………よく寝た。今日も気持ちが良い朝だ。上半身だけを起こして伸びをする。起きた時にするといいよね。さて、小傘ちゃんはまだ寝てるようだけど聖さんは起こした方がいいだろう。聖さんが寝ている布団に近寄って肩を揺する。
「聖さーん？朝ですよ。起きて下さい。」
少し声をかけるとすぐに目を開けた。僕の方を向いてクエスチョンマークを浮かべたような顔をして………顔を赤らめた。同じようなことがこれで三回目な気がする。どうしたんだろう。
「そ、想也さん！？こ、これはもしかして、よ、よ、夜這い…！？」
「？え、何それ？いや、とりあえず朝ですよ聖さん。」
聖さんの言葉に疑問を浮かべながらも用件を伝える。聖さんは我に返ったような顔をして飛び起きた。
「そ、そうですか！ありがとうございます！で、では！」
「あ、はい。」
僕に感謝を述べて足早に部屋を出る聖さん。なんか、最初に会った時とは随分印象が違うな。最初の時は村紗を助ける格好いい頼れるお姉さん的な人だったけれど、今は頼れるお姉さんというより、可愛い天然お姉さん的な印象が大きいな。いつもはこんなかんじなのかな？今度村紗とかに聞いてみるかな。ていうか、小傘ちゃんはいつまで寝てるんだ。流石に寝過ぎだろう。寝る子は育つというけれど、寝過ぎは駄目だ。気持ち良さそうな顔をして寝てるけど、起こそ。
「小傘ちゃん、朝だよ。起きて。」
「ﾑﾆｬﾑﾆｬ…そんなとこさわっちゃ駄目だよ～お兄さん…♪」
「なんて夢見てんだこの少女。」
想像する限り恐ろしい夢を見てやがるこの子。見た目が可愛らしい少女なだけにこの台詞は衝撃的なんだが。……聞かなかったことにしよう、この子は可愛い僕の妹だ。そう言い聞かせるんだ。うん。
「起きてー。」
「うー…ん？あ、お兄さん！おはよー！」
「わっ。」
ガバっと僕に抱きついてくる小傘ちゃん。もうちょいで後ろに転がるとこだった。危ねぇ。小傘ちゃんは僕から離れない。動けないんだけど……
「あの、小傘ちゃん。動けないんだけど。離れて。」
「お兄さんニウムを摂取したらねー♪」
「なにその何処かの混沌に好かれた少年の母親が少年から摂取してる養分みたいな名前。」
この世界に這いよる混沌はいるのだろうか。いないだろう、多分。ていうか動かさせてくれ。
「よいしょ。」
「あぁっ！お兄さんっ！やめっ！」
「変な声を出さないでよ！何！？小傘ちゃん見た目と中身が比例してないよ！？」
小傘ちゃんの脇を掴んで僕から離したら変な声を出した。誤解されかねないから止めてくれ！殴られたくないんだよ！
「ほら、居間へ行くよ。朝ご飯だから。」
「本当！？わーいっ！行こう行こう！」
「食べ物で釣れた。」
食べ物で簡単に釣れた小傘ちゃんと共に、僕等は居間へ向かうのだった。
～～～～～～～～～～～～
「お兄さん！はい、あーん！」
「「「「「「え？」」」」」」
聖さんが作ったご飯を食べている時、事件は起こった。なんということでしょう、小傘ちゃんが爆弾発言をしたあげく、純粋な笑みを浮かべて箸を差し出しているではありませんか。いや、どうしろと。これ食べないと小傘ちゃん悲しむよね。でも、皆が僕を見てるんだけど。
聖さんと村紗はなんか怖い笑みを浮かべてるし、一輪は早く食べれば？的な顔で見てくるし、ナズは君も大変だな…と、哀れみの目で見られるし、星はどうするんですか？と聞くような顔をして見てくる。小傘ちゃんは変わらず笑みを浮かべている。
………とりあえず、悲しませるのは駄目だろ。
「………あ、あーん。」
「あーん♪えへへー！」
にぱーと笑顔を浮かべる小傘ちゃん。それはいいんだけど、村紗と聖さんからの視線が怖い。と。
「想也！この前のお返しだよ！あーん。」
「えぇ！？」
村紗は小傘ちゃんと同じように箸を差し出してきた。なんでぇ！？いや、いただくけどさ、一応。
「あ、あーん。」
「あーん！」
にこーと笑顔を浮かべる村紗。いや、何コレ？なんで僕は二人の女の子からあーんってされてんの？わけがわからないんですけど。この状況が。僕はどうしろと？そこへ。
「そ、想也さん！箸が止まってますよ！具合が悪いんですか！？じゃあ私が食べさせてあげます！」
「聖さん！？」
聖さんが入ってくることによって更に状況はカオスになる。いや、なんで？どうしてこうなった？村紗や小傘ちゃんがしてくるのはまぁわかったよ？村紗はお返しって言ってたし、小傘ちゃんはきっと拾ってくれたお礼的なものだろう。いや、でも聖さんがくるのはわからない。なんでぇ？
「いや、大丈夫ですよ？自分で…」
「いえ！大丈夫じゃないかもしれません！ど、どうぞ！あーん！」
……うん。まぁ、貰えるものは貰っておきますかー。
「あ、あーん。」
「はい！どうですか！？」
「…お、美味しいですよ？」
「そうですか！」
安堵するような顔をする聖さん。味を確かめるためだったのだろうか？もうそれでいいや。結論付けた僕は残りのご飯を食べようとして………
「「「残りも食べさせてあげるよ(ます)！」」」
「いや、大丈夫だよ！？」
結局、全部食べさせてもらった。なんで？
後日、ゆかえもんが見ていたようで、笑われた僕であった。