ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

102 / 157
Episode2

 

 

原始龍が俺たちをこの世界に招いた理由は俺たちと話をするため。

基本的、話すのは俺とオーフィスたちの私生活とお互いの気持ちや今後についてのことだった。

その間、興味深そうに訊いたと思えば、笑ったり、驚いたり、苦笑いを浮かべた。

大体の話を終えた頃に―――。

 

「原始龍さま、失礼します」

 

俺たちをここに招いたウリュウ(メイドバージョン)が現れた。

 

「遅かったじゃありませんか。何をしておられていたのです?」

 

「ええ・・・・・ちょっとバカ共のお説教です」

 

嘆息するウリュウに原始龍は苦笑を浮かべるだけだった。

 

「程々にしたのですね?」

 

「ええ、程々に」

 

「ならば、よろしい」

 

それだけで話は終わった。

 

「兵藤一誠、突然ながら申します。あなたはこの世界に棲んでみませんか?」

 

「・・・・・なんだと?」

 

ジッと俺を見詰める原始龍。

 

「私は世界に存在する人間界や異界にいる全てのドラゴンを見ていました。

そんな一匹の真紅の龍に接する子供を見たときには驚きました。

その龍もどんな気持ちでその子供を鍛え、共に暮らしていたのか私は分かりません」

 

その子供って俺だよな。ウリュウからもそんなことも言っていたし。

 

「ですから、私はとても興味を抱きました。龍と暮らす人間を。

・・・・・後に他にも龍が子供を鍛えていることも知って驚きましたが」

 

ん?俺以外にもそんな境遇の奴がいたとは・・・・・会ってみたいな。

 

「あなたは確かに他の人間、異種族とは違う。

龍の長として、龍に好かれるあなたといつかこうして話しをしてみたかったのです。

そして、それが叶い、あなたに集まる龍の気持ちはよく分かりました。

良い意味でも悪い意味でもとても純粋な人間であることを。

だから、邪龍もあなたを気に入るわけですね。オーフィスも然り、グレートレッドも然り」

 

「・・・・・」

 

「そして、あなたはサマエルまで手を差し伸べる。

どうしてなのですか?利用されていたとはいえ、あなたを亡き者にまで追い込んだドラゴンです。

普通なら、再び冥府に封印してもらうべきだと私は思います」

 

龍の長として龍に悪意を向ける龍は危険、

ウリュウの言った言葉は全ドラゴンの代表的な言葉なんだろう。

原始龍もドラゴンに対する想いやりはとても凄い。

流石に龍至高主義者ってわけじゃないらしいが、それに近い感情を抱いている。

 

「まあ・・・・・何て言うか、あいつの呪いを受けて分かったんだ」

 

「分かった・・・?」

 

「戦いながらだけど、アザゼルがサマエルのことを話していたのを聞こえた。

神に怒られて自業自得だろうけど、純粋に可哀想だと思った。同情じゃない、憐れみでもない。

ただ、可哀想だとそう思った。もう古の話なんだ。そろそろ、許しても良いんじゃないかって」

 

サマエルに振り向く。変わらず金色の膜に覆われている。

 

「でも、サマエルのおかげでこうして人間が多く生まれたんだと思う。

だから俺も存在しているわけだ」

 

「・・・・・」

 

「例え、邪龍でも、最悪な龍でも俺は受け入れる。

例え、その行為が周りに恐れ戦かれ、恐怖の対象者となっても」

 

正直な感想を言った。原始龍はしばらく無言で俺を見詰めていたら、徐に溜息を吐いた。

 

「・・・・・あなたの気持ちはよく分かりました」

 

「感想は?」

 

「本当に良い意味でも悪い意味でも純粋な人間です。あなたは・・・・・」

 

・・・・・なんか、原始龍の瞳が潤っているような気が・・・・・。

 

「ですが、それがあなたの、兵藤一誠の魅力なんですね。わかりました。

―――ウリュウ、あの剣をここに」

 

「・・・・・あの剣をですか?」

 

驚愕と目を丸くするウリュウ。剣?

 

「ええ、彼なら託せるに値する人間です」

 

「・・・・・分かりました」

 

ウリュウが転移魔方陣で姿を消した。

 

「剣ってなんだ?」

 

「プレゼント、のようなものです。本来、人間が持つのに宝の持ち腐れというほど剣を

あなたに授けます。私、原始龍とあなた、兵藤一誠の親愛と友好の印として」

 

カッ!

