ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode6

 

 

―――翌日―――

 

俺たちはナツ・ドラグニルたちとどうこうすることに決めているので、あいつらと一緒に次の国、

好都合にもゲルマニアへと向かう。馬だと数日間も掛かる距離らしい。

 

「・・・・・行ってしまうの?」

 

「そうだな。俺はハルケギニアの全ての塔を攻略したいんだ。だからあいつらと一緒に行く」

 

「・・・・・そう、残念・・・・・」

 

寂しそうにシャルロットは呟く。背後にはガリア王と弟、ジョゼットとイザベラもいた。

 

「また会いに来るさ。ダンジョン全て攻略したらな」

 

「本当・・・・・?」

 

「約束だ」

 

小指を突き出す。シャルロットは少しの間を開けて小指を小指で絡めてくれる。

 

「いや、ちょっと待ってくれるかな?イッセーくん。

どうせなら、ジョゼットも連れて行ってくれるかな?」

 

「・・・・・へ?」

 

「正確に言えば、シャルロットもだけど。

ああ、ダンジョン攻略するまでの間だけだから安心してくれ」

 

間抜けな返事をしてしまった俺を余所にシャルルは、なに言いだすのかと思えば、

シャルロットとジョゼットも連れて行けだと・・・・・?

 

「どうやら、キミと離れるのがとても辛いらしいからね。

それに、他の国のことをその目と足で確かめに行って欲しいと思っていたところだ」

 

シャルルさん、あなたは何言っちゃってんの?と、思っているとジョゼットが近づいてきた。

 

「あ、あの・・・私も微力ながらお手伝いさせてもらいます」

 

「・・・・・・」

 

ジョゼット・・・・・本気でそう言っているのか?

でも、ジョゼットの瞳を覗けば、一緒に行きたいという決意が籠っていた。

 

「・・・・・エルザ」

 

「依頼、であれば仕方がない。よろしいですね?」

 

「ああ、もちろんだ。報酬は帰って来てから渡そう」

 

エルザ・スカーレットが了承した。この瞬間、シャルロットとジョゼットも共にダンジョン

巡りに参加することとなったのであった。

 

「それじゃ、龍に乗ってゲルマニアまで行くぞ」

 

「竜?どこに竜がいるんだ?」

 

「ん、俺自身。―――龍化」

 

想うのはガイアの姿。真紅のオーラに包まれる俺の体はどんどん大きくなり、

外見から見れば五十メートルぐらいの真紅のドラゴンに変貌しただろう。

 

「んなぁぁぁぁああああああああああああああああっ!?」

 

「お、おまっ、ドラゴンになれんのかよ・・・・・」

 

「言っただろう。俺自身のことをさ。これぐらいで来て当然だと思うけど?」

 

体勢を低くして全員を乗せやすいようにする。「乗れ」と催促すれば全員が背に乗り出す。

エルザ・スカーレットの荷物を両手で抱え、改めてシャルルとジョゼフに振り返る。

 

「また会おう」

 

「娘たちをよろしく頼むよー!」

 

バサッ!

 

二人の送り迎えの言葉を聞き頷いて、翼を羽ばたかせ宙に浮く。

宮殿から高く浮かんだところで一気にゲルマニア方へ飛翔する。

 

「うっはっー!すげぇーぜ!」

 

「これなら、数日掛かるはずが数時間で辿り着きそうだな」

 

「イッセー、お前って奴は・・・・・」

 

「本当、凄いヒトね。あっ、ドラゴンだったわね」

 

フェアリーテイルの皆が称賛する。

 

「ゲルマニアに辿り着いたらシャルロットとジョゼットの必要なモノを買わないといけないな。

女性陣、頼むぞ」

 

「うむ。任せろ」

 

「うん!」

 

「しゃーねーな」

 

「ま、蛮人のことを知る一環だと思えばいいわね」

 

青い空の下で飛翔する。その背に俺の仲間たちがいる。

その仲間たちと冒険・・・・・楽しいな。こういうのって。

 

 

―――???―――

 

「いやーねー、なんで私がダンジョン攻略しなきゃなんない訳?

