ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

155 / 157
Episode8

―――カリンside―――

 

「くっそが・・・・・!」

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・結構強かったですね」

 

「これが魔人・・・・・」

 

魔力の捕縛では無力化されそうだから頑丈な物質の鎖で縛り、囲む。

 

「聞こうか、他に何人の魔人がいるんだい?」

 

「聞いてどうする。この冥界はもう少しで俺たち魔人の世界になるんだ」

 

「キミが死んでも問題ないと?」

 

「ここで死ねるなら本望だ。俺たちの先祖は元々この世界で生きていたんだからな」

 

・・・・・こいつ、死すら恐れていない。ここで死ぬことすら望んでいる。

何て奴だ・・・・・!

 

「そう簡単に殺しはしないよ。キミは僕たちと同じ世代のようだし、死ぬなんてダメだ」

 

「ふん、俺は悪魔を何人も躊躇もなく殺した魔人だぞ。お前らが勝手に決めていいのか」

 

「一誠もきっと僕たちのようにしている」

 

「一誠?・・・・・ああ、姐御の男か」

 

姐御?一体誰のことだ?

 

「そういや、あいつ・・・・・様子がおかしかったな」

 

「どういうこと?」と、清楚が問うた。魔人は隠すまでもないと喋ってくれた。

 

「瞳に生気の色が無いって言うか・・・・・まるで操り人形のように

俺たちと一緒に来たんだ。

ルシファーの娘を殺すって旧世代の魔人と一緒に姐御も向かったんだ」

 

「・・・・・まさかだと思う。同じ魔人を支配することもできる?」

 

「そんなこと同胞に対する冒涜だ。俺たち新世代の魔人は

そんな能力なんて編み出さない。家族ならなおさらだ」

 

「新世代がしないなら、旧世代の魔人なら?」

 

「・・・・・」

 

不意に魔人は沈黙して考え始めた。

 

「・・・・・俺たちを育てた親みたいなあの人たちがそんなこと・・・・・」

 

「一誠はキミたち魔人とは別の存在だ。彼は旧世代の考えに彼は断固反対する。

それに自分たちの思い通りにならない旧世代の魔人たちは、

一誠の力を何としてでも手中に収めようと考え実行するはずだ。僕ならそうするよ」

 

「・・・・・だけど、俺たちは冥界を取り戻すために生きていたんだ」

 

「だとしても、もっと他にも方法があったはずです。

あなた方が帰りたがっている冥界をあなたたちの手で滅茶苦茶にしていることを

どうして分からないのですか?」

 

そうだ。そこまで帰りたがっているならば、こんな状況を望んでいないはずだ。

それなのにこいつら魔人は悪魔諸共町まで蹂躙しているじゃないか。

 

「あなたたちの育ての親もこの冥界に帰りたがっていたのかもしれません。

だけど、その思想は何時しか歪んでしまい、あなたたちに歪んだ使命を与え、

冥界を侵略なんて実行させた。そこにあなたたちの意思はどこにあるんですか?」

 

「俺たちの・・・・・意思・・・・・?」

 

「・・・・・どうやら、話す時間もこれでお終いのようですね」

 

龍牙がとある方へと振り返る。私たちも龍牙が向ける視線を辿れば、

三人の魔人らしき少年と少女がいた。

 

「おい、タケルの奴が負けてんぞ」

 

「マジか。悪魔ならともかく・・・・・人間相手にか?」

 

「きっと、強い人たちなんですね。でも、私たちは負けませんよ!冥界を取り戻すために!」

 

この魔人たちもとても純粋な人たちなのだろう。

だけど、幼い頃から植え付けられた『冥界の奪還』。

それを果たそうとしているんだ。彼らは悪くない。だけど、それじゃダメなんだ。

 

「皆、極力・・・・・殺さずに倒すよ」

 

「ええ、そうした方が今後のためになりそうです」

 

「ああ、分かっているさ」

 

「手加減はできないがな」

 

皆・・・・・どうにかしようとしている。無論、私もさ。

 

「行くぞ!」

 

―――成神side―――

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

 

『Transfer!』

 

赤龍帝の能力、力の倍増と譲渡で部長たちに力を与える!んで、鎧をスリムにして―――!

