ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode7

 

 

ピラミッドの中は予想通り、石の壁出てきた通路だった。

大の大人が横二三人ぐらい並んでいけるぐらいの幅だ。

 

「足元に気をつけろよ。人喰い虫が地面から盛り上がってくるからな」

 

「うわ、考えただけでゾッとしたわよ」

 

「人を食わない分、ゴキブリの方がまだ可愛いもんだ」

 

「どっちもイヤよ!?」

 

「まあ、その時は床に氷を張って出れなくすればいいだけだ」

 

あっけらかんと言う。狭い通路を歩き続け、左に行ったり右に行ったり、

階段を上がったり下りたりすると、―――全員が溜息を吐いた。

 

「何時になったら辿りつくのよぉ・・・・・」

 

ルーシィ・ハートフィリアは腰を下ろして嘆息する。

 

「全くだぜ。こうも歩き続けているのに扉らしいものすら見つからないなんてよ」

 

「ピラミッドは迷宮のような構造でできているようだな・・・・・。

こういう時はあれか・・・・・?」

 

「あれって?」

 

キュルケが尋ねてくる。勿論、あれだ。

 

「人は言う真っ直ぐ進めば何時かゴールに行けると、ナツ」

 

「なんだ?」

 

「得意分野の破壊をしようか」

 

右手に炎を纏う。ナツ・ドラグニルは俺の意図に気付いたようで笑みを浮かべた。

 

「いいじゃねぇか。そっちの方が単純で分かりやすい」

 

あいつも手に炎を纏う。

 

「え?イッセー?ナツ?」

 

「お前らは結界の中にいろ」

 

金色の錫杖を虚空から出現させてルーシィ・ハートフィリアに渡す。

錫杖から金色の膜が展開して俺とナツ・ドラグニル以外の面々が包まれる。

仮に人喰い虫が出て来ても、あの結界の中なら安全だ。

 

「そんじゃ」

 

「始めようか」

 

次の瞬間。

 

ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

 

俺たちは周りの壁を破壊行動を始めた。

 

「うおりゃああああああああああああああああっ!」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

次々とピラミッドの中を破壊していく。

 

「む、無茶苦茶よぉーっ!?」

 

「いや、案外これでいいんじゃね?」

 

「うむ。なんだか道も広くなって私たちが通っていない道も見えてくるぞ」

 

「だからって・・・・・こんなやり方で攻略していいのかしら?」

 

「や、野蛮なやり方だわ・・・・・」

 

後で何か言っているが気にしない!

 

「今度は下だナツ!」

 

「おうよ!」

 

粗方周りを破壊つくした。その結果、ミイラや人喰い虫の存在は見当たらない。

ゴウッ!と膨大な熱量の炎を拳に纏わせる。

ナツ・ドラグニルと息を合わせて床に拳を突き付けた。

 

ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

呆気なく床は崩壊した。その威力は下の階層にまで轟き、どこまでも崩壊していく。

そんなことをすれば俺たちも落ちるのは必然的で、翼を展開してナツ・ドラグニルを抱え、

ヴァンたちを包んでいる金色の膜とゆっくり下に降りていく。

 

「これだけ破壊尽くしたんだ。何かしらの結果がなければ困る」

 

「だな」

 

暗い底に降りていく俺たち。しばらく降りていくと、とある階層で扉みたいなものを発見した。

 

「扉だわ!」

 

「二人の行動に無駄はなかったわけだな」

 

その扉に近づく。まだ膜を解かない。念には念をだ。

 

「・・・・・鍵穴があるぞ?」

 

「おいおい、鍵がないとダメなのか?」

 

扉に一つのカギ穴を見つけた。どこかに鍵があったのか?

でも、そんな探す暇もないし・・・・・アレの出番だな。

 

「杉並に教えてもらった技術を使う時が来るなんてな」

 

興味もないのに、熱心に教えてくるもんだからな。覚えてしまったよ。―――ピッキング技術を。

亜空間からピッキング技術に必要な道具を取り出し、鍵穴の前で跪き、解錠する。少しして、

 

「・・・・・」

 

ガゴンッ!

 

「よし、開いたぞ」

 

『おお・・・・・』

 

少し手間取ったが何とかできた。杉並も役立つことを教えてくれた。ありがとうよ。

 

「そんじゃ、開けるぞ」

 

「分かった」

 

ナツ・ドラグニルとドアノブを掴む。

 

「「せーの!」」

 

ガチャッ!

