ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode8

「そう言えば、娘たちの調子はどうだい?」

 

「戦う様子を見ていたけど、決定打がないな」

 

「つまり、必殺技みたいな攻撃がないと?」

 

「うん、そんなところだ。ISはともかく武装がイマイチだ」

 

風呂を入った後の俺は、武装の調整をしているジェイル・スカリエッティの隣でそう言う。

 

「今のままじゃ、管理局に負けてしまうぞ?魔法の威力、あっちの方が強力だ」

 

「ならば、それに負けない兵器を作るまでだ。何か考えは浮かんでいるかな?」

 

質問されて、取り敢えず十二人のナンバーズと武装の詳細の資料を見ながら言う。

 

「ウーノとクアットロは以前も言ったように魔力無効化か魔力反射を備えさせるべきだ」

 

「他の娘たちは?」

 

俺は答える。

 

「トーレのラインドインパルスは身体強化の能力で結局は接近戦で拳や足を繰り出す格闘になる。

両の太ももと踝の部分に備えられた装甲から伸びる、虫状の羽をもっと鋭く頑丈に。

刃として備えているなら伸縮自在にするべきかな。

それと魔力の斬撃が放てるよう遠距離からの攻撃が必要だろう」

 

「ふむ・・・・・」

 

「チンクのランブルデトネイターは管理局が持つデバイスの破壊に有効だと思うぞ?

金属を爆発物に変える能力なら投げナイフじゃなくても

手で触れてデバイスを爆発させればいい」

 

「ほう・・・・・そういう考えもあったのか。私としたことが思い浮かばなかったよ。

他には?」

 

俺の話に耳を傾け、次と催促する。科学者として興味、

好奇心が湧き新たな発見は楽しいのだろう。

 

「セインのディープダイバーは視界でも見れるようにできないか?

できないならゴーグルみたいな物で無機物を透過して覗けれるように開発してさ。

それと両手の指からレーザーを放てるようにしてくれ。それで刃に具現化できれば、

もっと戦い方がマシになるはずだ」

 

「やってみよう」

 

「まだ会ったことがないナンバーズ7と8、セッテとオットーのISは取り敢えず思い付き、

セッテの固有武装はビームかレーザーでも放てるようにしてほしい。刃が備えたブーメランを

ただ投げて機動制御するだけじゃかわされるか、弾かれるか、防がれるのが関の山だ。

オットーのレイストームは捕縛、結界の性質の他に斬撃も入れてほしい。

ああ、オットーにも魔力無効化か魔力反射を備えてくれ」

 

「わかった。他は?」

 

「相手に幻影使いがいるそうだし、ノーヴェの固有武装のガンナックルに射撃の機能があるなら

マルチロックオンの機能を備えるべきかな。それと手のひらから砲撃もできるようにしてくれ。

エクセリオン・バスター並みの威力ぐらいの砲撃が好ましい」

 

次はディエティ。

 

「ディエチが持つIS、ヘヴィバレルは体内で生成されるエネルギーを大型の砲身、

イノーメスカノンで砲撃として出力する能力なら、拡散とノーヴェのようにマルチロックオンも付け加えればいいと思う。砲撃の種類が豊富だと何かと便利だろうし」

 

「ウェンディの固有武装は?」

 

「これもマルチロックオンを加えてほしい。それと、相手の魔法による防御魔方陣を貫く貫通性、魔力弾の強化と盾に隠し刃だ。それを複数、ビットとして展開した方が良いかもしれない」

 

「ほう、ビットとしてか・・・・それに防御魔方陣を貫く貫通性・・・・・AMFを魔力弾に纏わせると言うことかな?」

 

その問いに首肯する。

 

「そうだな、そうしてくれ。できる?」

 

「できるとも。キミの考えはとても面白いな。他にはあるかい?」

 

「最後はナンバーズ12のディードのツインブレイズ、

トーレ同様遠距離からの攻撃をできるようにしてくれ。射撃型と斬撃を放てるように」

 

「わかった。だが、まだ一人残っているよ。ドゥーエを忘れてはいないかい?」

 

ジィエル・スカリエッティに指摘され、頭を掻く。

 

