ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode18

 

「お、おい!本当にお前はイッセーなのか!?」

 

アザゼルが近寄って信じられない者を見る目で問いかけてきた。

俺がそうだと証拠にどこからともかく鎖を取り出して、アザゼルを縛ろうとする。

あいつは慌てて避ける。

 

「・・・・・間違いねぇ。この理不尽に縛ろうとする行動をする奴は一人しかいねえ!」

 

「理解してくれてありがとうよ。

色々と積もる話もあるが・・・・・まずは、目の前の敵を倒すことに集中しよう」

 

「ああ・・・・・・ああ・・・・・・そうだな・・・・・!」

 

なに泣いているんだよ・・・・・。お前らしくないなアザゼル。

 

「まさか、一誠が甦っていただなんてな」

 

「本当、ビックリしたわ」

 

父さんと母さんが近づいてきた。

 

「今度は確実に殺そう」

 

「私たちの手で」

 

「・・・・・」

 

俺は両親に対して両腕を広げた。

 

「もう、前の俺じゃないんだよ。父さんと母さん。―――(ロック)

 

と、そう言った直後、ジャラッ!と二人の周囲の空間に穴が開いてそこから鎖が飛び出し、

瞬時で拘束した。

 

「っ!?この鎖は・・・・・!」

 

「うっ、外れないなんて・・・・・!」

 

「俺の新しい家族の力はどうだ?なんか知らないけど、俺の中で封印されていたんだよね」

 

「そうか・・・・・あのドラゴンの封印を解いたのか」

 

どうやら、父さんたちは知っていたんだな。二人に近づき手を伸ばした―――。

 

「リリスちゃん!二人を助けてちょうだいな!」

 

「っ!」

 

その時だった。黒い髪に金色の瞳、褐色肌を包む黒い浴衣の少女が音もなく

俺の目の前に現れるどころか、拘束していた二人の鎖を解いた。

 

「うひゃひゃひゃ、その子は坊ちゃんと龍神ちゃんの力から生まれたドラゴンだぜ?

力はオーフィスと同じ無限。さーて、どう戦うのかなー坊ちゃん?」

 

「俺とオーフィスの力・・・・・」

 

肯定と頷く少女。

 

「そうだよ、兵藤一誠。こうして会うのは初めてだな。私はリリス。以後よろしく頼むぞ。

我が下僕となる者よ」

 

げ、下僕って・・・・・。

 

「先ほどの高速の縛りは見事だった。私も相手を拘束することが好きでな。

やはり、お前の影響も受け継いでいるようだな」

 

「そうなんだ?じゃあ、ある意味俺とオーフィスの子供と言うわけか。

俺自身、ガイアとオーフィスの子供みたいなもんだし」

 

腕に真紅の鱗が覆い、ドラゴンと化する。

 

「―――イッセー、お前・・・・・ドラゴンになっていやがったのか」

 

「色々と遭ってな。この肉体もガイアが俺の前の肉体のベースで作ったものなんだ。

人型のドラゴン。それが今の俺さ。―――デュリオ!」

 

「はいっす」

 

とある方へ指を差した。

 

「あっちの方角にも邪龍がいる。サマエルと一緒にお前の力で一掃してくれないか?」

 

「いいっすよ。んじゃ、ちょっくら行って来ますね」

 

デュリオ・ジェズアルドはそう言って金色の翼を羽ばたかせてサマエルと共に

俺が指した方角へ向かって行った。

 

「・・・・・どうしてあいつと一緒にいるのかも気になるところだが?」

 

「後で説明するって。―――ここにユーグリットはいないのか?」

 

辺りを見渡してもいない。ので、尋ねると首を横に振られた。

 

「そっか、しょうがないな。んじゃ、やるか」

 

金色の錫杖を虚空から出して錫杖自身を軍杖へと姿を変え、呪文を唱えた。

そうすることで俺も含めて十一人が増えた。

 

「っ!なんだ、その力は!?イッセーが分身したぞ!」

 

「―――ハルケギニアの魔法だよ」

 

アザゼルが驚く中、父さんがそう言ってきた。

 

「一誠。お前はハルケギニアにいたんだな?