 

扉が・・・・・開かなかった。あ、あれ?

 

「なぁ、開かないぞ」

 

「ちょっと待て、確かに解錠したはずだが・・・・・・」

 

扉に付けられている輪っかは外側に向かって開くもののはず。・・・・・どうしてだ?

 

「・・・・・扉って横に開いたり、上に開いたりする種類があったよな?」

 

「・・・・・」

 

後からそう聞こえた。・・・・・まさかな?始祖ブリミルがそんなお茶目なことを・・・・・。

 

ガラッ!

 

「あっ、開いたぞ」

 

ナツ・ドラグニルが扉を横にスライドした。・・・・・・ええええええええ?

 

「うわ・・・・・チョー恥ずかしい・・・・・」

 

「はははっ!」

 

「そこ、笑うな!」

 

ヴァンが堪らなくなったのか笑いだした。くそ、始祖の奴。生きていたらぶん殴りたいのに!

開けた扉から中へ侵入する。―――中はとても真っ暗だった。

大きな火の玉を複数作りだして辺りを照らす。

照らされた暗い空間に俺たちの視界も周りが見えるようになった。

 

「っ!」

 

キュルケが短く悲鳴を上げた。無理もないな。俺も驚いた。

なんせ・・・・・俺たちがいるホールを囲むようにズラッと壁の中にミイラが数多くいたからだ。

 

「うん、大体次の展開が読めてきたぞ」

 

「と、いうと?」

 

「今度の相手はこのミイラくんたちだ」

 

パァアアアアアアアアアアアアアアアアアァンッ!

 

手と手を強く合わせて音を鳴らした。

それが呼び水となったようで・・・・・壁の中にいるミイラたちが次々と意志を持っているかの

ように動き出した。金色の膜を消して皆を解放する。

 

「全員、背中合わせだ」

 

ザッ!と互いの背中を向け陣を組んだ。

 

「そんじゃ、始めようか」

 

パチンッ!と指を弾いたら、上に浮かんでいる大きな火の玉からまるで流星のように

火の玉が降り注ぎ始めた。それは真っ直ぐミイラたちに向かう。

 

「さっきも言った通り、炎と氷が有効的だ。

この状態で襲いかかってくるミイラどもを屠るぞ」

 

『了解!』

 

杖を構え、武器を構え、拳を構え、鍵を構え―――鍵?

 

「いでよ!金牛宮の扉、タウロス!」

 

ルーシィ・ハートフィリアがそう力強く叫ぶと鍵が光り出して―――煙が発生したかと思えば、

 

「ンMOOOOOO!」

 

人、いや、牛が出てきた!?

 

「牛っ!?」

 

人型の牛が出てきた!なんだ、獣人か?それとも人獣か?背中に大きな鉞を持っているぞ!

驚いている俺にルーシィ・ハートフィリアが口を開いて教えてくれた。

 

「そう言えば、イッセーは知らなかったわね。私は精霊使いの精霊魔導士なの。

今呼びだした精霊はタウロスって言って、この鍵は精霊を異世界から召喚するために

必要な黄道十二門の鍵の一つなのよ」

 

「鍵で精霊を呼びだすなんて・・・・・」

 

その上、あれが精霊なんて・・・・・どこかの雪ゴリラ並みに有り得ない。

 

「さぁ、タウロス!目の前のミイラをやっつけたって!」

 

「分かりましたルーシィさん。それが終わったら、あつーい抱擁を・・・・・」

 

「はいはい、今は忙しいから早くやっつける!」

 

「あふん!冷たいルーシィさんも良いですMOO!」

 

・・・・・ぜってぇー精霊じゃないだろう、あの牛。牛肉にしちまおうか・・・・・。

 

―――○●○―――

 

―――和樹side―――

 

深夜、僕たちの家にギャスパーくんと同族だった吸血鬼たちが訪問してきた。

その理由は、ギャスパーくんの力を借りて、現在男尊と女尊と別れた吸血鬼二大派閥である男尊、

ツェペシュ派の暴挙を止めること。何でも、生命を司る神滅具(ロンギヌス)

幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』が男尊派のハーフヴァンパイアに宿って、

その力で男尊派の吸血鬼たちが絶対的な不死になろうとしているだけじゃなく、

女尊派のカーミラに被害を出しているようだ。

その抵抗とギャスパーくんを借りたいと言うんだけれど、

 

『真龍と龍神の傍にいる且つ、兵藤誠さまと兵藤一香さまのご子息

、兵藤一誠さまと共にいれば新たな力を目覚めているのかもしれません』

 

