ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode9

 

ダンジョンを攻略して翌日。事態は急変した。

 

「ロマリアに行くだって?」

 

朝、エルザ・スカーレットたちが宮殿に召喚され、一時別れたが戻ってくるなり、

トリステインの南方の浮遊大陸、アルビオンではなく、

ガリア王国の南方に存在するロマリア連合皇国に行くと開口一番に告げた。

 

「ああ、ロマリアからの使者が昨夜に訪れていたらしくてな。

何でも、三つもダンジョンを攻略した私たちを一度顔を合わせたいとロマリアの教皇からの

直々の手紙が届いたそうだ」

 

「ロマリアがねぇ~?なんか、急に呼び出すなんて胡散臭そうよ。

それに私はあの国が嫌いだわ」

 

レヴィよ。悪魔だからしょうがないと思うが?聖なる場所だし、

『光の国』とか呼ばれているみたいだしな。

 

「イッセー、ロマリアに連れて行ってくれないか?」

 

「ロマリアにも塔があるし、ダンジョン攻略するのも変わりない。いいぞ、乗れ」

 

アジ・ダハーカに変化して皆を乗せたら、俺たちはガリアを目指し、

さらに南のロマリア連合皇国へと進む。

 

 

―――???―――

 

 

「これで良かったのですか?神の使いよ」

 

「はい、ご協力感謝します。それにそちらの情報が正しければ間違いなく、

探し求めている人がおりますんで」

 

「そうですか。神が探し求めているほどの人物は一体どんな人なのですか?」

 

「良い意味でも悪い意味でも純粋な人、です。聖エイジス32世さん」

 

 

―――ロマリア連合皇国―――

 

 

ハルケギニアの中で最古の国の一つに数えられ、短く『皇国』と呼ばれることが多いこの国は、

ガリア王国真南のアウソーニャ半島に位置する都市国家連合体。始祖ブリミルの弟子の一人、

聖フォルサテを祖王とする『ロマリア都市王国』は、当初、アウソーニャ半島の一都市国家に

過ぎなかった。

 

しかし、その『聖なる国』との自負が拡大を要求し、次々と周りの都市国家家群を

併呑していった。大王ジュリオ・チェザーレの時代はついに半島を飛び出し、ガリアの半分を

占領したこともある。だが、そんな大王の時代は長く続かなかった。

 

ガリアの地を追いだされた後、併合された都市国家群は何度も独立、併合を繰り返した。

そして幾たびもの戦の結果、ロマリアを頂点とする連合制をしくことになったのだった。

そのためか、各都市国家はそれぞれ独歩の気風が高く、特に外交戦略において必ずしもロマリアの

意向に沿うわけではない。

 

ハルケギニアの列強国に比して国力で劣るロマリア都市国家群は、

自分たちの存在意義を、ハルケギニアで広く信仰される。

『ブリミル教の中心地である』という点に強く求めるようになった。

停まりあは始祖ブリミルの没した地である。

 

祖王、聖フォルサテは、『墓守』として

その地に王国を築いたのだ。その子孫たちはその歴史的事実を最大限に利用し、

都市ロマリアこそが『聖地』に次ぐ神聖なる場所であると、自分たちの首都を規定した。

その結果、ロマリア都市国家群は『皇国』となり、その地には巨大な寺院、

フォルサテ大聖堂が建設された。代々の王は、『教皇』と呼ばれるようになり、

すべての聖職者、及び信者の頂点に立つことになった。

 

「って、ロマリア連合皇国の情報はこんなもんよ」

 

長々と情報を教えてくれたナヴィであった。 

 

「なるほどねぇー」

 

「色々と複雑な事情も絡んでいそうな話だったな」

 

ルーシィ・ハートフィリアとエルザ・スカーレットが真摯に聞いていた。

トリステインを経って数時間、俺たちはロマリア皇国に向かっている。

その間に皆はナヴィから色々と情報を聞いていた。ロマリア皇国の話もその一つ。

 

「ねぇ、イッセーの情報もある?」

 

「ちょっと待とうか、何を聞こうとする?」

 

「ごめんね?なんか知らないけど、ガードがかなり堅くて情報が殆どないの」

 

「殆どないってことはあるにはあるんだな?」

 

え、そうなの?ちょっとどんな情報を持っているのか気になるんだが、

 

「いま、大体分かっていることはイッセーが宿しているドラゴンとイッセーと

関わりを持つ人物たちぐらいしか知らないの」

 

「イッセーと関わりを持っている人たち・・・・・一体、どんな人?」

 

「女性が多いわね。それとかなりの実力を持っている。その上、地位と権力も持っているわ。

具体的に言えば、シャルロットとジョゼットみたいな家の人たちよ?」

 

「・・・・・イッセー、玉の輿、狙っている?」

 

狙っていないからな!?俺の家だってそれなり権力がある家だからな!?

