ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode14

 

 

アルビオンダンジョンを攻略したその日の夜。

俺はティファニアが住んでいた家に戻った。すでにパーティが始まっている

 

「ただいま」

 

「あっ、帰ってきたわね。一体どこに行っていたのよ?」

 

ルクシャナが出迎えながら問い詰めてきた。

 

「王さまがいる城にだ。宝の持ち腐れを貰って来たんだよ」

 

「・・・・・宝の持ち腐れ?」

 

怪訝に呟く彼女から視線を外して、ナヴィに向ける。

 

「ナヴィ、こいつか?風のルビーとやらは」

 

ポケットからとある指輪を取り出す。それを見たナヴィは満足気に頷いた。

 

「ええ、間違いなくそれよ。短時間でよく持ってきたわね」

 

「気絶させて奪ったからな」

 

木の椅子に座りこんでテーブルに指輪とダンジョンで手に入れた始祖のオルゴールを置く。

 

「こいつが始祖の秘宝ねぇ・・・・・一見、ただの指輪と壊れたオルゴールにしか

見えないんだけどな」

 

「各国の代々王家に伝わる指輪と王家の秘宝。

その二つが虚無の担い手の手の中にないとだめと教皇が言っていたぞ」

 

「じゃあ、アルビオンで生まれた奴が虚無の担い手ってことになるんだろう?

・・・・・だとすると、ティファニアか?」

 

俺の目の前に座っていたエルザ・スカーレットの言葉を聞きながら、

少し離れたところで料理を食べているティファニアに視界を入れる。

 

「彼女がアルビオン王家の血筋であれば可能性はなくないと思う」

 

「だと、思いたいな」

 

ドリンクが入ったグラスをエルザ・スカーレットに向ける。

 

「ん?」

 

「これで最後の晩餐となるな。明日はロマリアダンジョン攻略してその日にシャルロットと

ジョゼット、キュルケを自分の国に連れて行って、お前たちフェアリーテイルと別れだ」

 

「・・・・・」

 

徐に俺のグラスに自分のグラスを軽くぶつけた。

 

「そうだな。お前たちとの冒険は明日でお終いか。

ふっ、我ながら何時までも続く楽しい時間だとつい思ってしまった」

 

ああ、俺もそう思ったよ。不覚にも何時までもお前らと

長い冒険をしてみたいと思ってしまった。

 

「イッセー。私たちと別れても、私たちと冒険したこの時だけを忘れてくれるなよ?」

 

「それはこっちのセリフだエルザ。俺たちのことも忘れるなよ?」

 

「では・・・・・互いに忘れないようにするためにも」

 

エルザ・スカーレットが立ち上がって、魔方陣から剣を取り出した。

 

「私と一勝負をしようじゃないか。その大剣は飾りではないのだろう?」

 

「・・・・・」

 

そーくるか。徐に立ち上がって背中に背負っている大剣の柄を握り、彼女に突き付ける。

 

「良いだろう。今日は寝かせないぞ?」

 

「はははっ、面白いことを言うなイッセーは。―――それはこちらのセリフだ」

 

深く笑みを浮かべる彼女は剣の切っ先をティファニアの家から離れた森に突き付けた。

 

「場所はあそこでいいな?」

 

「自然破壊するつもりかよ!?」

 

「違う、野原で勝負しようと言っている」

 

それなら良いけど・・・・・。

 

「おっ、なんだ。イッセーと勝負すんなら俺も交ぜろ!」

 

と、いきなりナツ・ドラグニルが両手に炎を纏って攻撃を仕掛けてきた。

 

「「ここで攻撃してくるな!」」

 

ドゴンッ!

