東方事反録   作:静乱

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STAGE-6 紅色の月

「(……で、此処まで来たんだよな)」

 

 此処までの経緯を誰かに教えるべく、僕は一旦幻想郷に入ってからのことを回想していた。回想を終え現実に戻った僕は女の子に話しかける。

 

「全く、僕は平和的解決を望みたいのにここの人僕を見るなり襲いかかってくるんだもんな。教育はできてるの?」

 

 言ったあと、これ完全に挑発じゃんと気づいた。

 

「な……!それが挑発だってこと、わかって言ってるのかしら?」

 

「あんた本当に平和的解決望んでんの?」

 

 二人にも指摘された。何やってんの僕。これじゃただの馬鹿だよ。

 

「そ、それはともかく!僕は君を倒してこの異変を解決してみせる!」

 

「誤魔化したでしょ?」

 

「誤魔化したわね」

 

 どうしても、二人は僕をいじりたいようだ。僕にそういう趣味はないから勘弁してもらいたい。

 僕は霊力弾を一発、女の子のすぐ横に放って言った。

 

「……漫才している、余裕はないよ?」

 

「漫才みたいな流れになったのは貴方のせいな気がするけど……。確かにその通りのようね」

 

「いやいやいや待って。私は?ねぇ私は?」

 

 紅白の巫女服を着た女の子が何か言ってるけど、気にせず続けた。

 僕のスルースキルは最近すごいのである。

 

「いくよ」

 

「来なさい!」

 

「無視?無視なの!?」

 

 再び紅白がなんか言ってたけど気にしなかった。……というのは冗談で、「まぁここは僕に任せて!」と言っておいた。「任せるわけないでしょ!?」と返されたのは無視した。兎に角、ちゃっちゃと解決しなくちゃね。

 

「ふっ!」

 

 女の子が物凄い密度の弾幕を放つ。僕は剣で斬撃を飛ばしつつ横、縦と縦横無尽に回避する。女の子は僕の弾幕なんて軽く避けれるぜー、と言わんばかりに華麗に避けていた。まあ、適当に狙ってるだけだしね。僕の戦いはスペカ優先型みたいなかんじだから、仕方ないと言わせてもらいたい。

 僕に弾幕が当たらないことに苛立ちを覚えたであろう(というか、絶対覚えてる)女の子は、一枚目のスペルカードを宣言した。

 

「天罰『スターオブダビデ』!」

 

 青い網目状のレーザーと赤い弾幕が僕を襲う。レーザーで移動範囲を狭め、赤い弾幕でとどめというスペカのようだ。

 チルノと弾幕ごっこした時の、裏切り『昨日の味方は今日の敵』を使ってもいいけど、あれ初見相手には強力……というか多分最強だからな。温存しておきたい。ならば!と僕は初お披露目のスペルを発動した。

 

「じゃあこっちも!雷鳴『サンダーブレード』!」

 

 宣言と同時に僕が持っている剣を天高く掲げると雷が落ち、剣が雷を帯びた。そのまま女の子や弾幕に向けて、無茶苦茶に振り回した。因みに、これは昔使った奴をちゃんとスペルにしたものである。まだまだボルケーノとかフリーズとかあったりする。

 

「なっ!?」

 

 女の子が驚きの声をあげる。何に驚いたのかいまいちわからないが、多分適当に振り回したことに驚いたんだと思う。勿論、何も考えずに振り回したんじゃないけどね。

 

「くっ!な、何で適当に振り回したのにこんないいとこに飛んでくるのよ!?」

 

 これを望んでのことなんだぜ。意外と適当に振り回すって、有効なんだよね。意図しないでやってやるってのは、堅実な戦い方をする相手に有利を取れるって気づいた。みんなも困ったときはやってみよう。

 

「っこの!紅符『スカーレットシュート』!」

 

 女の子は更にスペルを発動。今度は大小問わず赤い弾幕がすごいスピードで飛んでくる。

 だけど、先程のスペルよりはどうも隙間が多い。多分スピードで翻弄するタイプのなんだろうな。動体視力があればどうとでもなる!