その魔法と呪文はハルケギニア特有の風魔法の上位魔法だ」

 

「ああ、そうだよお父さん。俺はハルケギニアに行っていたんだ。

そこでダンジョンを攻略もしていた」

 

「ダンジョンを?まさか、全て攻略したっていうのか?」

 

その問いに肯定と頷く。父さんたちはしなかったのか?

 

「―――なるほど、俺たちもダンジョン攻略したかったなぁ。

あの時の時代は攻略しようとすらしなかったからできなかったけど」

 

「結構シビアな試練ばかりだったよ。入った瞬間に水の中とか有り得ないって」

 

分身たちに指示を送る。全員、全身を真紅の鱗に覆われドラゴンと化となる。

 

「そんなことまでできるのか」

 

「便利だよなこの魔法は。力も変わらない俺が十人以上いるんだからな。―――いけ」

 

刹那。真紅の光を残して宙を移動する俺の分身たち。父さんたちでも少しは手間取るだろう。

 

「さてと」

 

フッと姿を暗まして―――リゼヴィムの背後に姿を現す。

 

「うげっ!?何時の間に―――!」

 

「お前には色々としてくれやがったからな。そのお礼をここでさせてもらう」

 

ドゴンッ!

 

「うぎゃあああああああああああああああああっ!」

 

真紅の拳が狙いを違わずリゼヴィムの頬にヒットし、下へと吹っ飛んで行った。

 

ジャラララッ!

 

俺の全身に鎖が巻かれていく。

 

「お前は私の下僕だ!」

 

「こ・と・わ・る!」

 

完全に縛られる前に移動してリリスと言う少女に拳を突き出す。

俺の拳をリリスは容易く受け止めた。

 

「っ・・・・・流石に真龍と龍神の子供と言うだけあるな。力が凄まじいぞ」

 

じゃあ、こいつも食らえよ。背中に背負っている大剣を掴んで前に振り下ろした。

 

ズバッ!

 

「―――――っ!?」

 

浅い・・・・・!かすり傷程度か・・・・・でも、それでも効果はある。

 

「ぐ・・・・・その大剣・・・・・ただの剣ではないな。掠った程度でこの痛みだぞ・・・・・」

 

苦痛に顔を歪めて、掠ったところを抑えて俺から離れるリリス。大剣を前に突き付ける。

 

「こいつは龍を封印するために造られた大剣だそうだ。―――封龍剣『神滅龍一門』―――」

 

「なんだと・・・・・」

 

俺は動きだす。

 

「俺たちドラゴンにとって最悪の力が宿った剣だ。

―――串刺ししたらいくらお前でもただでは済まないぞ!」

 

―――アザゼルside―――

 

あの野郎・・・・・甦っただけじゃなくてパワーアップもしているじゃねぇか・・・・・ッ。

何て奴だよ、お前は・・・・・!分身のイッセーたちは誠たちを若干押している。

どうやら神滅具(ロンギヌス)の能力を発動できないようだが、それでもあいつは強い。

と、このことを他の奴らに教えないとな。魔方陣を展開し、とある奴に通信をした。

しばらくして、魔方陣に立体映像のように浮かび上がるサーゼクス。

 

『アザゼル、どうしたんだい?』

 

「よう、サーゼクス。アレ、誰だか分かるか?」

 

イッセーとリリスを見せるように魔方陣を動かす。

ところが、二人を知らないサーゼクスは首を傾げた。

 

『・・・・・誰だい?』

 

「真紅の髪の奴は―――兵藤一誠だ」

 

『―――――っ』

 

サーゼクスが珍しく目を丸くした。そりゃそうだろう。

今の今まで死んだと思っていた奴が俺たちの目の前で戦っているんだからな。

 