いくら優秀な軍人を輩出した家系だからって・・・・・絶対、死ぬに決まっているわ。

はぁ・・・・・最期に親友の顔を見たかったわね」

 

 

―――???―――

 

 

「あれが・・・・・秘宝が眠る塔・・・・・っ。絶対に、秘宝を手にしなきゃ・・・・・」

 

 

―――一誠side―――

 

 

予想していたより早くゲルマニアに辿り着いた。エルザ・スカーレットたちは一度、

ゲルマニア現皇帝と会わないといけないらしく、俺たちと別れて別行動だ。現に俺たちは

町中を歩きながらゲルマニアダンジョンを見上げていた。

 

「ガリアダンジョンと同じで大きい塔だな」

 

「そうだな。壮大だ」

 

隣で肯定するヴァン。ゲルマニア首都、ダルファグにいてかれこれ三十分が経過している。

ルクシャナの蛮人=人間観察をするために色んなところを歩き回っている。

一時間後に塔のところに集合と事前に決めていたからのんびりと観光ができる。

 

「うーん、やっぱりイッセーたちと一緒についてきてよかったわ」

 

「そうか?でも、全てが終わったら俺たちは自分の国に行くつもりだ。一緒に来るんだろう?」

 

「勿論よ。私、帰る場所が無くなってしまったからね」

 

若干、顔を曇らせるルクシャナ。婚約者にあんなこと言われ、引き摺っている様子だった。

 

「自分の国?イッセーの故郷?」

 

「ああ、極東・・・・・日本っていう国が俺の故郷なんだ」

 

「『東の世界(ロバ・アル・カリイエ)』・・・・・それがあなたの故郷」

 

東の世界(ロバ・アル・カリイエ)・・・・・?聞いたことがない単語だな。首を傾げていると、

ジョゼットが「エルフが住んでいるさらに東方に位置する世界のことです」と補足してくれた。

 

「なるほど、そういう意味だったのか。やっぱり、違う国は文化と風習、言葉は違うな」

 

「東方から来たあなたはどうしてこの世界に来たのです?」

 

「使い魔として召喚された。彼女と共にルクシャナにな」

 

当の本人はゲルマニアの町を熱心に見て、レポートしている。

 

「もしかして、その額の文字は使い魔としての文字(ルーン)・・・・・?」

 

「どうやらそうみたいだな。ただし、ルクシャナとは主であり、使い魔の関係だ。

理由は知らないけど、俺と彼女はお互い、使い魔と主なんだよ」

 

「「・・・・・」」

 

本当、どうなっているのやら・・・・・。そう思っていると、

 

「キミがダンジョンに行くなんて嘘だろう!?」

 

「そんな、どうしてキミが・・・・・!」

 

「キミが死に行くなら僕も一緒に死のう!いや、キミを絶対に守りきってみせる!」

 

何やら悲鳴染みた声が聞こえてくる。

恋人がダンジョンに行ってしまうと言う事実に嘆いでいるのか?

俺にとって関わりのない話だな。

 

「・・・・・」

 

スッと、シャルロットが俺たちから離れた。

 

「お姉さま?」

 

ジョゼットは不思議そうに姉を見詰める。

シャルロットが行く先は何かに群がっている男たちの方へだ。

 

「ルクシャナ、こっちだ」

 

「え、なに?」

 

彼女の腕を掴んでシャルロットを追う。彼女は一国の姫だからな。

単独で行動させる訳にはいかないだろう。

シャルロットの後を追うと、群がっていた男が彼女の存在に気付き反射的にだろう、

道を開けたのだった。その瞬間、豊かな赤い髪に褐色の肌、

人を魅惑させるほどの美貌の少女がいた。

 

「・・・・・キュルケ」

 

「え・・・・・シャルロット・・・・・?」

 