彼女は全人類の中で異例中の異例である一誠に何らかの期待をしているのが良く分かった。

確かに彼の傍にいれば様々なことがよく起こる。

結果、ギャスパーくんは吸血鬼の世界、ルーマニアへ行くことになった。

勿論、僕たちも行くつもりだ。

 

だって、生命を司る神滅具(ロンギヌス)なら、一誠を甦らせる可能性があるからだ。

その力を借りてなんとしても一誠を甦らす。皆もその希望を抱いている。

いや、光を見つけたと言うべきか。―――一誠を甦らすんだ。

そして、またあの時のように笑いがある生活をしたい―――!

 

―――一誠side―――

 

「ふぅ、ようやくゲルマニアダンジョンを攻略した」

 

男部屋で開口一番に言った。あれからすでに、攻略してから三十分が経過した。

ミイラどもを倒しつくしたが、今度はボス級のミイラまで現れた。

しかも、不死身で何度倒そうも、起き上がる。まあ、皆で攻略して倒したけどな。

 

「ハルケギニアのダンジョンはすげーよな。俺が想像していたのより驚くことが多いや」

 

「今度はさらに大変なダンジョンがありそうだな」

 

ナツ・ドラグニルとグレイ・フルバスターが感想を述べる。

 

「お前らの国は一体どんな魔導士がいるんだ?」

 

「どんな魔導士つったって、色々いるぞ?」

 

「一言で言い表せないな・・・・・実際その目で確かめてきた方が早いと思うぜ?」

 

「おっ、そいつは良い提案だなグレイ!

なぁ、イッセー。全ての塔を攻略したらお前もフィオーレ王国に来いよ。すっげーぞ!」

 

なにが凄いんだ?そう尋ねると。

 

「俺みたいな竜滅魔導士(ドラゴンスレイヤー)もいるし、S級魔導士もいるんだ。それに―――」

 

ナツ・ドラグニルが楽しそうにフィオーレ王国のことを教えてくれる。

たまにグレイ・フルバスターも付け加えて説明してくれる。とても魔法の分化が進んでいる国だと

言うことはよく分かった。

和樹をそこに連れて行ったら興味を抱かないわけがないだろうな。でも、

 

「悪い、俺の帰りを待っている家族がいるんだ。

お前たちの国に行くとしたら皆と再会してからだ」

 

「そっか、お前にも家族がいるんだな」

 

ニッ!とナツ・ドラグニルは笑んだ。

 

「お前も家族いるのか?」

 

「おう、ハッピーやルーシィ、ギルドの皆が仲間であり家族だ!」

 

「そっか、お前と気が合うな。家族を大切にしたい気持ちもよく分かるだろう?」

 

「そうだな。仲間を、家族を傷つける奴は誰であえ、許さないつもりだ」

 

・・・・・本当、こいつは面白いし、気が合う。

 

「次はどこのダンジョンに行くんだ?」

 

「この国から近いとすれば断然トリステインだ。そこの国に行く」

 

「思ったけど、お前らを依頼した奴らは一体誰なんだ?」

 

ずっと疑問に思っていたことをぶつけてみた。本人たちも依頼の裏を知って驚いてもいた。

なら、こいつらを依頼した人物は誰なんだ?

ナツ・ドラグニルとグレイ・フルバスターが顔を見合わせる

 

「最初はガリアの国からだったよな?」

 

「ああ、その後にロマリアからも同じ依頼の内容が来たわけだ」

 

「やっぱり、ロマリアが今回のダンジョン攻略の騒動を起こした元凶か」

 

「元凶って、ロマリアは悪い国なのか?」

 

「いや、そういう意味で言ったわけじゃない。

ただ、どうして六千年間も攻略できなかったダンジョンを今さら攻略しようと試みるだ?

と思っただけだ」

 

「それは・・・・・」とグレイ・フルバスターは言う。

 

「いい加減に攻略したいからじゃないのか?」

 

「そんな程度の考えで他の国にダンジョンを攻略しろと言っているんなら、

ロマリアの頭はおかしいな」

 

「だから」と俺は言った。

 

「ロマリアの王にどうしてこんな依頼をしたのか聞いてくれないか?」

 

―――翌日―――

 

「そっかぁ、残念ね。もう行っちゃうんだ」

 

「また学校で会える」

 

早朝、キュルケが俺たちを見送ってくれた。彼女も無事にダンジョンを攻略できたので、

生還で来た。しばらくシャルロットとキュルケが話をしていたが、

何やらニンマリと笑みを浮かべ出したぞ。

 

「―――じゃあ、私も行こうかしら?」

 

「え?」

 

「だって、外国に行くんですもの。私も行きたいわ。力にもなれるし」

 

キュルケさん?