 

「お持ちしました」

 

ウリュウが再び魔方陣を介して現れた。変わっているといえば、両手で持っている大剣だった。

宇宙にいると思わせる程の常闇に星の輝きをする宝玉が柄から剣先まで埋め込まれてあり、

刃の部分は白銀を輝かせ至る所に不思議な文様が浮かんでいる金色の大剣。

 

「これがあなたに授ける剣、『封龍剣「神滅龍一門」』です」

 

封龍剣『神滅龍一門』・・・・・。

 

「受け取ってくれますね。龍に愛されし人間よ」

 

そう言う原始龍。俺は・・・・・席から立ち上がって頭を下げた。

 

「謹んで、貰い受けます」

 

「では、受け取りなさい。あなたにはその資格がある」

 

ウリュウが大剣を持ってくる。

 

「はい、どうぞ」

 

「ああ」

 

ガチャリと大剣の柄を握ぎ―――。

 

スカッ・・・・・。

 

「・・・・・?」

 

スカッ、スカッ・・・・・。

 

「・・・・・」

 

柄が握れない・・・・・そう言えば、俺って思念体なんだっけ?

でも、握れるような感じだったんだけど。

 

「あっ、ごめんなさい。魂の状態では掴めなかったですね。

座ることができても物を掴むことはできません」

 

「おい」

 

あっけらかんに言うウリュウ。ギロリと「こいつまたか」と瞳に籠めて睨んだら、

涙目になったウリュウをよそに、原始龍がクスクスと笑いを零す。

 

「ふふっ、面白いです。っと、話が大分反れましたが、どうですか?

この世界に棲んでみませんか?衣食住は私が保証します」

 

「・・・・・あー、その申し出は嬉しんだけど、こうして魂の状態でも生きているんなら、

皆のところに帰りたい。ガイア・・・・・彼女が、皆がいる場所へ」

 

バツ悪そうに申し訳なさそうに拒否した。

でも、原始龍は俺の答えを分かっていたかのように笑みを浮かべていた。

 

「ええ、そうでしょうね。あなたは『家族』のもとに帰るべきだと思います」

 

「あっさりとしているんだな」

 

「あなたは最初で最後の真龍と龍神とともに生きる唯一無二の人間。私はあなたたちの私生活を

ここから見させてもらいます。それが、今の私の楽しみですからね」

 

プライバシーの侵害だ!それ、絶対にプライバシーの侵害だって!

 

「ですが、その前に一つだけして欲しいことがあります」

 

「なんだ?して欲しいことって」

 

「―――ハルケギニア、という国をご存じですか?」

 

ハルケギニア・・・・・ってカリンとルイズの故郷だよな。肯定と頷くと原始龍が言う。

 

「あの国にエンシェント・ドラゴンと言うドラゴンが眠りについております。

しかし、そのドラゴンはそう遠くない内に眠りから醒めようとしており、

目覚めてしまったらあの国は、火の海に呑みこまれてしまう。人間界には干渉をしませんが、

ドラゴンが悪意な行動するなんてとても放っておけません」

 

「だから、俺たちがそのドラゴンをどうにかしてほしいというわけか?」

 

「正確に言うと、エンシェント・ドラゴンをこの世界に送りこんで欲しいのです。

龍を生みだす私にとって龍が討伐されることは堪え難い」

 

「でも、どうやってここまで送るんだ?」

 

そう訊くとウリュウが口を開いた。

 

「その封龍剣の宝玉はこの世界の牢獄に繋がっているんです。

ですので、その宝玉にドラゴンの魂を封じ込めれば自動的に牢獄へ送られるのです」

 

「へぇ・・・・・そうなんだ」

 

「使い方は後ほど説明します」

 

「分かった。それじゃ、エンシェント・ドラゴンを封印しよう。俺たちを助けてくれた恩もある」

 

「ありがとうございます」

 

原始龍が頭を下げる。でも、問題が一つ。

 

「俺、肉体が無いんだけど」

 

「安心してください。すでに用意してあります」

 

準備が早いな。原始龍は魔方陣を展開した。何時も見慣れている悪魔や堕天使の魔方陣ではない。

龍を模した紋様の魔方陣だった。光が生じ、魔方陣から人間が現れた。

 

「ん?」

 

魔方陣の上に横たわっている人間。でも、俺が想像していたのと違う。

―――俺の目の前に俺が寝ている。が、髪がガイアのように真紅の色だった。

 

「この肉体はグレートレッドがあなたの遺体をベースにして再構築したものです」

 

「・・・・・ちょっと待とうか。

それ、用意したというより横から掻っ攫ったの間違いじゃないか?」

 

「ふふっ、さあ、どうでしょう♪」

 

こ、この龍・・・・・腹黒い・・・・・!