「彼女は姿を変える能力そうだから・・・・・これといって戦闘に関わらなさそうに思うが?」

 

「確かに、彼女は潜入、諜報、暗殺を主体にしているからね」

 

「暗殺か・・・・・じゃあ、暗殺しやすいように影の中へ入れる能力とピアッシングネイルから

捕縛、射撃、エネルギーで伸縮を自在にできるように調整してくれ」

 

全員の固有武装の改良の余地を言い終わり、吐息を一つ。

 

「ありがとう、いい参考になったよ。これから忙しくなりそうだ」

 

「そうか、んじゃ俺は寝るよ。ジェイル・スカリエッティも程々にして寝なよ」

 

「ああ、わかった。おやすみ」

 

ジェイル・スカリエッティと別れ、リーラたちがいるところへ戻った。

いざ、部屋の中に入ると、

 

「あっ、おかえりー」

 

「・・・・・なんだ、この状況は」

 

リーラ、イリナ、ヴァーリ、オーフィス、ヴィヴィオは当然とする。

一緒にこの部屋の中で過ごしているからな。

だが―――セインを始め、チンク、ディエチ、ウェンディがリーラのメイド服を着ていた。

 

「リーラ、これはなんだ?」

 

「セインさま方が私の着ているメイド服に興味があるようで、着させておりました」

 

「・・・・・何時の間にセインたちのサイズに合うメイド服を持っていたんだ?」

 

「メイドですので」

 

いや、それ、答えになっていないから・・・・・それにチンクの身長に合う

メイド服なんて・・・・・リーラの身長と合わないはずなんだけど・・・・・。

いや、深く考えない方が良いか。リーラもリーラで父さんと母さん並みに凄いからな色々とさ。

 

「イッセーイッセー。どう?似合っている?」

 

セインが興味津々に訊いてくる。似合っているかだって?

そりゃ―――似合っているに決まっている。

 

「ああ、とても似合っているぞ。可愛いじゃないか」

 

「えへへ、ありがとう」

 

笑みを浮かべるセイン。

そこへ「弟よ。姉の姿はどうだ?」とばかり視線を送ってくるチンクがいた。

似合っていると、親指を立てると、チンクはチンクで腰に手を当てて胸を張った。

 

「なんだか、変な気分」

 

「そうっスねぇー。通気性が良いようで体中がスースーするっス」

 

ディエチとウェンディはメイド服の着心地に困惑中だった。

 

「二人とも、似合っているぞ?可愛いし」

 

「それ、喜んでいいっスか?」

 

「女が綺麗とか可愛いとか言われて嬉しくないわけがないじゃないか?」

 

「うーん、嬉しいって感じがあんまりしないんだよね。

でも、胸辺りにポカポカする。これ、悪くない」

 

自分の胸に手を当てながら言うディエチ。そう、そう言う反応だよ。

 

「それが嬉しいって感情だ」

 

「これが・・・・・?」

 

「うん、そうだ」

 

「・・・・・これが、嬉しいか・・・・・」

 

自分の胸の奥から湧きあがる気分に浸る。自然とディエチの口角が少し上がる。

 

「・・・・・さて、そろそろ寝る時間だから俺は寝たいんだが?」

 

既にヴィヴィオは寝ているからな。

 

「ならば、姉と一緒に寝よう。ここでな」

 

「・・・・・」

 

俺のベッドに跨ってポンポンとチンクが「こっちに来い」と言わんばかりに視線を送ってくる。

 

「あっ、私もここで寝ようかな。戻るのも面倒だし」

 

セイン?

 

「そうっスねぇ。他にも空いているベッドがあるし、そこで寝ようっス」

 

「賛成。じゃあ、これを脱いじゃおうか」

 

ディエチがそう言いだすと、セインたちが徐にメイド服を脱ぎ始めた。

・・・・・あれ、こいつらの寝間着ってどうなっているんだ?