 

「ああああああああああああああああああああ!?」

 

エルザ・スカーレットと一緒にナツ・ドラグニルを殴り飛ばした。

あいつは真っ直ぐ野原の方向へ吹っ飛んで行く。

 

「ナヴィ、あっちの方角にいるからな」

 

「はーい、行ってらっしゃい。あんまりはしゃがないでよ?」

 

「善処する。行こうか、エルザ」

 

「ああ、全力でお前を倒してやろう」

 

不敵の笑みを浮かべ、森の向こうに駆けだしていった。俺も続いて野原に向かう。

―――その後、俺とエルザ・スカーレット、ナツ・ドラグニルは

数時間にも及ぶ三つ巴勝負をした結果、俺が勝った。

 

―――ロマリア―――

 

翌日、ステルスの能力で俺は透明化となって皆を背中に乗せて飛行を続けること数時間、

朝早くから飛んでいるためロマリアには昼頃に到着した。

港を見下ろせば、かなりの人数の兵士たちが警備していた。

蜘蛛の子のように散らばって逃げていたくせにな。

 

「そう言えばデュリオ。お前、強いのにどうして倒れていたんだよ?」

 

アルビオンダンジョンで何故か倒れていた。

二番目に強いはずの神器(セイクリッド・ギア)の所有者が負けるとはとても考えにくい。

 

「俺の神器(セイクリッド・ギア)は確かに強いんスけどね。

でも、ド派手な攻撃しかできなくてあんな狭い場所でやったら周りまで被害が出てしまうんすよ。

んで、俺の影が同じ能力を使ってきた始末で」

 

「あー、そう言うことか。お前、何気に苦労しているところもあるんだな」

 

「こんなことヤハウェさまに知られたら、絶対にしばらく下界の料理を食べ歩くことを

許してもらえなさそうっす。だから、秘密にしてくださいね?」

 

いや、俺に言うんじゃなくてナヴィに言え。ほら、また秘密を握ったと嬉しそうな

顔をしているぞ。ロマリアにある塔の前に降り立ち、皆を下ろさせてから人化になる。

 

「それではイッセー、私たちは教皇陛下のところへ行ってくる」

 

「ああ、気を付けてな。一時間後、ここで集合だ」

 

「分かった。皆、行くぞ」

 

彼女たちフェアリーテイル組と別れ、俺たちはロマリアの街を歩き回ることにした。

 

「やった、食べ歩きができそうっす」

 

こいつはこの状況に嬉しそうだけどな。

 

―――フォルサテ大聖堂―――

 

―――エルザside―――

 

数日ぶりの教皇陛下の謁見。私たちを依頼した人物がいる大聖堂。

その中に入る許可を得ると金髪にオッドアイの長身な少年の案内によって大聖堂の中を歩く。

 

「こちらに教皇陛下たちがお待ちしております」

 

「・・・・・たちだと?」

 

あの教皇の他にも誰かいるのか?少年に怪訝な視線を送っても扉を開けて中に入ってしまった。

仕方なく、私たちも中に入った。そして、部屋の中を見渡せば―――ゲルマニアとアルビオンを

除いて、トリステイン王国とガリア王国の女王と王に大臣がいた。勿論、教皇陛下もいる。

 

「あなた方は・・・・・」

 

「キミたちは・・・・・そうか、キミたちも呼ばれたのか」

 

「呼ばれた?いえ、現状の報告とお伝えにここへ参った所存ですが・・・・・。

あなた方がどういったご用でここにおられるのです?」

 

私はそう問うた。やすやすと自分の国から王が離れるとは、

とても重大な話しをするためにいる集結しているのでは?と思っているからだ。

 

「その前に労いを言わせてくれ、アルビオンダンジョンの攻略を成功したようだね。

おめでとう。娘たちは元気にしているかな?」

 

「はい、息災です。彼女たちのおかげで助かったこともあります」

 

「そうか。二人も行かせた甲斐があったようだね。今はどうしているかな?」

 

「ロマリアの街を歩き回っているかと」

 

「ふふっ、そうか。どうやら頑張っているようだね」

 

・・・・・何を頑張っているのだろうか?少し気になる発言だが、追及するのは失礼だろう。

 

ガチャ・・・・・。

 

扉が開いた。教皇陛下もいるからこれで全員では?と、思ったが・・・・・。

また新たな人物たちが入ってきた。

金髪に片目にモノクルを嵌めた中年男性と桃色の髪の二人の少女。

私はその二人を見て目を丸くした。

それもそのはずだ。彼女たちは―――イッセーの友人たちだからだ。

でも、どうしてここにいる?極東の地に住んでいると聞いた。

これも教皇が呼んだからか・・・・・?

