ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

122 / 157
Life3

騒ぎは唐突に起こるものだと、誰もが思ったり、知るであろう。

 

「・・・・・四種交流運動会?」

 

「・・・・・ああ、そうだ」

 

ソファに座る俺と対峙するように、目の前に腰を下ろしている兵藤照が肯定した。

その隣に兵藤麗蘭と兵藤千夏がいる。俺は怪訝な面持でいると、兵藤照が口を開いた。

 

「聞いて理解したと思うが悪魔と堕天使、天使、人間が揃って運動会をするんだとよ」

 

「なんでまた、それに今の時期は運動会をするような季節じゃないだろう」

 

「んなこと、俺が知るわけねぇよ。俺らに告げた源氏さまが『兵藤一誠にそう伝えろ』としか

言わなかったしよ」

 

四種交流運動会・・・・・。四種の友好をさらに深めようって魂胆かな?

 

「当然、人間の俺達も代表として出場しなきゃなんねぇわけだ。お前は特に強制参加だ。

それとお前の女どもな」

 

「式森家の和樹も参加せざるを得なさそうだな・・・・・それで、何時何だ?」

 

「明日だ」

 

「明日かよ!?あの人がお前に報告してきたのは今日だって言いたいのか?」

 

そう訊ねたら、兵藤照が視線を泳がせた。え、なにその反応は・・・・・?

 

「えっと・・・・・実はこの話、一週間前から報告されたことなんですけど」

 

「このバカがその報告を忘れてしまって・・・・・今日、源氏さまが返事を確認のため

連絡をしてきた途端に・・・・・」

 

「ああ・・・・・なるほどね」

 

大体想像がつく。こいつ―――その時はかなり焦っていたんだろうな。

 

「う、うるせぇなっ!?ちゃんと伝えてから問題ないだろうが!」

 

「「一週間も伝え忘れたあなたが逆切れする権利はない!」」

 

「ぐっ・・・・・!」

 

兵藤麗蘭と兵藤千夏に怒鳴られ、兵藤照は口を噤んだ。

 

「まあ、その運動会を参加するにはするよ。それでいいだろう?」

 

「・・・・・ああ、そうだ」

 

「申し訳ございません、一誠さま。一週間も伝えずに」

 

「本当に、こんな重要なことを私達が告げるべきだったのですよね。

一週間も伝え損ねるなど、兵藤家の人間がしてはならない事です」

 

・・・・・何気にこの二人って毒舌だよな、辛辣というべきか?

俺は思った事を兵藤照に告げた。

 

「お前、絶対尻に敷かれるな」

 

「よし、表に出ろ」

 

案の定、兵藤照が怒ったが横にいる二人に張り倒され、

問答無用に家から連れだされていなくなった。

 

 

 

 

『四種交流運動会ッ!?』

 

その日の夜にて、俺を含んだ兵藤家メンバーの皆が同時に素っ頓狂な声をあげた。

 

「ああ、兵藤照から聞かされた」

 

「・・・・・そう言えば、お兄さまから特大なイベントをやると言われたわね」

 

「お姉さまからもそんな感じで」

 

リアス・グレモリーとソーナ・シトリーが思い当たる節があるようだった。

教会側のイリナとゼノヴィアは?

 

「なるほど、そういうことだったのね」

 

「となると、私とイリナは天使側に属する事になるね」

 

と既に伝えられていた様子だった。

 

「じゃあ、ここにいる悪魔と天使、人間がそれぞれの陣営に別れるんだね」

 

「今の時期に運動会なんて、思いきった事をしますね。。一体誰が発案なんでしょうか?」

 

「さあ、こう言うお祭りみたいな展開が好きな奴じゃないと―――」

 

そこで、思い当たる人物が浮かんだ。まさか・・・・・な?

 

―――○●○―――

 

バン!バン!バン!

 

運動会の花火が鳴る。俺達は四種の種族が開催する運動会の会場に来ていた。

使われているのはRG(レーティングゲーム)用のゲームフィールドで、

かなり広めな空間となっている。頭に輪っか、背中に真っ白い翼を生やした天使たちや

黒い翼の堕天使たちが大勢いるぞ。もちろん、悪魔や人間(兵藤家であろう)も大勢いるけど、

こんなに多くの天使や堕天使に会えるなんてそうないから、新鮮さがヒシヒシと感じるな。

皆、ジャージ姿だった。天使が白、堕天使が黒、悪魔は赤、人間は青となっている。

だから、人間の俺たちは青のジャージだ。

リアス・グレモリーやソーナ・シトリーたちとその眷属、グレイフィア、ナヴィーは悪魔側、

イリナとゼノヴィアは人間だけど教会側として天使側の選手となっているから

俺たちのもとにはいない。今日だけは敵同士ってことになる。

まあ、その際に、イリナから能力をコピーさせてもらった。

イリナから取り出すことはできないし。

 

「あっ、次期人王・・・・・って、ええ!?」

 

「甦っていたのか!?」

 

「いや、甦ったからといっても、次期人王の座は剥奪されているんだぞ」

 

「これからどうなるんだ?」

 

やっぱり、俺の存在は疑問を生むようだな。そのへんを歩くだけで、俺達に好奇の視線が向く。

―――と、イリナとゼノヴィア発見。金色の翼を生やす明らかに高貴な雰囲気の人と

立ち話をしている。あの人は・・・・・。イリナがこちらに気付き、

手を振りながら男性と女性と共に近づいてくる。

 