 

『Star Sonic Booster!!!!!』

 

身軽になった俺は神速ってほどじゃないが、

それでもそれなりに早く動きまわって魔人の注意を俺に引き寄せる!

―――これが俺の新しい力の一つ!

 

「これが現赤龍帝か!女の服を弾き飛ばし、

女の胸から相手の心を聞く変態極まりない赤い龍帝の悪魔!」

 

「女の敵だ!こいつは誰よりも優先的にこの世から消した方が全世界の女のためになる!」

 

「俺が女キラーみたいに言うな!」

 

「「事実だろう(でしょ)!」」

 

「うちのイッセーくんが変態過ぎてごめんなさい」

 

こらぁああああ!木場!お前まで何謝っているんだよぉぉぉっ!?

 

「・・・・・事実なのは変わりないです」

 

「ごふ・・・・・っ!」

 

小猫ちゃんの言葉のアッパーが俺にダメージを与えた・・・・・!

 

「新手ですわ!」

 

朱乃さんの切羽詰まった声!俺たちの戦闘音を嗅ぎつけてきやがったか!

こっちに向かってくる三人の魔人。前と後ろに魔人・・・・・・。

この位置的に俺たちは囲まれている状況だ。相手は五人、

こっちは七人。だけど、アーシアは回復役として非戦闘員だから実質六人。

戦力は五分五分と言いたいところだが・・・・・。

 

「厳しい状況下になってしまったわね・・・・・。

魔力と気を無効化する能力の魔人が五人も揃ったから」

 

部長がそう言葉を言う裏腹に苦笑を浮かべた。まだまだ何とかなるレベルなのだろうか。

 

「撤退して体勢を立て直しますか?」

 

「いえ、相手がそう簡単にさせてくれるとは思えないわ。

援軍を要請したいところだけど・・・・・その時間はあるかしら?」

 

「ある、というよりは僕たちが作りますよ。

主であるあなたを守るのは騎士である僕の務めですからね」

 

木場のイケメンが炸裂した!むぐぐぐっ!

お、俺だって部長を守る兵士だ!負けていらねぇ―――。

 

「久し振りだな。赤龍帝?」

 

『っ!?』

 

真上から声が聞こえた。

刹那、俺たちを囲むように多人数の漢服を着た奴らが舞い降りた。って、こいつらは!?

 

「英雄派!?」

 

「このタイミングで・・・・・!」

 

「・・・・・」

 

「なんてことだ・・・・・」

 

そうだ。こいつらは英雄派。英雄の魂を引き継ぐ者とか子孫とか末裔とか、

神器(セイクリッド・ギア)神滅具(ロンギヌス)を持つテロリストの一派!

 

「相変わらずパワー思考か?もっと柔軟にテクニック的な

動きもしたら戦況は変わると思うがね」

 

「テロリストにそう言われて屈辱的だわ。・・・・・私たちを殺しに来たのかしら?

この混乱に乗じて」

 

曹操は底意地の悪い笑みを浮かべ、腕を紫の空に掲げた。

 

「―――逆だよ」

 

英雄派の構成員が、魔人たちに襲いかかる!?そうか、魔人は気と魔力を奪う。

だけど、気を持つ人間が数で押していけば勝てない相手じゃないんだ。

その上こいつらは神器(セイクリッド・ギア)の集団。―――あっという間に魔人たちを撃退した。

 

「この機に乗じて俺たちも魔人を倒そうと思っている。

なに、どこぞの風来坊の集団が現れたと思えば良いさ」

 

おいおい・・・・・マジかよ。

こいつら、腹の底でなに企んでいるのか分かりやしねぇよ・・・・・。

 

「それと情報提供だ。この冥界に妖怪、神話体系の者たちが到着している。

魔人たちの侵略も潮時だ」

 

「・・・・・あなたたちに何のメリットがあるというの?」

 

あいつは、曹操は告げる。

 

「俺たちなりの正義を貫ける。―――そんなところだ」

 

―――○●○―――

 

―――ラクシャside―――

 

真龍と龍神と纏めて相手になるわけ無いじゃない・・・・・。

呆気なく倒された私は、鎖で結ばれた手首の冷たさを感じながら目の前の光景を

固唾を飲んで見守る。

ドラゴンになっている彼は旧世代の魔人たちの力で支配されている。

 

「・・・・・」

 