 

「役者が揃いましたね。では、皆さん席にお座りください」

 

教皇が促す。何故、私たちまで同席しないといけないのか理解が追いつかないまま、

席に座ってしまった。

 

「知っての通り、ハルケギニアに存在する五つの塔は残り一つを残して消滅しました。

彼女たちフェアリーテイルの働きによって始祖の秘宝を手元に置けたのも彼女たちのおかげです。

ガリア王国の秘宝、始祖の香炉。トリステイン王国の秘宝、始祖の祈祷書。

そして、アルビオン王国の秘宝、始祖のオルゴールを」

 

「ええ、アルビオンのことはまだお聞きしていませんですが、

アルビオン以外の塔の攻略のことは私の耳にも届いております」

 

「はい、これで始祖の指輪が三つ、始祖の秘宝が三つ揃っていると言うことです。

いえ、厳密に言えば二つ(・・)でしょうか」

 

「二つ?どういうことですか?」

 

トリステイン女王の疑問に教皇は私たちに視線を向けてくる。

 

「彼女たちフェアリーテイルが保有しているからです。

有るべき虚無の担い手の手に渡していないからです」

 

彼以外の者たちが目を丸くしてこちらに視線を向けてきた。だが、正確には違う。

 

「恐れながら発言を申し上げます。私たちがアルビオンに辿り着いた頃には

アルビオン王国国王であるジェームズ一世を含む王族は、レコン・キスタという者たちの

襲撃によってお亡くなりなっておりました」

 

私の発言に教皇陛下以外の者たちは絶句した。私は言い続ける。

 

「始祖ブリミルの子供の子孫と弟子がそれぞれ国を興したとお聞きしました。

ならば、始祖ブリミルの子供の子孫ではないレコン・キスタという輩たちに始祖の秘宝と指輪を

渡すに相応しくないと判断し、私たちの手元に置いているのです。

―――テロリストに始祖の秘宝と指輪を預けてもよろしかったのでしょうか?教皇陛下」

 

「・・・・・」

 

「もしそうなら、今すぐ指輪と秘宝を渡しに行きます。東方の言葉で言えば

善は急げと言いますしね。外で待たせている私たちの協力者のもとへ帰らせてもらいます」

 

「では、イッセーくんによろしく言っておくれ。娘たちをよろしく頼むと」

 

「「「っ!?」」」

 

「ええ、分かりました」

 

イッセーの友人、家族が目を丸くしたな。どうやら、読みがっていることを知らないようだ。

席から立ち上がり、お辞儀をしてこの場から退出しようと足を動かした矢先。

 

「いえ、それには及びません」

 

彼が、教皇が私を制した。

 

「申し訳ございません。少し私の早とちりでした。気分を害してしまったのならば謝罪をします」

 

「・・・・・」

 

このままイッセーのもとへ戻ろうとしたのだがな。席に座り直し、教皇陛下の言葉を聞く。

 

「話を続けましょう。始祖の秘宝と指輪は共に三つここに集結しております。

残りは四人の虚無の担い手と四人の虚無の使い魔のみです」

 

一人はジョゼットだと知っている。残りの三人は一体誰だ?虚無の使い魔も気になるところだ。

 

「ガイア王国の虚無の担い手はジョゼット、トリステイン王国の虚無の担い手はルイズ、

そしてここロマリア連合皇国の虚無の担い手はこの私です」

 

『・・・・・』

 

な・・・・・んだと・・・・・・?