「あ、イッセーくん、皆!来たのね!」

 

男性が俺たちに微笑む。

 

「お久しぶりですね、皆さん。初めてな方もいますね。私は天使長のミカエルです。

四大勢力の和議以来でしょうか」

 

「て、天使長・・・・・」

 

「うわー、初めて見ました。とても神々しいです」

 

ミカエルと初対面のカリンや清楚といった面々が緊張したり感嘆する。

 

「イッセーくん、お久しぶりです」

 

そう言って俺に抱きついてくるのは神ヤハウェだった。

 

「セ、セルベリア・・・・・ヤハウェ様さまですよ?また神さまが目の前にいますよ!」

 

「そうだな、だからロスヴァイセ。緊張するか興奮するかどっちかにしろ」

 

「というか、エルフの私たちも参加していいのかしらね?」

 

「さ、さあ・・・・・」

 

俺の背後にヴァルキリーのロスヴァイセとセルベリア。

エルフのルクシャナとティファニアが話し合っていた。が・・・・・い、息が・・・・・。

 

「ヤハウェさま。同士たちの前でイッセーくんに抱きついてはいけませんよ」

 

「あともう少しだけです」

 

「すいません、イッセーくん」

 

「・・・・・」

 

「イッセーくん?」

 

―――数十秒後。

 

「し、死ぬかと思った・・・・・」

 

「す、すみません!」

 

ヤハウェの豊満な胸を隠す白いジャージの布地に鼻が塞がれていて、呼吸ができなかった。

それをミカエルは気付き、慌てて俺とヤハウェを離してくれたおかげでなんとかなった。

 

「今度は神直々に殺されるのかと思ったぞ」

 

「も、申し訳ないです・・・・・」

 

ヤハウェがシュンと落ち込んだ。

 

「イッセーって身近に危険が纏わりついているようね」

 

他人事のようにルクシャナが言ってくる。

 

「一誠さまのヴァルキリーとしてなにがなんでも危険から守らないといけないのに・・・・・」

 

セルベリアが自分の立場と役割が果たせていない事に悔んでいた。

 

「ヤハウェさまーっ。開会式が始まりそうですわよー」

 

突然の声。そちらに目を向ければ―――ウェーブの掛かったブロンドでおっとり風の

天使の女性が近づいてきた。背中の翼が多い翼だ。

 

「ま、まさか・・・・・あの人は・・・・・!」

 

イリナがキラキラと目を輝かせた。ヤハウェは顎に手をやり、失念した様子だった。

 

「そうですか。イッセーくんたちとの挨拶だけで時間は過ぎてしまいますね。

皆さん、紹介が遅れました。こちら、ミカエルと同じ四大セラフの一人で―――」

 

「ごきげんよう、私、四大セラフのガブリエルと申します」

 

ガブリエルと名乗った天使の女性がニッコリしながら、そう挨拶をしてくれた。

おー、ミカエル以外のセラフと会うのは初めてだ。―――向こうはどうだろうか?

 

「やっぱり、天界一の美女にして、天界最強の女性天使さま!ゼノヴィア!

憧れのガブリエルさまと出会えたわ!」

 

「うん、何て神々しいのだろうか。とても眩しく見えるよ」

 

イリナとゼノヴィアがはしゃぎ始めた。教会に属する女戦士はガブリエルが人気のようだ。

 

「・・・・・なんか、色々と負けたわ。なにあれ、チートでしょ」

 

「・・・・・うん」

 

「・・・・そうですね」

 

あれ、悠璃たち女子人が何だかショックを受けている様子。

 

「あら?」

 

ガブリエルが俺に意識を向けてきた。

 

「・・・・・」

 

じーと興味深そうに俺を見つめてくる。

 

「・・・・・」

 

不意に笑みを浮かべた。

 

「ヤハウェさまが夢中になる理由がなんとなく分かった気がしますわ。

ふふっ、赤ちゃんの時はもっと可愛かったですのに

今ではとても逞しい男の子になったのですね」

 

やっぱりぃぃぃぃっ!?この天使も俺の事を知っていたよ!

というか―――何故俺を抱き締める!?

 

「ヤハウェさま。この子、私がもらってもいいですか?

私、この子みたいな弟が欲しかったのですよ」

 

『んなっ!?』

 

「―――ダメです。イッセーは私の愛しい大切な子なんです。いくらあなたとはいえども、

この子だけは譲りません」

 

そう言ってヤハウェも俺を抱き締めてきた。な、なに・・・・・この状況・・・・・。

 

「イッセーじゃねぇか。って、おー、なんだか良い思いをしていますなぁ?」

 

黒いジャージに身を包んだアザゼルがガタイの良い男性を引き連れて現れる。

男性は―――姫島朱乃の父、バラキエルだ。ロキ戦以来だな。

 

「これはアザゼル。お久しぶりです。相変わらず、お元気そうで」

 

「ハハハ、まあな。今日だけは負けんからな、天使さま」

 

「それはこちらの台詞とだけ言っておきましょう」

 

おおっ、アザゼルとミカエルが笑顔で握手をしながらも異様な

プレッシャーを辺りにはなっている。

 

「・・・・・兵藤一誠」

 

「ん?」

 