『・・・・・・本当か。彼は、イッセーくんなのかい?』

 

「ああ、元の髪の色と人間じゃなくなっているが、正真正銘、兵藤一誠だよ。

―――おい、イッセー!」

 

俺も嬉しそうに笑みを浮かべ、あいつを呼ぶと。

 

「なんだ、こっちは忙しいんだぞ!」

 

そう言うも俺の方に来てくれるお前は、まだ余裕があるってことか。

そんで、サーゼクスが映っている魔方陣を突き出す。

 

「・・・・・って、どうしてサーゼクスと通信しているんだこんな時に」

 

『・・・・・本当に、イッセーくんかい?』

 

「ああ、髪の色と瞳の色が違うけど確かに兵藤一誠だ。もうその名前は捨てたけど」

 

名前を捨てようがどうしようが、お前はお前だぞイッセー?

 

『そうか・・・・・良かった・・・・・―――すぐに魔王さまたちに伝えるよ』

 

それだけ言って、あいつが通信を切りやがった。

 

「なんなんだ?」

 

「くくく、さあな。ほら、さっさと戦って来い」

 

「・・・・・人を呼んでおいてそれかよ。後で縛ってやる」

 

―――サーゼクスside―――

 

アザゼルに見せられたイッセーくんの生存。私は嬉しい気持ちを抑えきれず、

彼と交流を持っている魔王さまたちや神王さまに一斉に通信を入れる。

少しして魔方陣から様々な人物たちの立体映像が浮かび上がる。

 

『おう、どうしたんだサーゼクス坊』

 

『あなたから通信を入れるなんて、何かあったの?』

 

「はい、先程アザゼルから知らされた事実を皆さんにもお伝えしようと思いまして」

 

早く、早く彼の存在を教えたい。そう思いが一杯で魔王さまが口を開こうとしたところで

私は言った。

 

「兵藤一誠くんの生存を確認しました。彼は甦っておりました」

 

真っ直ぐ魔王さまたちに告げた。その後、沈黙が続いた。

 

『・・・・・悪い、いま信じられないことを聞いたような気がするんだが』

 

「事実です神王さま。彼は、兵藤一誠くんは生きております」

 

『・・・・・その話しは本当だろうな?』

 

証拠とばかり、先ほどの通信の記録を魔王さまたちに見せた。そして、目を丸くした。

 

『・・・・・間違いねぇ・・・・・一誠殿じゃねぇかっ!』

 

『イッセーくん・・・・・ああ・・・・・・!』

 

『良かった。彼は甦ったいたんだな。本当に・・・・・!』

 

『すぐにネリネちゃんたちに伝えなきゃ!』

 

『俺はシアにだぜ!』

 

様々な反応をした後、通信が次々と切れていく。彼の存在を伝えるためだろう。

 

―――フォーベシイside―――

 

「ネリネちゃああああああああああんっ!」

 

冥界から飛んで帰るように私は人間界の家に帰った。

すぐに愛しいネリネちゃんの部屋に飛び込んだ。

 

「・・・・・」

 

部屋にネリネちゃんはボーと部屋の中にいた。その傍にはリコリスちゃんもいる。丁度良い。

二人の娘の肩を掴んで嬉しそうに言う。

 

「聞いておくれ、イッセーちゃんが生きていたよ!」

 

「「・・・・・」」

 

あ、あれ?反応が薄いね・・・・・。そうだ、アザゼルちゃんが見せてくれた記録を!

そう思い、魔方陣を展開して愛しい娘たちに見せた。

 

「・・・・・イッセー・・・・・さま・・・・・」

 

「―――――っ!」

 

彼の死にショックを受け、声を失っていたはずのネリネちゃんが声を発した!

 

「イッセーさまが・・・・・生きている・・・・・・?」

 

私は娘たちを強く抱きしめた。

 

「ああ、ああ!イッセーちゃんは生きていたんだよ!

