東方事反録   作:静乱

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 今更ですけど、この作品は原作時間軸の変更等を行っております。

 例 永夜抄→儚月抄、前前回にあったレミリアさんパート。大体三年くらいの間だったのが、この物語では二ヶ月とかその程度。

 その辺りは原作崩壊タグでおーけーだと思いますが、一応ここで。了承してくださると有難いです。


part3 リハビリ

 さて、身体が割と動くようになり普通に生活する分には問題ない辺りまで回復したので(普通に生活する分には、ってことで、能力は使えないまま)、今日はリハビリに人里まで行こうと思う。そう、レミリアさんに話してみたら。

 

 

 

『あらそう。だったら、ついでにフランを連れてってあげて。そもそも貴方能力使えないんだし、そうでないと死ぬわよ』

 

『あ、はい』

 

 

 

 ……二つ返事で了承してしまったが、現在のフランと僕の関係は絶妙だ(悪い意味で)。人里までの長い道のりで、僕は彼女と何を話せばよいのだろう。小一時間程考えてみたが、答えは出なかった。

 

「……とりあえず、行ってみたらどうにかなるかもしれない」

 

 そう考えて、今までどうにかなったことがあっただろうか。無いと思うけれど、ここでいつまでも迷っている暇は無いだろう。早めに出ないと日が暮れてしまう。……いや、吸血鬼的にはそっちの方がいいのか? まぁいいか。

 

 

 

 そんなこんなで紅魔館入り口の門。美鈴さんが元気に昼寝をしている場所である。咲夜さんにまたナイフ刺されるんじゃないかな、とも思いつつ、別にいいやと流してしまう自分がいた。フランも気にしていないようであった。

 

 さて、これからどうしよう。

 いや、人里を目指すことに変わりはないが。正確に言えば、僕がどうにかしたいのは現状である。

 

「……」

 

「……」

 

 空気が重い。会話が思いつかない。終始無言で、僕とフランは歩みを進める。救いはないのでしょうか。

 

「……あの、フラン?」

 

「なに」

 

「あ、いやぁ……その、なんでもないよ」

 

「そう」

 

「う、うん……」

 

 とりあえず話しかけてみるも、会話が続かない。どうなっているんだ、僕のコミュニケーション能力最低値だろコレ。

 ……これじゃあ、文と話すことなんて、できなくね? これからずっと話せないとか嫌だよ僕。……まぁ、姫崎は例外なんだろうけど。

 

 そうこう考えていると湖に到着。いつにも増して霧が多い……気がする。まるで僕の心の中みたいだ。……言ってて虚しくならないのか僕は。

 

「……そうだ。ちょっと寄り道していいかな、フラン」

 

「……いいよ」

 

「ありがとう」

 

 フランの了承を得た僕は、適当に湖を回って冷気が強い場所を探す。ある程度予想はついていたので、早めに見つけることができた。チルノちゃんに大ちゃん、あとルーミアに……あと一人は誰?

 

「やぁ、チルノちゃん」

 

「あぁっ! 想也! アタイに何の用だ!?」

 

「いや、普通にこの辺りを通り掛かったから久しぶりに……と思って会いに来ただけなんだけど……」

 

「そーなのかー」

 

 僕の返答に、ルーミアが相槌を打つ。その後ふーん、とチルノちゃんが興味無さそうに言った。僕ってどうでもいいのかな。

 

「……人間?」

 

「ん? あぁ、僕は人間だよ。君は……蛍の妖怪かな?」

 

「!!」

 

 緑髪に触角を生やした少女は、その触角をピキーン、と伸ばしてばたばたと腕を動かす。

 

「わ、私が蛍の妖怪だって分かるの!?」

 

「えっ。いや、分かるでしょ。一瞬黒い悪魔と迷ったけど……」

 

「その言葉は止めてぇ!」

 

 蛍少女が耳を塞ぐ。状況から察するに、理由はよく分からないが、この子は『黒い悪魔』というワードに拒絶反応を起こすようだ。あまり意地悪をするのはよろしくないだろう。

 

「ごめんよ。で、君は何て言うんだい? 僕は黒橋 想也っていうんだ」

 

「……私はリグル・ナイトバグ。女だし、決して蛍以外の蟲じゃないからね。よろしく」

 

「よろしく、リグル……ちゃん?」

 

「そう、それが正しいの」

 

 分かったよね!? と僕に釘を差してくるリグルちゃん。そんなに注意しなくても、変に意地悪はしないのに。そんな悪口を言う人がいるのだろうか。なら僕が倒してあげよう。

 

「……あ、あの、その子は誰ですか?」

 

 会話に参加していなかった大ちゃんがフランの方を見ながら聞く。あぁ、そういえば初対面だった。僕は大ちゃんに分かるよう説明する。

 

「この子はあそこにある紅魔館に住んでいるレミリアさんの妹で、フランドールっていうんだ。僕らは親しみを込めてフランって呼んでる。

 で、フラン。この四人はチルノちゃん、大ちゃん、ルーミアに、さっき聞いてたと思うけどリグルちゃん。僕の友達なんだ。きっと仲良くなれるよ」

 