キュルケと呼ばれた少女はシャルロットの存在に大層驚いた表情をしていた。

知り合い・・・・か?ジョゼットに視線を向け、尋ねた。彼女からの返答は、

 

「ええ、お姉さまと親しくしていた友達に間違いないです。

ロマリア連合皇国から全てのダンジョン攻略するようにと御触れが出るまで、

私とお姉さま、キュルケはトリステイン魔法学院に留学生として通っていました」

 

「ロマリアから?でも、ガリアは王族としての掟でとか言ってなかった?」

 

「時期が重なってしまったんです。

どちらにしろ、私たちはダンジョンに攻略しないといけなかった」

 

なるほどな・・・・・今回の原因はロマリアか・・・・・こりゃ、一波乱がありそうだ。

 

「でも、どうしてそんなことをロマリアが?」

 

「さぁ・・・・・分かりかねます」

 

・・・・・ナツ・ドラグニルたちに依頼した奴って・・・・・一体どんな奴だ?

 

 

―――○●○―――

 

 

「初めまして、私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。

シャルロットの親友よ」

 

あれからしばらくして、シャルロットの友達を塔の付近まで連れて自己紹介をしてきた。

 

「でも、まさか驚いたわガリアダンジョンを無事に攻略するなんてね」

 

「お父さまが雇ったフィオーレ王国一のフェアリーテイルというギルドの集団と

イッセーたちのおかげ」

 

「フィオーレ王国って・・・・・噂に聞く魔導士って人たちがいるあの国の?

よく、雇えたわね」

 

どうやらハルケギニアと離れた国らしい。

 

「で、今度はこのゲルマニアダンジョンを攻略しようって?」

 

キュルケの問いにシャルロットはコクリと頷いた。

 

「そう・・・・・なら、私も死なずに済むかもしれないわね。

強引にダンジョン攻略にさせられるから嫌で仕方なかったわ。

いくらロマリアからのお触れだからって他人の意志を無視してして良い事と悪い事があるわ」

 

嘆息する彼女。本当に嫌だったのだと伺わせてくれる。

 

「あー、外国に行ったあの子たちは羨ましいわね。

ハルケギニアの今の情報なんて知る由もないんだから」

 

「あの子たち?」

 

「ええ、とある姉の病を治すために極東の国に行ったのよ。最後の希望だって」

 

・・・・・もしかしなくても、あいつらのことか?亜空間からアルバムを取り出した。

ページを開いてキュルケに見せつける。

 

「もしかして、こいつのことか?」

 

「え?・・・・・。―――――っ!?」

 

写真を見てすぐに過激な反応をした。―――カリンが写っている写真だ。

 

「ど、どうして・・・・・あなたがあの子の写真を・・・・・?」

 

「俺はその極東の国からやってきたんだよ。で、カリンとルイズと交流を持っている」

 

「ルイズ・・・・・久し振りに聞いたわね。あの子、元気にしている?」

 

「ああ、色々と遭ったけど、人一倍プライドが高い少女だよ」

 

苦笑を浮かべる。今頃、あいつはどうしているのか今の俺には知る由もない。

キュルケは微笑んだ。

 

「そう・・・・・相変わらず変わらないのね」

 

「嬉しそうだな?」

 

「ヴァリエール家とツェルツプストー家は昔から恋に関して因縁があるからね。

だから、必然的に私もルイズとよくいがみ合ったわ。邪険ってほどじゃないけど、

それなりに仲が良かったわよ?」

 

「へぇ、意外だな」

 

あのルイズがねぇ・・・・・。

 

「おーい!」

 

すると、待っていた人物たちが戻ってきた。

キュルケも含めナツ・ドラグニルたちと合流を果たす。

 

「どうだった?」

 

「問題ない。何時でもダンジョンを攻略してほしいそうだ。その書状ももらった」

 

「そうか。それじゃ、準備を万全にしてから挑戦しようか」

 

「まだ時間はある。宿を取って出発しよう」

 

「お金も一杯あるしね!」

 

