ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode4

俺の命を狙って襲撃されたその日、どうやら俺はトラブルメーカーぽっそうだ。

家の床に見覚えのある魔方陣が現れて、和樹はいち早く俺の前に立って周囲に魔力弾を展開、

悠璃が大鎌を前に構え、楼羅は警戒して魔方陣を睨む。

他の皆も、臨戦態勢になって魔方陣を囲んだ時に光と共にこの場の空気と皆を察知して、

 

「矛を収めろ。俺たちは話をしに来ただけだ」

 

―――兵藤源治が溜息を吐いてからそう言う。

 

「・・・・・お父さん、本当?」

 

疑心暗鬼に和樹は自分の父親に訊ねた。

 

「ああ、だから和樹。その魔力を消してくれ。こっちとしても、

お前たちと戦う理由なんて少しもないんだ。寧ろ、申し訳ないと感じている。

一誠くんに襲撃したと言う話しはさっき知ったばっかりでね、

今の今まで知らなかった。何人かの同族がいなくなっていることに気になってからようやくだ」

 

式森数馬は申し訳なさそうに言葉を発する。皆に警戒を解くように窘めて二人の前に立った。

 

「久し振り」

 

「やあ、久し振りだね。・・・・・うん、和樹から聞いた通り、ドラゴンになっているんだね。

しかも、キミから式森家の魔力を感じる。よく気と魔力、

相反する二つのエネルギーを身体に宿しているね。それは、ドラゴンの身体だからかな?」

 

「父さんと母さんが言うにはそうらしい。でも、それは実証された。

お爺ちゃんの話もちょっとは聞いたよ。相反する力の片方を封印する事で兵藤家と式森家の者の

間に生まれた子供は生き長らえる方法を編み出したって」

 

「・・・・・」

 

現当主は腕を組んで無言のまま真っ直ぐ俺を見据えるだけ。

そんな当主に和樹の父さんは俺に話しかけてきた。

 

「一誠くん、どんな経緯で式森家の魔力を得るようになったのか話してもらえるかな?

何分、まだなにも知らなくてね」

 

「じゃあ、ソファに座って。もう一度説明するから」

 

二人をソファに腰を下ろしてもらい、兵藤家からきた使者に説明した話を復唱した。

 

「・・・・・兵藤家と式森家は魔人から生まれた一族だって・・・・・?」

 

「うん、そうみたいだ。その話は魔人本人から聞いた。それは間違いないと思う」

 

「人間の器だからこそ、相反する力に耐えきれず、暴発してしまうわけか・・・・・

 

和樹の父さんが納得した面持ちで、興味深そうに言葉を漏らした。

 

「ドラゴンの肉体だからこそ、相反する力が一つとなって魔人の血と力が揃った結果、

魔人の力を覚醒する・・・・・でいいんだね?」

 

「うーん、自分でもあんまり確証がないんだけど、多分そうだと思うよ。

とにかく、相反する力には頑丈な肉体という器が必要不可欠なんだ。

生まれてすぐの赤ん坊では、耐えきれない」

 

「片方の力を封印していたからこそ、生き長らえた。封印は無駄ではないってことなんだね。

あとは強靭な肉体まで鍛えれば・・・・・」

 

ブツブツと思考の海に潜ってしまった和樹の父さん。

いや、何度も言うけど人間の身体じゃ保てないと思うよ。

 

「一誠よ」

 

お爺ちゃんが話しかけてきた。

 

「お前を襲撃した者たちはどうした?」

 

「父さんと母さんが連れ去った」

 

「・・・・・二つの血と力を手に入れようとしているのだろうな。

その方法は俺たち兵藤家と式森家にある。あの二人ならば容易いことだろう」

 

うわ・・・・・んじゃ、リリスのような奴が生まれるってことかよ。

どんどんクリフォトの勢力が強まっていくな。

 

「・・・・・」

 

ふいにあの時と同じ感じを察知した。立ち上がってソファの後、窓に移動して開け放った。

外は既に夜。雨も止んでいて、空気はちょっと冷たいが・・・・・。

 

「噂をすれば影か。出てこいよ」

 

催促したその時。目の前の空間が歪んで、穴が開くと一人の女性が現れた。

 

「なんで、分かったの?」

 

「さあな。何故だか、来るって感じがするんだよ」

 

「それも―――魔人の力を覚醒した副作用かしら」

 

微笑む女性は魔人だ。手を招いて家の中に上がらせた。

 

「・・・・・一誠くん、彼女は誰だね?」

 