首を激しく振って否定した。

 

「まあ、ハルケギニア出身のあなたたちに言ってもピンとこないでしょうから言わないわ。

フェアリーテイルの皆もね」

 

「えー、とっても気になるわ」

 

「そうだな、私も気になる」

 

女性は恋バナに目がない・・・・・。っと、あの山は・・・・・・。

 

「ナヴィ、あれが『火竜山脈』なのか?」

 

「ええ、そうよ。私も生で見るのは初めてだから壮観だわね」

 

東西に伸びる山脈。マグマが流れていて俺が今まで見てきた山より遥かに雄大だ。

 

「イッセー、あの中にドラゴンがいるんだな?」

 

「ああ、全ての塔を攻略すれば、ドラゴンは目覚め暴れる。

最後はロマリアにしようと決めていたんだけどな・・・・・」

 

そうしないと対処できなくなる。だから、ロマリアの用事が終えれば、

またトリステインに戻って南に進み、アルビオンに向かうつもりだ。

 

「―――ロマリアが見えた来たぞ」

 

バサッ!と翼を羽ばたかせる。皆に告げれば俺の頭に移動してきたり、

肩越しから前方に視線を向ける面々。

 

「あれが・・・・・ロマリア連合皇国」

 

「そして、私たちが最初に辿り着く場所が、ロマリア南部の港、チッタディラよ。

それとロマリアに入国する際には武器を袋に入れたほうが良いわよ。持ち運びは禁止だから」

 

「流石は情報を武器にすると言うだけあって物知りだ。

皆、ナヴィの言う通りにな。俺も大剣を亜空間に仕舞わないと」

 

そう口にしながら港に近づく。ナヴィから情報を訊けばチッタディラは、

大きな湖の隣に発達した城塞都市で、フネを浮かべるのに都合がいい、

ということで湖がそのまま港になったそうだ。

 

岸辺から幾つも伸びた桟橋には様々なフネが横付けされていた。それだけ見ると、海に面した、

普通の船が停泊する港とそう変わらない。さて?俺たちはフネで入国するわけではない。

龍になった俺が皆をロマリアまで乗せて飛んでいるから―――。

 

ドスンッ!

 

いざ、桟橋に到着すると、

 

「ド、ドラゴンが現れたああああああああああああああっ!?」

 

「に、逃げろぉおおおおお!」

 

うん、騒ぎになるのは必然的だった。

 

「・・・・・なあ、どう収束するんだ?」

 

「・・・・・すまない、流石の私のここまで想定していなかった」

 

これじゃ、俺が怪獣みたいじゃないか。桟橋を歩いて石のロマリアの港を歩く。

すると、俺の周りに白いローブを羽織った騎士たちが囲み始めた。

 

「ロマリア聖堂騎士(パラディン)だわ!」

 

キュルケが叫ぶように言った。その騎士たちをよく見れば、こいつらの首に、

銀の聖具がかかっている。悪魔が嫌う十字架と同類のものか。

 

「おのれ!悪しきドラゴン!このロマリアを襲撃してくるとはなんと愚かな!」

 

「我々聖堂騎士団の力を持って退治してくれる!」

 

その瞬間。騎士たちの杖から様々な魔法が俺の体に直撃する。

 

「・・・・・なあ、どうすればいい?」

 

ロマリアの騎士たちの魔法を受けながら首を背中に向ける。対して効かないんだけど。

 

「・・・・・しょうがない。イッセー、咆えろ」

 

「マジで?」

 

「ああ」

 

エルザ・スカーレットから指示を受けた。しょうがない、後でどうなっても知らないぞ?