「我が妻を、朱璃を甦らせた事についての礼を言い遅れた事に申し訳ない」

 

唐突にバラキエルが頭を下げだした。俺は首を横に振るだけだ。

 

「気にしないでくれ。それだけだ」

 

「・・・・・」

 

「あんたの娘と妻はこの場にいる。親子水入らず、昼でも一緒に食べなって」

 

「・・・・・ああ、勿論そうするつもりだ」

 

この日、バラキエルにとって楽しい一日になりそうだな。―――そう思ったその時だった。

RG(レーティングゲーム)用のゲームフィールドの空間が大きく縦に裂けだした。

俺を抱き締めているヤハウェとガブリエルが離れ、

アザゼルとミカエルが警戒して戦闘態勢に構えた。

 

「なんだ?禍の団(カオス・ブリゲード)か?」

 

「有り得ない話ではないが・・・・・あの小僧がこんなお粗末で大胆な襲撃をしてくるとは

思えないな」

 

他の勢力もこの異常事態に気付き、警戒態勢の構えとなっている。

未だに縦に裂けた空間は静寂を保っている。

 

ヌゥ・・・・。

 

と避け目から顔が出てきた。―――ドラゴンの顔だ!

 

「ええっ!?」

 

「な、邪龍じゃない・・・・・?」

 

邪悪な感じをさせないドラゴン。辺りをキョロキョロとなにかを確認するかのような様子を

見せたかと思うと、俺と視線が合った。

 

『見つけた』

 

初めて発した言葉。ドラゴンが裂け目から出てきたらーーー頭に角を生やした人型の

ドラゴンたちが続々と出てきた!しかも、なぜか黄色のジャージ姿。

 

「・・・・・なあ、どういうこと?」

 

「その疑問は、この場にいる全員が同じ気持ちだろうし、知るわけがないだろう」

 

アザゼルが当惑した面持ちで答えた。大勢の人型ドラゴンたちが出てて来ると、

一ヵ所に固まり代表と思う女性が前に出てきた。ーーーって!?

 

「源始龍!?」

 

命の恩人もとい恩龍がこの場にいるなんてどういうことだ!?しかも黄色ジャージ姿!

アザゼルが警戒して訊ねだした。

 

「これはこれは、源始龍殿。そんな多勢のドラゴンを率いて

この場に現れるとはどういうことか説明してくれるかな?」

 

「・・・・・」

 

源始龍は辺りを一瞥して告げた。

 

「私たちドラゴンはこの運動会に参戦したいがために失礼を承知で、とても柔らかい異次元空間を

突破させてもらいました。もう少し強度があったほうが良いですよ、堕天使の総督」

 

源始龍たちが運動会に参戦・・・・・?なに、この混沌の運動会は・・・・・四種どころか、

五種勢力運動会になろうとしているじゃん!

アザゼルは源始龍の物言いに額に青筋を浮かべ出す。

 

「いきなり運動会に参加したいとは、そっちはかなり暇そうだな?

こっちはいろいろと苦労の連続だと言うのによ」

 

「偶数では、面白味がないと思い尚且つ、

我が勢力の力を少しばかりお見せしようと思ったまでです」

 

「へぇ、俺らにそれをしてそっちはなんのメリットがあるんだ?

是非とも聞かせてほしいもんだな」

 

その言葉に源始龍は笑みを浮かべた。

 

「自慢です。四種の中でも娯楽とはいえ、

私たちが勝利すれば他の勢力より優秀だと証明できますから」

 

―――カチンッ!

 

あっ、変な音が聞こえた。

 

「・・・・・いいだろう。お前らの参戦を認めてやる。ヤハウェ、お前はどうだ?」

 

「ええ、私も構いません」

 

ヤハウェがいい笑顔で了承した。ーーー目が笑っていないから余計怖い!

その後、悪魔側と人間側の代表が現れると事の経緯を説明したら、源始龍たちの参加を認めた。

やっぱり目が笑っていないままでだ。

 

「では、兵藤一誠。こちらに来てください」

 

「・・・・・えっ?」

 

「あなたはドラゴンなのですから、私たちといるべきなのは当然のことなのですよ?」

 

襟を掴まれドラゴンの集団に連れていかれそうになった。

 

「またんか!その者は人間側の選手の一人だぞ!」

 

人間側の代表、兵藤源氏が怒鳴った。

源始龍は子首をかしげる。

 

「この子はドラゴンですが?」

 

「魂は人間だ。我が兵藤家の者の人間だということは変わりはない」

 

「・・・・・」

 

その言葉に俺は思わず感動してしまった。

未だに俺を人間扱いしてくれる人がいるなんて思いもしなかった。

 

「・・・・・」

 

源始龍が兵藤源氏と対峙した。―――そして、

 

「最初はグー」

 

「「ジャンケン―――ポンッ!」」

 

結果は―――源始龍はパー、兵藤源氏はグー。

 

「では、失礼します」

 

勝ち誇った笑みを浮かべた源始龍が俺をドラゴン側へと高笑いしながら連れていく。

兵藤源氏はその場で膝を崩してショックを受けた。ーーー後に兵藤源氏が俺を懸けたジャンケンに

負けたことで周りからタコ殴りされていたことを俺は知らないでおこうと心から決めた。

 

―――○●○―――

 

「では皆さん。我らドラゴンの底力としぶとさを他の勢力に思い知らせましょう。

退治され、封印された仲間たちの無念を少しでも晴らすために。―――敵に逆鱗を」

 

『敵を踏み潰し、噛み砕く!』

 

何て恐ろしい掛け声なんでしょうか!