だから、彼が帰ってくるのを彼の家で待とうじゃないか!」

 

 

―――ユーストマside―――

 

 

「シアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!キキョオオオオオオオオオオオオオウッ!」

 

娘がいる部屋へ俺は豪快に駆けだす!そして、辿り着くや否や豪快に開けて中に入る!

 

「きゃあああああああっ!」

 

そこは下着姿の娘たちがいた―――!俺を追いだそうと何時の間にか掴んでいた椅子を

俺に振ってきた。だが―――!

 

「ぬんどりゃあああ!」

 

俺の拳一つで椅子を粉砕してやった!今までしたこともないことを俺がしたもんだから、

二人は目を丸くした。そんな娘たちの肩を掴んで、俺は言った。

 

「お前ら!一誠殿が生きていたぞ!間違いねぇ、あの顔は一誠殿だ!」

 

「・・・・・嘘、イッセーくんが生きている?」

 

「・・・・・冗談にもほどがあるわよ」

 

「嘘でも冗談でもねぇっ!ほら、こいつを見やがれ!」

 

サーゼクス坊から見せられた映像の記録を見せた。

そしたらどうだ、シアとキキョウの目が大きく開いたじゃないか。

 

「イッセーくん・・・・・!」

 

「・・・・・」

 

二人の反応に俺は笑みを浮かべた。

 

「今すぐ一誠殿の家に言って迎えてやろうじゃないか!一誠殿が帰ってくるまでにな!」

 

「うん・・・・・うん!」

 

「・・・・・そうね。そのまえにやらないといけないことがあるから、それが終わってからね」

 

キキョウの手に高密度に圧縮された魔力の塊が―――。キキョウの可愛い笑みと共に俺へ放たれた。

 

―――一誠side―――

 

「さっさと封印されろ!」

 

「私の下僕となれ!」

 

「「誰がだ!」」

 

ある意味低レベルな言い合いをしながらリリスと激しく戦いを繰り広げていた。

 

「というか、どうして下僕にしたがる?」

 

「決まっているだろう?気に入ったものを自分の手元に置きたいではないか」

 

「あー、分からないわけじゃないな」

 

「ふふっ、やはり私はお前の力を受け継いだものだと実感するよ。なぁ―――パーパ♪」

 

「誰がパパだ!?」

 

ブオンと渾身の一撃を振るったが、

 

「おおおおおっとおおおおおおおおおお!?」

 

チッ、リリスは全力の紙一重で避けやがった。

まだ子供を作っていないのにこの歳でパパなんて言われたくない!逆から言えるけどな!

 

「危ないではないか!私を殺す気か!?」

 

「無限なんだろう?死にはしないさ。オーフィスと同じならばな」

 

「仮に自分の力から生まれた者に対して酷くないか?」

 

「そう思うなら、今すぐこっちに来いよ。家族として歓迎するぞ」

 

「だが、断わる!」

 

あら、断われちゃったよ。ちょっと、ショックだな・・・・・。

 

「―――おや、これは驚きですね」

 

俺の誘いを断ったリリスの真上から銀髪の青年が降りてきた。―――ユーグリット・ルキフグス。

 

「まさか、兵藤一誠が甦っていたとは・・・・・サマエルの毒と呪いは効いていなかったと?」

 

「いや、肉体が滅んだからな。かなり効いたぞ。

でも、対処方法があったから魂だけは無事だっただけに過ぎない」

 

「・・・・・なるほど、肉体が滅ぶ前に魂だけとなって生き延びたと。

それなら、別の肉体に定着すれば確かに生きれますね」

 

こいつ、よく分かったな。そこまで言っていないのによ。

 

「では、兵藤一誠が甦った記念として良いモノをみせましょうか」

 

そう言って魔方陣から何か取りだした。―――ベルトだ。そのベルトを腰に巻き付けた。

そして赤い三つのメダルをベルトに差し込んだ―――って、あれは―――!?