その後、ダンジョンを攻略は明日になった。キュルケと別れ、宿を取って、明日に備える。

―――俺はルクシャナとヴァンを引き連れてシャルロットとジョゼットが必要なモノを

備えるために本人たちも連れて町中を歩いて女性専用の店の前でボーっと待っていた。

 

「・・・・・暇だ」

 

かれこれ、二時間も経過している。一時立ったまま寝てしまった。

 

「まだ・・・・・掛かりそうだな」

 

ちらほらと店の窓から覗ける皆の姿。そう言えば、俺は皆と出掛けたことって

滅多になかったな。多かったのは・・・・清楚だけか。

俺の目の前で行き来するゲルマニア住民たち。

二人で歩いている者がいれば、一人で歩いている者もいる。

中には、布で何かを巻いた全身をすっぽり覆う謎めいた人が―――。

 

ドサッ・・・・・。

 

倒れた・・・・・って、どうした!?慌ててその人に近寄って介護する。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「・・・・・うっ・・・・・」

 

次の瞬間。

 

ギュルルルルルルル・・・・・・・・・。

 

盛大に音が鳴った。そう、倒れた人の腹から。・・・・・・こいつ、腹減って倒れたのかよ。

横に抱えて、建物の壁際にまで連れていき、

亜空間から出来立てホヤホヤのおにぎりを数個取り出す。

 

「ほら、食え」

 

「あ、ありがとうございます・・・・・」

 

パクっと食べた瞬間。行儀もクソもないと、おにぎりをバクバクと食べ始めた。

 

「うっ!?」

 

「・・・・・なんちゅー王道的なことをするんだろうか」

 

案の定、米粒を咽喉に詰まらせた。水を差し出せば俺から受け取って飲み干す。

 

「げほっ、げほっ、す、すいません・・・・・」

 

「おにぎりは逃げないからゆっくり食え」

 

「は、はい・・・・・」

 

空腹で倒れた人はゆっくりとおにぎりを食べ始めた。その間、ようやく店から皆が出てきた。

 

「イッセー、お待たせ・・・・・って、誰、その人」

 

「空腹で倒れた謎の人物Aさん」

 

「ああ、そういうこと。さて、買い物を終えたし帰りましょう?」

 

その手には大量の袋を持っていた。

お前ら、渡した金を全部使い切ったわけじゃないだろうな・・・。

 

「ほら、貸せ。亜空間に仕舞ってやる」

 

「便利な力ねー?」

 

ヒョイヒョイと皆の買い物袋を仕舞い、それから謎の人物Aの横に金が入った袋を置いた。

 

「え?」

 

「また空腹で倒れたら敵わないだろう?それ、やるよ」

 

それじゃ、と手を振り皆と歩を進める。

 

「お前ら、時間掛かり過ぎだろう」

 

「あら、女の子の買い物は時間が掛かるものよ?」

 

「ご、ごめんなさい。つい、夢中になって・・・・・」

 

うん、ジョゼットは良い子だな。その意味を籠めて頭を撫でてやろう。

 

「まあ、明日はダンジョンを攻略しに行くんだ。しょうがないと思ってやろう」

 

―――???―――

 

不思議な人だった。見ず知らずの私に食べ物をくれたどころか、お金までくれた。

ここに来るまで水や木の実だけでなんとか凌いでいたけど全てなくなって路頭に彷徨っていた。

あの塔に入るにも門番がいて入れそうにもなかった。

私の目的が目の前にあると言うのにどうすることもできなかった。

 

「・・・・・」

 

あのヒトがくれた袋を見詰める。中にはズッシリと重みがあるお金だとすぐに分かる。

この量のお金なら、門番に渡して中に入れてくれるかもしれない。

 

「・・・・・」

 

でも、あの人がくれたお金をそんなことに使いたくない。

だけど、どうしたらあの塔に入れるのかしら・・・・・。

 

「まあ、明日はダンジョンを攻略しに行くんだ。しょうがないと思ってやろう」

 

―――っ!