 

「ジョゼットが虚無の担い手・・・・・?」

 

「ワシの娘が虚無の担い手だと・・・・・?」

 

「教皇陛下が虚無の担い手・・・・・」

 

ジョゼットはともかく、教皇自身が虚無の担い手だとは思いもしなかった。

 

「そして、虚無の使い魔は私の横にいるジュリオ・チェザーレ。

ルイズの後にいる少年、平賀才人です」

 

この場に二人もいたのか。

 

「お、俺が虚無の使い魔?」

 

「そうです。その左手の甲に刻まれた文字はあらゆる武器や平気を使いこなすガンダールヴ。

始祖ブリミルの使い魔の一人の証でもあるのです。

私の使い魔はあらゆる生物を乗りこなすヴィンダールヴ。あなたと対極の位置ですね」

 

「よろしく兄弟」

 

ジュリオ・チェザーレという少年がにこやかに言うが平賀才人という少年は当惑するばかり。

 

「秘宝が三つ、指輪が三つ、虚無の担い手が三人、虚無の使い魔は二人。

四の四が全て揃うのは時間の問題といえるでしょう」

 

「ですが。どうして六千年も攻略できなかった塔を攻略し、

始祖の秘宝を集めようとしているのですか?」

 

アンリエッタ女王が教皇に問うた。―――私たちはすでに聞かされているからな。

 

「その理由も含め、本日こうしてお集まりいただいたのは他でもない。

私は、あなた方の協力を仰ぎたいのです」

 

「協力とは?」

 

ガリア王国現王のシャルルが尋ねた。

 

「はい、それは―――」

 

教皇から告げられる今回のダンジョン攻略の真相。要略すれば聖地奪還のためだと言う。

 

「聖地の奪還・・・・・」

 

「始祖ブリミルの降臨したと言う地を取り戻すために・・・・・」

 

「・・・・・」

 

私たちフェアリーテイルと教皇以外の者たちは驚きの色を隠せないでいる。

 

「・・・・・どうして、聖地を回復せねばいけないのですか?」

 

ルーシィが教皇に問うた。教皇が口を開く。

 

「それが、我々の『心の拠り所』だからです。何故戦いが起こるのか?

我々は万物の霊長でありながら、どうして愚かにも同族で戦いを繰り広げるのか?

簡単に言えば、『心の拠り所』を失った状態であるからです」

 

心の拠り所か・・・・・。

 

「我々は聖地を失ってより幾数年、自身を喪失した状態であったのです。異人たちに、

『心の拠り所』を占領されている・・・・・。

その状態が、民族にとって健康なはずはありません。自身を失った心は、

安易な代替品を求めます。くだらない見栄や、多少の土地の取り合いで、

我々はどれだけ長さなくてもいい血を流してきたことでしょう」

 

・・・・・。

 

「聖地を取り返す。伝説の力によって。そのときこそ、我々は真の自信に目覚めることでしょう。

そして・・・・・、我々は栄光の時代を築くことでしょう。

ハルケギニアはその時初めて統一されることになりましょう。そこにはもう、争いはありません」

 

「・・・・・」

 

統一すれば争いが無くなる・・・・・理想的なことだが、完全になくなるとはない。

これ以上彼の話しを聞くまでもないと判断し、私は静かに立ち上がる。

 

「皆、明日に備えて宿を探そう」

 

「エルザ?」

 

「この会談は異国から来た異人である私たちが同席していいものではないようだ」

 

視線で立ち上がるように促す。すると、教皇が首を横に振った。

 

「いえ、あなた方も同席してほしい。聖地の奪還のためにあなた方の力も必要です。

無論、あなた方の協力者もです」

 

「ハルケギニアの民ではない私たちはここにやってきたのは

『ダンジョン攻略』の依頼を受けているからです。

さらに何か依頼してほしいのであればフィオーレ王国に存在する『フェアリーテイル』で正式に

依頼してください。それと明日、ロマリアダンジョンを攻略します。それで依頼は達成です。

よろしいですね」

 

教皇に尋ねれば瞑目して小さく溜息を吐いた。

 

「では、ロマリアダンジョンを攻略次第、始祖オルゴールと風のルビーをお渡しください」

 

「―――いえ、それはできません」

 

「・・・・・どういうことです?」

 

この方は忘れているのだろうか?

