STAGE-1 宵闇にかじられて
「さっさと倒れてほしいわね、帰りたいから」
「余裕ね。こんなに月も紅いから、本気で殺しちゃってもいいわよねぇ?」
紅色の月が妖しく輝きながら、雲の中へ隠れてゆく。
舞台は紅魔館上空。向かい合うは今回の異変の黒幕、レミリア・スカーレットと、博麗の巫女、博麗霊夢。
彼女達はこの場で、戦闘(という名の弾幕ごっこ)を始めようとしている。レミリアはある目的を達成するために、霊夢は異変を解決して睡眠を取るために。霊夢の動機が少々不純だが、紫としては異変解決してくれるのだから結果オーライだ。
「「……!」」
月の光が雲の隙間から溢れ出た瞬間、二人は弾幕を撃ち始める。二人の弾幕はどちらも凄まじい密度で、常人では数秒も持たないだろうーーが、流石、と言ったところか。霊夢は博麗の巫女としての意地を、レミリアは吸血鬼としての意地を見せ、危なげなく弾幕を回避していく。
「「スペル!夢符『封魔陣』(天罰『スターオブダビデ』)!」」
二人はほぼ同時にスペルカードを発動させた。レミリアの『スターオブダビデ』で蜘蛛の巣のような紅いレーザーと青い弾幕がどんどんと発射される。が、霊夢の『封魔陣』はそれを相殺。しばらくそれのサイクルが続き、どちらもスペルが終了した。
同時に、先程とは少々違った弾幕を発射する二人。しかし密度は変わらない……否、更に難易度は上がっている。
少々危ない場面が出てきたものの、なんとか避け続ける二人。しかし、レミリアは避ける方向を間違え追い詰められた。仕方なくレミリアはスペル宣言する。
「紅符『スカーレットシュート』!」
宣言した瞬間、色々な大きさの紅色の弾幕が霊夢を襲う。霊夢は自分の才能と此方に避ければ大丈夫(……な筈)という勘でひらりひらりと避け続ける……が。
「うぐっ!?」
経験不足か、レミリアの弾幕が霊夢の足首に直撃。僅かに隙ができる。その隙を逃すレミリアではーーない。
「これで終わりよ!神槍『スピア・ザ・グングニル』!」
スペルを宣言し、超高速で紅色の弾を霊夢へと投げつける。霊夢は避けようにも、避けれない。目では追えていても身体が反応できない。
だから、グングニルを回避する方法はない――
「らぁぁぁぁぁああ!」
――そう、例えば、突然の乱入者が現れたりしなければ。
少年はその手に螺子を持ちながら、その螺子でグングニルを貫いた。
いきなり何者かが乱入してきたこと、自分のグングニルが止められたことに驚愕するレミリア、少年が何者か困惑している霊夢。霊夢は弾幕ごっこ中ながらも、少年に問うた。
「あ、あんた誰……?」
「その前に一つ言いたいことがあるよ」
少年――否、想也は。
「人を不用意に傷つけないでよ。ここに来るまで何人傷つけてるのさ」
「……はぁ?」
弾幕ごっこ中ながらも、霊夢に向けて言い放った。
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僕がスケボーで森を疾走していると、金髪の少女が目に入った。見たことがある、サイズが違うけれど、ルーミアだ。妖力の総量から察するに何者かに封印されているらしい。
一瞬解除しようかとも思ったが、理由があって封印されたっぽいからやめておく。僕はルーミアに近づいて能力で治療した。
「これでよしっと。それにしても、一体誰がこんなことをしたんだろう」
一人言を呟きながらルーミアを背負って出発。木々を避けつつ、凄い勢いで進んでゆく。しばらく進んでいると、ルーミアが目を覚まして言った。
「……んー?あー…美味しそうな人間なのかー。いただきまーす…」
「痛い!」
ガブシと。
ルーミアが僕の頭部に噛みついた。ガジガジとされて、脳がぐわんぐわんとする。僕は急いで引き離し、腕に噛みつかせた。
「ガムガム……美味しいのかー…」
「痛い…!喋り方も完全に幼児退行してるなこれ。小傘ちゃんとかぬえとかみたいで可愛いけど」
ロリコンじゃありません、と付け足してみる。痛みに耐えながら前進すると湖に出た。これはラッキー、進路がわかりやすそう。
「よし、あっちだ!」
僕は方向を再確認して、スケボーで進んでいった。