 

「それに、私が黙って行った理由がダンジョンを攻略しに行ったって言えば、

親も文句だけで済ませてくれそうだしね」

 

「・・・・・本気?」

 

「ええ、本気よ?」

 

あれま、本気か。エルザ・スカーレットに振り向けば、溜息を吐いた。

 

「私たちの依頼に邪魔をしない且つ協力してくれれば、問題ない」

 

「あら、ありがとう♪」

 

話は決まったようだな。俺が龍化になって全員を乗せて―――トリステインへ飛んで向かう。

 

「どのぐらい時間が掛かる?」

 

「また数時間ぐらいだろう。で、また、翌日になったらダンジョンに攻略しに行くのか?」

 

「トリステイン王国の王女と話もしないといけないからな。

イッセーたちも共に王女の謁見に参加するか?」

 

エルザ・スカーレットの提案に俺は否定した。

 

「いや、待っているさ。俺たちはフェアリーテイルじゃないからな。

皆と協力しているからと言って、正式なメンバーじゃない。

一緒にいればバレないと思うが、それでも相手に失礼だろう?」

 

「・・・・・そうか、お前がそう言うのならば仕方がないな。

待ち合わせはトリステインダンジョンだ」

 

「分かった」

 

さらに飛ぶ速度を上げる。さっさと終わらせよう。ダンジョン攻略を。

 

 

―――???―――

 

 

「へぇー?今度はこっちに来るんだ。

じゃあ、私のところに来てもらおうじゃない。ふふっ♪ねぇ、兵藤一誠くん?」

 

 

―――トリステイン―――

 

 

あっという間に小国のトリステインに辿り着いた俺たち。

エルザ・スカーレットたちは首都トリスタニアの宮殿にいる王女と謁見。

その間、俺、ヴァン、ルクシャナ、シャルロット、ジョゼット、キュルケは白い石造りでできた

建物がある街中を歩き回っている。

 

「綺麗な街ねぇ」

 

「流石は外国というだけある」

 

「なにそれ?」

 

「初めて違う国に来たら誰でも思う感想だ」

 

地面の道を歩くこと十分ぐらいだろうか、

ブルドンネ街という場所をルクシャナが満足したら裏町のチンクトンネ街にも足を運んだ。

 

「ここはどうやら、酒場や賭博が多い街のようね」

 

ルクシャナは街の店を見て興味なさそうに言うもレポートする。

エルフだと象徴する長い耳を帽子で隠している彼女を、どこの誰が見ても美少女だ。

 

「ねぇ、イッセー。あのルクシャナって子はなにをしているの?」

 

「人間の観察」

 

「なにそれ?同じ人間を観察して楽しいの?」

 

人間じゃないから観察するんだよな。

クシャナのことを知っているのは今のところキュルケ意外だ。

シャルロットとジョゼットは知っている。最初は驚いていたと聞いていたが、

すぐに仲良くなったそうだ。

 

「そう言えば、お前たちが留学していた学校ってこの国の学院だって?」

 

「ええ、そうよ?それがどうかしたの?」

 

「じゃあ、知り合いとかいるんじゃないのか?」

 

「まあ、いないわけじゃないかもね。

でも、どの国もダンジョン攻略のために夢中だからそう簡単に―――」

 

キュルケが喋っていたその時だった。キュルケの名を呼ぶものが現れたのだ。

その人物に振り向けば、

 

「やあ、キュルケじゃないか!」

 

「あら、ギーシュじゃない。こんなところで会うなんて奇遇ね?」

 

一言でいえば、ナルシスとみたいな少年がいた。同級生?

 

「って、シャルロットとジョゼットまでいる!どうしたんだい?

キミたちは自分の国に戻ってダンジョンを攻略と戻ったんじゃなかったのかい?」

 

「それが終わったからここにいるのよ」

 

「ナ、ナンダッテー!?」

 

あからさまな反応だなぁおい。

 

「で、では・・・・・ダンジョンを無事に攻略したのかい?」

 

「ええ、シャルロットとジョゼットの両親が雇った人たちと、この人たちのおかげでね?」

 

「この・・・・・平民たちが?」

 

そっか、貴族と王族以下の人間は平民と扱われるのか。

 

「ギーシュ、彼は平民じゃないわ。私たちを守ってくれた勇者よ」

 

「・・・・・」

 

ジョゼットとシャルロットが俺をフォローしてくれる。シャルルさんとジョゼフさん。

良い娘たちですよ!本当、良い娘さんたちだ!