 

私から離れていく恩人が衝撃的なことを言った。明日、ダンジョンを攻略しに行く・・・?

それって・・・・・!

 

「ま、待って―――!」

 

呼び止めようにも、あの人たちの姿はもういなかった。追いかけようにも一人で探すのは大変。

でも、あの人は言った。明日、ダンジョンを攻略する。

 

「・・・・・明日・・・・・」

 

この好機を逃さない。明日・・・・・明日・・・・・!

 

 

―――○●○―――

 

 

―――翌日―――

 

 

朝食を済ませ、俺たちは準備も整え終え、塔に赴く。二回目の塔の攻略。

今度はどんな障害が俺たちを阻むのか、緊張と高揚が混じり合って楽しみだと思った。

時刻は六時だ。早い方が良いだろうと決めて、塔の攻略を挑戦する。いざ、塔に辿り着けば。

 

「おはよう、待っていたわよ」

 

昨日知り合ったシャルロットの親友、キュルケがいた。

手には細い木の枝・・・・・杖を持っていた。

 

「時間もジャストだ。問題はないな?」

 

「ええ、勿論よ」

 

笑みを浮かべるキュルケはシャルロットに言う。

 

「死なないように頑張りましょう?」

 

「・・・・・」

 

シャルロットは頷く。さて、これで全員が揃った。塔も目の前。

 

「今回も燃えてきたぜ!」

 

「今度は私も頑張るんだから!」

 

「ふふっ、それは頼もしいな」

 

「そうだな」

 

フェアリーテイルチームが気合を入れる。俺たちも負けられないな。

エルザ・スカーレットが号令を発す。

 

「では、ゲルマニアダンジョンを攻略する!」

 

『おう!』

 

エルザ・スカーレットが先陣を切って歩を進める。それに続く俺たち。

門番によって開け放たれていた扉の向こうへ―――。

 

ダッ!

 

「ん?」

 

入ろうとしたその時、全身をローブで覆う謎の人物が駆けてきた。

門番が不審者と反応し、対応しようとしたが・・・・・軽やかな身のこなしで避けられ、

塔の中を俺たちと一緒に侵入を許してしまった。

 

「―――お願いします、私も連れて行ってください・・・・・!」

 

「お前は・・・・・」

 

フードから覗く素顔。青い瞳と金の髪、額には緑色の結晶を付けている。

いや、頭に翼のような飾りと一緒にくっついた装飾品か・・・・・?

気がつくとダリアダンジョンとは違い、今度は―――砂漠だった。

 

「さ、砂漠!?」

 

「おいおい・・・・・一体全体どーなってんだよ」

 

「あ、熱い・・・・・」

 

皆も唖然としていた。だが、それよりも。

 

「お前は・・・・・昨日の謎の人物Aさんだったな」

 

「ち、違います。私の名前はリース・ローラントです。昨日は本当にありがとうございました」

 

ペコリとお辞儀をするリース・ローラントという少女。

 

「ああ、それは気に知るなよ。でも、どうしてこんな形で俺たちと

一緒にダンジョンに入ったんだ?攻略しないと外に出られないんだぞ?」

 

リース・ローラントに尋ねた。

 

「―――始祖ブリミルの秘宝が欲しいのです。目的のために」

 

「―――――」

 

すると、彼女の瞳の奥を見てしまった。復讐、憎悪、恨み・・・・・。

こいつ、まるで俺みたいじゃないか。

 

「・・・・・なんのためだ?」

 

「・・・・・魔王を倒すため、弟を、家族を、民を殺した魔王を倒すためです・・・・・!」

 

俺は目を細めた。魔王とは一体誰のことだ。他の神話体系に存在する者のことか?」

 

「そうか・・・・でも、その魔王ってどんな奴だ?取り敢えず歩きながら聞かせてくれ」

 

何時までもこの炎天下の中で立ち止まるわけにはいかない。

エルザ・スカーレットを先頭に歩かせて俺たちは進む。そして、彼女から色々と聞く。

 

「名は―――リゼヴィム・リヴァン・ルシファーです。私の国をローラントを滅ぼした魔王です」

 

「リゼヴィム・・・・・!?」

 

あの悪魔が・・・・・そうか、原始龍が言っていた生き残りはこの少女のことだったのか!