今頃、再構築していた肉体がないことにガイアが叫んでいるんじゃないか?

 

「ですが、私は人間の肉体を作る力はありません。

龍を生むシステムなので、どうしても人間で言うクローンを作れません。

グレートレッドがこの肉体を作ってもらわなければ、

あなたを龍に転生させるしか方法がなかった」

 

龍に転生・・・・・次期人王としてできれば人間であり続けたいところだったな。

 

「魔方陣の上に」

 

原始龍に促され、俺は俺の肉体の横に立つ。

 

「始めます。目を閉じていてください」

 

言われた通りに目を閉じた途端、急に意識がなくなったのだった―――。

 

―――○●○―――

 

―――リアスside―――

 

イッセーが死んでもう二週間も過ぎた。そんな時、駒王学園の理事長、

私のお兄さまから全校集会でグラウンドに集まった私たち伝えられた。

 

『駒王学園を再構築し終えた。駒王学園の生徒たちは心残りがないよう、

川神学園の生徒と別れの挨拶をするように』

 

元の学校に戻れる。ようやくあの学校に、町に帰れると歓喜する者がいればようやく

慣れた川神学園と川神市に寂しさを感じる者もいた。私は・・・・・どちらでもない。

イッセーがいない世界なんてもはやどうでもいいのだ。

 

「(イッセー・・・・・)」

 

私はもう一度あなたに会いたい。ただそれだけを何度も願う。

 

―――朱乃side―――

 

「・・・・・」

 

あの事件からもう二週間・・・・・あっという間に時間が過ぎるのですね。

時間ってとても残酷。時が経てば経つほど、人の記憶から亡くなった者に対する感情が薄れ、

記憶の隅に追いやって忘れてしまうものです。

私の恩人であり掛け替えのない大切なヒトがいなくなった。

それが―――とてつもなく、辛い、悲しい。心が虚空のように・・・・・。

今の私は・・・・・ただの生きた屍のよう・・・・・。

 

「イッセー・・・・・」

 

こんな私を支えてくれるのは・・・・・あなたしかいないのよ・・・・・?

私はか弱い女の子だって、あなたは知らないわよね・・・・・。

もっと、もっと早く私がそう言う女の子だって言えば・・・・・。

 

―――小猫side―――

 

先輩は死んでしまった・・・・・。

あのヒトは強いけど無敵じゃない・・・・・そんなことは分かっていたのに、

 

「・・・・・こんなのってないですわ・・・・・。

ようやく、心から敬愛できる殿方のもとに近づけたのに・・・・・」

 

隣に座っているレイヴェルが顔を手で覆って嘆く。私は彼女のように泣けない。だって―――。

 

「・・・・・私はなんとなく覚悟していたよ。

いくらイッセー先輩が強くてもいつか限界がくるかもしれないって」

 

そう、すでに覚悟を決めていたから・・・・・。

 

―――レイヴェルside―――

 

彼女、小猫さんの話を聞き、立ち上がって激昂した。

そんな、そんな簡単に覚悟なんて決めれませんわ!

私は、まだイッセーさまと共にいる日が浅い!だからそんな簡単に覚悟を決めて割りきれません!

 

「・・・・・割り切り過ぎですわよ・・・・・ッ。

私は小猫さんのように強くなれませんわ・・・・・っ!」

 

涙を流しながら小猫さんに食って掛かってしまった。でも、それが今の私の気持ちなのです・・・・・!

小猫さんはいつもの無表情が徐々に崩壊して、震えながら涙を流していきます。

 

「・・・・・私だって・・・・・っ。・・・・・いろいろ、限界だよ!

あの時、何にもできなかったどころか、しなかった私がとても許せなかったもん・・・・・っ!