気になってセインたちに視線を向けると―――。

 

「見ちゃダメ」

 

背後からイリナの手で視界が塞がれた。

 

「いやイリナ。もっと手っ取り早い方法がある」

 

「え?なに?」

 

視界が暗い中、体が勝手に動き出してベッドの縁に腰掛けさせられたと思えば、

太股に温かくて弾力がある重みが感じた。すると、今度は顔全体にも―――。

 

「ヴァーリったらズルい!」

 

途端に塞いでいた手が離れた。目を開けると・・・・・目の前に白い二つの塊が見えた。

・・・・・なんだ、これ?甘い香りもするし・・・・・。

 

「ふふっ、どうだ?私のイッセーに対する想いが詰まっている胸の心地好さは?」

 

「・・・・・」

 

は・・・・・?と眼だけ上へ動かすと、俺を見下ろし微笑んでいるヴァーリの顔が入ってくる。

 

「これなら、他の女を見ることができない上に私だけ見つめてくれるという、

男の意識を自分に向ける究極の方法・・・・・と本に載っていたが、どうやら本当のようだな」

 

いやいや・・・・・ヴァーリ?これは向けざるを得ないと思うんだが・・・・・。

 

「ん・・・・・イッセーの温もりをここまで感じるのは久し振りだ・・・・・もっと感じたいぞ」

 

いつしか、ヴァーリは俺を押し倒して俺にすり寄ってくる。

 

「ちょ、ヴァーリ・・・・・」

 

「んん・・・・・なんだ・・・・・?

ああ、中途半端に服を脱いでじゃああまり感じられない・・・・・」

 

何かに取り憑かれたかのようにヴァーリが服を脱ぎ出す。

ワイシャツを脱いだら黒いブラジャーが視界に飛び込んできた。

それすら鬱陶しいと外してヴァーリの豊満な胸が曝け出した。

 

「イッセー・・・・・」

 

そして、ヴァーリはそのままの状態で圧し掛かってきた。

 

「・・・・・」

 

しばらくして、ヴァーリから寝息が聞こえてきた。

 

「おいおい・・・・・」

 

「ふーん?そうやって寝ているんだ?」

 

セインが不思議そうに声を掛けてきた。

・・・・・何時も着ている戦闘服みたいなスーツを纏って。

ディエチも俺たちを交互に見て口を開いた。

 

「上半身裸で寝るなんて、風邪引きそうなことをしているけど大丈夫なの?」

 

「ああ、布団を掛ければ大丈夫だろう」

 

「・・・・・我、寝る」

 

モゾモゾとオーフィスが動き、上掛け布団をヴァーリと一緒に掛けてもらったがオーフィスは

俺の左腕に頭を乗せて俺にしがみ付く態勢で寝始める。

 

「うう・・・・・ま、負けていられない!」

 

イリナまでもが寄ってきて羞恥で顔を赤くしながらも俺の右腕に

頭を乗せて体にしがみ付いてきた。

 

「・・・・・」

 

残るリーラだが。既に抱きつく場所は無くなっているしベッドのスペースもなくなった。

 

「リーラ、床に布団を敷いてもらえるか?」

 

「はい、かしこまりました」

 

忠実な愛しいメイドは疑問を浮かべずに指示通り床に布団を敷いてくれた。

俺は十二枚の金色の翼を展開して、器用に翼を動かし、

布団が敷いた床へ移動して改めて寝転がった。さらに翼を大きく広げて。

 

「おいで」

 

「失礼します」

 

金色の羽毛だらけに足を踏み入れて俺の傍で寝転がった。

っと、そうだ。仲間外れは可哀想だよな。

 

「チンク、ヴィヴィオを翼の上に移動させてくれるか?」

 

「まさか、その状態で寝るのか?」

 

「まあ、何時もしていることだし・・・・・・なんなら、寝てみるか?」

 

そう問いかける。チンク、セイン、ディエチ、ウェンディは顔を見合わせた後にヴィヴィオを

翼の上に移動させてくれたら金色の絨毯とも言える俺の翼の上に寝転がった。

 

「おお・・・・・ふかふかだ」

 

「うわ・・・・・・」

 

「なんだか・・・・・心が安らぐ」

 

「温かくて・・・・・落ちつくっス・・・・・」

 

翼の感触と温もりを感じるセインたちは何時しか、寝息を立て始めて寝始める。

 

―――○●○―――

 

