東方事反録   作:静乱

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第47話 戦闘における、『攻撃』という概念

戦闘において、『攻撃』とはどういうことだろうか?ブレーンストーミングしてみよう。

 

相手を倒す為に必要な工程だろうか?最大の防御だろうか?………絶対に避けなければならないものだろうか?

 

さて、ここで考えてみよう。上記に記されたように、攻撃は絶対に避けなければならないものだろうか?

いや、確かに攻撃を全て避けないでいればいずれ身体に致命的なダメージを負い敗北してしまうだろうが。

しかし、だからと言って攻撃を全て避けていたならどうなるだろう?更に相手に隙がなかったらどうだろう?

その場合、ただ一方的に繰り出される攻撃を避けることになる。人間のスタミナは無尽蔵ではないのだ。最初はよくても時間が経過するにつれ身体は重くなりいずれは動かなくなる。そこに待つのは敗北の二文字だけ。

 

じゃあ、攻撃する隙を作るにはどうすればいいだろうか?ここで先程の話が出てくるのだ。攻撃は絶対に避けなければならないものか?

攻撃というのは誰であれ、避けたくなるものだ。相手の攻撃をくらえば痛みを感じ、最悪死に至る。だから避ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その攻撃にわざと当たることで、相手の動揺を誘うことができると、わかっていたとしても。

 

 

 

 

 

 

 

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「!?」

 

綿月依姫は困惑する。何故今の攻撃が命中した?自分で言うのも難だが、今のは自分でも単調な攻撃だと思った。避けられると確信できた。

 

しかし、想也は避けなかった。何故。

 

依姫は戦闘中なのを一時忘れて、何故彼に攻撃が命中したのか考える為に思考をフル回転させる。それが想也の、策略とは知らずに。

 

 

 

 

綿月依姫が自分の策略に気づく前に、想也は依姫に対して反撃を開始する。

依姫の腕を掴み、刀を離させ。腹部に刀が刺さる痛みに耐えながらも。

 

想也は綿月依姫に、全力の背負い投げを放った。思考することに気を取られていた依姫は当然ながら反応できず、勿論受け身を取ることも既に不可能だった。

 

ドォンーーーと。音がすると共に月面に小さなクレーターができる。依姫は肺の中の空気を全て失ったような感覚と、背中に激しい痛みを感じ胃の中の物が逆流してくるような不快感に襲われたが、そこは流石と言ったところか。依姫はすぐに起き上がろうとするーーーが。

 

そんな行動を想也が許す筈など、ない。依姫が起き上がろうとした時には既に、彼は自分で刀を腹部から抜き能力で治癒、そのまま螺を喉元に突き当ていた。反撃のタイミングすら、与えない。

依姫もこれではどうしようもない。少しでも動けば、首元の螺が突き刺さるだろうから。

自分の力を過信した愚かさに怒りを覚えながらも、依姫は敗北を認め………

 

 

 

 

 

 

 

 

想也は、周囲の警戒を怠った。

 

「………がふっ……!?」

 

想也の腹部を左から右へ光線が貫く。

想也は確かに、綿月依姫との戦闘においては幾多もの戦いを繰り広げて来た想也の経験と戦略で勝利を納めた。

しかし、想也は依姫という強者との戦いに必死になっていたせいで他にも月面で戦闘をしている敵を、計算に入れていなかった。

 

その敵が今、依姫の援護に到着した。簡潔に言えばただ、これだけのこと。

 

想也の誤算。

 

あの時確定した勝利は、想也の勝利だけではなかった。

 

「が、がふっ。う、ぐうぅ…!」

「依姫様!大丈夫ですか!」

「え、ええ。」

 

螺を突き付ける手が激痛により震えているのに気づいた依姫は、素早く想也を弾き飛ばし月人の元へ跳躍する。無様に転がる想也には激痛が走り、反射的に能力を使いそうになるが踏みとどまった。帰れなくなることに気づいたのだ。ここで能力を使い回復しても、勝利は不可能。依姫には背負い投げを一発かましただけ。大したダメージはない。相手は先程より更に多数。この戦力差で、どう勝てばいいのか。

 

「く、そ…う。ま、ぁ。逃がせ、た、だけ、い、いか。」

 

目の前が霞み、意識が朦朧とする想也。朦朧する意識の中、必死に能力を発動、【四季さんの近くにいない事実】を反対にした。瞬間、消える想也。月人と依姫は困惑したが、しばらくすると傷を癒すために都へと戻っていった。

 

 

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四季映姫は小野塚小町と共に想也が帰って来るのを待っていた。自分が許可を出したとはいえ、心配に決まっている。

 

「………結構たちましたね、四季様。」

「…そうですね。無事だといいのですが…」

 

その言葉を待っていたかのように、その言葉を呟いた瞬間想也が姿を表した。

 

行った時とは違い、腹部を横から何かに貫かれた姿で。

 

「っ!?小町っ!想也を医務室まで!」

「はい四季様!」

 

想也を背負い映姫と共に医務室へ向かう小町。想也は力無く、腕を揺らしていた。

 

 

 

 

 

 

八雲紫vs綿月依姫 依姫win!

黒橋想也vs綿月依姫 想也win!

黒橋想也vs依姫&月人 依姫&月人win!

 

 

 

 

 


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