もっと、もっと私も強かったら・・・・・イッセー先輩を守れていたかもしれない・・・っ!」

 

嗚咽を漏らしながら、小猫さんが制服の袖口で目元を隠しました。

ああ・・・・・彼女も私と同じ気持ちを抱いておったのですね・・・・・。

私、何てことを・・・・・。

 

―――ギャスパーside―――

 

「小猫さん・・・・・ごめんなさい」

 

「・・・・・うぅ、レイヴェル。つらいよぉ、こんなのってないよぉ・・・・・」

 

小猫ちゃんとレイヴェルちゃんが泣いている・・・・・。

こんな時、僕は何もできない。男なのに、二人を慰める言葉が見つかりません・・・・・。

 

「・・・・・僕は、僕はどうすればいいんですか・・・・・?」

 

呟いても僕の質問に答えてくれる人は誰もいない・・・・・。

 

―――木場side―――

 

あの時、同じ場所にいたにも僕は、見ているだけだった。僕は最低だ。

友を見殺しにしたようなものだから。

これでは、僕のために死んでくれた同士たちの時と変わりないじゃないか・・・・・っ。

何にも力がなかったあの時と変わらない・・・・・。同士たちやイッセーくんは同じことをして、

僕だけじゃなく他の皆も守って死んだ。

 

「強くならなければ何にも守れない・・・・・」

 

イッセーくん自身も言っていた。弱いままじゃ、大切なモノを守れない。

なら、強くなるしか無いって。

でも、彼より強大な力によって死んでしまった。

彼が倒されても死ぬなんてことは考えもしなかった。

僕の目標である彼が・・・・・自分の両親に剣を刺された時は一体

どんな気持ちだったのだろうか。

 

「・・・・・誓うよ、イッセーくん」

 

僕は誰よりも強い騎士になる。そう、聖魔騎士(パラディン)になってキミの仇を取ろう―――。

 

―――アーシアside―――

 

「アザゼル先生。お願いがあります」

 

私、アーシア・アルジェントはアザゼル先生に尋ねました。とあるお願いをするためにです。

 

「・・・・・お前一人で俺に尋ねてくるとはな。大体予想できる。

―――『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』のことだな?」

 

先生の指摘に私は頷きました。

そう、私の神器(セイクリッド・ギア)のことでアザゼル先生にお願いをしに参ったのです。

 

「私の不甲斐なさで兵藤さんの傷が治らず死んでしまいました。

あの時以来、私は悲しくて、悔しくて、あのヒトに申し訳ない気持ちが胸に一杯です」

 

「・・・・・」

 

「また・・・・・あんなことが起きないとは限りません。

ですから・・・・・もう、私の力不足で誰かが死ぬなんて見たくないんです。

―――禁手(バランス・ブレイカー)に至りたいです。お願いします、アザゼル先生。私に力を貸してください」

 

懇願と頭を深々と下げた。どうか、どうか私に力を―――!

 

「・・・・・かなりきつい修行をすることになるが、いいんだな?」

 

「っ!」

 

その言葉は私の願いが届いたと感じました。だから―――。

 

「はい、お願いします!」

 

と、志願しました。

 

―――成神side―――

 

「・・・・・なぁ、ドライグ・・・・・」

 

『なんだ、相棒』

 

「俺・・・・・こんなんでいいのかな」

 

屋上の貯水槽タンクの上で空を見上げていた。あいつが死んでから皆、変わった。

落ち込んでいたり、必死になっていたりしている。俺はどちらでもない。

 

『さぁな。俺は相棒の力を貸すだけだ。

何をするか、行動を起こすのは何時も相棒、お前の意志だ』

 

「オーフィスと邪龍たちは・・・・・死んだのか?」

 

『・・・・・流石に、無限の体現者でも敵わない敵もいるということだろうな』

 

そっか・・・・・最強の龍神さまでも勝てない相手もいるわけか・・・・・。

 

『で、相棒。お前はこれからどうするのだ?』

 

どうするってお前・・・・・敵が来たら倒す。それだけだろう?そして、俺はハーレム王になる!

 

『変わらんな、そう言うところだけは。だが・・・・・ハッキリ言えば、

今のままの相棒ではかなり苦戦を強いられるだろう』

 

じゃあ、どうしろっていうんだ?

