ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

144 / 157
Episode5

深夜―――。俺は家の縁に腰を下ろして、

夜空に浮かぶ満月を傍に置いてあるきび団子を食べながら眺めている。所謂月見だ。

 

「・・・・・ふぅ」

 

「―――どうした、溜息吐いて」

 

「・・・・・」

 

返事をせず、横に振り返る。横には青い翼を生やし、

俺を見下ろすダークカラーが強い銀髪に青い瞳の少女がいた。

 

「久し振りだな、ヴァーリ。勝手に人間界に来てもいいのか?」

 

「ルシファー・・・・・魔王に一言言っているから問題ない」

 

俺に断わるわけでもなく、俺の隣に腰を下ろして満月を見上げるヴァーリの口が開いた。

 

「聞いたよ。同じ同族に、式森家と一緒に襲われたんだってね」

 

「悲しくて辛い感じは覚えなかったけどな」

 

「・・・・・」

 

ナデナデ・・・・・。

 

頭を撫でられる。なんだ?ヴァーリに視線で訊ねると。

 

「小さい頃、三人の中で一番背が小さかった私にこうしてイッセーが頭を撫でてくれたな。

それがいま、思い出したんだ」

 

と、微笑みながら答えてくれた。ああ、そうだな。

 

「まあ、俺だけじゃなく」

 

「・・・・・」

 

「イリナも撫でたがな」

 

背後から気配を感じ、小さく笑う。

傍に置いている団子を膝の上に置いてポンポンと空いたとなりを叩けば、イリナは座る。

 

「こうして、三人で月を見るのも久し振りだとは思わないか?」

 

「うん、そうだね。それで、一緒に団子を食べて、いっぱい話もしたわ」

 

「その最後の一つの団子で私とイリナは良く喧嘩もしたな」

 

「んで、俺がその団子を二つに分けて二人に渡せば、喧嘩を止めたんだ」

 

懐かしげに談笑。うん、十年振りの幼馴染だけの月見は変わらないな。

 

「二人とも。もうすぐクリスマスだが、二人は何が欲しい?

私がお前たちにプレゼントをしたい」

 

と、ヴァーリが訊ねてきた。俺とイリナは一度だけ顔を合わせてからヴァーリに言葉を発した。

 

「ヴァーリ、そう言うのはサンタさんがプレゼントをしてくれるもんだぞ?」

 

「そうそう、今年もサンタさんがプレゼントをしてくれるわ」

 

俺たちの言葉に、ヴァーリは「そうだな」と目を細め、嬉しそうに弾んだ声で返事をした。

 

「幼馴染と言う二人のサンタが私にプレゼントをしてくれたな」

 

「「・・・・・」」

 

その言葉に、イリナ共々硬直してしまった。あ、あらぁ・・・・・・?

もしかして、気付かれておりました?

 

「え、えっとぉ・・・・・ヴァーリ?なんのことかしら?」

 

とぼけた風にイリナはヴァーリに問うた。ヴァーリは意地の悪い笑みを浮かべ、こう言った。

 

「ふふっ。私がただ眠っているだけだと思っていたか?サンタさんはどんな人なのか、

誰でも興味があるだろう?それは私も同じだ。

だから―――狸寝入りをしてサンタさんを待っていたんだよ」

 

「「・・・・・」」

 

頬に冷や汗が流れる。

 

「するとどうだ?私が待っていたサンタさんは子供で、しかもサンタのコスプレをした

二人の幼馴染ではないか。ちょっと思っていたサンタさんではないことに残念だったけど、

それ以上に嬉しかったよ。こんな私のために二人がたくさんプレゼントを

置いてくれたんだからね」

 

バ、バレているし!んじゃ、何度もプレゼントした時は起きていて

とっくに俺たちがヴァーリにプレゼントをしていたのを知ってて・・・・・あんなに嬉しそうに

笑っていたのか・・・・・。

 

「二人とも、ありがとう。私には勿体ない幼馴染だよ」

 

ヴァーリは俺たちに抱きつきながら感謝の念を発したのだった。

 

「だけど、今度は直で渡してほしいな。そしたら私はもっと嬉しい」

 

「・・・・・だって、イッセーくん」

 

「ああ、んじゃ。今度は三人で行くとしようかイリナ」

 

「うん!幼馴染三人、サンタさんからプレゼントを奪いましょう!」

 

イリナが高らかに腕を満月に向かって伸ばす。俺も同じようにすれば、

ヴァーリも腕を上へ伸ばす。

 

