供たちの実力を知れたし」

 

実力はかなりのものだった。ただ、戦闘経験が浅いぐらいだ。

もしも経験が豊富だったら、今の俺と同等かそれ以上だったかもしれない。

 

「母さん・・・・・本当にこの人は父さんの若い頃の人?」

 

「そうだよ?この時から母さんはメロメロだったんだから♪」

 

「そうなんだ・・・・・」

 

清那が俺をジッと見つめる。すると、俺の背中に温もりが感じた。

 

「・・・・・」

 

振り返ると俺を見下ろす黒い髪の長髪の女性・・・・・って、

 

「オーフィス・・・・・なのか?」

 

「ん、我、オーフィス」

 

と、オーフィスがスリスリと俺の頬に擦りつく。

この大人バージョンのオーフィスは変わらないようだ。

 

「となると・・・・・この世界のガイアは?」

 

「ようやく呼んだか」

 

威風堂々と歩みよる真紅の女性。うん、変わっていないな。

千年前と変わらない姿で俺の前に現れるガイアは。

 

「若い時の一誠が過去から来るとは面白いことがあるものだ。過去の我はどうだ?」

 

「多分、未来のガイアと変わらないと思うよ?」

 

「ふっ、そうであろうな。おお、そうだ。我の子を紹介しよう。煌龍」

 

「はい」

 

ガイアの子・・・・・あっ、朝の真紅の少年だ。

 

「こいつが我と一誠の子、煌龍だ。言わば二代目真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)である。

我と一誠の力を引き継いでいるが、まだまだ未熟者でな」

 

「・・・・・」

 

煌龍はプイッと顔を逸らしてふてくされた。

 

「若い頃の父親に負けた気分はどうだ、煌龍?」

 

「・・・・・あの時は本気じゃなかったから―――」

 

「言い訳は無用だ」

 

躾はとても厳しいようで・・・・・息子にチョップをかましたぞ。

ああ、痛そうに頭を押さえた。

 

「我の子供」

 

と、何時の間にかオーフィスの前に一人の少年がいた。

こいつも俺に襲いかかってきた一人だったな。

 

「我の子供、無々(むむ)

 

無限の無を取ったわけだな。無表情なところはオーフィスとそっくりだ。

 

「・・・・・」

 

ジィーと俺を見つめる無々。

 

「二代目無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)

 

「ああ、分かっているよ、オーフィス」

 

何とも言えないな。未来の自分の息子と対面するなんてさ。

 

「この世界のリーラは?」

 

「奴ならば、裏で仕事をしている。今は会えないだろう」

 

「そうか、会ってみたかったな」

 

「今はここにいる面子で我慢しろ」

 

いや、我慢するも何も・・・・・皆、今か今かと待ち構えているのが目に見えていますよ?

 

―――○●○―――

 

パーティはようやく終わり、未来の皆と未来の子供と会話し、

現在俺はトレーニングルームにいた。

 

「絶景、の一言だな」

 

模擬戦だろうけど、バトルロワイヤルに等しいぐらい激闘を繰り広げている。

攻撃の威力が強すぎて風景が変えられていく。

 

「うーん、まだまだ隙が多いな」

 

「お前の目からも見てそうか」

 

隣に立っている女性・・・・・千年後のアレイン。

 

「全員、己の力に過信しないように教育をしているが、

いつものメンバーとでは、刺激が足りないか」

 

意味深に言うアレインは俺に視線を配ってきた。

 

「俺に、あそこに行けと?」

 

「まだ帰らぬのであろう?千年前のお前の力を、見せてやれ」

 

不意に、アレインの頬が薔薇色に染まった。

 

「過去の私がいつか・・・・・お、お前の夫となる者だ。

負けたら私は彼と離婚してやるからな」

 

「張り切って倒しに行かせてもらいます!」

 

それは責任重大だ!俺は急いで戦場へと駆けて行った。

 

「いざ、尋常に勝負!」

 

『なっ!?』

 

『はいっ!?』

 

案の定、息子たちが驚愕して一瞬の攻撃の手を止めた。

 

「お前らを倒さなきゃ、俺は俺に殺されちまう!」

 

『なに言っているんだ、あんたは!?』

 

分からなくていい、今はとにかく俺と戦おうか!

 

 

 

 

 

「・・・・・あー、疲れたぁー」

 

深夜、夜空に浮かぶ満月の中で俺は一人、家の付近の公園に佇んでいた。

そろそろ過去に戻ると言い、皆と別れの挨拶を済ませてから公園にきたわけだ。

 

「どうしたんだ、未来の俺」

 

「見送りにしに来ただけだ」

 

既に過去へ戻るための扉を開いている。その最中、この世界の俺が現れた。

 

「そっちの俺はまだリゼヴィムおじさんの件をが片付けていないんだろう?」

 

「ああ、そうだ」

 

「忠告する。666(トライヘキサ)はかなり強い。戦う時は最初から全身全霊で戦え」

 

「・・・・・」

 

そうか、こいつはもう戦ったのか。俺もいつかそいつと戦う運命・・・・・。

 

「それと、魔人の件だ。魔人の力をコントロールしたかったら、魔人と接触しろ」

 

「お前はどうなんだ?」

 

「聞くのは野暮だとは思わないか?」

 

・・・・・そっか。

 

「んじゃ、またいつか会いに行くよ」

 

「いや、くんな」

 

「拒否されたっ!?」

 

「正確に言うと、今回のでき事が、今度はお前にも起こる。今度はお前の番だ。

千年後、過去からお前が来る。心構えておけよ」

 

あーそうなんだ。千年後・・・・・俺はこいつみたいになっているのか。

 

「じゃあな、過去の俺」

 

「ああ、また会おう。未来の俺」

 

それが過去の俺と未来の俺の最後の会話だった。扉を潜ると、

千年後の世界を繋げた扉が閉じたのを見て、顔を上にあげた。

まだ明るい。それほど時間が経っていないのか?

 

「まあいい。帰ろう」

 

丁度目の前に俺の家。未来の俺たちと子供たちを脳裏に浮かべ、

小さく口角を上げて家の中へ入ろうと玄関のドアノブに手を触れた―――。

 

「ただいま!」


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