家族たちの気配が段々と無くなっていく・・・・・。

倒されたか、あるいは殺られたか・・・・・。

私たちの力は冥界を侵略するにもまだまだ力が足りなかったのね・・・・・。

 

「魔人の願望はここまで・・・・・か」

 

―――ヴァーリside―――

 

「おのれ、ルシファーの血を引く者と我らを邪魔する者よ!」

 

あれが旧世代・・・・・前魔王ルシファーの時代から存在している魔人か。

なるほど、確かに対して強くないな。魔力が乏しいわけでもないが、

悪魔の成り損ないと言われても仕方がない。

 

「全てを薙ぎ払え!」

 

一人の魔人が発すると、それに呼応して一誠が極太の魔力を放ってくる。

その魔力にオーフィスが、

 

「イッセーを返す」

 

鬱陶しい蝿を払うように魔力を明後日の方へ弾いた。

他の二つの魔力もガイアとクロウ・クルワッハが防いだ。

それからも一誠は三人に攻撃を仕掛けるも、相手が悪過ぎるだろう。

彼の攻撃は一切、歯牙にも掛けられずかわされ、防がれ、

時には弾き返され自分の攻撃に直撃してしまう。そんな三人に魔人が叫ぶ。

 

「貴様らは一体何だというのだ!我らの邪魔をするでない!」

 

「邪魔するさ。お前たちが操っているドラゴンは私の大切な男だからな」

 

「この者は我らと同じ魔人よ。我らがどうしようが我らの勝手である!」

 

ふざけたことを言うな・・・・・。あんな幼稚な言い方、

リゼヴィムの方がまだマシなことを言うぞ。

 

「この冥界は我が物とするため、全てを蹂躙してくれる!

ゆけ、全てを破壊尽くす破壊の魔龍よ!」

 

「前魔王の血を引く者どもも殺し、全ての悪魔どもも殺し」

 

「この冥界を我らが取り戻すのだ!」

 

もはや・・・・・三流芝居しか思えない。見るに堪えないな。

 

「そのドラゴンはその程度の力ではない。貴様らには宝の持ち腐れだ」

 

ガイアが手元を光らせる。

 

「多少の攻撃なら一誠も耐えれよう。貴様ら諸共消し去って―――」

 

最後の言葉は聞けなかった。なぜなら、冥界の空に大きな穴が開いたのだ。

誰もが怪訝にその空を見上げていると―――。巨大な手と共に腕が出て来て、

真っ直ぐ一誠に伸びて行く。

 

「な、なんだあれは!?」

 

「ええい!アレを消せ!」

 

一誠は向かってくる手を攻撃し始める。超極太のレーザー状のビームが巨大な手に直撃し、

一度は穴が開いた空間に引っ込んだ。

 

「ふははははっ!亀のように引っ込んだわ!」

 

「我らの力を思い知ったか!」

 

いや、多分・・・・・あれは・・・・・。予想していた私の視界に空間の穴から両手が

飛び出してきて、一気に穴を広げた瞬間。

 

『ギャッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

穴から巨大な異形が現れた。おぞましい生き物だ。フォルム的にドラゴンみたいだが、

アレはドラゴンと呼ぶべきなのか?

 

『・・・・・怖ろしい。サマエルよりも、怖ろしい・・・・・っ』

 

あのアルビオンが怯えているだと・・・・・!?

 

「ひ、ひいいいいぃぃぃぃぃっ!」

 

「ば、化け物だぁっ!?」

 

「に、逃げるのだ!」

 

旧世代の魔人たちが一誠から離れた。それでも尚、魔人が攻撃の指示を出しているが、

一誠の攻撃はとても小さく、致命的なダメージを与えれないでいる。

そして、異形は・・・・・一誠を蹂躙し、気が済んだとばかり穴の中へと戻って消え去った。

 

「い、今のは一体・・・・・」

 

「多分・・・・・原始龍の仕業だろう」

 

横たわるアジ・ダハーカ=一誠。そんな彼の傍に魔方陣が出現し、噂をすれば影とやらか。

原始龍が現れた。

 

「・・・・・」

 

一誠に手を触れた途端に、光が一誠を包み、見る見るうちに縮んで人型の一誠に戻った。

それを確認した彼女は私たちに振り返る。

 