しかし、原始龍やウリュウみたいに頭から角を生やす人間って皆ドラゴンって不思議だよな。

 

「兵藤一誠さま」

 

声を掛けられた。声がした方へ振り向くと、黄色いジャージ姿のウリュウがいた。

 

「あっ、久し振りだな。元気にしていたか?」

 

「はい、兵藤一誠さまも変わらず元気のようで」

 

「フルネームじゃなくて名前で呼んでくれ。というか、偽名を名乗っている俺にそっちで呼ぶのか?」

 

「そうですね。それにあなたの偽名は他の方々には知らされていませんし、

結局あなたのことは『兵藤一誠』と認知されます。偽名を名乗ろうが大して意味がないかと」

 

・・・・・それもそうか。まあ、名前の事に関しては置いておこう。

 

「これからは名前で呼んでくれよ。で、どうして原始龍がこのイベントに参加なんて?

確か、あんまり関わりたくなかったんじゃなかったのか?」

 

「ええ、本来ならば私たちが住んでいる世界であなたたちの私生活を傍観する

はずだったのですが、原始龍さまがあなたとこうしたかったらしく、

初めてこのようなことをしたのです」

 

「・・・・・俺のプライベートを侵害しているって理解しているんだよな?」

 

「そ、それについては・・・・・申し訳ないとしか言えません」

 

半眼でウリュウを見れば、申し訳なさそうに恐縮する。

 

「・・・・今度、ウリュウの私生活を見せてもらおうかな」

 

「なっ!?どうして私の私生活なんか見たがるんですか!原始龍さまでしょう!そこは!」

 

「いや、原始龍って寒がりだったし何時もコタツに入っていそうだから―――」

 

「・・・・・」

 

ウリュウがあからさまに俺から顔を逸らした。え・・・・・本気で?

 

「・・・・・亀になってんの?」

 

「・・・・・はい」

 

―――――龍の始祖の貫禄が崩壊した瞬間を実感した俺だった。

そんな俺を余所に選手宣誓は終わりを告げて、

四種交流運動会改め、五種交流運動会が開催した。え

ーと、俺が個人で参加するのは「障害物競争」と借り物競走」だ。

 

「兵藤一誠」

 

「うん?」

 

「あなたの内にいるドラゴンたちにも参加してもらいましょう」

 

そう言って原始龍が手を俺の胸に触れた途端に、

幾重の魔方陣が出現して―――俺が呼び出したわけでもなく、人型のメリアたちが現世に出現した!

しかも黄色いジャージ着用済み!てか、ステルスがおかしい!

黄色いジャージを着ているんだけど、

透明な体だからジャージが浮いているようにしか見えないって!

 

「な、何故我らまで・・・・・?」

 

「ふふっ、勝つためです」

 

「・・・・・ならば、暴れてもいいんだな?」

 

「その時が来たら思う存分に」

 

「一誠、どうだ?何時の間にかこの姿になっていたが」

 

クロウ・クルワッハが訊ねてきた。黒と金が入り乱れた長い髪に黄色いジャージ姿・・・・・。

 

「うん、悪くないな」

 

「そうか。悪くないか」

 

なんだか、クロウ・クルワッハも女の子らしく感情を出すようになったな。

笑んでいる顔も可愛いし。

 

「あと、グレートレッドとオーフィスも呼びましょうか。

これぞまさしく不動に最強といいましょう」

 

・・・・・それ、なんか違う。そして、そのコンビが組んだら誰にも勝てないってば!

 

―――○●○―――

 

○トライアスロン

 

「・・・・・なんだ、これ?」

 

というか、運動会の領域を超えちゃっている。

これ、どういうことだ?トライアスロンって水泳・自転車ロードレース・長距離走の

はずだけど・・・・・このフィールドに海なんてなかったはずなのに何時の間にかできているし!

しかも、海の向こうに島が見える!卵みたいな形をした島だ。

 

『えー、急遽。ドラゴンの勢力も参戦したので、

通常の種目ではどうしても差がついてしまうと言う事で、種目を変え、

フィールドの一部も変えてみました。参加する選手は十五名まです。

選手が決まり次第、砂浜に集まってください』

 

「・・・・・マジで?」

 

他の勢力の皆を見れば、困惑の面持ちで砂浜に向かっていく。

その中には見知った顔の奴もいた。

 

「サイラオーグ」

 

「おお、兵藤一誠。久し振りというべきだろうな」

 

朗らかに笑うサイラオーグ。うん、確かに久し振りだな。

久し振りに家へ帰ったその日にサイラオーグも呼んでパーティをしたんだからな。

 

「お前、泳げる?」

 

「無論だ。俺は様々なことをして鍛えているのだからな」

 

「じゃあ、今のところ強敵はサイラオーグか」

 

「俺の強敵はお前だ。共に悔いのない競いをしよう」

 

拳を突き出される。その拳に俺も拳をぶつけて応えた。

 

「ん、だな」

 

『なお、他の選手に妨害行為をした者には、

神ヤハウェさまから天罰が下されますのでご注意を』

 

・・・・・それを聞いてもした奴はとんだ大馬鹿野郎だな。

 

