ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode番外編

 

「兵藤くん、ちょっと付き合ってくれないかな」

 

「どうした?」

 

とある日の放課後、葉桜に呼び止められた。

 

「買い物に付き合って欲しいの。どうしても欲しいのがあって・・・・・」

 

少し申し訳なさそうに言う葉桜だった。買い物か・・・・・。

 

「別に構わないぞ?」

 

「ホント?良かったぁ・・・・・」

 

安堵して胸を撫で下ろした様子を見せる葉桜。隣にいるリーラに悪いと籠めて告げた。

 

「リーラ、先に帰ってくれるか?」

 

「分かりました。では、プリムラと共に帰ってお待ちしております」

 

「ああ、悪い」

 

それだけのやりとりをして、リーラは先に教室からいなくなった。

そしたら、葉桜が首を傾げだした。

 

「プリムラ?」

 

と、言って。

 

「神王と魔王に預かって欲しいと言われて、預かっている子がいるんだ」

 

「へぇ、そうだったんだ」

 

「さて、買い物に行こうか」

 

「はい」

 

鞄を持って葉桜と一緒に教室を後にした。

 

―――木漏れ日通り

 

「葉桜って一人暮しなんだ?」

 

「うん、それに私は奨学金で学校を通っているんだよ」

 

「じゃあ、頭がいいんだ?でも、どうしてF組に?」

 

「うーん、体力はある方なんだけど、それでもFクラスになっちゃうの。

期末テストの内容って知らないよね?」

 

ん、知らないな。商店街へと歩を進めながら頷いた。

 

「大まかに言えば、実力と知力のテストがあるの。知力のテストは当然、

今まで授業で学んできた知識のこと。実力は運動能力と戦闘能力を計るの」

 

「戦闘能力はなんだ?誰かと戦うのか?」

 

「うん、下級生は担任の先生がしてくれて、私たち二学年の生徒たちは、

上級生と戦って先生方が強さを計ってもらうの」

 

「上級生は?」

 

「上級生はそのまんま。大学に進学するか、就職するか、進路相談があるし

主にそっちのことで忙しくなるかな」

 

ふむふむ・・・・・また知識が増えたな。なるほど、そういうことか。

 

「だからね兵藤くん。Fクラスになりたいなら片方だけ0点にしないとだめだからね」

 

「そうなのか。仮にF組になるの基準点はどのぐらいだ?」

 

「百点以下だよ。それ以上の点数はD組になるから」

 

なら、百点以上にならないようにすればいいんだな。気を付けよう。

 

「あっ・・・・・」

 

不意に葉桜は声を漏らした。どうした?と訊けば、スッと指をとある方へ差した。

その先には駒王学園とは違う制服を見に包んでいる女子生徒が数人の男に囲まれている。

どうやら男たちはナンパしているようだが、明らかに女子生徒が困惑している。

 

「ナンパのようだな」

 

「でも、あの子嫌がっているよ」

 

「助けるか?」

 

「うん、見過ごせないよ」

 

瞳に強い意志を宿す。同じ女の子として助けたいという気持ちがハッキリと伝わってくる。

 

 

―――???side

 

 

「なぁ、いいだろ?俺たちと一緒に遊ぼうぜ?」

 

「ご、ごめんなさい。私、用事があるので・・・・・」

 

「かてぇことを言うなって、俺たち暇でしょうがなかったんだ。人数が多い方が盛り上がるんだ。

それもあんたみたいな美少女がいるともっと盛り上がるんだよ」

 

「で、でも・・・・・」

 

ううう・・・・・どうして今日に限ってナンパされるんでしょうか。

私、八重桜はとっても困っていました。周りを探るように視線を向けても、

相手が悪魔と堕天使の人たちのようで助けてくれるような人がいません。

皆、余計な事に関わりたくないとチラチラと見てくるだけで・・・・・。

 

「(稟くん・・・・・)」

 

幼馴染の顔を脳裏に思い浮かべる。だけど、あの人はここにはいない。

もう一人の幼馴染と一緒にいるから・・・・・。

 