「先ほどはどうも失礼いたしました。門番の者がキレてしまいましてね」

 

「あれが・・・・・門番だと?」

 

「ええ、龍には龍を。罪を犯した龍を捕まるだけに生まれた龍です」

 

ある意味、サマエルより厄介だな。一誠を一方的に蹂躙したのだから・・・・・。

 

「彼が負ったダメージは私の方で癒しました。後は彼が目覚めるのを待つだけです」

 

「ん、原始龍。ありがとう」

 

「どういたしまして。では、また会いましょう」

 

魔方陣の光に包まれ、消え去っていく原始龍。そして、この場に気絶した一誠と私、

ガイアとオーフィスにクロウ・クルワッハ、ルシファーに魔人だけとなった。

 

「さて・・・・・逃げた魔人どもを捕まえるとしよう」

 

「転移魔方陣で逃走していない。どこかに身を潜んでいる可能性はあるぞ?」

 

「我、あいつらを捕まえる」

 

最後の仕事と思いたいね。個人的に一誠の傍にいたいが・・・・・。

 

「・・・・・」

 

あの女の魔人に任せよう。この勝負は私たちの勝ちだ。

 

―――○●○―――

 

―――アザゼルside―――

 

俺たちグリゴリも魔人討伐及び捕獲をしようと部下供を引き連れて、魔王領に訪れれば

あと少しで戦いが終わろうとしていたところだった。俺たちも加勢して魔人どもを

抑え込みそれを捕縛し続ける。それが何度も何度も繰り返し、

どれだけ時間がかかったのか分からない頃に、戦いに終幕が訪れた。

 

できるだけ生かして捕えた魔人どもは、ルシファーの城に集めて囲んだ。

魔人の冥界侵略を防ぐために協力してくれた妖怪や神話体系の何人かも一緒だ。

他は急いで街の復興、復旧を始めている。

 

「全部で数十人か」

 

「百人以上はいたようだけど、数が足りないわね・・・・・」

 

「途中で出会った曹操たちが英雄派が連れ去ったか・・・・・」

 

「他の第三者が影から介入したかだな」

 

推測しても、今の俺たちじゃ分からないがな。

 

「それでアザ坊。孫はどうしておるのじゃ?」

 

「眠っている。傍に九尾の御大将やあいつの家族が診ているが、

今日中に起きるとは思えないな」

 

「坊主は騒ぎの中心だぜぃ」

 

オーディンのクソジジイと闘戦勝仏。この二人がかなりの魔人どもを倒した功労者。

 

「さて、魔人ども。お前らの処罰はかなり重い判決を下されるだろうな」

 

『・・・・・』

 

「主犯たる旧世代の魔人とかいうやつらも何人か捕まえている。

ある意味、お前らはこの冥界で一生を過ごすことができる。まあ、牢獄の中でだろうがな」

 

「・・・・・でしょうね」

 

魔人の女がポツリと呟いた。

 

「家族が何人も死んで、育ての親も私たちを捨てて逃走。

もう、私たちは何も起こす気もする気力もないわ」

 

「ずいぶんと大人しいじゃないか?」

 

「こうなった予想をしていた言動をしていただけよ。

だけど、叶うことがあれば・・・・・私の命を引き換えに、

私の家族だけは罪を軽くしてちょうだい」

 

『なっ・・・・・!』

 

その絶句の言葉は魔人どもからだった。

 

「待ってくれよ姐御!そんな事を言うなよ!」

 

「魔人の代表として言っているの。それに言ったでしょ、叶うことがあればって」

 

「だけど、それでもしも叶ってしまったら姐御は俺たちを残して死ぬ気なんだろう!?