「魔人だ」

 

「魔人・・・・・!?」

 

和樹の父さんが目を丸くした。魔人はただ笑みを浮かべる。

 

「初めまして。一応兵藤家と式森家は私たち魔人の血と力を受け継いでいるから、

いとこみたいな関係かしら。私は魔人のラクシャ。

人間としてはシオリって名前で通じているわ」

 

自己紹介を終えると彼女は俺の頭、頬、首、肩、胸、腹を触りだした。

 

「うーん・・・・・本当に魔人の力、覚醒したの?魔人としての力が感じないんだけど」

 

「俺が覚えている辺りは、両腕に黒い装甲を装着して背中に紋章状の黒い翼を生やしていた」

 

「なるほど・・・・・その話を聞く限り、確かに覚醒しているのね」

 

ラクシャは顎に手をやって頷いた。そこで、和樹の父さんが口を開いた。

 

「キミたち魔人はどのぐらい強いんだね?」

 

「うん?うーん、個人によるからなー。それと能力も。

教えることはできないからごめんなさいね」

 

「・・・・・だったら、ちょっと力づくで知ろうかな」

 

え・・・・・?唖然と和樹の父さんを見ていると、いきなり魔力弾を放った。

 

「あははー、こりゃあ不可抗力でいいわよね」

 

苦笑いを浮かべるラクシャの眼前で魔力弾が何かに吸われるように消失した。

 

「・・・・・ほう」

 

また、魔力弾を前触れも無しにはなった。今度の数は数十だ。

―――それでもラクシャの前で魔力が吸われていく。

 

「式森家の魔力が魔人だから無効化されるわけ・・・・・ではないよね?」

 

「さあ、丁度ここに悪魔とかいるし、やってみれば分かるんじゃない?」

 

不敵に挑発する。負けない余裕があるんだろう。

 

「では、魔力ではない気で放ってみようか」

 

お爺ちゃんが座ったまま手の平を翳してきた。刹那、気弾を撃ってくる。

ラクシャはかわす素振りもせず、ラクシャの前で気弾すら、何かに吸われてしまった。

 

「ふふっ♪」

 

魔力と気を無効化にする・・・・・。だけど、それだけじゃないと思う。

 

「あなたも、魔人として覚醒できたらこんなふうにできるわよ?」

 

「それは、魔人全員がそうだと言う風に聞こえてくるな」

 

「想像に任せるわ。なんなら一緒についてくる?魔人の力を知っているのは魔人だけ―――」

 

刹那。俺はラクシャから離され、皆に抱きしめられ、囲まれ、守られた。

 

『行かせるかっ!』

 

「・・・・・今の、全然見えなかったわ。なんて独占欲なのかしら」

 

や、これは純粋な思いの行動だと思いたいぞ。だから、そう唖然としないでくれ。

 

「でも、いいのかしら?そのままで」

 

『・・・・・?』

 

「その子が魔人の力を覚醒したと聞いた兵藤家と式森家が

その子を襲撃したってことは知っているわよ」

 

皆が愕然とする。情報が早いな。今日起きたことだと言うのに一体どこで知ったのやら。

 

「だったらいっそのこと、私たち魔人のところで暮らさない?

また身近な味方に襲われたら堪ったもんじゃないでしょ?魔人の本来の力、興味ないかしら?」

 

「・・・・・」

 

ないといえば嘘になる。だけど、それを口実に冥界に繋がる道を案内、

もしくは作れと言いだしそうだ。

 

「ああ、別に見返りなんていらないからね。

ただ、あなたと言う存在が個人的に気になっているの」

 

「なんでだ?」

 

「だって、純粋な魔人以外で魔人の力を持つ存在なんて生まれて初めて見たから。

できれば、あなたの傍でじっくりと観察してみたいわ」

 

彼女の背後に空間が避けた。

 

「それじゃ、そろそろ帰るわ。魔人の力の使い方、知りたくなったらいつでも連絡してね。

待っているから」

 

それだけ言い残し、空間の避け目に入って避け目が閉じたことで彼女の姿は消えた。

 

「・・・・・あれが魔人」

 

「得体の知れない者だったな。俺とお前の攻撃を吸収したのだからな」

 

「どうやって吸収したのか、不明ですけどね」

 

何らかの力を発動した様子も見当たらなかった。魔力も感じなかった。

 

「まあいい。魔人の存在も確認できた。収穫も得たわけだ」

 

「ええ、ですが、連絡してというのは・・・・・一誠くん、彼女と連絡ができるのかな?」

 