「ところで、サンタさんは強いのか?」

 

サンタさんの実力を気になったのか、俺たちに訊いてきた。

 

「物理的な意味では分からないなぁー。いっつも、雪合戦で戦っていたし」

 

「そうそう、相手は一人だったけど、

物凄く素早くてあっという間に雪玉を当てられちゃうのよ」

 

「素早いんだね、そのサンタさん」

 

「ああ、それが何時も相手にしてくれたのは黒い翼を生やしたサンタさんだ」

 

脳裏に浮かぶ懐かしいサンタさん。元気にしているかな?今年は負けないぞ、絶対に!

 

「・・・・・黒い翼を生やしたサンタさん?」

 

疑問を浮かべるヴァーリを余所に俺はそう誓った。

 

「あっ、そうだイリナ、ヴァーリ。明日、天界に行くけどどうだ?」

 

 

 

 

翌日。俺は皆に天界に行ってくると伝えると、イリナは当然としてオーフィスやリーラ、

悠璃と楼羅が一緒に行くと今朝来たヴァーリと共に俺の部屋へ。

 

「え、どうしてこの部屋に?」

 

「こっからヤハウェの部屋に行くんだ」

 

「ヤハウェさまの部屋って・・・・・え、うそ!?」

 

驚くのも無理はないだろう。俺は壁に向かって手を伸ばし、光力を放てば、

金色の魔方陣が壁に出現してた。

すると、魔方陣の真ん中に避け目が生じて、勝手に開いた。

 

「イリナ、先に入ってくれ」

 

「え、どうしてなの?」

 

「神とは言え、ヤハウェは女性だぞ?着替え中だったらどうするんだ」

 

「あっ、そっか。じゃあ、リーラさんも一緒にお願いします」

 

リーラを引き連れ、イリナは扉の向こうへ足を踏み込んだ。

すると、向こうから驚愕の声が聞こえた。

しばらくして、イリナが顔を出してきた。

 

「入ってきていいわよ。イッセーくんの言った通り、着替え中だったわ」

 

「予想的中だったな」

 

「残念だ。私の胸で視界を閉じてやるのに」

 

息苦しくなるだけだから勘弁してくれ。扉を潜り、中に入る。

以前デュリオに案内されたヤハウェの部屋と変わらず、神々しく、豪華で綺麗な部屋だった。

 

「イッセーくん・・・・・おはようございます」

 

俺に声を掛けてくる金髪の女性こと神のヤハウェ。戸惑いの色が若干浮かんでいた。

 

「突然の来訪にごめんな。天界に来たくなったからさ」

 

「そうでしたか。あなただけ来ていなかったのでどうしたのかと

思いましたが・・・・・災難でしたね」

 

どうやら、こっちの事情を知っているらしい。ユーストマが伝えていたんだろう。

 

「・・・・・」

 

突然、ヤハウェが俺に近づき、頬を添えてくる。その表情は真剣で、

俺の何かを探るような面持ちをしていた。少しして、ヤハウェが口を開いた。

 

「確かに・・・・・以前感じなかった力がありますね。これが、魔人の力ですか」

 

「分かるのか?あれから俺は魔人の力を扱うことはできないんだ」

 

「・・・・・考える可能性は無意識に魔人の力を封じ込めているのかもしれません。

もしくはきっかけがあれば魔人の力は使えるかと」

 

きっかけか・・・・・。父さんと母さんに敵意と殺意を抱いた瞬間に・・・・・俺は

暴走したと聞いた。

 

「魔人の力は天界でも一切情報がありません。これはもしかしたらいい機会かもしれません。

もしよろしければ、身体調査をさせてもらえませんか?」

 

「ああ、別に構わないよ。でも、その前に」

 

「はい?」

 

「天界を見学したい。いい?」

 

ヤハウェに問うと、彼女はニッコリと笑んで了承してくれた。

 

「では、一番初めに第一天に行きましょう」

 

「第一天・・・・・?」

 

訊き慣れない単語に俺は首を傾げた。

そこへイリナが助け船をしてくれ、天界のことを教えてくれた。

それと、俺たちがいる階層は第七天という最上層で、神器(セイクリッド・ギア)の『システム』もあり、ヤハウェが住んでいる階層でもあり、セラフ以外しか入れない絶対的な意味で立ち入り禁止の階層。

因みに下の階層、第六天はセラフの大天使たちが住んでいる現天界の中枢機関―――『ゼブル』で、

第五天は研究機関が多い階層、第四天はアダムとイヴの話で有名なエデンの園!