翌日の朝。朝食を終えてナンバーズの皆の固有武装のことをジェイル・スカリエッティが

伝えているところに通信式魔方陣を展開してある奴に連絡を取った。

小型魔方陣は立体映像となり、一人の中年男性の姿を発現する。

 

『よう、数日振りだな。どうやら、まだそっちの世界と繋がっているようだな』

 

「ああ、それより父さんと母さんの姿を確認したぞ」

 

『分かっている。邪龍共を囮にしてそっちに行きやがったんだ』

 

そんなことがあったのか。

 

「そっちの状況はどうだ?」

 

『今のところ何の変化もない。が、お前の女どもがうるさくてしょうがねぇ』

 

「・・・・・帰ったら誠心誠意コミュニケーションしないとけないか」

 

『モテる男はつらいねぇ~?』

 

こいつ、ムカつく・・・・・ッ!

 

『リゼヴィムの野郎を連れて来られそうか?』

 

「おじさんが見つからないから何とも言えない。

いま、協力者にも手伝ってもらっているけど発見していない」

 

『協力者?』

 

「ああ、科学者だ。アザゼルと気が合いそうな奴だ」

 

そう言うと顎に手をやって興味深そうな面持ちとなった。

 

『そいつはぁ会ってみてぇな。いま会えるか?』

 

「ちょっと待ってくれ。ジェイル・スカリエッティ」

 

「ん?なんだい?」

 

「次元世界いる知り合いの研究者がお前と話をしたいって」

 

こっちに来いと手を招けば、ジェイル・スカリエッティは来てくれた。

俺が展開している通信式の魔方陣を見て興味深そうに見据える。

 

『ほう、そいつがイッセーの協力者か?俺はアザゼルと言う。お前の名はなんだ?』

 

「私はジェイル・スカリエッティだ。アザゼルと言ったかね?キミは研究者だと聞いたが?」

 

『まあ、他にも総督って肩書きもあるが、研究者でもあるな』

 

「なるほど・・・・・では、どんな研究をしているか私に教えてくれないだろうか?」

 

と、二人のマッドサイエンティストが会話の花を咲かせ始めた。

魔方陣を固定化にして離れたところでセインに話しかけられた。

 

「ねえ、イッセー。ドクターは誰と話しているの?」

 

「俺の知り合いの研究者だ。

違う研究をしているけどジェイル・スカリエッティみたいなやつだ」

 

「へぇ、もしかして次元世界の人?」

 

そうだと首肯する。ジェイル・スカリエッティを見れば、

目にキラキラと輝いているのが目に見えた。

次元世界の研究者の研究の話を訊き、興味深くもっと知りたいと思っているんだろうな。

 

「それはそうと、イッセー。私たちの固有武装、考えてくれたんだね。ありがとう」

 

「ん、どういたしまして」

 

「まさか、このまま私の手が砲門に改造されるのかと

ビクビクしていたけど・・・・・指先にレーザーを放てるって聞いた時は安心できたよ」

 

「改めて色々と考えた結果だ。新しい武装、楽しみだな」

 

「うん、そうだね」

 

頷くセイン。完成したら一勝負してみたいな。

 

「ちょっといいかしら」

 

「ウーノ姉?」

 

「どうした?」

 

向こうから話しかけるウーノ。

 

「この封筒を管理局の地上本部にいるナンバーズ2、ドゥーエに渡してきてほしい」

 

そう言いながら茶色い封筒を手渡してきた。

 

「俺がか?」

 

「ええ、あなたの正体は管理局には知られていないし、簡単に受け渡せることはできる。

頼まれてはくれないかしら?昼頃に指定した場所へ合流してもらう指示は出してあるから」

 

「ふーん、分かった。昼頃なら昼飯は―――」

 

「はいはい!お昼はシチューが食べたいっス!」

 

『昼飯』という単語に耳が良いようで、ウェンディが昼飯を要求してきた。

 

「あら、私はビーフシチューがいいわぁー」

 

クアットロはビーフシチューが好きなようだな。

 

「んじゃ、両方作ってやる。それで腹が満足するだろう?」

 

「おお、両方とは豪華・・・・・」

 

「うん、楽しみだな」

 