『それでは競技をスタートします!』

 

おっ、ついに始まるか。俺は駆け出す構えを取った。

 

『位置について、よーい・・・・・ドン!』

 

掛け声と共に、砂を大量に蹴り飛ばしながら海へ跳躍した。

隣を見ればサイラオーグも跳んでいて、海へ落ちていく。

 

「負けん!」

 

「俺だって同じだ!」

 

海に飛び込んだ拍子に激しい水しぶきを上げた。直ぐに海面に顔を出してクロールをする。

サイラオーグも物凄い勢いで島へ泳いでいくのが分かる。

 

「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」

 

―――リアスside―――

 

「やっぱり、イッセーがサイラオーグと張り合うのね」

 

「予想していた通りですね」

 

私。リアス・グレモリーは最初の競技を中継している映像を見て苦笑を浮かべた。

隣にいる親友のソーナも当然とばかり首肯する。

 

「まさか、砂浜から跳躍して海に飛び込むなんて誰も想像していなかった。

見て、他の選手たちとかなり距離があるわ」

 

「・・・・・何名かその中から物凄い勢いで抜いていますけどね」

 

ええ・・・・・こういう方に向いていそうな人たちが物凄い速さで泳いでいるわね。

 

「さて、悪魔側のサイラオーグを応援しましょうか。今回はイッセーくんの敵となっているので、

あまり彼に応援はできませんが・・・・・」

 

「敵となって私たちに攻撃をしないでほしいと切に願ってしまうわ・・・・・」

 

「同感です」

 

―――和樹side―――

 

うーん、僕が行かなくて正解だったかも。やっぱり一誠が出ていたしね。負けが見えていたよ。

ああ、今の一誠?あっという間にサイラオーグ先輩と島に辿りついて自転車を漕いでいるよ。

一旦頂上まで進んで、また降りて来て、

また海に泳いでここの砂浜にゴールって決まりなんだよね。

 

「あの二人、化け物ですかね?」

 

「疲れの表情を見せないからね。体力が無尽蔵だってきっと」

 

「二人とも共通しているのは小さい頃から鍛えていると言う点。

きっと、その恩恵が発揮しているんだよね」

 

「だが、この競技はあの二人のどちらかが決まる。イッセーとサイラオーグ先輩、

どっちが勝つと思う?」

 

悩みどころだよカリンちゃん。二人とも、戦闘は主に格闘術と体術。

サイラオーグ先輩と戦ったのは期末試験の時だったけど、決着がつかなかった。

だったら、競技で競わせたらどっちが勝つ?―――それは分からない。

映像を見れば・・・・・頂上にたどり着いてまた降りていく。

それも物凄い勢いでだ。見ているとジェットコースターを眺めているような気分になる。

一切ブレーキなんてしていないんだろう。常人からしてみれば、怖い事をするよあの二人は。

 

―――一誠side―――

 

○借り物競走

 

トライアスロンは俺とサイラオーグの同一着で決着がついた。

ドラゴンと悪魔側が優勢に立ったところで。他の勢力側が緊張感を張り詰め出した。

 

「借り物競走にしては・・・・・あの宙に浮いている輪っかはなんだ?」

 

そう、空に大きな輪っかが浮いているんだ。空飛んであの中を潜れと言いたいのか?

 

『借り物競走に参加の選手は指定の場所に―――』

 

俺の疑問は解消されることなく。借り物競走のアナウンスが流れる。

 

「それじゃ、再び行ってくる」

 

「はい、頑張ってください」

 

原始龍からの応援を受けて、俺は集合場所に赴く。列に並び、自分の番を待つ。

そして俺の番になった。俺の番になるまで見ていると、

あの輪っかに跳び込んだ瞬間に封筒が降り注いで、それを受け取りながら全ての輪っかを

潜ってからようやく借り物を借りて地上のゴールに進む感じであった。

 

『位置について、よーい・・・・・ドン!』

 

開始宣言が告げられた。一度は跳躍して背中にドラゴンの翼を生やして羽ばたかせ、

輪っかに潜ると、上空に魔方陣が出現して封筒が降ってきた。

その一枚を手にして一気に他の輪っかを潜る。

全ての輪っかを潜り終えると、封筒を開けて借り物が書かれている紙を確認する。

 

「・・・・・」

 

俺は紙の内容を見て、思わず笑みを浮かべた

『幼馴染』―――とだけ書かれている。俺は周囲にいる幼馴染を探した。

これ、複数でもいいんだよな?

―――六対十二枚の金色の翼を生やして各陣営にいる幼馴染に向かって伸ばし、捕獲した。

 

「えっ!?」

 

「なんだ?」

 

「いっくん?」

 

「一誠さま?」

 

「俺と来てもらうぞ」

 

四人の幼馴染を捕獲して、俺はゴールまで走り切った。

 

『ドラゴンの選手が一位でーす!』

 

ん、また一位だ。これで貢献できただろう。そう思った俺に四人が訊いてきた。

 

「イッセーくん、借り物はなんだったの?」

 

借り物が書かれている紙を見せると、四人は納得した面持ちで頷いた。

 

「ふふっ、私だけじゃなくヴァーリも連れていくなんて」

 

「私と悠璃も幼馴染・・・・・一誠さまは誰一人欠けることなく、集めたのですね」

 