サマエルの故郷とも言える階層だな。

第三天は全ての階層の中、一番広大で一般的な『天国』と呼べる場所、信徒の魂が集まる階層だ。

でも、第二天は見学させてもらえなかったということで、どんな階層なのかは不明だ。

第一天は天使たちが働く場所でもあり最前線基地のようなものだと、

全ての階層を教えてくれた頃には第一天の階層に辿り着いた。だが、第一天に赴く途中で、

俺は巨大な胸に襲われた。―――セラフのガブリエルの胸にだ。

正確に言えば、俺と目が合うと否や、満面の笑みを浮かべ俺に抱きつき豊満な胸に顔を

押し付けられて、危うく窒息死になるところだった。

そして第一天までは各層に通じるエレベーターで降下して、俺たちは第一天に辿り着いたんだ。

 

「おお・・・・・ここが第一天・・・・・」

 

石畳の白い道、ずらりと並ぶ石造りの建物、空にも浮かぶ建造物、

行き交う純白の翼を持った天使たち。なんていうか、眩しいな。空が白く輝いているのもあるが、

天使や建物、今の俺たちが歩いている道すら光っているように感じてならない。

道には塵一つ落ちていない。

擦れ違う天使たちがヤハウェとガブリエルを見て仰天をした顔を浮かべる。

 

「建物が雲の上に立っているということは、あの雲は乗れるってことだよな?」

 

「ええ、そうですよ」

 

「・・・・・食べれるかな」

 

なんとなく思った事を口にすると、ヤハウェがクスリと笑った。

 

「子供の発想ですね」

 

「いやー、雲ってわたあめみたいでさ?空に飛んであの雲を食べてみたいと

子供の時に思ったことがあるんだよ」

 

「うんうん、そうだね!三人で一緒に食べれたらいいなーって空を眺めていたわ!

懐かしいわねぇー」

 

「味のしないわたあめは不味そうだがな」

 

俺たち三人は懐かしげに話し合って、歩を進める。

多分・・・・・初めてだと思う天界(第一天)を隅々まで案内してもらい、

公園のような広場で一休み。

 

「次は第二天だけど・・・・・行けれないんだっけ?」

 

「第二天は、主に星を観測する場所であり、罪を犯した天使を幽閉する場所でもあるので」

 

「罪を犯したって・・・・・よくアザゼルはその階層に幽閉されなかったな」

 

「人間界で邪な心を抱いた時点で、堕天使となり天界に上がってこれなくなったのですよ。

まったく、女に魅了されて・・・・・」

 

それを聞いて俺は意地の悪い笑みを浮かべて言った。

 

「んじゃ、俺も女に魅了されないように気を付けよう。邪な心を抱きたくないからな」

 

ヴァーリが背中から抱きついてきた。

 

「それは困るぞ。私の魅力を感じてもらわなければ、お前の子供を産めないだろう?」

 

「ヴァ、ヴァーリ!はしたない発言はダメよ!

で、でも・・・・・確かに魅力に気付いてもらわないと困るのは事実だし・・・・・」

 

「あらー、そうですねー。私もそう思いますわー」

 

イリナが右、ガブリエルが左と俺の腕を抱き抱えながら

言うんだけど・・・・・なに、この状況。

 

「・・・・・」

 

ヤハウェが、半ば強引に俺の股の間に座って背中を押しつけてきた。若干、頬を朱に染めて。

 

「あなたなら・・・・・、邪な心を抱いても問題ないですよ・・・・・?」

 

おーい、それはどう答えろっていうんだよ。

 

そう思った時だった。

 

―――ッ!天界が大きく揺れる!

 

天界は人間界に存在していない上に、空の上だ。地が揺れるはずもない。

イリナとヴァーリも一様に不審に思ったのか、辺りに視線を走らせた。

道を行き交う天使たちも仰天している様子だった。天が揺れるなんて、

天使も想定外のことが起こったに違いない。途端に空一面に警戒を知らせる

赤い天界文字が点滅を繰り返しながら幾重にも大きく飛び交じ出した。

そんな天界の光景に驚く俺たちのもとに、警備の天使が走り寄ってくる。

 

「・・・・・邪龍が、クリフォトが天界に攻めてまいりました・・・・・ッ!」

 

その報告に俺たちは戦慄した。―――父さんと母さんたちが天界に侵攻?

