ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode4

兵藤家と式森家が魔人と戦う日が迫った。お爺ちゃんから連絡があり、

魔人に伝えろと言われ、何とも言えない気分であの魔人、ラクシャに初めて連絡した。

少しして、

 

『よーやく、連絡入れてくれたわね♪』

 

何故か嬉しそうに声が弾んでいた。俺にとっては掛けたくなかったけどな。

こんなことを言うために。

 

『それで、おねーさんからなにを聞きたいのかなー?』

 

「いや、伝えたいことがあるんだ」

 

『なに?』

 

一息吐いて伝えた。

 

「兵藤家と式森家がお前たち魔人と戦いたいってさ」

 

『・・・・・』

 

「今日の深夜零時。光陽町の駒王学園の校庭で兵藤家と

式森家がお前たち魔人を待っている。兵藤家現当主の兵藤源治からの伝言だ」

 

それだけ言ってラクシャの言葉を待たず通信を切った。

それまでの時間はかなり時間がある。

 

「・・・・・」

 

元兵藤家の者、魔人の力を覚醒した者・・・・・俺は変な立場で立っているなぁー。

 

 

―――駒王学園―――

 

深夜零時の時間が間もない頃、駒王学園に大勢の人間が集結していた。

兵藤家と式森家の人間だ。

改築した以前の三倍も大きい校庭にいていつものメンバーと魔人の出現を待っている。

 

「凄いな」

 

「うん、こんな光景。一生に一度しか見れないと思う」

 

「懐かしいなぁー。あんときもこんな感じで戦争に介入してきたんだ」

 

和樹と話しているとアザゼルが肯定と割り込んできた。

 

「和樹、お前は戦いに行かなくていいのか?」

 

「うん、見守ることにしたよ。それに、式森家が負けるとは思えないし」

 

「兵藤家も負けるとは思えないさ」

 

互いの家の勝敗は戦いが終わった後でしか分からない。

取り敢えず応援に徹しようと思ったら、

視界に空間が大きく歪み、避け目からゾロゾロと誰かが姿を現した。

見れば、全員の顔に紋様みたいな刺青がある。

 

「―――魔人」

 

フォーベシイが難しい顔で呟いた。

古に冥界から魔人を追い出した全ルシファーと同じ魔王だったフォーベシイは

どんなことを思っているのだろうか。改めて魔人の存在、

生存を目の当たりにして、どんな気持ちを抱いているのだろう。

 

「来たわよ」

 

ラクシャが俺のところにきた。

 

「まさか、兵藤家と式森家が私たち魔人に戦いを挑むなんて耳を疑ったわ。

だけど、これはこれで良かったのかもしれない」

 

「どうしてだ?」

 

「それは、私たちの戦いを見ていれば分かるかも知れないわよ?

もしくは私たちと戦ってみればね」

 

・・・・・・。奥の手でもあるのか。随分と余裕だ。

 

「―――兵藤家および式森家の当主!提案がある!」

 

いきなりラクシャが叫びだした。俺たちは怪訝な面持で彼女の言葉を耳に傾ける。

 

「あなたたちの誘いに乗ったからには、敗者にはそれ相応の罰を受けてもらう必要がある!」

 

罰ゲームと言いたいんだろう。そのまんまだがな。

だけど、どうしてそんな事を言うんだ?

 

「もしも、あなたたち両家が私たち魔人に敗北した暁には―――!」

 

ラクシャの腕が徐に俺の肩に伸びてきた。肩に手が掴まれ、

 

「このイッセー・D・スカーレットこと、兵藤一誠を私たち魔人の勢力に加える!」

 

『・・・・・』

 

・・・・・・・・・・・・はい!?

 

『はぁあああああああああああああああああああああああああっ!?』

 

皆が驚愕した!というか、当然だろう!なんで俺が魔人の勢力に加わることになる!?

 

「おい、お前―――」

 

「神王は黙って。これは、私たち魔人と兵藤家と式森家の問題。

部外者は口出ししないでほしい」

 

「・・・・・っ」

 

ユーストマはラクシャの言葉に額に青筋を浮かべる。

 

「キミ、どうしてそんな提案を―――」

 

「魔王も黙って」

 

魔王すらも一刀両断。じゃあ、俺なら?