「ああ、面倒くさいから連れて行こうぜ」

 

「んじゃ、最初にカラオケでも行くか」

 

「そこで、間違った声も出しちゃったりしてな」

 

「おいおい、そんな声を出すなら防音式の結界をしなくちゃいけないじゃないか」

 

嫌な笑みを浮かべる人たち。それから私の体に手を伸ばしてきた。その手を抗う術はない。

 

「(誰か、助けて―――!)」

 

強く目を瞑って心から誰かに助けを求めた。

 

ガシッ!

 

「・・・・・?」

 

私の体を掴まれる感覚は未だにこなかった。どうしたのだろう?と思い、ゆっくりを目を開けた。

 

「・・・・・」

 

私の視界に飛び込んできたのは、二人の男の人と女の人の姿。

男の人が私をナンパする男の人の腕を掴んでいた。

 

「そこまでにしてもらおうか」

 

「ああ?」

 

「彼女が嫌がっている」

 

「誰だてめぇは、俺たちの邪魔をするんじゃねぇよ!」

 

掴まれた腕を強引に振りほどこうとする。でも、ピタリと微動だにしなかった。

 

「お前ら、悪魔と堕天使だな?ここで問題を起こしたら自分たちがどうなるのか

分からない訳がないだろう?」

 

「うるせぇっ!」

 

「あっ!」

 

思わず叫んでしまった。別のナンパの人が男の人に向かって殴りかかったのだから。

 

「事を穏便に済ませようとしているんだけどな」

 

―――バサァッ!

 

「人の話を聞かないなら地獄に落としてもいいよな?」

 

『―――――っ!?』

 

金色の・・・・・六対十二枚の翼・・・・・。天使・・・・・?

男の人の拳を受け止めたまま彼は口を開いた。

 

「さて・・・・・どうする?ここで俺に攻撃すれば、お前らは死ぬ。

ここで大人しく尻尾巻いて逃げるんなら見逃す。さて、お前らはどっちが御所望かな?」

 

ニッコリと笑みを浮かべる男の人。だけど、その笑みは―――。

 

『ご、ごめんなさぁあああああああああああああああああああいっ!』

 

とっても怖かった。目が全然笑っていないんです。だから、ナンパの人たちが逃げちゃいました。

 

「・・・・・笑っただけなのに逃げるなんて」

 

逆に、この人はショックを受けていました。

 

「なあ、俺って怖かった?」

 

「え、えっと・・・・・・はい」

 

「・・・・・そうか」

 

ズーンと、四つ這いになって落ち込んでしまいました。あわわ・・・助けてもらったのに

私ったら・・・。フォローしなくちゃいけなかったのに・・・・・。

 

「兵藤くん、自分で聞いて落ち込んでどうするの?」

 

女の子が苦笑いを浮かべ、そう言いながらもヨシヨシと天使の人の頭を撫で始めた。

 

「大丈夫だった?変なことされていなかった?」

 

「えっと、はい、大丈夫です。お二人のおかげで助かりました」

 

「私は何もしていないよ。したのは兵藤くんだよ」

 

兵藤くん・・・・・彼の名字なのでしょうか?落ち込んでいた彼が立ち上がった。

 

「あー、変なところを見せた。俺は兵藤一誠、彼女は葉桜清楚。同じ駒王学園を通っている」

 

「兵藤一誠・・・まさか、『魔王にも神王にも人王にも凡人にもなれる男』の人・・・・・?」

 

「・・・・・」

 

いきなり兵藤くんが私の話しを聞いた途端に、

頭をガックリと垂らしました。え、えっと・・・・・。

 

「知らない人にまであの名を知られているなんて・・・・・」

 

「えっと・・・・・どんまい・・・・・兵藤くん」

 

なんか・・・・・助けてもらったのに気の毒な人って・・・・・。

 

「(でも、なんでだろう・・・・・どことなく、稟くんに似ているような・・・・・)」

 