どこぞの武将みたいに天下を取るつもりか!?

 

「なんですって・・・・・!?」

 

ヤハウェも驚愕の色を隠せないでいる。それから、俺に視線を送ってくる。

 

「申し訳ございません。あなた方の力をお貸しください。

クリフォト―――兵藤誠と兵藤一香の相手だと私一人では困難に極まります」

 

神すら相手にするあの二人だ。その気持ちはよく分かる。俺たちは当然、頷いた。

 

―――○●○―――

 

第一天にある作戦司令室に集まる俺たち。ヤハウェ、ガブリエルとイリナ、ヴァーリ、

オーフィス、リーラと大を囲んで作戦会議を開いていた。

中央の台には、立体映像で各層の様子が映し出されている。

・・・・・・本当に邪龍が天界で暴れている。第二天、第三天、第四天に敵が攻め込んでいて、

天使の兵団を激しい攻防戦を繰り広げている。

 

「どうやら、敵は第三天―――信徒の魂が行き着く場所である『天国』から侵入したようですね」

 

ガブリエルが顎に手をやって映像の光景を見て分析した。

映像に―――巨大な浮島が映し出されている。

あのミッドチルダで見た巨大な浮く島だ。いくら第三天―――天国が天界一広大だからって、

アレをそのまんま乱入かよ・・・・・豪快なことをしてくれるし、

あの浮島から邪龍が湧いてきていた。

さらに映像に、俺たちと相対した強敵の姿も映されていた。

 

「・・・・・兵藤誠、兵藤一香、リリス・・・・・」

 

それに見知らぬゴシック調の紫色の日傘に、紫色のゴスロリの服を着ている二十代前半と

思しき女性が映っている。ただ者ではないなと、すぐに分かった。

それとあの時、捕えることができなかったラードゥンもいて、天使たちを打倒していく面々・・・・・。ああ、天使たち。相手が悪過ぎだって・・・・・。

映しだされている映像に俺が言う。

 

「いったい、クリフォトはどうやって天界まで入ってこれたんだ?」

 

「意外とおばさまの転移魔法で来ていそうだわ」

 

有り得そうなことを言うイリナ。でも、それでも天界へ入る手段は限られているはずだ。

独自の方法を編み出して天界に入るほど母さんはしていないと思う・・・・・多分。

 

『―――冥府サイドだろうな』

 

台の一角に見知ったおっさんの映像が唐突に出現する。現在地上にいるアザゼルからだった。

ヴァーリが訊く。

 

「アザゼル、そっちはどうだ?」

 

アザゼルは首を横に振った。

 

『ああ、ダメだ。天界への入口がこっちからも閉じていてな。増援は送れない』

 

マジか・・・・・。こっちから開けることができず、あっちからも無理とされてしまった。

 

『原因は不明か?』

 

アザゼルの問いにヤハウェが頷いた。

 

「ええ。現在、ガブリエル以外のセラフの方々に原因を究明させておりますが、

それ以上に『システム』に影響が出ないよう、

私も第七天に戻らなければなりませんが・・・・・」

 

『戦いに関しては、そこにいるイッセーたちに任せるしかないだろう。

「システム」のほうはミカエルたちに任せる他ない』

 

まあ、何とか撃退してみる。

 

「アザゼル、冥府って・・・・・」

 

俺がアザゼルに訊く。アザゼルは俺が訊きたいことを理解したようで頷いた。

 

『もし、この天界に入り込めるとしたら、手段は限られる。お前たちのように正規に門を潜るか、

死後に教会の死ととして迎え入れられるか。もしくは他から上がってくるか』

 

・・・・・俺、直接ヤハウェの部屋に入ったんだけど、それって正規に入ったってことになる?