「幼馴染として嬉しいな」

 

「うん、嬉しい」

 

ゴール付近で俺は四人に抱きつかれた。

その瞬間、嫉妬の視線が感じたのは当然だったのかもしれない・・・・・。

 

○水上戦

 

 

海のど真ん中に置かれた丸い足場に各選手三人が乗って、

相手を海に突き落とせば勝利という競技が行われている。

今回は参戦しないが、代わりにクロウ・クルワッハたちが参加している。

ドラゴンVS天使と競技は始まった。天使側は・・・・・ミカエル、ガブリエル、

それとユーストマ。ドラゴン側はクロウ・クルワッハとアジ・ダハーカ、アポプスの

邪龍の筆頭格だ。この競技は水着を装着して競う事だから必然的に選手たちは

水着を着なければならない。だから、女性であるクロウ・クルワッハとガブリエルの肌が露出して

各陣営の選手(男)たちはヒートアップ(興奮)する。

 

「こんな形で邪龍と戦うことになるとはなぁ」

 

「神王とセラフ・・・・・相手にとって不足はないな。そう思わないか。クロウ」

 

「そうだな。私は・・・・・ガブリエルと戦おう。他は任せた」

 

「あらあら、ご指名されてしまいましたわね。その理由はお伺いしても?」

 

「―――兵藤一誠は渡さん」

 

純粋なる嫉妬心からの使命だった。クロウ・クルワッハ物凄い速さでガブリエルに跳びかかった。

ガブリエルは笑みを絶やさず、鋭く伸ばされてくる腕を容易く弾いたり、

かわしたりとおっとり風な天使にしては驚きの動きを見せてくれた。

あれで、マジな攻撃を加えたらどうなるんだろうか。とても気になった。

 

「ぬおおおおおおおお!」

 

「ギェエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

ユーストマとアジ・ダハーカが力の根競べを始めた。おお、海が荒れている荒れている。

空間も歪んでいるって。アポプスとミカエルは・・・・・相手の様子を窺って警戒していた。

こっちは頭脳派勝負をしている。

 

『ユーストマさま、ミカエルさま、ガブリエルさま!頑張ってくださいッ!』

 

『ドラゴンの力を天使と神に思い知らせてやるんだっ!』

 

天使側とドラゴン側からの応援が凄まじい。

だが、一向に状況は変わることもなく時が進んでいく。

―――しょうがない。奥の手を使おうか。

 

「クロウ・クルワッハ!」

 

大声で叫ぶ。

 

「勝ったら一つだけ何でも聞いてやるぞ!」

 

―――刹那。クロウ・クルワッハから禍々しいオーラが迸った。

 

「ふふふっ・・・・・その言葉、待っていたぞ」

 

案の定、クロウ・クルワッハが全力でガブリエルに跳びかかった。

それにはガブリエルが防戦一方となり―――最後は海へ突き落された。

続いてミカエルに襲いかかるとそこでアポプスも動き始めた。

ミカエルも二対一で応戦する事になり、いい勝負をしたが結局、数に負けて海に落とされる。

ユーストマもアジ・ダハーカに足場から落とされた。

そして水上戦はドラゴン側の勝利を収めたのであった。

 

さらにここで面白い光景が。悪魔と堕天使の水上戦でのことだ、悪魔側は姫島朱乃、木場祐斗、

塔城小猫とチームで堕天使側はバラキエル、知らない堕天使の男女だった。

 

「あ、朱乃・・・・・」

 

どう声を掛けていいか分からないでいるバラキエルに向けて、

姫島朱のは手を組み、瞳を潤ませながら懇願した。

 

「・・・・・父さま!私、父様とは戦いたくない!お願い、助けて!」

 

なんて憂いのある表情だろうか。それを聞いたバラキエルは―――。

 

「・・・・・うぅ、うおおおおおおおっ!」

 

叫びながら、同じ堕天使の選手たちを抱えて海へ飛び込んだのだ!

これには堕天使側から驚きの声が盛大に聞こえた。

―――悪魔(愛娘)に翻弄された堕天使(父親)という光景を目の当たりにして、

俺は思わず笑った。

 

○騎馬戦

 

次の競技も団体戦の騎馬戦だ。各勢力の選手たちは馬を組み、上に騎手を乗せる。

五大勢力の皆さんは殺気と敵意がむんむんの戦場と化していた。

これは相手に直接物理的なダメージを与えることができるから、

各勢力に日ごろ思ってきた鬱憤を晴らすチャンスでもあるからだろう。ここにきて―――。

 

「原始龍に呼ばれてきてみれば・・・・・運動会だと?」

 

「我、参加しないといけない?」

 

超が五つ付いても足りない最強の助っ人が登場した!ガイアとオーフィスだ。

少々、面倒くさそうな面持ちだったが、

 

「ここで、兵藤一誠にいいところを見せたら・・・・・惚れ直すと思いますよ?」

 

「よし、やってやる。今回だけお前の言う事を聞いてやろう」

 

「イッセーのため、頑張る」

 

あっさり堕ちた真龍と龍神!俺を含め、代表的なドラゴンは騎手となりチームを組む。

 

『それでは騎馬戦スタートです!』

 

アナウンスの掛け声と同時に各勢力の騎馬が戦意満々で飛び出していく。

 

「おりゃあああっ!カタストロフィだっ!死ね、天使どもぉぉっ!」

 

「天使を舐めるなぁぁぁ!最後の審判だっ!」

 

「天使も堕天使も共に滅べぇぇぇぇっ!」

 

「散々俺たち人間を利用するお前達に天誅をくだしてやるぅぅぅっ!」

 

「一方的に退治される我らドラゴンはこの機を持って退治する側となろう!」

 

皆、光力、魔力、気を絶大に放ちながら総力戦してる!まるで戦争じゃないか!