 

「変身!」

 

『グレートレッド!』『ドライグ!』『フェニックス!』

 

『グッドクッス、グドックッス、グッドクッス!』

 

ユーグリットが赤いオーラに包まれ―――赤い全身鎧を纏った。頭部に立派な赤い角、

腕には『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、背中と腰辺りに燃える翼と尾羽が―――!

 

「これはあなたが最後に遺した子供向けの玩具でしたね?

ですが、これを我々は戦闘用に作り変え、実用化に至るまでにできたんですよ」

 

「おいおい・・・・・そんなことされたら販売できなくなるじゃないか」

 

「因みに全種類のメダルも持っていますよ?」

 

「ほら」と本当に全ての種類のメダルを見せてくれた。・・・・・何気に持っているんだな。

あれ、製造の制限をしているつもりだったんだけど。

 

「ふふっ、この姿の名を『真なる不死の龍』と名付けましょうか。お気に入りの姿ですしね」

 

「本当に不死でも、倒す方法はある」

 

左手に魔力、右手に気を出して融合する。―――感卦法。

 

「そんで、俺もようやく相反する力を融合することもできるようだ」

 

「ほう?」

 

背中に『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』、

左手に『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を装着し―――。

赤と白のオーラを全身に纏う。

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ!」

 

と力強く発した。俺の全身から出ている赤と白のオーラは鎧と化となって俺を包んでいく。

 

「―――『二天龍の鎧(ツー・ザ・スカイ・スケイルメイル)』」

 

赤と白が基調とした全身鎧。不恰好だろうが、能力は凄まじいだろうな。

 

「―――奪った白龍皇と赤龍帝の力を融合させたと言うのですか」

 

「ああ、そうだ。前から考えていた力だけど、相反するからかなり苦労した。

でも、俺がドラゴンとなって最近、できるんじゃないかって思ってな。

ぶっつけ本番だが、成功したようだ」

 

「・・・・・あなたはやはり、他の周りとは何かが違う。

ですが、今の私は不死の力を得た真龍と赤龍帝の力を持った存在です。

真龍を未だに勝てないあなたは私に勝てるでしょうか?」

 

その問いに俺は口の端を吊り上げた。

 

「―――だったら、その真龍の力を纏えばいいだけの話しだ。龍神の力もな?」

 

徐に腕を上に向け、レーザービーム状の真紅の光を放った。

 

「俺のもとに来い、愛しい真紅の龍、ガイアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

真紅の光は空間を歪ませた。グニャリと渦を描きながら空間を歪ませ続けていると―――歪んだ

空間が忽然と開き、開いた空間の向こうから真紅の体のドラゴンが現れた。

それを見て俺は鎧を解除して呪文を呟いた。

 

「我、夢幻と龍神の子の者なり」

 

『我、夢幻を司る真龍「真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)」グレートレッドなり』

 

「我、無限を司る龍神「無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)」オーフィスなり」

 

『我は無限を認め、夢幻の力で我は汝を誘い』

 

「我は夢幻を認め、無限の力で我は汝を葬り」

 

『我らは認めし者と共に生く!』

 

「我らは認めし者と共に歩む!」

 

2人の呪文のような言葉の後に俺も呪文を唱えた。

 

「我は夢幻を司る真龍と無限を司る龍神に認められし者。

我は愛すべき真龍と龍神と共に我等は真なる神の龍と成り―――」

 

「「『我等の力で全ての敵を倒す!我等の力で汝等を救済しよう!』」」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

眩い深紅と黒の閃光が辺り一面に広がっていく。そして、閃光が止んだ時。

周りから見れば、俺は深紅と漆黒の二色のドラゴンの姿を模した全身鎧(プレート・アーマー)

立派な角が生えた頭部、胸に龍の顔と思われるものが有り、

特に胸の龍の顔は意思を持っているかのように金と黒の瞳を輝かせる。

瞳は、垂直のスリット状に黒と金のオッドアイになっていて、

腰にまで伸びた深紅と黒色が入り混じった髪をしている。

 