 

『あの男、兵藤一誠もいつかだったか言ってたではないか。神器(セイクリッド・ギア)を知れとな。

己の想い次第で神器(セイクリッド・ギア)は応え、進化する。

あの男もそうして強くなっていたはずだ』

 

・・・・・確かに言っていたな。

 

『修行も大事だが、兵藤一誠の言葉にも一理ある。―――「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」の

深奥にいる歴代赤龍帝の者たちと接触してみるのも、その一歩だと思うが?』

 

なんか、面白そうに言うな。お前・・・・・。

 

『―――相棒、兵藤一誠がお前に置き土産がある。

気になるなら、意識をこちらに集中して来てみろ』

 

はっ、置き土産だと?あいつ、何時の間にそんなもんを・・・・・。

 

『ゾラードからな。受け取ったんだよ。何の成長もしていないなら、

強くなる「鍵」を渡してやれと兵藤一誠からの伝言だと言われてな』

 

その伝言・・・・・相変わらずムカつく野郎だ!

 

『で、どうする?』

 

・・・・・癪だけどよ。俺、あいつを目標にしていたんだわ。

だから、目標を失ってこれからどうするべきか分からなかった。

 

『・・・・・そうか』

 

でもよ・・・・・。あの世で成長していない俺を見てバカにされていると思うと

腹が立ってしょうがない。どこまで俺のことを弱いままだと思われたくないからな。

 

『ふん、ならば、決まりだな?』

 

ああ・・・・・受け取ってやろうじゃないか。『鍵』を!

そんで、歴代の先輩たちにも会って俺に協力してもらおう!

 

『おう、その意気だ相棒』

 

ドライグが笑った感じがした。なぁ、兵藤。お前は死んだけど、お前は俺のライバルだ。

それぐらいの感情を向けても文句はないよな?

 

―――○●○―――

 

―――一誠side―――

 

「・・・・・」

 

自分の体を確認すること数分。ん、異常なし。問題なし。

 

「逆に前の体より軽くて力が湧く」

 

「グレートレッドの体の一部をあなたの体をベースにして作った肉体。

ですので、少なからず真龍の力も宿っているのですよ。

いまのあなたは小さな真龍・・・・・グレートレッドの子供だと思ってください」

 

「なるほどね・・・・・ガイアの子供か・・・・・」

 

人間じゃなくなっているのは変わりないか。人型ドラゴン・・・・・ということか?

 

「我、不満」

 

隣でオーフィスが頬を膨らませている。何故に?

 

「今のイッセーはガイアの子供。それ、ずるい」

 

「ふふっ、ヤキモチとは可愛いですねオーフィス。

でしたら、あなたの力も彼に注ぎ込めばよろしいのでは?」

 

「・・・・・そうする」

 

ぴょんと俺の方に乗っかったと思えば、

オーフィスから無限の力が流れ込んでくるぅぅぅぅぅっ!?

 

「これで、我の子供でも言える」

 

なんか、満足気に言われているんですが・・・・・。

 

「ですが、龍殺し(ドラゴンスレイヤー)には気を付けてください。

真龍と龍神の力の塊であるあなたは、それが唯一の弱点といえます」

 

「分かった。でも・・・・・俺にはこいつがいるからな」

 

サマエル、こいつを宿したら俺はどうなるのか・・・・・少し緊張するな。

 

「さて、ヴァン。お前の肉体も創造するがいいな?」

 

「ああ、同じ肉体にしてくれ」

 

了解。メリアに頼んでヴァンの肉体を創造してもらった。

完成すれば、ヴァンは無事に自分の肉体に定着して一つとなった。

 

「・・・・・死んで生き返るなんて、思いもしなかった」

 

「俺もだよ」

 

「私は嬉しいぞ?これで子作りができるのだからな」

 

ちょっ、そこ!何言っているんですか!