ディエチとセインがそう声を漏らす。

 

「・・・・・」

 

何か訴えるかのような視線をチンクが送ってくる。

その視線の意図に理解してチンクに向かって頷けば、

彼女はいそいそとリーラと共に食器を片づけて厨房のへと

食器を乗せた台車を押していなくなった。

 

 

 

ミッドチルダ首都クラナガン

 

ウーノに頼まれた封筒を片手に合流地点に足を運んだ。

辺りは市街地そのもので、噴水がある場所だ。その場所で俺は一足早く佇んで待っていると、

 

「だーれだ?」

 

と、声と共に視界が塞がられた。目を覆う手は柔らかく温もりを感じる持ち主に応えた。

 

「ウーノの妹さん」

 

「う~ん、八十点」

 

「いや、監視されているかもしれないから遠回しで言ったんだが」

 

「それでもちゃんと言わないと、このままいたずらしちゃうわよ?」

 

耳元で艶かしい声音で呟かれ、声を殺して言った。

 

「ドゥーエ」

 

「正解」

 

俺の手の中にある封筒を抜き取った女性に振り向く。

綺麗な女性だという第一印象だった。女性、ドゥーエは優しい笑みを浮かべ口を開いた。

 

「初めまして、あなたがドクターの協力者にして次元世界からきた少年、

イッセー・D・スカーレットね?私はナンバーズ2、ドゥーエ。よろしくね」

 

「イッセー・D・スカーレットだ」

 

握手を交わして挨拶を終える。

 

「なるほど・・・・・ウーノの言った通り可愛い」

 

「帰ったら絶対何て言ったのか吐かせてやる」

 

「乱暴はだめよ?」

 

「大丈夫、言葉通り縛るだかだから」

 

不敵に言う。ドゥーエはニッコリと口元を綻ぶ。

 

「あなたって面白いわね。妹たちは元気にしているかしら?」

 

「主食が弁当だって知ったときは驚いたぞ。今は俺たちが料理を作っていて、

最近はチンクが姉として6番以下のセインたちのために俺と一緒に料理を作っている」

 

「あら、あの子が?」

 

「その上、俺のことを弟と呼ぶ始末だ」

 

付け加えて言ったら、彼女は一拍して、小さく笑い出した。

 

「ふふふっ、なんだか楽しそうね。

それに、ウーノから聞いた話だけど私の固有武装を考えてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。ああ、これ、弁当だ」

 

亜空間から弁当を取り出して、彼女に渡した。

 

「これは?」

 

「俺からの細やかな挨拶代わりだ。まだ食べていないだろう?」

 

「ええ、気を使わせてくれてありがとう。食べて良い?」

 

「感想も言ってくれよ?」

 

噴水の縁に座って彼女は弁当の蓋を開け、箸を手にして食べ始めた。

 

「・・・・・」

 

「どうだ?」

 

タイミングを見計らって訊ねると、ズーンと落ち込んだ。

 

「女としてのプライドがズタズタにされたと言っておくわ」

 

「褒め言葉として受け取っておくよ」

 

勝利!と勝手に自己満足して心の中で高らかに笑う。

 

「そう言えば、封筒の中身ってなんだ?あいつからの命令書?」

 

「違うわ。妹たちのメッセージよ。任務中、滅多にウーノやトーレ、

クアットロたちと会えないからたまに手紙を送ってもらっているの」

 

「・・・・・とても、悪道に歩んでいる特殊な人間とは思えないな。

本当にこれから悪いことをしようとしているのか?」

 

「ええ、ドクターの願いは私やウーノの願いでもあるの。

それに妹たちを想う気持ちは違わない」

 

そう言って弁当を隣に置いて封筒の中身を取り出した。

十数枚の紙が入っていてそれを静かに目を通す。

 

「・・・・・」

 

しばらくして、俺に視線を向けてきた。

 

「今日は何時もと違ってあなたのことがたくさん書かれているわね。

不思議な少年、凄い男、美味しい料理を作ってくれる、初めて弟ができた!