それを聞いてヤハウェが何かに気付く。

 

「―――辺獄と煉獄」

 

アザゼルが頷いた。

 

『ああ、天国とも地獄とも違う、信徒が死後に辿り着く場所だ。

辺獄も煉獄も特殊な事情を抱いたまま亡くなった者のために用意された。

どちらも行き着いた者は身を清めた後、天国に誘われる。

そう、どちらも天界に入れる扉があるのさ。―――知っているか?』

 

アザゼルが皆を見渡しながら言う。俺は知らなかった。

―――だとすれば、あの二人は知っていてそこから入ってきたということか。

 

『辺獄や煉獄、それらを教会では―――「ハデス」とも言う。

そこにいるヤハウェは、冥府を参考にして、辺獄と煉獄を定義した。

・・・・・これはあくまで推測だが、冥府の神ことハーデスの野郎は辺獄か、煉獄か、

そこに侵入できる方法を知っていた、あるいは編み出した可能性がある』

 

一名の天使が報告を持って現れる。

 

「報告です!煉獄から第三天へ通じる扉が破壊されているとのことです!」

 

―――――アザゼルの予想が当たった。

 

『あの野郎がクリフォトに手を貸すとは思えねぇ。

一度、サマエルを奪取した時にリゼヴィムは誠と一香を差し向けてたからな。

だとすれば、一香が煉獄から天国に行ける方法を編み出したとしか考えられない』

 

骸骨のお爺ちゃんが教えるとは思えないけど・・・・・まさか、また父さんたちに

やられたってことかな。もしそうなら、災難としか言えないって・・・・・。

 

「奴らの目的はなんだ?」

 

ヴァーリがそう口にする。

 

「最上階の『システム』かしら?」

 

イリナがそう言うが、アザゼルは首を横に振る。

 

『そう簡単には行けんよ。あそこは基本的にセラフ以外が足を踏み入ることができない。

異物が入り込むと、別の場所に強制転移させられるのさ。

それこそ、神の御業とも思える強力な転移をくらっちまう。

それでも奴らは何仕出かすか分からない』

 

「まるで経験があるみたいな言い方だな?」

 

俺が言うと、ヤハウェが呆れた顔と共に嘆息した。

 

「アザゼルは昔、私に黙って『システム』を見ようとしたことがあったのです。

で、結果は特殊な結界によって異物と判断され、人間界の僻地に強制転移されたのです」

 

『ただ神器(セイクリッド・ギア)のシステムを見ようとしただけなのに、

ヤハウェときたらケチでなぁ・・・・・』

 

「ケチとはなんですか。セラフ以外入ってはいけない聖域に、

邪な気持ちを抱えた天使が強制転移されて当然です」

 

『失礼なッ!あんときの俺は純粋無垢でちょっと好奇心から生んだ行動をしただけだ!

神が隠し事をしていいのか!』

 

アザゼルとヤハウェが口論し始めたぞ。おいおい、いまはクリフォトのことで・・・・・。

 

「|閃光と暗黒の龍絶剣《ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード》総督」

 

『―――っ!?』

 

ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード総督・・・・・?

ヤハウェから発せられた言葉に俺とリーラ、ヴァーリ、イリナ、オーフィスは小首を傾げた。

アザゼルはどうやら知っているようで、顔が強張った。

 

「ヤハウェ、何だその長々しい名前は?」

 

『訊くな!そいつにそんな事を聞くな!』

 

アザゼルが必死に叫んできた。

 

「ふふふっ。アザゼル、私に対してそんな口の聞き方をすれば、

あなたが残した『あの資料』をイッセーくんに見せますよ?」

 

『んなぁっ!?』

 

か、神が脅している。そんなこと、神がしていいのか・・・・・?

アザゼルは悔しげにヤハウェをただただ視線だけで殺せそうな勢いで睨み、

 

『・・・・・第三天にある生命の樹と第四天ことエデンの園に

ある知恵の樹はいまどうなっている?』

 

そう訊いた。生命の樹と知恵の樹・・・・・どっちもエデンの園に関する樹だな。

サマエルが知恵の実を唆して食べさせたことでも有名だ。

 

「どちらも樹自体は健在で、実は実のっておりますが・・・・・。

―――――まさか、彼らの狙いは!」

 

ヤハウェは何かに気付いて目を大きく見開いた。

 

『生命の樹の逆位置となる「クリフォト」。

それを名乗る奴らだ。狙っていてもおかしくはない。

あれらの実があれば666(トライヘキサ)の封印解呪も劇的に早まるだろうしな・・・・・。

それをネタに他勢力の邪な考えを持つ神クラスと交渉するってのもあり得る』

 

―――――っ!?

 

それほどまで超貴重な実が父さんと母さんの手に渡ったら・・・・・というか、

今頃すでに手中だと思う。

 

「行こう。ここで話している間にも天使が倒され、クリフォトが天界を蹂躙している」

 

ヴァーリが俺たちに向かって行った。同意と俺たちも立ち上がって第二天がある扉へ、

イリナの先導のもとで向かおうとする。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。