 

『一蓮托生とか言っちまったけど・・・・・本当、まだまだ付き合いが長くなりそうだな』

 

『ふん、簡単にくたばっては困る』

 

『・・・・・私もこの人間と居ないとダメなのか?』

 

『離れられるとでも思っておりますか?』

 

『今度は滅ぼされると思うが、死んでも良いんだな?』

 

『・・・それだけは勘弁だ・・・・・』

 

と、ドラゴンたちが雑談する。

 

「ふふっ・・・・・楽しそうですね」

 

「まあ、何時もの光景だ」

 

原始龍と微笑む。

 

「ところで、エンシェント・ドラゴンってハルケギニアのどの辺りに眠っている?」

 

「火竜山脈という大きな山の中に眠っています。

その昔、あのドラゴンは一人の魔法使いと四人の使い魔と激しい戦いをしていましたが

決着がつかず、封印という形でエンシェント・ドラゴンを退治しました」

 

「一人の魔法使いと四人の使い魔・・・・・強かったのか?」

 

「そうですね・・・・・現代と比べれば弱い方です」

 

そりゃ、そうだろうさ。和樹たち式森家が魔法使いを代表する魔法使いの家系だし。

どんな魔法を使っていたのか知らないけど、和樹たちの方が凄いに決まっている。

 

「封印・・・・・どんな封印式なんだ?」

 

そう尋ねると、原始龍は魔方陣を展開して―――世界地図を表示した。そして、とある場所に指す。

 

「ハルケギニアにはトリステイン、ガリア、アルビオン、ロマリア、ゲルマニアという国が

存在します。それぞれの国には塔が存在しており、

その塔こそがエンシェント・ドラゴンを封印している鍵なのです。

太古の魔法使いは何を思ったのか、秘宝と財宝をトリステイン、ガリア、ロマリア、

アルビオンに存在する塔に入れ、塔の名をそれぞれの国の名前にダンジョンと付け加え、

名付けました」

 

トリステインダンジョン、ガリアダンジョン、

アルビオンダンジョン、ロマリアダンジョンって名前か?

 

「って、ゲルマニアには秘宝がないのか?」

 

「ないです」

 

ないんかいッ!?

 

「過去幾度もその塔を攻略しようとハルケギニアの人間たちは挑戦しました。

が、全て失敗に終え命を落としました。ダンジョンに侵入したら最後、

攻略できるまで二度と外には出れない最悪の塔なのです」

 

「でも、それなら反っていいんじゃないのか?封印を解けることもないし」

 

「昔ならそうでした。でも、今はどうでしょう?

ダンジョンを攻略できる実力者がいまの世界にいるのですから」

 

「・・・・・なるほどな」

 

人間たちの手によって、とはそういうことか。

 

「兵藤一誠、封印を解かれるのはもはや時間の問題。

ならば、封印をどうにかしようとせず、敢えてエンシェント・ドラゴンを再封印、

こちらの世界に送くってもらった方がお互いのためにもなります。お分かりですね?」

 

「そうだな。だからこの大剣を授けてくれたんだろう?」

 

「親愛と友好の印として、その意味も込めて授けました」

 

どちらにしろ、俺は皆のところへ帰るのはまだ先のようだ。

 

「分かった。んじゃ、ハルケギニアに行こう。さっさと終わらせてな」

 

―――???―――

 

「えーと?蛮人が使い魔を契約するやり方は・・・・・っと」

 

一人の少女が片手に枝らしきものをフルフルと振りまわしながら

本のとあるページを見ながらブツブツと呟いていた。

 

「叔父さまに無理言って頼んで本当に良かったわ!

これでまた蛮人の研究がさらに捗るってものよ!」

 

吊り上がった切れ長の瞳に無造作に切りそろえられた長い金髪。そして、人間より長い耳を

持つ少女が嬉しそうに本に記されている文字を見ながら興味深そうに眺めている。

 

「ふふふっ、もし私が使い魔を召喚したら一体どんなのが来るのかしらね?

んー、できたら蛮人がいいわねぇー。それも、蛮人のことを精通している蛮人を」

 

でもなーと少女は悩む。仮に蛮人を召喚してしまったら自分は間違いなく追放される。

今の生活が出来なくなるのは嫌だが、自分は蛮人を研究する科学者。

もっとよりに蛮人を詳しく知り、調べたいという欲望と欲求がふつふつと沸き上がってくる。

この想いが抑えきれない自分がいることにも自覚している。

 

「・・・・・やってみよう」

 

やらないで後悔するよりはやって後悔した方が良い!少女は片手に枝らしきモノと

もう片手に本を持ってとある呪文を呟きだした。

ま、失敗したらそれはそれでとそんな思いを抱きながら・・・・・。

 

「我が名はルクシャナ。五つの力を司るペンダゴン・・・・・」

 

少女、ルクシャナは召喚呪文を唱え続ける。

集中して呪文を唱え続け―――後半の言葉を紡ぎ出した。

 

「我の運命に従いし『使い魔』を召喚せよ!」

 

呪文が完成した。さらにルクシャナの前方に光のゲートが現れた―――。

 

―――○●○―――

 

カッ!