騎手の帽子を取る競技のはずなんだけど!?

 

「ふはははっ!こいつは面白い、この戦場は愉快だ!」

 

あー、アジ・ダハーカが興奮しちゃっているよ。

周囲に膨大な魔力を放って当たり構わず吹っ飛ばしているし。

 

「てめぇっ!それ以上の攻撃は俺が許さん!」

 

ユーストマが威風堂々とアジ・ダハーカとぶつかり合った。っと、俺も動かないとな。

 

「ゆっくり前進」

 

「ゆ、ゆっくりですか?」

 

「向こうから相手が来るからな」

 

騎馬となってくれているドラゴンたちに指示を出す。―――案の定、

 

「兵藤一誠、覚悟!」

 

「くたばれぇっ!」

 

「その帽子()を貰い受ける!」

 

「お前を倒す!」

 

四方向から相手が駆け寄ってきた。

 

「旋回」

 

騎馬のドラゴンたちは忠実に旋回してくれる。

襲い掛かってくる四種族の選手たちの帽子を旋回した際に奪い取って吹き飛ばした。

 

『皆さーん、ここであの戦争の続きを始めないでくださーい!

しかもあの時より過激になっていて

再現されてますよ!本当にあの戦争が見事なぐらい再現されてますからね!

やめろって言ってんだろぉぉぉっ!ひゃっは――――っ!』

 

アナウンスも絶叫を張り上げながら実はノリノリの様子だった!

今にでも自分も参加したそうな声だったな。

 

「―――見つけたぞ!」

 

「お?」

 

何時の間にか俺は囲まれていた。それも強敵揃い。兵藤照、サイラオーグ・バアル、

リアス・グレモリー、ソーナ・シトリー、ミカエルといった面々だ。

 

「あなたは危険ですからね。ここで留まってくれないと後に困りますから」

 

「悪いが、相手をしてもらおう」

 

おおう・・・・・人気者は辛いな。でも、相手をする暇はないんだよ。

 

「全力で全速前進」

 

「ほ、本気で?」

 

「大丈夫。抜け道はある。GO!」

 

騎馬のドラゴンたちは俺の言葉に信じて全力で前進した。

 

「バカみたいに向かってくる!?」

 

「一体、なにを考えて―――!」

 

まあ、俺の考えなんて誰も理解できるわけがないだろう。

サイラオーグ・バアルに向かって駆ける俺たちに周りが詰めてくる。

 

「こい、兵藤一誠!」

 

嬉々として構えるサイラオーグ・バアル。だけど、悪いな!俺たちの眼前に虚空に開いた穴に

跳びこんで―――別の場所に出た俺たち。背後を見れば、

固まっているリアス・グレモリーたちがいた。

 

「バカ正直に相手をしていられるか。相手は山ほどいるんだからな」

 

「お、お見事・・・・・」

 

唖然と称賛するドラゴン。

さて、誰を狙おうかなーっと思って辺りに視線を向けていると女性の悲鳴が上がった。悲鳴?

 

「なんだ?」

 

騎馬のドラゴンたちに悲鳴がした方へ向かわせると、全裸な女性騎手たちが大勢いた。

その近くに成神一成とアザゼルがいた。あー、なるほどな。成神一成を煽ったのはアザゼルか。

 

「よし、あの赤龍帝をぶっ殺す」

 

「殺してはなりませんよ!?」

 

「言葉の綾だ。とりあえず、赤龍帝に向かって進んでくれ」

 

成神一成は動いていた。その向かう先に―――ガブリエルがいた。

 

騎馬のドラゴンたちは物凄い速さでガブリエルと成神一成の間に割り込んでくれた。

 

「んなっ!?」

 

「―――この変態乳龍帝が!」

 

ドゴンッ!

 

肩腕を龍化にして成神一成だけ殴り飛ばした。

 

「女の敵は排除した。んじゃ、次に行くか」

 

その時、俺の頭に一瞬の温もりを感じた。―――やばっ!?

慌てて頭を抑え、尻目で見るとガブリエルが満面の笑みを浮かべていた。

 

「ふふっ、自分から近づいてくるなんて可愛いです」

 

「いや、別にそういうわけじゃないんだけど・・・・・この手、放してくれるか?」

 

「やです」

 

な、何気に手の力が強い・・・・・!?クロウ・クルワッハとやり合うだけあるか・・・・・!

 

「見つけたわ!」

 

「くっ!?」

 

リアス・グレモリーが現れた。しつこいな!?他の奴らも俺に気付いて襲い掛かってくる。

このまま膠着していると、武が悪くなる・・・・・。しょうがない・・・・・!