 

「何で俺がお前らんところに行かないといけないんだよ」

 

「あなたを野放しにすることはできないからよ。

人間でも悪魔でも、堕天使でも、天使でもないあなたはなに?」

 

「ドラゴン!」

 

ハッキリ言った。俺の身体はドラゴン、ガイアの肉体の一部で再構築され、

オーフィスの無限の力が俺の中に宿っている。もう、ドラゴンそのものだろう。

 

「・・・・・そうね、確かにあなたはドラゴンかもしれないけど、

それでもあなたを私の傍に置きたいの」

 

それだけ言ってラクシャは踵返して魔人たちのところへ足を運んだ。

 

「アザゼル、始めよう」

 

「ああ、数も質もお前と式森んとこの家が勝っている。一見、有利に思えるが油断できねぇな」

 

小型の魔方陣を展開し、操作する。それに呼応して校庭に巨大な魔方陣が出現した。

 

「この戦いは冥界と天界にも伝えてある。

ルシファーたちやヤハウェたちもそれぞれの場所で観戦しているはずだ」

 

校庭に広がる魔方陣の光が両者を包み始め、バトルフィールドである異空間へ転送された。

 

「ルールは至ってシンプル。相手の(キング)を倒した奴が勝者だ」

 

「負傷者の手当ても完備しているから、思う存分暴れることもできるわけさ」

 

校庭の上空に巨大な立体映像が出現し、広大な草原を映している。

遮蔽物は一切なく、戦場にピッタリなフィールドだ。

その場所に兵藤家と式森家、魔人たちが現れ、開始の合図を待った。その時間とは―――。

大小の針が重なって十二の数字を差す瞬間だ。その時が腕時計の針で確認できた。

この場が静寂に包まれ、何も聞こえなくなった。時計の針しか俺の耳に入ってこない。

ジィーと時計を見つめること数十秒・・・・・。

 

―――――カチッ。

 

二つの針が揃って十二の数字を差したその刹那。映像に映る兵藤家と式森家、

魔人たちが一斉に前進し、駈け出した。

 

―――和樹side―――

 

映像を見れば、数も質も有利な兵藤家と式森家が魔人を押していった。

式森家は魔力弾を一切放っていない。父さんが無効化されるって言い聞かせたんだろう。

皆、拳や武器で魔人と戦っている。兵藤家も同じことをしている。

そんな僕と一誠の家の戦い方に対して魔人は武器を持っていない。

兵藤家と式森家の攻撃を避け続けているだけで、攻撃をしようとしない。

何を考えているんだろう・・・・・?

 

そんな光景がしばらく続いた時だった。兵藤家と式森家が二手に分かれて、魔人を挟み打ち。

両家から膨大な気と魔力が可視化するほど具現化し膨れ上がった。

魔人たちはそれに警戒してそれぞれ身体を兵藤家と式森家に向けて防御態勢に構えた直後、

気と魔力の塊が魔人を襲い、呑みこんだ。

 

「やったっ!」

 

「すごい・・・・・」

 

「あれじゃ、魔人だって・・・・・」

 

皆が感嘆、勝利を確信した。一誠やフォーベシイさん、

ユーストマさん、アザゼルさん以外は。

映像に映る相反する力が直撃して起きた爆発の煙がようやく晴れた。

―――目を疑うような衝撃的な光景がそこに映った。

 

「なんだ・・・・・ありゃ・・・・・」

 

アザゼルさんが口から信じられないと漏らす。魔人たち全員、腕に黒い装甲を纏い、

紋章状の黒い翼を背中に生やしている。まるであそこに一誠がいるようだ。

と、魔人たちが動きだした。

魔人の一人から黒い魔力が噴き上がり、次第にそれは人の形へと成していく。

完成すると魔人の動きに合わせて腕が上がり、真っ直ぐ兵藤家に伸ばした。

迫る拳に兵藤家は極太の気のエネルギー砲を放って迎撃するけど、拳に吸収され、

拳がさらに大きくなって―――兵藤家に直撃した。

 