そんな気がする。だからだろうか、

 

「あの、私・・・・・八重桜といいます。もしよかったら、お茶でもいいかな・・・・・?」

 

―――彼のことを知りたくなった。

 

―――○●○―――

 

―――喫茶フローラ

 

「改めて自己紹介をします。私、私立ストレリチア女学院に通っている八重桜といいます。

先ほど助けてくれてありがとう。助かりました」

 

「八重桜か。よろしくな」

 

「よろしくね」

 

ナンパから助けた少女と共に喫茶店で寛いでいた。注文したコーヒーを一口飲んで話しかける。

 

「八重―――」

 

「桜でいいですよ。葉桜さんもそう呼んでください」

 

「そう?じゃあ、私のことは清楚って呼んでね?」

 

「俺も一誠でいいぞ、そういうことなら」

 

八重桜からの提案にそう言い合う。お互い、肯定と「はい」と頷いた。

 

「なら、兵藤くんも私のことを名前で呼んでね。

他の皆には名前を呼んでいるのに私だけ苗字なんて変だし」

 

「分かった。これからはそうする。でも、お前もな」

 

「うん」

 

嬉しそうに葉桜は頷いた。

 

「仲がいいみたいだね」

 

「同じクラスだし、一緒に戦っているし、戦友みたいなもんだよ」

 

「そうなんだ?そういえば、駒王学園ってクラス同士で戦うんだって?」

 

「知っているのか?」

 

「はい。あの学校に幼馴染がいます。その人たちから聞いているの」

 

へぇ、幼馴染か。どんな奴ら何だろうな。と、そんな事を思っていると、

 

「因みに幼馴染ってどんな人なのかな?」

 

清楚が桜の幼馴染が気になったのか訊いていた。桜は口元を緩ませて教えてくれた。

 

「土見稟という男の子と芙蓉楓という女の子です」

 

「「・・・・・」」

 

桜から告げられた二人の幼馴染。最近知り合ったばかりの二人だった。

 

「あの二人か・・・・・驚いたな」

 

「やっぱり、知っていましたか?」

 

「つい最近な。俺って駒王学園に編入してきたばかりだから友達と呼べる人は少ないんだ。

稟と楓も知り合ったばっかりだ。この店でな」

 

「わぁ、そうだった?なんか、偶然的だね」

 

桜の発言に俺も同意する。

 

「そうだな。稟と楓、桜とこの店で知り合ったのはもしかしたら必然的だったのかもしれないな」

 

「きっと、いい意味でかもしれないね」

 

「はい」

 

俺たちは笑みを浮かべこの偶然に感謝をした。あっ・・・・・そう言えば。

 

「清楚、どんな買い物なんだ?俺たちそのためにここにきたんだろ?」

 

「あっ、そうだった。でも、残っているかな・・・・・」

 

「何かお買い物だったの?」

 

「欲しいぬいぐるみがあったの。可愛いぬいぐるみだったから欲しくなっちゃって」

 

あー、ぬいるぐみだったのか。でも、どうして俺まで?

そう思い悩んでいると桜が清楚に問いかけてきた。

 

「もしかして、この先のぬいぐるみ屋さんに行くところだったの?」

 

「うん、でも・・・・・」

 

チラリと、俺を見てくる。ん?なんだ?

 

「カ、カップル限定の・・・・・ぬいぐるみだから・・・・・」

 

・・・・・そういうことね。

 

「だ、だから!」

 

ごめんなさい!と清楚が俺の手を包むように掴んで懇願してきた。

 

「お願い、どうしても欲しいぬいぐるみが男女ペアでないと買えないものなの。

今日だけでいいから私の彼氏になって!」

 

彼女の顔は最大に真っ赤な顔だった。

物凄く恥ずかしいことを言っているのを自覚しながらも、頼んできた。そんな彼女に俺は言った。

 

「・・・・・まあ、俺で良かったら付き合うよ」

 

「っ!」

 