 

「―――ギェエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

眼下の騎士たちの咆哮した。その咆哮の衝撃波に騎士たちが吹っ飛んで、

紙クズのように転がっていった。

 

「ひっ!?」

 

「わ、我々の魔法が効かないだと!?」

 

「て、撤収だ!撤収ぅっ!」

 

うわー、退治するとか言っといて、逃げちゃうんだ?ロマリアの騎士たちは。

って、本当に蜘蛛の子が散らばるように逃げて行っちゃっているし。

 

「これで、ロマリア教皇の耳に届いてここに来てくれば御の字だ。今回の移動手段は失敗だ」

 

「お前らの姿は見えていない。誰かが代表で教皇と会ってくればいいんじゃないか?」

 

「そうしたいが・・・・・今となっては会えるかどうか分からん」

 

じゃあ、このまま待つとするか。

 

―――???―――

 

「せ、聖下!一大事でございます!港に三つ首の邪悪な龍が現れました!」

 

「・・・・・なんですって?」

 

「今現在、ロマリアが誇る軍事力の全てを投入し、

邪悪な龍を討とうとしております!聖下は安全な場所に避難を!」

 

「三つ首の邪悪な龍・・・・・ああ、どうやら探し人が来たようですね」

 

「では・・・・・?」

 

「はい、危険はないのでご安心を。顔見知りなんで大丈夫っす。

ちょっくら迎えに行ってきますんで」

 

―――一誠side―――

 

「いいかげんに、しろぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

ビュォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

『ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!』

 

何時まで経っても教皇とやらが現れない。その間に騎士たちからの魔法、

何やら巨大な亀の甲羅に設置された訪問の砲弾に攻撃され続け、鬱陶しくてしょうがない!

翼を羽ばたかせて突風を起こして全てを薙ぎ払った。

 

「イ、イッセー・・・・・いくらなんでもやりすぎなんじゃ」

 

「しょうがないだろう。こっちが手を出さないことをいいことに、向こうが攻撃してくるんだ。

結界も、魔方陣も張らずに待っているんだぞ?」

 

嘆息する。皆はなんとも言えない雰囲気に包まれていて俺の背中に腰を下ろしていた。

 

「なあ、このままじゃ埒が明かないから。依頼主のとこに行かないか?」

 

「いや、もう全て遅いかもしないけど?」

 

「・・・・・やっぱりか」

 

これからどうしようか。

もう騒ぎは収拾はつかないまでになっていそうだし・・・・・困ったな。

 

「いっそのこと、アルビオンのダンジョンを攻略しに行って、

それから今度はフネで入国するか?」

 

尻目で尋ねれば、

 

「うん、その方がいいと思う」

 

「ええ、私もそうした方がいいわ。幸い、私たちの姿を見られていないし、

あなたの本当の姿は私たち以外知らないわ」

 

「私も賛成だ。イッセー、ここから離れるぞ」

 

了解、それじゃ・・・・・アルビオンへ行くとするか。

 

「―――おっと、すんません。どこかに行こうとしないでください」

 

第三者の声が真上から聞こえてきた。って、この声は―――!

 

「うそ、どうしてあいつがいるのよ・・・・・!?」

 

「イッセーを探しに来たのか・・・・・・」

 

ナヴィとヴァンが意外な人物に目を丸くした。

ああ、俺もビックリだよ。どーして、ここにいるんだろうか。

 

「デュリオ・ジェズアルド・・・・・」

 

「はい、お久しぶりっすね兵藤一誠くん。甦ったようで一度共に戦ったものとして、

嬉しく喜びを感じているっすよ」

 

五対十枚の金色の翼に、金色の輪っかを頭に浮かばせる青年こと

デュリオ・ジェズアルドが俺の眼前に降りてきた。

 

「デュリオ、感動の再会としたいが一つ聞きたい。―――どうして俺がここにいると分かった?」

 

俺の生存を知っている奴はいないと思っていた。

なのに、こいつはピンポイントで俺の前に現れた。デュリオ・ジェズアルドは答えた。

 

「あなたたちを呼んだのは実は俺っす。ロマリアの教皇陛下に頼んでもらいました、はい」

 

「私たちをか?」

 

「そうっす。俺の目的は甦った兵藤一誠くんを天界に招くことなんで」

 

『なっ!?』

 

天界を連れていく?俺をか?一体、どういうつもりだ?