背中に翼を生やしてガブリエルの身体を拘束した。

 

「え?」

 

「仮に帽子を取られても、騎馬から離れるお前も失格となる」

 

騎馬の天使たちを弾き飛ばしてガブリエルを拘束したまま騎馬のドラゴンたちに移動をさせた。

未だに俺の頭から手を離さそうとしないガブリエルを背中に背負って片手だけで

辺りの選手たちを弾き飛ばしたり、帽子を取ったりしていく。

 

「・・・・・温かい」

 

○決戦!バトンリレー!

 

五大勢力の合同運動会もついに最終決戦となっていた。バトンリレーだ。

 

『各チーム、選び抜かれたリレー選手が各ポジションに待機しております!

さあ、長らく競い合ってきた運動会もついに最後となりました!』

 

アナウンスも最後の声出して会場を盛り上げる。各勢力の得点はドラゴン側が一歩リードと

有利な状況だ。だが、この競技でドラゴン側が勝たないと負けてしまう。

このラストのバトンリレーで勝敗が完全に決まる状態となっていた。俺はリレーのアンカーだ。

 

「ふふふ、俺の相手はお前らか、ダブルイッセー」

 

「お、お手柔らかに・・・・・」

 

「頑張りましょうねー」

 

「ぜってぇー負けられねぇ・・・・・!

 

悪魔側は禁手(バランス・ブレイカー)の鎧状態の成神一成、堕天使側はアザゼル。

天使側はガブリエル、人間側は兵藤照だった。

 

『さあ、最終決戦スタートです!』

 

バンッ!

 

リレーのピストルが撃ち鳴らされ、軽快なBGMと共に各勢力、

最初の選手が飛び出していった。ドラゴン側の最初は―――ステルスだった。

透明人間がバトンを持って走る光景はとても異様だった!

バトンが上下に振って進んでいるようにしか見えないからだ!

そんな珍しい光景を目の当たりにしてもリレーは続き、選手たちはグラウンドを駆け回っていく。

そしてついに俺の手前の選手―――ガイアにバトンが手渡され、走りだした。

 

「不動と称されている我に負けなどない!」

 

凄まじい速度でガイアが駆けていく。

速っ!?物凄い速いぞ!もうあっという間に俺のもとまで来た!

 

「いってこい一誠!」

 

「了解!」

 

俺はバトンを受け取り、自分の足でコースを走る。しかし―――!

 

「てめぇだには負けられねぇんだよぉっ!」

 

全身に闘気を纏った兵藤照が爆走してきやがった。

その背後にアザゼルと成神一成、ガブリエル。

 

「なろう!」

 

俺も全身に闘気を纏ってさらに速度を上げるが、

兵藤照の執念が凄まじいのか、俺の肩に並んで来るほど追いついてきた。

 

「おらぁっ!」

 

と、あいつが気弾を至近距離から放ってきた。俺が避けると、

その隙にあいつは先に行ってしまった。

 

「この野郎・・・・・攻撃がありならこっちだって考えがあるぞ!」

 

瞳を怪しく煌めかせて、兵藤照の足の動きを停止させた。

 

「っ!?」

 

足が動かなくなった事で、あいつは顔から地面にダイビングして倒れ込んだ。

その間に俺は兵藤照を追い抜いた。

 

「て、てめぇっ!?」

 

「フハハハハッ!そこで何時までも這いつくばっているがいい!」

 

高笑いしながらの俺は既にゴールテープと目前だった。あのテープを切れば、

俺たちの―――と思った直後だった。俺の全身が停止した。

 

「こいつは・・・・・!?」

 

顔だけとある陣営に向けた。―――頭を覆う紙袋に赤く怪しく煌めかす二つの双眸。

その傍には満面の笑みを浮かべるリアス・グレモリーがいた。

 

「あいつら・・・・・!」

 

場外からの妨害はありなのか!?幻想殺しの籠手(イマジンブレイカー)を装着し、

能力を無効化すれば再び駈け出した―――。

 

「お先に~」

 

その俺の横にガブリエルが通り過ぎて行き、ゴールのテープを切ってしまった。

 

『ゴ―――――ルッ!バトンリレーを制したのは天使チームでしたーっ!』

 

「なに・・・・・っ!?」

 

得点板を見れば、たったの一点差で天使側に負けてしまっていた。

な、なんてことだ・・・・・!

あまりにもショックで俺はその場で落ち込んだ。

 

「・・・・・一誠」

 

背後からガイアの声がした。俺は振り向かず、ポツリと呟いた。

 

「言い訳はしない。でも、ごめん」

 

「・・・・・」

 

足音が徐々に近づいてきた。そして、足音が止まったら、俺の頭に温もりが感じた。

 

「気にするな。予想外な出来事は常にある。

まさか、場外から妨害されるとは誰も思いはしなかっただろう?」

 

「うん・・・・・」

 

「ならば、今回の敗北を糧にして前に進め」

 

振り向けば、ガイアは真っ直ぐ俺を見つめていた。俺はコクリと頷き、感謝の言葉を述べた。

 

「原始龍たちに謝らないとなぁ・・・・・」

 

「我も付き合おう」

 

「ありがとう、俺の愛しいガイア・・・・・」

 

かくして、大運動会は天使チームの優勝という結果で幕を閉じた。

各陣営の面々は日頃の鬱憤が吐き出されたのか、終了際に疲れた表情ながらもどこか満足げな

様子だった。それを受けて、すでに「来年も開催しようか」って

話になっているようだ・・・・・。

来年もやるなら俺はもう一度ドラゴン側となって今度こそ勝利したいな。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。