 

「あいてぇ!」

 

 どうとでもならなかった。見事に足に命中したでござる。紅白巫女さんと同じ流れじゃないか、大丈夫かよ僕。

 

「今度こそ!呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』!」

 

 そのままの流れで女の子は三枚目のスペルを発動させた。大きな赤い弾幕と、それが通ったところに小さな弾。そして更にはナイフと……結構な密度だ。そして僕は弾幕があたった衝撃で移動不可。こりゃまずい。二枚目を発動させた。

 

「こんにゃろ、螺符『螺子の嵐』!」

 

 僕の後ろから螺子型の弾幕が飛来。更に女の子の上からも飛来。更には後ろからも飛来。それはさながら嵐のように、女の子に向かって飛んでいく。正直今僕が持ってるスペルで一番綺麗かもしれない。螺子なのにね。なんでだろうね。あ、これはチルノ戦で使ったスペルの改良版です。

 

「なっ!なんで反撃できるのよ!?危なっ!」

 

「いやだって反撃しないとやられるしっ。わっと!」

 

「……あんたら、真面目にやんなさいよ」

 

 これでも真面目にやってるつもりなんだけど、注意されてしまった。ならば本気スペル出させてもらいましょう。

 

「おおい。これから僕の最強スペル出すから、そっちもこい!」

 

「はあ!?なんで忠告するの!?……いや、まあいいわ。いくわよ!」

 

 了承は得た。準備も万端!ならばやらざるを得ないよね!

 僕は懐から切り札となるスペルを取り出す。女の子も切り札であろうスペルを出した。そして宣言する!

 

 

 

 

 

 

「「覇剣『想いを乗せる黒色の刃』(神槍『スピア・ザ・グングニル』)!!」」

 

 宣言の瞬間、僕の手元には想刃が。女の子の手元には槍の形状をした弾が現れた。僕はそのまま剣を振りかぶって女の子に突進する。女の子もそれに向かい打った。

 あ、スペル名が思いっきし厨二なのは気にしないでください。ほんと。普通の名前じゃ面白くないじゃんすか。ね?

 

 想刃とグングニル(だっけ?)がぶつかり合う。物凄い衝撃が周辺に広がり身体が吹き飛びそうになるが、流石に吹き飛ぶわけにはいかない。姿勢を安定させながら、耐える。くっそ、なんでさっきは螺子で消せたのに今は駄目なんだよ!こん畜生!

 

「ぐ、ぎぎ……!」

 

「くう……!あ、あら?余裕こいてた癖して、結構きつそうじゃない?」

 

「う、うるさいっ!君だってきつそうじゃんか!」

 

 何だとー!こんにゃろー!と、弾幕ごっこ中なのに喧嘩っぽくなる僕ら。ふと紅白巫女さんの方を見たら、なんか白黒エプロンの女の子までいて「なにやってんだあの人達……」という目で見てきていた。うるせー仕方ないだろーと言い返したい。まる。

 

「く、そう!ごめんっ、や!」

 

「え?わあ!?」

 

 力押しじゃ武が悪いとわかったため、悪いと思いつつも不意打ちで弾を放った。見事命中して墜落していく。頭から。……うわやばいやばい!

 

「ちょ、間に合わないんですけどっ。【あの子の下にクッションがない事実】を反対に!」

 

 急いで能力を使うと、ぎりぎり間に合ってくれた。

 女の子は出現したクッションの上にポフリと落ち、その感触について混乱してる様子だった。特に身体に異常はないっぽい。ほっと一息をついた。

 

「さて、と。えと、吸血鬼ちゃん?僕の勝ちだよね、霧を消してよ」

 

 吸血鬼ちゃん(仮)に話しかけた。吸血鬼ちゃんは吸血鬼ちゃんって言うなー!と言った後に、悔しそうな顔をして言った。

 

「……ええ。その通りね。わかったわ、あの霧は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのとき。

 狂気が飛来した。

 

 それは人の形をしていながら人の心をしていなく、その場にいる者全てを飲み込むであろう闇を持っていて、その場にいる者全てを破壊しつくすであろう力を持っていて、その場にいる者全てを焼き尽くすであろう灼熱の刃を持っていて。

 というか、僕の右腕が破壊され、左腕が焼き尽くされた。

 

「「「「……え?」」」」

 

 その元凶以外、全員これに驚愕の声をあげた。あまりに突然のこと過ぎて、痛みすら感じない。

 ともかくわかるのは、その元凶は目の前にいる少女の形をした何か……否、少女の意識を完全にのっとっている何かだということ。

 その何か、『狂気』は少女の可愛らしい声で、にたりと笑いながら言った。

 

「アハハァ、お姉さまぁ。酷いじゃない。遊ぶときは、私も呼んでよぉ。ふふふふふ……!」

 

「フラン……!」

 

 フランと呼ばれた少女は、狂った笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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