 

「おい、俺の問いの答えになっていない。どうして俺がここにいると知った?」

 

「勿論、天界の、ヤハウェさまが御作りになったシステムで知ったんですよ。

ヤハウェさまと熾天使(セラフ)メンバーしか知りませんがね」

 

「アザゼルたちは知らないのか?いや、伝えていないのか?」

 

「どんな姿で兵藤一誠くんが甦ったのか想像していないんで、ヤハウェさまは見つけ次第、

天界に連れてくるように言われているんっすよ。もしも、異形の姿で甦ったら、

兵藤一誠くんを慕う彼女たちが驚いちゃうかもしれないっすよ?」

 

・・・・・それは・・・・・否定できないな。

 

「んじゃ、早速ですけど天界に行きましょう。ヤハウェさまが待っているんで」

 

カッ!

 

俺の足元に転移用魔方陣が展開した。

ちょっ、俺にはやらないといけないことがあるっていうのに―――!

視界が次第に白く塗り潰され、視力を奪われた―――。

 

―――○●○―――

 

「・・・・・マジかよ」

 

アジ・ダハーカの姿のまま、ポツリと呟いた。見知らぬ場所に連れて来られた俺。

見知らぬ場所に連れてきたデュリオ・ジェズアルドは、

 

「んじゃ、行きましょうっか」

 

「・・・・・」

 

「あっ、龍化を解いてくれるとありがたいっす。邪龍がいると天界の住民たちが恐れるんで」

 

そう言われ、龍化を解いた。対して変わりないけどな。

 

「・・・・・なるほど、ドラゴンに転生したんっすか」

 

「悪いな、人間じゃなくて。ヤハウェが嫌いなドラゴンでさ」

 

「多分、ヤハウェさまはそんな事よりもあなたのことを心配しているっすよ」

 

それは本人にあって確かめるまでさ。デュリオ・ジェズアルドの後を追う。

幾つも立ち並ぶ白い柱、白い床、白い天井ばかり通る。

時々、天使を見掛けると向こうがギョッと目を見開いて俺を見詰めていた。

しばらく白い廊下を歩いていると回廊に進み、右に曲がったところで階段があって、

デュリオ・ジェズアルドはその階段に分で上がっていく。三分ぐらい歩いていると階段を上り切り、

また白い通路を歩けばとある装飾が凝った扉の前に立ち止まった。

 

コンコン。

 

デュリオ・ジェズアルドがノックをする。

 

「ヤハウェさまー。兵藤一誠をお連れしましたっす」

 

そう言った次の瞬間。扉の向こうから入室の許可の声が聞こえた。

 

「んじゃ、俺はハルケギニアの食べ物巡りをしてきますんで」

 

それだけ言い残してあいつは魔方陣を介して姿を暗ました。本当に行きやがったのか!?

だが、相手が待っているから待たすわけにもいかない。扉を静かに開け放った。

部屋の中は眩しいほど綺麗で、煌びやかな家具や私生活用品、天蓋付きのベッド。

そして、その主は―――。

 

「・・・・・」

 

部屋の中央に設けられたソファーに腰を下ろしていた。

久し振りに見る女性、聖書の神、ヤハウェ。

 

「・・・・・イッセーくん・・・・・・」

 

「ヤハウェ・・・・・」」

 

彼女はゆっくりと椅子から立ち上がって俺に近づいてくる。

手を俺の頬に添えるように触れてくる。

 

「・・・・・ドラゴンに転生したんですね」

 

「・・・・・ドラゴン、極度なほど嫌いなんだろう?アザゼルから聞いた」

 

彼女から離れようと一歩だけ下がった。

でも―――逆に引き寄せられて、ヤハウェに抱きしめられた。

 

「良かったです・・・・・っ!イッセーくん、本当に・・・・・良かったです・・・・・っ!」

 

「ヤハウェ・・・・・」

 

神が涙を流している。これは、夢なのか・・・・・?

俺のために泣くなんて有り得ないだろう?