 そうなんですか……、と大ちゃん。ふーん、と興味無さそうなフラン。僕の紹介を聞いて、即座に行動を起こしたのはチルノちゃんであった。

 

「じゃあフラン! 私としょーぶだ!!」

 

「……え?」

 

 きょとん、とした表情を取るフラン。そういえば、最近全く弾幕ごっこしていなかったよなぁ。

 

「私は……。想也のリハビリがあるし……」

 

 僕の方をちらっと見て、困ったような表情を浮かべるフラン。なんだか少しやりたいようにも見える。同年代(?)の友達がいて損はないし、是非やるべきだと思う。「やっていいよ」と伝えた。

 

「……じゃあ、やるよ。私、強いからね」

 

「アタイはさいきょーなんだ! フランなんかに負けないぞ!」

 

「……ムカッ」

 

 擬音を口に出すと同時に、フランは弾幕を発射する。大して狙っていた訳でもないその弾幕を、チルノちゃんは優々と避けた。えへん、と胸を張って「こんな弾幕じゃ当たりっこないぞ!」とフランを挑発する。更にフランの怒りのボルテージが上がった(と思う)。

 

「じゃあ、これはどう?」

 

 先程よりは狙って、密度も高い弾幕を発射。しかし、チルノちゃんは自らの能力を行使し(たんだと思う)弾幕を凍らせてしまった。流石のフランもこれには驚き、というか僕も驚いている。他の三人も驚いている。

 

「ふっ、どうだ! これがアタイの超絶必殺技『アイスバリア』だ!」

 

「確かにこれはすごいね。弾幕を全て凍らせちゃうなんて」

 

 「そうだろ、へへん!」と威張ってみせるチルノちゃん。

 

「じゃあ、今度はこっちの番! 『アイシクルフォール』!」

 

 スペカ宣言。チルノちゃんの背後から氷柱が発射され、正面からは黄色弾。僕の『チルノちゃんのスペカといったらランキング』堂々の一位、『アイシクルフォール』だ。

 対して初見のフラン。彼女は吸血鬼である為、身体能力は並じゃない。幸いこの湖は霧に覆われている為、傘をささなくても大丈夫な状況だ。すいすいと避け続ける。

 

 どうでもいいけど、今僕はリグルちゃんの触角で遊んでいる。「ふぁ、ひゃんっ!」とか聞こえるけど気のせいだろう。

 

「くっ、中々やるね! だったら、『パーフェクトフリーズ』!」

 

 今度はランキング二位の『パーフェクトフリーズ』。カラフル弾幕が飛び交い、たまに止まりながらフランを襲う。

 

「……んー、結構面倒。一気に終わらせるよ!」

 

「なんだってっ」

 

 フランの言葉を聞いて、更に激しくなる弾幕。そんな弾幕を回避しながら、フランは一枚のスペルを宣言する。

 

「禁忌『レーヴァテイン』」

 

 地獄の炎を纏った、唱えてはいけない『禁忌』。レーヴァテインがフランの手元に出現する。

 一振り。

 

「うわぁっ!?」

 

 チルノちゃんの悲鳴と共に、彼女の放っていた氷の弾幕が全て消え失せる。否、溶けて、そのまま蒸発した。

 二振り。

 

「わぁっ」

 

 炎の弾幕がチルノちゃんに向かって飛んでいく。元々炎に相性が悪いチルノちゃんだが、『さいきょー』を自負しているだけはある。伝家の宝刀『アイスバリア』で防ぎきる。……しかし。

 

「っ! チルノちゃん、避けて!」

 

 大ちゃんが叫ぶ。親友だから、負けてほしくないのだろう。

 ……残念だが、この時点でフランの勝ちはほぼ確定だ。

 

「ーー!? 『アイスバリア』ッ!」

 

 チルノちゃんは再び『アイスバリア』を展開。それと共に表情が緩む。

 ……これがチルノちゃんの弱点だ、自分は『さいきょー』だと信じすぎているばかりに、自分の技は破られないものだと思っている。

 

 そんなチルノちゃんに、フランは現実を叩きつけた。

 

「『禁忌』は、その程度で止まりはしない」

 

「ーーっ!」

 

 声無き悲鳴と、ぴちゅーんといった効果音が湖周辺に響く。これは、チルノちゃんの敗北を表していた。

 

 

 

 ふとリグルちゃんを見ると、めちゃくちゃ卑猥な顔をしていた。それを見た僕の感想。

 

「な、なんと。僕を誘っているのか君は! お兄ちゃん変態だから、マジな方で襲っちゃうぞー?」

 

 この場にいた僕以外の人物に、全力で引かれた。

 そしてリグルちゃんからの一言。

 

「……死ねっ。屑っ。馬鹿っ」

 

 もっと罵ってくださいお願いしますグヘヘヘヘー。

 ……ふざけるのも大概にしておこう。社会的に死んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 


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