俺たちはそんなこと望んでいない!」

 

式森たちから聞いた話の通りだな。こいつら、互いを大切に思いやっている。

魔人の女は真っ直ぐルシファーたちに視線を向ける。

 

「・・・・・魔王ルシファー。それと他の魔王たち。答えは?」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

現五大魔王たちは顔を見合わせ考える仕草をする。

 

「私たちは多くの悪魔の命を狩ったのは事実。避けれない運命を私一人で背負う覚悟がある。

だからこそ、彼らの罪を軽くしてほしい。

魔人と人間のハーフだから数百年は軽く生きれるわ」

 

「だから、重い罪を背負うと?」

 

「独りよがり、傲慢でエゴだろうけど―――私は家族をなにがなんでも守りたいの。

唯一、私と共に今日まで生きてきた最初で最後の家族だから・・・・・」

 

「ラクシャ・・・・・!」

 

意思が固いな・・・・・。決意も揺らぐこともなさそうだ。

 

「どうするんだ?五大魔王さま」

 

「他人事のように聞かないでくれるかしら?」

 

「俺じゃなくてお前らに訊いているんだもん。他人事だろ?」

 

「まったく、嫌な堕天使ね」

 

ふふん、何とでも言え。さあ、どう決断する?

面白半分にルシファーたちを見ていると・・・・・。

 

「・・・・・ま・・・・・て・・・・・」

 

微かに制止をする声が聞こえてきた。その声がした方へ振り向く。

 

「そいつらに・・・・・罪は・・・・・ない・・・・・」

 

「イ、イッセー!?」

 

あいつ、もう意識を回復したのか!?

だが、あの疲労は尋常じゃない・・・・・支配されたせいなのか?

 

「イッセーくん、罪がないというのは?」

 

「二重の・・・・・意味でない」

 

「二重?」

 

怪訝な面持でルシファーは言う。イッセーは九尾の御大将やメイドに

支えながらこっちに近づいてくる。

 

「一つは・・・・・そいつらは小さい頃から植え付けられた・・・・・知識と使命から

生じた行動だ。冥界から追い出された・・・・・魔人の心情も理解している。

でも、あの旧世代の魔人に利用されていただけだ」

 

「それでも、彼女たちは民たちを殺した事実は変わりないわ」

 

アスモデウスが冷たく一誠に言い放った。断続的に息をする一誠は頷く。

 

「分かっている・・・・・。

だから、少しでも罪を軽くしてもらえるように・・・・・俺はとあることを・・・・・。

皆に止められながらした」

 

「一誠ちゃん、それは一体何かな?」

 

「―――死者蘇生だ」

 

『っ!?』

 

死者・・・・・蘇生だと・・・・・?―――バラキエルと朱乃の母親、

朱璃を甦らしたあの力か!?

 

「お、おい!お前、そんなことして大丈夫だったのか!?

かなりの数の悪魔が死んだはずだぞ!朱璃を甦らしただけで力の殆どが

なくなっていたじゃねぇか!あの時と比べて今回は何百倍の数だ!下手したらお前は死―――!」

 

「今の俺の状態がそれを物語っている・・・・・。

はは、オーフィスの無限の魔力と魔人の力が覚醒して飛躍的に増幅した気の

おかげか・・・・・しばらく車椅子の生活を余儀なくされそうだ」

 

この、バカ野郎が・・・・・!どれだけお前は無理をするんだよ・・・・・!

誠と一香がしなかったことをお前がするなんてよ!

 

「・・・・・本当に、死んだ民たちは甦ったのか?」

 

「嘘だと思うなら・・・・・見てくればいい。混乱していると思うし、

魔王の皆が声を掛けてやってくれ」

 

一誠の言葉に、アスモデウス、レヴィアタン、ベルゼブブが外へ向かった。

 

「イッセー・・・・・どうしてそこまで私たちのために・・・・・?」

 

魔人の女が信じられないといった表情でイッセーを見つめる。

イッセーはイッセーで、弱弱しく笑みを浮かべる。

 

「お前は、俺と同じだ」

 

「え・・・・・?」

 

「家族を思いやる、その気持ちは俺と同じなんだよ・・・・・」

 

ああ・・・・・確かにな。こいつらは似ているよ。

『家族』の言葉を重く感じさせてくれるところもがよ。

 

「お前が死んだら、タケルたちは悲しむ。その気持ちは俺も最近知ったばかりだ・・・・・」

 

イッセーは魔人の女のもとまで移動すると、ゆっくりと座りこむ。

視線を合わせるような感じでな。

 

「一泊二日の期間だけど・・・・・それなりに楽しかった。それにさ」

 

「なに・・・・・?」

 

「俺とお前は夫婦みたいな関係じゃん・・・・・?