 

「知って、いるのですか・・・・・?」

 

「俺もあの悪魔には因縁がある。

そうか、あいつ魔王と名乗って好き勝手にしているんだな・・・・・」

 

このこと、あいつ等の耳に届いているのだろうか。とても気になるところだ。

 

「リースだったな?お前はリゼヴィムを追い掛けているのならば、俺と一緒について来い」

 

「・・・・・どうしてですか?」

 

「俺と一緒に来ればリゼヴィムと会える可能性がある。俺もあの魔王に一度殺された身だ。

その上、俺はドラゴンだ。ドラゴンの特性は様々な力を引き寄せる。

だから、リゼヴィムと出会う可能性が高い」

 

リース・ローラントは俺の話しを聞く姿勢のまま、耳を傾けてくれる。

 

「リゼヴィムの居場所を分からないまま充てのない旅をするより、奴の情報を持っていて

、奴を倒すために集結している仲間と一緒にいた方がより効率的だ。リースの目的も叶えるはず。

それにお前を鍛えることもできる。リース、一緒にリゼヴィムを倒そう。

答えは全てのダンジョンを攻略してからでいい」

 

あまり長話はできない。この暑さじゃ思考も低下する。

 

―――三十分後―――

 

「あちぃ・・・・・」

 

ナツ・ドラグニルが重い足取りで砂漠の砂を一歩、一歩と踏む。何時まで経っても、

ダンジョンとらしきものが見えないし起こらない。延々と歩き続けるだけだった。

皆、暑さにやられている。

 

「お前ら、大丈夫か?」

 

「お前・・・・平気なのかよ」

 

「俺、小さい頃、砂漠の中を三日間歩かされたことがあるからな。それを何度もさせられた」

 

「・・・・・お前、何て鍛え方をされているんだよ」

 

何て鍛え方って・・・・・ガイアに鍛えられたんだぞ、スパルタなんだぞ、分かるか?

その時の俺の気持ちを。

 

「「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」」

 

シャルロットとジョゼットがとても辛そうだ。

少し、休憩した方が良さそうだ。龍化になって日陰を作る。

 

「エルザ、休憩した方が良い」

 

「ああ、そうだな・・・・・実のところ、流石の私も辛かった」

 

「み、水・・・・・」

 

「お魚ぁ・・・・・」

 

ハッピーは食欲か。魔方陣を展開して、冷たい飲み物と食べ物、それと魚も出してやった。

 

「一息ついたら、俺の背中に乗れ。空から探した方が良さそうだ」

 

「分かった。だが、お前は大丈夫なのか?」

 

「俺はドラゴンだからな。このぐらいは平気だ」

 

ジリジリと背中が焦げているけどな。

 

「・・・・・お前に助けられているばかりだな」

 

エルザ・スカーレットが水の入った容器を俺の体に上って持ってきてくれた。

 

「ほら、飲め。平気だからとはいえ、ドラゴンも生物だ。咽喉も渇くはずだ」

 

「・・・・・」

 

無言で口を開ければ、口の中に水を入れてくれた。胃の中に流し込んで彼女に例を言う。

 

「ありがとう」

 

「気にするな。仲間だろう?」

 

うわ、いま恰好良いセリフを言ったぞ。―――姐さんと呼びたい!