など色々とあなたのことを含めて書かれているわ」

 

「ははは、そうか」

 

「本当、あなたがドクターに協力して以来、妹たちに良い意味で変化が起きているようね。

はい、これをドクターに渡して」

 

俺に別の封筒を差し出してきた。きっとウーノたちのために書いて手紙なのだろう。

それを受け取って亜空間に仕舞い立ち上がる。

 

「それじゃ、ウーノからの頼み事も果たせた。俺は帰らせてもらうよ」

 

「気をつけなさい?正体は暴かれていないけど、管理局は黒尽くめの人物を血眼になって

探しているわ。中にはロストロギア扱いをして封印をするべきだと声も挙がっている」

 

「あらら、そこまで有名人になっていたか」

 

「そうよ。だから―――」

 

「ちょっとキミ、いいかしら?」

 

声を掛けられた。反応して声がした方へ振り向けば・・・・・げっ、

 

「あ・・・・・やっぱり」

 

確か・・・・・タイプ・ゼロとか言われていた女性がいた。

 

「あなた、自分の名前を言えるかしら」

 

「・・・・・イッセー・D・スカーレット」

 

「イッセー・D・スカーレット・・・・・?―――兵藤一誠という名前じゃなかった?」

 

「いや、イッセー・D・スカーレットと言う名前だけど・・・・・誰?」

 

「・・・・・ちょっと私と同行を願えないかな?」

 

そう言ってタイプ・ゼロは俺に手を伸ばしてきた。

が―――。

 

「少しお待ちください」

 

ドゥーエが助け船を出してくれた。

 

「私は本局者ですが、あなたの所属している部署と階級を名乗ってくれませんか?」

 

「本局の方・・・・・?私はギンガ・ナカジマ。

所属部署は時空管理局・陸士108部隊所属の捜査官。階級は陸曹でございます」

 

「捜査官がどうしてこの子を同行しようとするのですか?」

 

「その子は私がいま勤めている機動六課が探している子と酷似しているんです」

 

「なるほど・・・・・ですが、この子は違うと仰りましたが?

それでも連れて行こうとするのはいささか強引ではないでしょうか?」

 

鋭く指摘するドゥーエにギンガ・ナカジマは食い下がる。

 

「深い事情があるのです。話によればこの子は裏で操っている者に調教や洗脳、

改造されているそうなんです」

 

「(・・・・・はあっ!?)」

 

調教・・・・・?洗脳・・・・・?改造・・・・・・?―――なんじゃそりゃあああああっ!?

 

「・・・・・とてもそのようには見えませんが」

 

だよね!なに身に覚えのないことを俺はそうなっているんだ!

―――あの人たちか、あの人たちだな?絶対あの人たちだ!

 

「いまは操っている者の手から離れて自我が正常に戻っているのでしょう。

また操る者の手に渡ったら大変です。だから、こちらで保護をしようと同行を願ったのです。

失礼ですが、あなたはこの事どういった関係で?」

 

「・・・・・ただの話相手です。私が弁当を持ってここで食べようとしていると、

少し話相手が欲しくなったので隣にいた人がたまたまこの子だったので」

 

無難な説明だな。ドゥーエの説明にギンガ・ナカジマは俺に視線を向けてくる。

 

「イッセーくんだったね?あなた、どこの生まれなのかわかる?」

 

「・・・・・」

 

心中で悩む。えーと・・・・・俺、洗脳されていることになっているんだよな?

んで、自我を取り戻していると・・・・・。だったら普通に接しても問題は・・・・・ないか?

 

「地球・・・・・」

 

「次元世界のことね。あなたのお父さんとお母さんが

機動六課にいるから直ぐに送り届けてあげる」

 

彼女の言葉に思わずドゥーエに視線を向けた。アイコンタクトでやり取りする。

 

「(どうすればいい!?)」

 

「(とりあえず、疑われないように付いていくしかないわ。

それで、その後はどうにかしてドクターたちのところへ戻るしかない)」

 

「(機動六課には父さんと母さんがいるけど、あの二人は敵なんですケド!?