 

「いや、二人とも。そこの平民は杖を持っていないじゃないか。

一体どうやってダンジョンを攻略したと言うのだね?」

 

「杖がないと戦えれないのか?」

 

「貴族は皆、そうだが?それと僕にそんな口を聞いたらいけないよ?僕の父親は―――」

 

「はいはい、親の七光もその辺で止めなさい?

あなた、昔カリンにコテンパンにされたこと、忘れたわけじゃないでしょう?」

 

カリンに・・・・・?へぇ、じゃあこいつはカリンとルイズの同級生なのか?

 

「キュ、キュルケ!そんな平民の前で前のことを掘り返すなんて貴族として―――」

 

「因みに、彼はカリンとルイズのお友だちよ?」

 

「―――へ?」

 

意地の悪い笑みを浮かべたキュルケに彼女の言葉を耳にした途端に唖然となったギーシュ。

その証拠だとばかり、俺とカリンが映っている写真を見せたら―――。

 

「おお、懐かしい友の写真だ。キミ、カリンとルイズは元気にしているかね?」

 

「ああ、風紀員長・・・・・学校の風紀を守る生徒の長を務めているぞ」

 

「ははっ、彼女は相変わらずだね。魔法学院でも風紀を乱す生徒がいれば、

風の魔法で厳しく粛清していたんだ」

 

友達のことを懐かしげに語り始めた。というか、カリンよ。

魔法で風紀を守ろうとするんじゃない。いや、最初にあった頃していたな。

 

「彼女の友と言うのであれば、僕の友達とも言える。

僕の名はギーシュ、ギーシュ・ド・グラモンだ」

 

「スカーレット・イッセーだ」

 

「では、平民・・・・・と、失礼な言い方だね。イッセーと呼ばせてもらうよ?

イッセー、どこかの店で彼女たちのことを教えてくれないか?

久しく会っていない友のことを知りたいんでね」

 

「じゃあ、カリンのことも教えてくれないか?彼女、自分のことをあまり話したがらないからさ」

 

「勿論だとも」

 

決まりだ。ギーシュのオススメでとある店の中に入って、エルザ・スカーレットたちが

王女の謁見を終えるまでずっとカリンたちのことで話が盛り上がった。

そして、ギーシュ・ド・グラモンもトリステインダンジョン攻略に参加することも分かった。

 

―――その日の夜―――

 

エルザ・スカーレットたちと合流し、ギーシュ・ド・グラモンと別れ、時刻は深夜。

・・・・・眠れないな。今日に限って珍しい。

 

「いや、カリンのことを話したから今頃どうしているのか気になって眠れないだけか」

 

カリンだけじゃない。他の皆もそうだ。

俺が死んでいることに皆は悲しみに暮れているんじゃないかって、

思うと気になってしょうがない。甦った俺を知らずにいることに申し訳ない思いが一杯だ。

 

「はぁ・・・・・」

 

明日はダンジョン攻略だというのに、俺がこんなんでは皆が心配を掛ける。―――寝よう。

そう思って目を瞑った。

 

コンコン・・・・・。

 

「ん?」

 

ドア・・・・・を叩いた音じゃないな。窓から?体を起こして、

窓を見れば・・・・・一匹のフクロウがいた。その視線は真っ直ぐ俺に向けている。

寝ているナツ・ドラグニルとグレイ・フルバスターを起こさないように忍び足で窓に近づき

、開け放つ。そのフクロウは窓を開けた俺の頭に乗り出して、とある方へ翼で指した。

 

「・・・・・行け、ってことか?」

 

「ホー」

 

その通りだとばかり、フクロウは鳴いた。俺をどこに行かせるのか、

そう思うもフクロウが指す方向へ宿から飛び降りて、翼を展開して空を飛ぶ。

俺の頭から離れて先導するフクロウに続いて飛んでいると、とある建物の開いた窓から

入っていく。俺も中に入って辺りを見渡す。別に変った部屋ではない。木造で作られた建物だ。

さっきのフクロウは―――人の姿へとなり、

部屋の扉を開けると俺についてくるように催促してくる。

 

「お前の主が俺を呼んでいるのか?」

 

言葉が通じるのか、コクリと頷いた。

さて、俺を呼ぶ主は誰なのか・・・・・足を動かしてフクロウの主のもとへ―――と、

フクロウが部屋から出てすぐ隣の部屋の扉の横に立った。って、そこかよ!?