 

「サマエルの呪いと毒であなたが死んだと、誠殿と一香殿の手によって死んだと、

あなたの死因を聞くたびに心を痛めました。サマエルの件については私も責があります。

アレに怒りと憎しみ、全ての負を受けさせてしまったのですから・・・・・」

 

「(そのサマエルは俺の中にいるんだけどね)」

 

「イッセーくん。今までどこで何をしていたのか、教えてください」

 

涙で濡れる瞳を俺に向けてくる。本当に俺のことを心配しているんだとハッキリ分かる。

 

「分かった。ちょっと長くなるけど、いいか?」

 

「ええ、構いません」

 

俺の手を引いて、ソファーに座らせる。ヤハウェも俺の隣に座って顔をこっちに向けてくる。

 

「じゃあ、俺が死んだところから話す」

 

「お願いします」

 

真摯に聞く姿勢になるヤハウェ。

エルザ・スカーレットたち、待っているんだろうなぁ・・・・・。

 

―――エルザside―――

 

イッセーが天界とやらに連れて行かれ、私たちは今回のダンジョン攻略を

依頼したロマリア教皇聖下、聖エイジス32聖と謁見を果たすことがようやく出来た。

 

「初めまして、フェアリーテイルの皆さま。

私は聖エイジス32聖ことヴィットリーオ・セレヴァレと申します。

こうしてお互い顔を出し合うのは初めてですね」

 

「はい、私は今回の依頼を務める責任者のエルザ・スカーレットです。

今回のダンジョン攻略のことについてお聞きしたいことがあります。よろしいでしょうか」

 

「構いません。何でしょうか」

 

イッセーからも言われたことだ。イッセーの話しがもし、本当ならこれは一大事だ。

 

「どうして六千年間も攻略できなかったダンジョン攻略を他の国に促したのですか?

そのおかげで、何百人の命が数日間で落としてしまいました。

今になってダンジョン攻略をしないといけない理由があなたにあるのですか?教皇陛下」

 

「ええ、勿論です。私はとある目的のために、

各国のダンジョンに眠る始祖の秘宝を必要としているのです」

 

「始祖の秘宝・・・・・ですか?それはなんのために・・・・・?」

 

教皇は一度瞑目して、口を開いた。

 

「虚無の担い手と虚無の使い魔が今世に出現していることが分かったのです。

ですので、全ては四の四を揃えるためにダンジョン攻略をしなければならないのです」

 

虚無の担い手、虚無の使い魔、四の四・・・・・なんだ、分からないことを口にする。

 

「トリステインには始祖の祈祷書、ガリアには始祖の香炉、アルビオンには始祖のオルゴール、

そしてここ、ロマリアには始祖の円鏡・・・・・」

 

「「っ!」」

 

ガリアの姫君たちが目を見開いた。

 

「それら四つの秘宝と四つの国の王家が伝えられている四つの指輪、

ルビーもあるべき者に持って来るべき事態に備えて欲しいのです」

 

「四つの始祖の秘宝と四つの指輪をあるべき者に・・・・・とは、

どういうことなのか説明してくれますか」

 

「始祖の秘宝を虚無の担い手に持っていて欲しいのです。始祖ブリミルの子孫である者に」

 

「その子孫はどの人物ですか?」

 

そう問いかけると、教皇陛下は・・・・・ジョゼットに視線を向けた。

 

「この場にいる虚無の担い手は私とガリア王家の姫、ジョゼットがそうです」

 

「・・・・・私が、虚無の担い手・・・・・?」

 

「ええ、まず間違いないでしょう。始祖ブリミルの三人の子供と弟子の一人がトリステイン、

ガリア、アルビオン、ロマリアに国を建国したのです。その子孫は私とあなたなのですよ」

 

「では・・・・・トリステインとアルビオンの虚無の担い手は誰なのですか?」

 

ジョゼットが教皇に問いかけると教皇が首を横に振った。

 

「残念ながら、トリステインの虚無の担い手は東の国に行ってしまい、

アルビオンの虚無の担い手は現在捜索中です」

 

どちらにしろ、残りの二人の虚無の担い手が欠けている状態のようだな。

 

「陛下、全て揃えてなにに備えると言うのですか?

私たちはダンジョンを攻略のために派遣されている。残りアルビオンダンジョンと

ロマリアダンジョンだけ残っておりますが、あなたは一体何をお考えになられておるのです」

 

真っ直ぐ聖下に視線を向ける。聖下は私の視線を軽く受け入れ、私に視線を向けながら口を開く。

 

「私たちの拠り所、聖地を奪還するためです」

 

「はぁっ!?」

 

異議有りとばかり、ルクシャナが声を上げた。

 

「私たちをダンジョン攻略させる理由はそのためだったの!?