「んな・・・・・!?」

 

「マ、マジかよ!?」

 

今の一撃で兵藤家の殆どがバトルフィールド上から光と共に姿を消した。

残る僕の家は・・・・・。魔人によってかかって攻撃をしていた。

 

『・・・・・』

 

この戦いの行方は火を見るより明らかかもしれない。

それでも、生き残っている兵藤家や必死に抗っている式森家の皆は戦い続けた。

―――父さんと兵藤家当主の人だけとなっても。

だけど、結果は・・・・・敗北。魔人もそれなりに倒されているけど、

殆ど兵藤家と式森家が倒されている。

何て言う強さなんだ・・・・・魔人は・・・・・。

 

―――アザゼルside―――

 

あいつらが倒された。三大勢力戦争をしていた俺たちに介入して、

甚大な被害をお互い出してまでも戦争を止めたあいつらが、たったの一勢力に・・・・・。

 

「アザ坊、こりゃあ・・・・・ちょいっとやばいんじゃねぇか?」

 

「ああ、ちょっとどころじゃないと思うがな」

 

あんなやつらが冥界に侵攻したら・・・・・あっという間に冥界は魔人に

乗っ取られてしまうかもしれねぇ。

魔力、気を吸収してしまうんなら、魔力で攻撃する悪魔にとって天敵に等しい。

いや、俺たち堕天使や天使も同じか。

こんなやつらを前魔王どもが追い出しやがってのかよ・・・・・。

 

「―――さて、罰ゲームをしましょうか」

 

現世に戻ってきた魔人ども、一誠を欲している魔人の女が不敵に言う。

 

『・・・・・っ』

 

イッセーを取り囲む面々。勝手に言って、

勝ったからって勝手に連れていこうとするあいつに敵意が剥き出しだ。

 

「いっくんを、渡さない」

 

「そうです」

 

あいつの(仮)妻どもが言う。だが、有無を言わせないとばかり魔人の女が近づく。

 

「なら、今度はあなたたちが戦ってみる?」

 

魔人の女の身体から黒い魔力が迸る。それに呼応してイッセーを囲むあいつらが

攻撃態勢になる。おいおい・・・・・なんて、禍々しい魔力を放つんだよ。

 

「・・・・・三日間」

 

『っ!?』

 

「ん?」

 

「三日だけなら、俺はそっちにいてもいい。ずっとは無理だ」

 

指を三本を立てて提案するイッセー。

 

「じゃなきゃ、今度は俺がお前らと戦う」

 

瞬時で鎧を装着するあいつは、本気だとヒシヒシと肌で感じる。

さて、魔人の女の反応は・・・・・?

 

「・・・・・しょうがないわね。ここで、あなたに嫌われても困るし、個人的に嫌ね」

 

禍々しい魔力が消えた。

 

「分かったわ。こっちとしても、兵藤家と式森家の実力も把握でき尚且つ、

他の勢力のトップに私たちの力を見せ付けることもできた。

今回はこれで良しとしましょう」

 

「ところで、お前が魔人たちのリーダーなのか?」

 

「新世代の魔人たちならそうね」

 

新世代・・・・・?どういうことだ?

あの魔人の女は後ろにいる魔人たちに視線を向けながら言う。

 

「あそこにいる魔人は全員、新世代の魔人たち。古から存在している魔人のことは、

旧世代の魔人。当時、冥界から追い出された時の魔人たちのこと」

 

その新世代の魔人にやられたってのか・・・・・兵藤家、式森家のやつらは・・・・・。

まるで若手悪魔みたいな感じだ。

 

「それじゃあ、私たちと共に来てもらいましょうか」

 

「しょうがない。お前ら、三日後に会おう」

 

兵藤家と式森家が負けてしまったからな・・・・・。

不安げに俺たちから離れ、魔人たちと言ってしまうあいつらを

イッセーを慕うこいつらが見送る。


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