 

「ん?なんだ?」

 

「これは・・・・・」

 

突如、出現した光。光は虚空で佇み、何かを待っているかのように存在する。

 

「・・・・・どうやら、向こうから出迎えてきたようです」

 

「え?どういうことだ?」

 

「あの光の中に通れば、ハルケギニアに行けます」

 

えっ、なにその好都合な展開は。あっという間じゃん!

 

「すぐに準備を」

 

「・・・分かった。お前ら、中に入ってくれ」

 

『かしこまりました』

 

メリアが返事をし、光の奔流と化となって俺に向かう。ゾラード、クロウ・クルワッハ、

アジ・ダハーカ、アポプス、、ティア、羽衣狐、ネメシス、オーフィス、そして――。

 

「サマエル、お前もだ」

 

金色の膜に包まれたサマエルも俺の中に入ってくる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ・・・・・問題ない」

 

サマエルの毒が内側から侵されるかと思ったがそうでもなかった。

あいつの意思でそうしているのかどうか定かではない。

 

「では、お気をつけて」

 

「また、この世界に来れるか?」

 

「ええ、エンシェント・ドラゴンをこちらに送ってくれたら自由に行き来できるようにします。

あなたとドラゴンだけですが」

 

「だったら、今度はガイアも連れていく」

 

ヴァンを引き連れ光に足を運ぶ。

 

「行ってきます。原始龍、ウリュウ」

 

「行ってらっしゃい。兵藤一誠」

 

「また、お向かいに行きますからねー!」

 

原始龍とウリュウと挨拶をし、俺は―――ヴァンと光に包まれて視界が奪われていく。

 

「さぁ、旅の始まりだ」

 

「さっさと終わらせて極東の地に帰るぞ」

 

「当然だ。皆が待っている」

 

俺は最後にヴァンと手を繋いで笑んだのだった。

 

―――天界―――

 

「―――ヤハウェさま。これは・・・・・!」

 

「ええ・・・・・間違いないです」

 

「信じられません・・・・・本当に生存していたとは・・・・・」

 

「彼を迎えに行く準備をします」

 

「ヤハウェさま直々に?ここはジョーカーを行かせるべきではないでしょうか?」

 

「あの者をですか?・・・・・良いでしょう、すぐに手配を」

 

「はっ!」

 

「(本当は私が行きたかったのですが・・・・・・仕方がありませんね)」

 

―――devil―――

 

「うひゃひゃひゃ!この城はこの魔王、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーが攻略したぜ☆」

 

「魔王・・・・・っ!」

 

「さぁーて、この城の元王女さま?この弟くんの死を観覧しちゃってちょうだい!」

 

「ま、待って!その子だけは殺さないで!お願い!」

 

「んー?じゃあ、悪魔の俺に代価を払って弟くんを助けちゃうって感動的な展開をしちゃう?」

 

「・・・・・っ」

 

「なーんてね。そんなちっぽけな命なんか欲しくないってばよ!はい、さらば!」

 

ザンッ!

 

「―――――!?」

 

「うひょひょひょひょっ!これでこの城に残っているのは王女さまだけだねぇー?どうする?

その槍で俺と勝負する?のんのん、そんな武器じゃ僕ちゃんに届きません!

なんせ、俺は魔王だからねぇ?正義の味方はもっと強くなってから挑戦しないといけない王道的な

運命が待っているんです!だ・か・ら、王女さまよ?俺を憎いなら、復讐したいなぁーら、

死んだどこかの坊ちゃんのように復讐心を抱いて強くなって、

お祖母ちゃんになるまで生きてみたらどぉー?」

 

「よくもエリオットを・・・・・!」

 

「おおう、良い目をしだしたねぇ?うんうん、そうじゃなきゃ!

それじゃ、またどこかで会おうぜ元王女さま!うひゃひゃのひゃー!」

 

「おのれ、リゼヴィム・リヴァン・ルシファァァアアアアアアアアアッ!」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。