男が女を守るのと同じで、妻を守るのは夫の役目だ。だから・・・・・」

 

ふらりと背後に倒れそうになったイッセーは、

魔人の女の手によって胸の中に引き寄せられた。

温もりを感じているのか、口元を緩ませて口を動かした。

 

「お前を守りたかったんだよ・・・・・ラクシャ・・・・・」

 

「―――――っ」

 

その言葉を発したイッセーに対し、微かに身体を震わせ、

優しくイッセーを抱きかかえこむ魔人の女。

 

「バカ・・・・・・バカ・・・・・・バカァ・・・・・・!

そこまでされて・・・・・ますます私はあなたに惚れちゃうじゃないのよぉ・・・・・・!」

 

なんだこれ、何かのラブシーンを見ているような・・・・・。

 

「・・・・・ええ、いつ人間界に戻れるか分からないけど・・・・・・ちゃんと罪を

償い終えたら、真っ直ぐあなたのもとへ向かうわ・・・・・。

その時、正式に私と結婚して・・・・・?

私、白い教会で白い純白なドレスを身に包んで結婚したいわ・・・・・」

 

「ああ・・・・・わか・・・・・った・・・・・」

 

そこでイッセーの意識が途切れた。いくらオーフィスからもらった

無限の魔力を持っているからと言って、生命・・・・・気まで無限じゃない。

今回死んだ悪魔の数がそのまんま甦ったからそれ相応にリスクをあいつは背負った。

 

「・・・・・そう、わかったわ」

 

ルシファーが何かを確認していた。耳元に小型の通信式魔方陣が展開してるな。

外に行ったアスモデウスたちからの通信だろう。

 

「今アスモデウスから話を聞いたわ。―――死んだはずの悪魔が一人残らず甦ったわ。

その上、壊された建物も全て直っているそうよ」

 

『な、なんだってっ!?』

 

おーおー、魔人どもが驚いていやがるよ。深い溜息を吐くルシファーは言う。

 

「まるで夢でも見ているかのような感じだわ。

こんな好都合的な展開になるとは思いもしなかったもの」

 

「ふふふっ、流石は一誠ちゃんだね。ある意味じゃあ誠ちゃんと一香ちゃんを超えているよ」

 

「そうね。それに、この子には大きな貸しができてしまった。

なら、その貸しを今ここで返すのが筋で一人の魔王として恩を返すのは当然でしょう」

 

ということは・・・・・?

 

「魔人たち、イッセーに感謝しなさい。あなたたちの罪は減刑間違いなしだからね」

 

「マジかよ・・・・・」

 

「罪は消えないだけよ。重さが軽くなっただけ。その魔人の力、

私たち悪魔のために振るってもらう。

だから―――この冥界に住んでもらうわよ?」

 

『・・・・・!?』

 

魔人たちの目が丸くなった。魔王が許したんだ、冥界に再び帰れるんだからな。

はぁー元の鞘に戻るっていうのはきっとこの事だろう。

 

「ふふっ。仮に戦争が起きても今なら堕天使と神、天使には負けない気がするわ」

 

「ほぉ、それは面白い冗談だなぁ?」

 

口角を最大限まで吊り上げる。こいつがそんな好戦的な発言をするなんて

久しぶりじゃねぇか?

 

「なんなら、イッセーを差し向けましょうか?」

 

「ちょっ、それは反則だろ!?今の俺じゃあ勝てるかどうか怪しくなっているんだからよ!」

 

その原因はそっちか!あっぶねぇっ!下手な発言をしたら絶対にイッセーと戦わされる!

 

「怪しいというか、既に通り越しているような・・・・・」

 

「ふん、当然だろう。真龍と龍神の力を一つの身体に宿しているドラゴンだ」

 

「力はともかく、コミュニケーション・・・・・交流関係も最強だと私は思うな」

 

「色んな神話体系の神々と交流しているしな」

 

「そうですね」

 

「うん、イッセーはサプライズの宝庫、ビックリ箱そのものだ」

 

ええい、うるさいぞそこ!後半は同意だけどな!

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・イッセー、ありがとう・・・・・心の底から愛しているわ・・・・・」

 

「ンン・・・・・ラクシャァ・・・・・ご飯・・・・・」

 

「・・・・・ふふっ。はい、あなた・・・・・」

 

 

 

 

 

『(なんだ、あの桃色的な空間は・・・・・!?)』


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。