しかも、俺と同等かそれ以上の強さなんですけど!)」

 

「(じゃあ、戦った記憶があって物凄く警戒してそのタイプゼロ・ファーストと一緒にいるように

しなさい。それとできたら懐柔してくれるかしら。ドクターが彼女を欲しがっているから)」

 

「(マジで・・・・・?俺、ここ最近動いてばっかだなぁ・・・・・無事に戻れたら

ドゥーエさんの膝枕を所望します)」

 

「(戻ってきたら、ね?)」

 

俺はギンガ・ナカジマと機動六課に同行せざるを得なくなり、俺のことをドゥーエが

ジェイル・スカリエッティに連絡してもらうことでギンガ・ナカジマと行動することになった。

 

―――○●○―――

 

「・・・・・」

 

「「・・・・・」」

 

機動六課に連れて来られた俺はさっそく父さんと母さんと面会され、物凄く警戒心を剥きだして

臨戦態勢の構えとなる。

 

「洗脳されていた時の記憶が残っていて私たちを警戒しているようだね」

 

「そうみたいね・・・・・」

 

あんたらが可笑しな設定をするからだろうがぁっ!こうするしかないんだよぉっ!

 

「イッセーくん、ダメだよ。実の両親にそんな態度をしちゃ・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「いや、無理もない。一誠を操っていた者に私たちの、

親の記憶も操作されて忘れてしまっているのかもしれない」

 

父さん・・・・・あんたはなに言っちゃっているんですか?敵だと知っている俺からすれば

芝居にしか見えないって。逆にこいつら、機動六課の連中は父さんと母さんのことを

何も知らないから疑う余地もないんだろうさ。しょうがないとはいえ、能天気にも程がある。

 

「では・・・・・どうすれば・・・・・?」

 

「私たちが近づこうとするとこんな態度をされてはね。少しずつ接していくつもりだ。

だが、この子をどこかへ泊らせる必要があるね」

 

意味深なことを言う父さん。すると、ギンガ・ナカジマが口を開いた。

 

「あの、私がお世話をします」

 

「「「・・・・・」」」

 

なんか、好都合な展開になったな。父さんと母さんを顔を見合わせてからこっちに振り向いて

口を開く。

 

「大丈夫かい?この子は私たちと同じぐらい強い。もしも襲いかかれたら、

キミは一瞬でやられてしまうぞ?」

 

「大丈夫です。この子は同行中でも大人しかったので、

人を傷つけるような子ではないと私は信じます」

 

ギンガ・ナカジマが俺の肩に手を置く。

 

「お父さんにも事情を話せば理解してくれると思います。

この子は一時的な保護として私が引き受けます」

 

「そうか・・・・・では、お願いできるかな?」

 

「はい、かしこまりました。イッセーくん、行こう?」

 

手を掴まれ優しく引っ張られる。その際、俺は二人に視線を送った。

 

「(二人とも、ぜったい楽しんでいるだろう!)」

 

「「(当然っ!)」」

 

「(いつか必ず張り倒すっ!)」

 

その後、機動六課から連れ出されギンガ・ナカジマが住んでいる家へと連行された。

リーラたち、心配をしているだろうな・・・・・。

 

 

 

 

「これは面白いことになったな。タイプゼロ・ファーストと接触するとはね」

 

「ドゥーエからは問題はないと言いましたが、本当に大丈夫なのでしょうか?」

 

「なに、心配など不要だろうさ。彼は忠実に任務を遂行し続けてくれた。

彼をこのまま泳がせよう」

 

「ドクター」

 

「おや、セイン」

 

「イッセーが見当たらないけど、まだ帰ってきていないの?」

 

「ああ、彼ならば管理局と一緒にいるそうだ」

 

「・・・・・へ?」

 

「彼についてはさほど問題はないだろう。だからキミたちは―――」

 

「イッセーを奪還しに行ってくる!皆、イッセーが管理局に捕まっちゃっているよ!

オットーとセッテ、ディードも連れて管理局からイッセーを奪還しに行こう!」

 

「ちょっと、セイン?彼は任務中―――ってもういない・・・・・」

 

「・・・・・本当、彼と関わっていると色々と変化が起きるようだね。

だが、今はその時ではない。ウーノ、セインを止めに行ってくれ」

 

「分かりました」

 

「まったく、セインが自らあんなことを言うなんて生みの親である私は少し複雑な気分だ」


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