 

「・・・・・・」

 

コンコン。

 

一応、ノックしてみた。

 

「入ってちょうだい」

 

・・・・・女の声?訝しむ気持ちで扉を開け放った。

部屋の中に侵入すれば・・・・・有り得ないものがそこらじゅうにあった。部屋がコードや

パソコンで埋め尽くされている。いや、寝るためかベッドがある。それだけだ。

機械とベッド、それだけしかない。

そして、この部屋の主が、椅子に座ってパソコンと面を向かっている。

顔は見えないが桃色の髪に悪魔の翼を模したカチューシャが肉眼で捉えた。

 

「お前・・・・・悪魔か?」

 

「正解」

 

椅子を回転させて、俺に体を向けてくる。人を見ただけで魅了させるような瞳、

スレンダーな体なのに豊満な胸を強調させるフリルが付いている

黒いシャツを身に包んでいる少女だった。自分が悪魔だと証明するように背中から翼を展開した。

 

「私は悪魔のナヴィよ。初めまして、兵藤一誠くん」

 

「・・・・・会ったことがないのに俺の本名を知っているなんて

どこかと繋がりを持っているのか?」

 

「別に?ただ、あなたの行動をずっと見ていたわ」

 

「ここでか?」

 

機械がないハルケギニアにどうやって俺を見ていた?

俺の気持ちを代弁するかのようにナヴィはパソコンに指す。

 

「私は人間と悪魔のハーフなの。知っている?ガーゴイルって悪魔よ?」

 

「ガーゴイル・・・・・世界を監視する悪魔だったっけ?」

 

「そ、で、私たちガーゴイルの一族は現魔王アスモデウスさまと繋がっているわけよ」

 

意外な人物が挙がったな。―――まさか、俺のことを知っているのか?

 

「まだ魔王さまには伝えていないわよ?」

 

「どうしてだ?」

 

「だって、私たちガーゴイルの一族の務めはありとあやゆる世界の情報をアスモデウスさまに

伝えることが第一。魔王さまから『兵藤一誠を見つけろ』なんて、指示が出てないもん。

もう、あなたは死んだと認知されているわね」

 

・・・・・ああ、そうだろうな。死んだ奴を探してもしょうがない。

 

「まさか、どうやって甦ったのかしらないけど、ドラゴンとしてハルケギニアにやってくるなんて

最初は驚いたわ。どうやらダンジョンを攻略するために現れたようだけど、

どうしてなの?あなたをそこまでさせる動機を私は知りたいわ」

 

と魔方陣に乗ってこっちに近づいてきた。

 

「俺を呼んだのはその理由か?」

 

「世界を見守り、監視する私たちガーゴイルでも人の心までは見ることはできない。

長い間、ハルケギニアを監視していたけど、誰もあの塔を攻略しようなんてしなかった。

でも、ここ最近は違う。なんかしらないけど、塔を攻略しようと人間が躍起になっているわ。

その中心があなたたち」

 

「・・・・・」

 

「ねぇ、情報を教えてくれたら、あなたが知りたがっている情報も提供しても良いわよ?

―――あなたの家族やリゼヴィム・リヴァン・ルシファー。何でもよ?」

 

―――――っ!

 

こいつ、どこまで知っているんだ・・・・・?情報網が計り知れない・・・・・。

 

「・・・・・分かった、じゃあ教える代わりに」

 

「うん」

 

「ナヴィ、お前のことを知りたい」

 

「・・・・・え?」

 

ポカンとナヴィが呆けた顔となった。

 

「え?私?あなた、自分の家族のこととか、

あのルシファーさまの弟のことを知りたくないの?」

 

「それも確かに知りたいが、ナヴィという情報が気になるな。ガーゴイルなんて初めて見たし」

 

「・・・・・あなた、変わっているわね」

 

「良く言われる。当然、皆のこととあの悪魔のことも教えてもらうけどな」

 

「座らせてもらうぞ」とベッドに座る。

対して彼女はパソコンの電源を落として俺の隣に座りだした。

 

「それでは、あなたから教えてちょうだいね?」

 

どこからともかく紙とペンを取り出す。俺は頷き、事の顛末をナヴィに告げる―――。


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