 

「・・・・・」

 

眼下でシャルロットが杖を徐に振るった。俺の上に氷の塊が空気の水分を急激に凍らせる―――も、

あっという間に溶けてしまった。丁度、その溶けた氷の水滴が俺を濡らす。

 

「体も熱くなっているはず」

 

「ああ、そういうことか。ありがとうな」

 

生温かいけど・・・・・と、俺のために気を使ってくれた彼女に口が裂けても言えなかった。

 

「そう言うことなら私もできるな」

 

そう言ってヴァンが俺の頭上に魔方陣を展開させた。

次の瞬間、膨大な水が流れ出て来て俺の全身を濡らす。

あー、エルザ・スカーレットもずぶ濡れだ。

 

「ヴァン、ありがとうな」

 

「気にするな」

 

彼女のおかげで体温が低下した。それからしばらくして、

皆の休息を終えれば俺は別のドラゴンの姿と変わる。全員を乗せて、砂漠の上を飛行する。

 

「お前、何でもありだな」

 

「三つ首の龍・・・・・あの時の大会にいた龍だな」

 

「そーいや、お前だったんだよなー?でも、なんで今頃そんな龍になったんだ?」

 

「ああ、この姿の方が視界も三倍も増える」

 

「そっか、六つも目があるもんね」

 

ルーシィ・ハートフィリアの言う通りだ。探すにはこの姿の方が良い。

 

「それにしてもナツ。お前、酔わないのか?」

 

「なに言いやがるんだグレイ。イッセーは仲間だぞ。乗り物なんかじゃねぇ」

 

なんだ、こいつは乗り物酔いをするのか。見た目じゃ分からないものだな。

 

「―――ちょっ、なにあれ!」

 

突如、悲鳴が上がった。どうした?とばかり尻目でルーシィ・ハートフィリアを見た途端。

俺の視界に砂色の巨大なウェーブが発生しているのが見えた。

 

「砂嵐か!?だが、そんな生易しい規模じゃねぇぞあれは!」

 

「イッセー!もっと空高く飛んで!」

 

「了解だ!」

 

翼を羽ばたかせて急上昇する。砂の波より空高く飛んでいると、

俺たちの下で砂が前へ前へと進んでいく。

 

「・・・・・・マジで驚いた」

 

「本当ね。イッセーがいなかったら、私たち呑みこまれていたわ」

 

「ついでに言えば、空高く上昇したおかげでようやくダンジョンらしき場所を見つけた」

 

そう、俺の前方。うっすらと見えるが三角形の造形が確認できた。―――ピラミッドの類だろう。

そっちに飛行していく。

 

―――○●○―――

 

ピラミッドに辿り着いた俺たちは入口を探していた。それはすぐに見つかった。

グレイ・フルバスターが見つけた入口に集合して俺は皆に伝える。

 

「俺もピラミッドの中を探検したことで分かったことが色々とある」

 

「どんなだ?」

 

「このピラミッドも現世のピラミッドと同じなら、

障害物の他にも人間のミイラや人喰い虫がいるはずだ」

 

「ミ、ミイラ?」

 

「人喰い虫って・・・・・」

 

そこ、今から入るのに怖がるな。俺だって当初はマジで怖かったんだぞ!

 

「だから、攻撃する際は炎と氷が有効的だ」

 

「じゃあ、ナツとグレイの出番ってわけね」

 

「うむ。二人は炎と氷の魔法が得意」

 

「おー、やってやろうじゃん。グレイになんかには負けねぇ」

 

「はっ、言ってろ」

 

おーい、喧嘩腰になるなよ。チームワークが大事だって、

 

「シャルロットとジョゼット、キュルケも頼むぞ」

 

「分かった」

 

「私も頑張ります」

 

「私の炎をみせてあげるわ」

 

ハルケギニア組も気合を入れる。

 

「エルザは全員のサポートだ。

ピラミッドの中は狭い通路が多いから剣での物理攻撃も制限される」

 

「心得た」

 

「それと障害物と言っても罠の意味だからな。それが張り巡らされている可能性もある。

無暗に壁とか天井に触れてはダメだ。これは体験した俺が言えるからこそ言えるんだ」

 

『・・・・・・』

 

皆は俺の話に真摯に聞いてくれる。俺の話しは以上だ。

 

「それじゃ、行くぞ!」

 

『おう!』

 

そして、俺たちはピラミッドの中へ侵入した―――。


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