「それに、今日はお前に付き合うって言ったんだし、どこまでもついていく。約束なんだからな」

 

そう言って笑えば、清楚は感謝の言葉を放った。

 

「ありがとう・・・・・」

 

「どういたしまして」

 

ポンと、頭を撫でてやった。サラサラとした艶のある黒い髪、撫で心地がいいな・・・・・。

 

「・・・・・ホント、仲がいいんだね」

 

「その上、からかいがあるしな」

 

「あはは・・・・・ねえ、一誠くん。私もカップル限定のぬいぐるみが欲しいです。

だから・・・お願い、できるかな?」

 

いきなり桜がそう頼んできた。なぜ?

 

「ぬいぐるみが欲しいのか?」

 

「私、夢はぬいぐるみ造形作家になることなの。

だから、自分でぬいぐるみを作ったり可愛いぬいぐるみを買ったりしているんです」

 

「ぬいぐるみ造形作家・・・・・可愛い夢だな」

 

「そ、そうかな?」

 

「ああ、もしも部屋に大量のぬいぐるみがあったら思わず笑むだろうな。

それも、可愛いぬいぐるみばかりで気持ちが安らぐとかそういう感じで」

 

微笑みながらそう言う。

 

「・・・・・」

 

と、桜が徐に携帯を取り出した。どうしたんだ?

 

「一誠くん、清楚ちゃん。メールアドレスを交換してください」

 

「ああ、いいぞ」

 

「うん、私も」

 

俺と清楚も携帯を取り出して、赤外線でアドレスを交換し合った。

これで友達登録は・・・・・五件以上だ。

・・・・・意外と、俺って登録している友達がいないもんだな。知り合いがいる方だけど。

 

「それじゃ、ぬいぐるみをGETしに行きますか」

 

「「はいっ!」」

 

二人の(仮)彼女と一緒に代金を払ってフローラから出て、

目的地であるぬいぐるみ屋に赴いたのだった。残っているかどうか分からないが、

ここは神頼みだな。神王の方じゃなく、ヤハウェの方で。

 

 

―――○●○―――

 

 

「家まで送ってくれてどうもありがとうございます」

 

「またナンパされたら大変だ。送ってやるのは当然だろう?」

 

「ふふっ、一誠くんは本当に稟くんのようです」

 

「そうか?まあ、俺も何となくあいつと似ていると思っている。何故だか知らないけどな」

 

あれから目的地にたどり着けば、お目当ての物はまだあった。

カップル限定のぬいぐるみを買えて二人は喜びを分かち合った。

それから桜は帰る頃だと言うので、

俺は清楚と桜を抱えて空を飛び、桜の家にまで飛んで送ったわけだ。

 

「一誠くん、今度とっておきの人形を作って一誠くんにあげる。

だから、それまで待っててくれるかな」

 

「自信作の人形か。楽しみだな。待っているよ」

 

「できたらメールします。本当、今日はありがとう。また三人でお茶しようね」

 

「それだったら今度は、外でお茶をしようよ。うん、ピクニックをしたいね」

 

「はい、じゃあその時、互いにお昼ごはんを作ってきて食べましょう」

 

ニッコリと笑む桜は、踵返して家の方へ帰っていく。

 

「それじゃ、また何時か会いましょう。さようなら!」

 

「「さようなら!」」

 

そして、玄関の向こうへと姿を消した桜。少しして、清楚を抱えて宙に浮く。

その時、二階の窓が開いた。見れば、桜が片腕をブンブンと横に振っている。

清楚と一緒に腕を振って、清楚を送るために清楚の家へと翼を力強く羽ばたいて桜の家から

遠ざかった。

 

「今日は楽しかったね」

 

「ああ、これも清楚のおかげだな」

 

「ふふっ、そう言ってくれると嬉しいな」

 

「さて、お姫さま。あなたの家はどこかな?」

 

「はい、あっちです。私の王子さま♪」

 

笑いながらも俺たちは帰りながら、空の散歩を楽しんだのだった。

 


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