東方事反録   作:静乱

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第43話 実は生きてた…なんてことなかった

「………死んだ…か。案外、不老不死も宛にならないな。」

 

結局、勝てはしなかったけど負けもしなかった。つまり相討ち。限界まで追い詰めて封印。それと同時にアレの妖力で僕、消滅。塵一つ残らなかった。

…あれ、これってどっちかって言うと僕の負けじゃね。………うん、相討ち相討ち。そういうことにしとこう。

閑話休題。

先述した通り僕は死んだ。これは紛れもない事実の筈だ。因みに能力は封じられている。しかし、だとしたら今思考している僕は何者だ?いや、記憶があるからばっちり僕なのだろうけど。

 

そもそも此処、何処だ。遠目に川らしき物と鎌持った女の子がいる辺り、あれは三途の川であの子は死神か。多分そうだ。きっとそうだ。

ここでぐだぐだしてても仕方ない。彼処まで歩いてみることとしようか。と、歩み始めると横で小さな子供達が石を積み重ねている光景を見つける。

昔聞いたことあるな、そう、確かあれを自分の背丈(だっけ?)ほど積み重ねられたら天国に行けるーーーっていうかんじのやつ。でも鬼が邪魔するんだっけ。助けてあげたいけど、今の僕に戦闘を求めるのはなぁ。僕の戦闘って7割くらい能力の恩恵を受けてるし、その能力が封じられてる今。この身体一つで鬼と戦うことになったら…うわ、ぞっとする。

 

というわけで、心の中でごめんね、頑張って…と応援して三途の川(仮)に向かう。

大分近づくと、鎌持った女の子が此方に気づいた。此方だよーと言わんばかりに手を振ってくるのでとりあえず手を振り返す。あ、今あの子苦笑した。手を振り返すという僕の呑気な行為に対しての苦笑だろうな。なんか恥ずかしい。

 

「あんた、面白いねぇ!まさか手を振り返してくるとは思ってなかったよ!」

「まぁ、礼儀かなーと。」

「そうかいそうかい!あっはっは!」

 

テンション高いなこの子。とりあえず、僕はどうすればいいんだ。

 

「あの、僕はどうすればいいんですか。多分死んだと思うんですけど。」

「おっと!そうだったね。あたいも仕事しなくちゃ四季様に怒られちまうよ。あんたの有り金、ちょいと全部渡してみな。」

「有り金?」

 

そんなものあったっけ…と思いながらポケットとかを探る。……全然ない。二百三十五円と百円にしては美味しいクッキーしかない。

 

「このくらいありますけど。あとクッキー。」

「………少なすぎやしないかい?他人があんたに使ってくれた金がたったそれだけって…」

「まぁ、僕は奢られるより奢る方が多かったですし。」

 

そういうシステムになってるんだ。生前他人が自分に対して使ってくれたお金が死んだ時の有り金になると………じゃあ、僕が奢ったことのある人達はお金いっぱいになるわけだ。よかったよかった。

 

「じゃあ、どうぞ。」

「あ、そうだったね。仕事しなくちゃ!さ、乗りな!のんびりと向こう岸まで乗せてってやるよ!」

「どうも。」

 

僕は小さな子船に乗り込み、向こう岸へと向かい始めた。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

「あんた、名前は?あたいは小野塚小町っていうんだ。小町でいいよ。敬語もなしでいい。」

「そっか。僕は黒橋想也。宜しく小町。」

 

自己紹介をする僕と小町。そういえば、この世界の人達ってなにかと呼び捨てで呼ぶようにするよなぁ。何故だろう。

 

「じゃあ想也。あんたはどんな死に方したんだい?」

 

あ、それ聞くんだ。結構情けない死に方なんだけどなあ。あはは。

 

「いやぁ。情けない死に方しちゃって。西行妖っていう名状し難い桜のような物体を封印しようとしたんだけど、いやー失敗失敗!封印はなんとかできたんですけど、僕もそこまで持ってくのにダメージ食らいすぎて最後の足掻きの妖力食らって消滅したよ。」

「…………えっ。なんだいその壮大な戦い的なものは。」

「あはは。そうだ、西行寺幽々子って人がちょっと前に来たと思うんだけど、その人どうなった?」

「ああ、確か亡霊として幽霊管理をしてるって噂になってるよ。」

「えっ。」

 

えっ。幽々子さん、亡霊になって幽霊管理してるの。えっ。ちゃんとした死者はまさかの僕一人。いや、でも。

 

「よかったぁ…」

「?知り合いだったのかい?」

「まぁね。よかったよ本当に。」

「そうかい。」

 

幽々子さんが亡霊としてでも生きてる(か?)ということがわかっただけ嬉しい。………できれば僕も生きてたかったかな。もっと。

 

「さ、ついたよ。お疲れさん。」

「いやいや。僕は疲れてないよ。疲れるのは漕いでいた小町さ。ありがとね。ばいばい。」

「おー。ばいばい想也。」

 

僕は小町に別れを告げて、裁判所的なところへ向かった。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「次の者。入りなさい。」

 

どうやら僕の番のようである。僕はどうなるのかな、天国に行きたいかな、個人的には。

扉を開けて前へ前進。被告人が立つようなところへ立って、裁判長的なたち位置であろう人を見る。視認できたのは、小傘ちゃんやぬえと同じくらいの背丈の少女だった。ーーーへぇ。よくやるなぁ、こんな可愛い子が閻魔大王様なんだ。

 

「改めましてーーー私が貴方、黒橋想也を裁きます、四季映姫・ヤマザナドゥと申します。どうぞ宜しくお願いします。」

「あ、これはご丁寧に閻魔様。宜しくお願いします。そうだ、ちょっと僕を裁く前にお聞きしても宜しいでしょうか?」

「…?内容によります。」

 

自己紹介を終えたあと、僕はさっき小町に聞いたことを四季さんにも聞いてみることにした。

 

「あの、西行寺幽々子さんは元気にしてますか?」

「…!えぇ。生前の記憶はありませんが、今は生前の友人と共にもう一度友好関係を作り直しています。心配は必要ありません。」

「…そうですか。よかった。」

 

今どうしているか細かく教えてくれた。うん、悔いはないかな。幸せに暮らせてるんなら十分どころか十五分。よかったよかった。

 

「では、始めましょう。まず最初に、貴方の過去の出来事をこの『浄玻璃の鏡』で見させてもらいます。」

「はい。」

 

と、返事をしたはいいものの。過去の出来事覗かれたらやばくね。それはもう色々と。………ま、いっか。どうしようもない。僕が開き直ってニコニコとしていると、四季さんは驚くような顔をした。あ、これ絶対転生したことばれたわ。

 

「………皆さん、席を外して下さい。少々この方にお話があります。」

 

その言葉を聞くと同時に、部屋にいる人達が急いで退散していく。あれ、これなんかやばい気がする。いやでも逃げれないし。僕が思考を巡らせていると。

 

「被告人、黒橋想也。そこに正座なさい。」

「はい。」

 

逆らおうとも思えなかったです。閻魔様オーラが出てましたやばいです。どうしよう怖い。僕が得体の知れない恐怖を感じていると、四季さんが口を開いた。

 

「いいですか?まず、転生ってなんですか転生って。元いた世界の神様はそんな理由で貴方を転生させたんですかそもそも………」

 

その後、四季さんのお説教は三時間ほど続いた。死にたい。正座辛いやばい。あとのことはまた次回。ではまた来週、この時間でお会いしましょう、語りべは僕ことそーちゃんでお送りしましたー。

 

 

 

 

 

 

     


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