 

「各国に存在するダンジョンに眠る秘宝はその国の王家に渡す依頼も含まれております。

ので、秘宝と指輪はアルビオン王家の者に渡すのが道理です。

あなたはロマリアの教皇でアルビオンの王族の者ではございません」

 

「ですが・・・・・アルビオン王国はレコン・キスタによって滅ぼされたと

仰りませんでしたか?」

 

「ええ、言いました。ですが、気になる少女がいるのです。もしかしたらその少女が

王家の生き残りだとすれば・・・・・その少女の出生を問い、彼女がアルビオン王家の王族で

有ることが判明したら始祖のオルゴールと風のルビーを渡すに相応しいでしょう。

それまでこちらで預かっております」

 

歩を進め扉に向かう。

 

「依頼を反故して私たちから指輪と秘宝を奪うのであればどうぞご自由に。私たちは幾数年間、

攻略できなかったダンジョンを攻略してきた。―――実力はすでに歴然だと思いますが」

 

それだけ言い残し、私たちは部屋から出て廊下を歩き大聖堂から出た。

 

「エルザ、あんなこと言っていいのかよ?」

 

「私たちは非道なギルドではない。それにイッセーも望んでいないはずだ」

 

「そりゃそうだろうけど・・・・・」

 

「イッセーのところに戻る。彼には色々と伝えないといけないことができた。

まずは、そのことを告げよう」

 

一時間後と言ったが・・・・・随分と早く出てしまった。さて、どこにいることやら―――

 

「待ってくれ!」

 

思案していると、私たちの背後から桃色の髪の少女が声を掛けてきた。

 

「どうした?」

 

「・・・・・」

 

彼女は私に近づき、濡れた瞳で口を開いた。

 

「お前が言う『イッセー』とは・・・・・もしかして、兵藤一誠という男か・・・・・?」

 

「・・・・・」

 

「答えてくれ!」

 

私は彼女の問いに―――首を横に振った。

 

「違う」

 

「え・・・・・」

 

「彼の名前はイッセー・D・スカーレットと言う。お前が言う兵藤一誠ではない」

 

そう言うと彼女はガクリと跪いた。

 

「そう・・・・・か・・・・・」

 

そして、嗚咽を漏らし始めた。この少女はイッセーの友達。

彼女の気持ちを踏み躙ったと思ったら、何だか罪悪感を感じ始める。

というより、なんで私はこう言ってしまったのだろうか?

 

「・・・・・なあ、会わせてやったらどうだよ?」

 

「うん・・・・・なんだか可哀想よ」

 

グレイとルーシィが声を掛けてくる。・・・・・そうだな。あいつも会いたがっているだろうし。

そうしよう。

 

「おい、お前。私と来い」

 

「・・・・・なんでよ」

 

「問答無用だ」

 

と、彼女の腕を掴んで歩く。イッセーが塔の傍にいてくれたらありがたいが・・・・・いるか?

そう切に願い、塔の方へ足を運ぶ。街中を歩く人々を掻き分けるように前へ前へと進んでいく。

―――ふと、見覚えのある真紅の後髪が目に入った。おお、いたぞ。

 

「イッセーッ!」

 

彼の名を叫んだ。大勢の人が私の叫び声に反応してこっちに視線を向けるがこの際気にしない。

真紅の髪の人物が私がいる方へ振り向いてくれた。来いと手を招くように振るうと

私たちがいる方へ来てくれる。彼と一緒に町中を歩き回っていた仲間たちも一緒だ。

 

「エルザ。もう謁見を終えたのか?」

 

「ああ、そしてお前の友達も出会ったぞ」

 

「・・・・・はっ?」

 

珍しく驚いた表情をするではないか。視線を私の左に向けた途端に、目を大きく開いた。

そして、桃色の髪の少女が彼を、イッセーを凝視してゆっくりと口を開いた。

 

「イッセー・・・・・なのか・・・・・?」

 

「・・・・・」

 

驚いた表情が一変して、バツ悪そうに、申し訳なさそうな顔をしたイッセーは―――彼女を

抱きしめた。

 

「―――――っ!?」

 

言葉は不要とばかり互いの気持ちは通じあったのか、

桃色の髪の少女がボロボロと涙を流し始めた。

 

―――一誠side―――

 

「うわああああああああああああああああんっ!イッセーッ!イッセーッ!イッセーッ!」

 

宿を取って部屋の中に入った途端に、彼女・・・・・カリンが泣き始めた。

 

「カリン・・・・・ごめんな・・・・・」

 

「本当よ!どうして私たちのところに姿を見せてくれなかったのよ!