「―――この鎧を纏うのも久し振りだな」

 

『一誠。この戦いを終えたら全て教えろよ』

 

「悪かったな。ガイア・・・・・そして、この体を作ってくれてありがとう」

 

『・・・・・バカ』

 

はは、怒られちゃったな。まあ、いまは―――あいつらを倒そうか。

 

「夢幻と無限の融合鎧・・・・・それを目の当たりにすると

私の存在がちっぽけだと思わされますね」

 

「だろう?さて、お前からある物を奪ってあいつに返さないとな」

 

「・・・・・何のことでしょうか?」

 

刹那。リリスを弾き飛ばしてユーグリットの前に現れる。

―――右か。右の籠手を粉砕して手を曝け出した。

右手の中指に嵌められた紫の宝石の指輪を見つけた。

 

「そいつか」

 

「―――っ」

 

その指輪を取ろうと腕を動かした時だった。横から黒い影が現れる。

殺意のない一撃から避け、アンドバリンの指輪奪還を断念した。

 

「ふぅ、ようやく倒し終えたよ」

 

「皆、強かったわー」

 

「・・・・・」

 

父さんと母さん・・・・・もう倒したのか。

 

「助かりました」

 

「気にしないでくれ。でも、そろそろ退散したほうがいいと思うよ?」

 

「そうですか、この鎧の力を試したかったのですが・・・・・」

 

「今の息子は強いわよ?もう、何の揺るぎもなく私たちを倒そうとするわ。実の親でもね」

 

姿形はそうだけどな。中身が違うんなら、そうするさ。

 

「ユーグリットっ!」

 

「リゼヴィムさま」

 

「もー、坊ちゃんに殴られたところ、痛くてしょうがないから帰ろうぜー?」

 

今になってリゼヴィムも現れた。だから、ヴァーリが怒る。

 

「リゼヴィムッ!貴様をこの場で殺してやる!」

 

「んーなんだか、うちの孫もしつこそうだな。ここはおいとましようや。

町も大分ぶっ壊したし、帰っぞ、ユーグリットくん、強制転移でよろしく♪」

 

ユーグリットが素早く転移型の魔方陣を空中に展開させた。逃がさないとばかり、

ヴァーリと成神が追撃する。

 

「待て、リゼヴィム!」

 

「てめぇらには一発ぶん殴らないと気が済まねぇっ!」

 

しかし、二者が手元から放った波動はリゼヴィムに直撃した途端に何事もなかったように

霧散していく。―――どういうことだ!?驚きを隠せない俺を余所に、

リゼヴィムは指を左右に振ってチッチッチッと舐めたようにする。

 

「残念♪その力が神器(セイクリッド・ギア)に関わっている以上、俺には効かないぜ?

んじゃね♪また盛大にテロっすから応援してくださーい!

今度も伝説の邪龍くんをつれてくるよ!」

 

神器(セイクリッド・ギア)の攻撃は効かない・・・・・!?

神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)だというのか!?

本当にそうだったらここにいる神器(セイクリッド・ギア)持ちの皆の攻撃は一切、リゼヴィムに

通用しないという事になるじゃないか!

転移の光に消えていくなかでリゼヴィムは最後に宣言する。

 

「あ、そうだ。俺たちの名だ。―――『クリフォト』。いい名だろう?

『生命の樹セフィロト』の逆位置を示すものだ。セフィロトの名を冠する

聖杯を悪用するってことで名付けて見た。悪の勢力って意味合いもあるよねん♪ちゃお☆」

 

リゼヴィム、ユーグリット、リリス、父さんと母さんたちはジャンプの光に消えていった―――。

最後の瞬間、リリスは俺に視線を送っていた・・・・・。

 

「また会おう」

 

と、口を動かしてもいた―――。


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