「まあ、そうだけど。魔人の力を知っているし」

 

答えるとお爺ちゃんと和樹の父さんが顔を見合わせる。

 

「魔人どもを一掃できるか」

 

「可能性はありますね」

 

ちょっ・・・・・この二人は何考えているんだ!?脳裏にある予感が浮かび、

まさかと思いながら問うた。

 

「魔人と戦うなんて考えはしていないよな?」

 

「魔人の存在が今の兵藤家と式森家を乱している。―――元凶を討たなければ正当に戻せん」

 

―――――っ。戦う気だ、この人は・・・・・。

 

「大丈夫。戦うにしてもRG(レーティングゲーム)の異空間の中でするさ。

そうすれば、死者はでないからね」

 

和樹の父さんが俺を安心させるためか、微笑みながらそう言う。

そこへ、和樹が話掛けてきた。

 

「でも、今の見た限り、気と魔力が通じなかったよ?どうするの?」

 

「式森家は魔力だけが能じゃないって知っているだろう?体術や武器の扱い方も

取り入れているから大丈夫だ」

 

手を伸ばして和樹の頭を撫でる。

 

「では、戻りましょうか。当主が留守にしている間、家では暗躍している者が煽っている

可能性がありますし」

 

「これ以上、同族を減っては困るからな」

 

二人の足元に魔方陣が出現する。転移魔方陣か。

 

「一誠、時が来たら魔人どもに連絡しろ。―――兵藤家と式森家がお前たちに戦いを挑むと」

 

「・・・・・」

 

「今回は済まなかったな。こんなことが無いようにしっかりと見張る」

 

「式森家もだ。それじゃあね」

 

二人は魔方陣から発する光と共に消え、この場からいなくなった。

 

「一誠・・・・・」

 

「止められないだろうなぁ・・・・・でも、あの異空間の中でやるっていうんなら、

命の保証はあるはずだ」

 

「兵藤家と式森家が負けないよね?」

 

「俺はそう思っている。ただ、魔人の力は計り知れない」

 

手の甲に話しかける。

 

「ティア、母さんの剣から出てきたあの蛇みたいな奴はなんだったんだ?」

 

蒼い宝玉が浮かびあがり、点滅を繰り返しながら教えてくれる。

 

『あの蛇は邪龍だ。霊妙を喰らう狂龍(ヴェノム・ブラッド・ドラゴン)八岐大蛇だ』

 

―――邪龍だって?剣に宿る伝説の邪龍か。

 

『気をつけろよ。サマエルほどではないけど、強力だ。放っておけば数日を保たず魂まで

毒に汚染されて息絶える。解毒ができるのも限られた術者か、施設のみだぞ』

 

「既にサマエルの毒と呪いを体験した俺だけど、その邪龍も邪龍で危険か」

 

 

 

 

 

 

―――Heros.―――

 

「曹操、魔人の存在が確認できたよ」

 

「悪魔以外にも魔の存在がいたとはな」

 

「でも、居場所までは突き止められない。見つけたらどうする?」

 

「俺たちは英雄だ。英雄らしく人間の敵を倒すまでだ。ふふっ、悪には悪を・・・・・。

俺たちが導いてやろうじゃないか。―――冥界へさ」

 

「腹黒い英雄の子孫さまだね」

 

 

 

 

―――devil―――

 

「んで、おっちゃんたちは人工的に魔人を作りたいって?」

 

「スペックは落ちるだろうけど、戦力にはなるはずだって言ってましたので」

 

「うひゃひゃひゃ!そーかいそーかい。これで、またクリフォトの戦力が増えちゃうねー!

さーて?現代の悪魔と魔人、どっちが強いんだろうか、気になってしょうがないね!

ユーグリットくん、魔人の潜伏先をなんとか見つけてくれない?」

 

「おや、それはどうしてですか?」

 

「僕ちゃんは優しいからねぇ―。数百、数千年振りに故郷(冥界)へ帰郷させてやるのさ!

うひゃひゃひゃっ!」

 

 

 

―――devilhuman―――

 

「ただいまーっと」

 

「お帰り、どうだったよ?」

 

「ちゃんとした検査をしないと分からないわね。

でも、あの子のところに兵藤家と式森家の当主たちはいたわ。

軽く攻撃されたけど、無効化したわ」

 

「永い年月を掛けて編みだした魔人の新しい力、大いに役立つようだな」

 

「それでも、弱点はあるけどね」

 

「分かっている。だからこそ、この力なんだ。―――倒し、故郷を取り戻そう」


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