私たちはイッセーが死んで凄く悲しんだからね!」

 

ポカポカと俺の胸を叩く。でも、大して痛くなかった。

 

「今まで一体何をしていたのか、教えてくれるまで絶対に放さないから!」

 

そう言って俺の太ももに跨って対面の形で抱きついてきた。

 

『・・・・・』

 

俺たちの様子を見守っていた皆が何とも言えない雰囲気包まれていることに気付いた。

 

「・・・・・俺たち、邪魔か?」

 

「いや、気にしないで居てくれ。お前たちからも伝えて欲しいこともあるからさ」

 

カリンの背中を宥めるように撫でる。

 

「まさか・・・・・あのカリンがあんなに泣くなんてね・・・・・」

 

「・・・・・意外」

 

「東方の地でイッセーとあんなに仲が良いなんて知らなかったわ」

 

ハルケギニア組のシャルロットとジョゼット、キュルケが呆然としていた。

 

「カリン、ちゃんと話すから少し離れてくれ」

 

「いや!」

 

いやって・・・・・・。どうしたもんだと困惑しているとキュルケが口を開きだした。

 

「ねぇ、イッセーとその子の関係は何なの?」

 

「ん?ああ、友達以上恋人未満・・・・・かな?戦友とも言え―――」

 

「―――私はお前が好きだ!」

 

カ、カリンさん!?信じられないことを聞いた俺はカリンに目を向けた。

 

「お前が死んでようやく気付いたんだ。私はお前のことが好きなんだと。

でも、お前が死んで私は物凄くショックを受けた。でも、お前は生きていた。

―――私はそれがとても嬉しいのよ・・・・・!」

 

「カリン・・・・・」

 

「今度は私があなたを守ってみせる。あなたが命を懸けて私たちを守ったように、

今度は私があなたを守るわ」

 

揺るがない決意と濡れた瞳から感じ取れる。カリンは本気だと実感した。

 

「私はあなたの騎士となる・・・・・これは絶対の契約」

 

俺が何か言おうとする前に、彼女の唇に塞がれた。

 

『な・・・・・っ!』

 

うん、案の定・・・・・皆が驚愕している。

 

「イッセー、私の主・・・・・大好きよ・・・・・」

 

俺の首に両腕を回してきて耳元で愛の言葉を囁く。―――が、それは終わった。

 

「ちょっと待ちなさいカリン!イッセーは私の騎士なの!」

 

ジョゼットが異議有りとばかり声を張り上げたからだ。

 

「いえ、私の使い魔なんだけど?」

 

「ルクシャナ。それを言ったらお前も俺の使い魔だからな?」

 

至って普通に挙手して言うルクシャナに思わず突っ込んでしまった。

 

「なによ、イッセーのことを知らないくせに!」

 

「関係ないわよ。これから知っていけばいいもの」

 

「イッセーの情報なら私に訊いてねぇー♪」

 

ちょっと待とうかナヴィさん!勝手に人の情報をオープンしようとしない!

 

「ははっ、イッセーが女に囲まれて戸惑っているぜ」

 

「と言うより、責められているようにも見えなくないけど?」

 

「でもよ。何だか嬉しそうじゃねぇ?」

 

「そうだな。久し振りに再会した友との会話は良いものだからな」

 

はいそこ、見てないで少しぐらいフォローしてくれ!

 

「・・・・・」

 

「シャルロット?」

 

背中から覆い被さるように抱きついてきたシャルロット。あの・・・・・どうしたんだ?

 

「あなたの背中、私の特等席に・・・・・する」

 

ポッと頬を赤らめた。そんな彼女に異議を言う存在は―――。

 

「我の特等席、奪わせない」

 

久々のご登場のオーフィスさんだった!


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