悪魔の秘宝を集め、悪魔の末裔に持たせて!

―――悪魔の門(シャイターン)を開けさせないわよ!?」

 

悪魔の門(シャイターン)・・・・・だと?」

 

「・・・・・そちらのお嬢さんは?」

 

教皇は私たちに尋ねてきた。ハルケギニアの人間はエルフを畏怖している。

だから、エルフの象徴である細長く尖った耳を幻覚の魔法で施して普通の人間と変わらない

耳を見させている。ルクシャナはその魔法を解いて真実の姿へとなる。

 

「私は砂漠(サハラ)のエルフよ。蛮人」

 

「・・・・・エルフ」

 

「あの地は元々、私たちエルフが住んでいた地よ。悪魔が勝手に現れ、

私たちエルフを滅ぼそうとした悪魔。それが、ただ私たちの地に悪魔が降臨した、

それだけであなたたち蛮人が『聖地』なんて崇めて聖地奪還なんて、

野蛮な戦争を最初に仕掛けたのもそっち。―――最低な蛮族ね」

 

今まで見たこともないルクシャナの怒り。知らなかった、今回の依頼に裏があっただなんて。

私たちは一つの種族を滅ぼすため、加担していたとは・・・・・。

 

「エルザ、この依頼を反故してほしいわ。でなければ、私たちの土地が蛮人に奪われてしまう」

 

「ルクシャナ・・・・・それは・・・・・・」

 

私も今の話しを聞いて苦渋する。依頼のために一つの種族を滅ぼすための協力を加担するか、

一つの種族の存亡の阻止のため、依頼を反故するか・・・・・。

 

「それは困ります。聖地奪還には他にも理由があるのです。

いま、反故されたらハルケギニアの民たちの運命が大変な道に進んでしまいます」

 

「大体、蛮人が砂漠(サハラ)に住めるとは思えないわ。

杖がないと魔法が使えない蛮人が到底、長生きできるとは思えないけどね」

 

「協力すれば、できないことはないのです」

 

「だから、大勢で私たちを襲ってくるんだ?私たちより弱いから群れで襲いかかって?

まるで蟻じゃない」

 

・・・・・・ダメだ。私の一存では決断できるレベルじゃない。マスターに伺わないと・・・・・。

 

「ねぇ、聖地奪還以外にも理由があるってどういうこと?」

 

ナヴィが教皇に問いかけた。何やら四角い機械を持って。

 

「申し訳ないのですが、話しても信じてくれないと思いますのでお伝えできません」

 

「ふーん、じゃあ、仮に全ての塔を攻略してその後に大変なことが起きても、

私たちは知らないわよ?いいのね?」

 

「・・・・・」

 

教皇陛下は沈黙した。しかし、口を開こうとした―――。

 

「ふふっ、その一瞬の反応は・・・・・どうやら、五つの塔を攻略したら、

どうなるのか知っているようね?」

 

ナヴィが満足気に言う。

・・・・・では、イッセーが言っていたあの話は本当だったのか・・・・・!

まさか、教皇陛下はそれを含めて私たちを依頼したのか・・・・・?

 

「エルザたちの依頼は『ハルケギニアに存在する五つの塔を攻略』。

でも、その後のことが起きた時の対処の依頼は引き受けていないから、

それはあなたたちの力で何とかするって意味よね?」

 

ナヴィは言い続ける。

 

「どちらにしろ、あなたはハルケギニアの民が大変な運命に辿ることをしているのは

事実だってわけ。私たちは関係ないわよ?私たちもダンジョン攻略しないといけない理由が

あるから彼女たちと共に攻略しているわけだし?

まあ、あとはあなたたちの勝手にどうにかしなさいってわけよ。

例え、世界が火の海に飲み込まれようともね。皆、出ましょう?依頼を続けなきゃね♪」

 

私たちをこの場から離れようと促す。ルクシャナの腕を掴んでだ。

 

「なぁ、エルザ・・・・・どうすればいい?」

 

「・・・・・イッセーもいない。マスターに聞くしかない。取り敢えず、今日は宿に泊るぞ」

 

「分かったわ」

 

教皇に一瞥するも、すぐに視線を前に向けてナヴィに続く。

 


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