散歩。特に目的地も決めず、適当に歩く行為のこと。この行為は非常に心が落ち着く。この世界には妖怪が多く生息してるため、ただの人間が都の外を彷徨いているのは自殺行為にしか思えないが、生憎僕はこの辺りの妖怪と知り合いだし、ただの人間ではない。
ともかく、今日も食料提供を終えた僕は目的も無く、その辺りを彷徨いているのだったーーー命蓮寺の皆には既に言ってあるから問題は無い。因みに今日の朝は起きたら雲山が同じ布団にいました。昨日とは違う意味でびびった。ま、今はゆっくりと散歩を楽しむこととしよう。しばらく歩いたあと、森の中で横になり目を瞑る。風の吹く音や、それによりカサカサと木の葉が掠れる音が聞こえる。やはり自然というものは良いものだーーー心を潤してくれる。
僕はどこぞのナルシスホモじゃあ無いけれど、これこそが地球が生み出した最高のものじゃないだろうか。その自然を僕が元々いた時代ではどんどん削っていたのだ。僕もそんな生活を満喫していた時があるから強く言えないけれど、自然を削るというのは相当愚かな行いではないのだろうか。これからは自然も大事にしていこう。
と、そろそろ本格的に眠くなってきた。目を瞑っているのに+して、風や木の葉の音が子守唄のように心地よいものとなっている。ここで寝たら起きるのは恐らく夜、又は夕方。せめて寝るなら命蓮寺で寝ないと…しかし、襲いくる睡魔に耐えきれず、僕は深い眠りに落ちた………
~~~~~~~~~~~~
「ふわぁ………寝ちゃったか………うわ、もう夜だ。」
予想通り、起きた時には既に夜になっていた。月の位置的に11時頃だろうか?寝過ぎだ僕。とりあえず早く命蓮寺に戻らないと。と、早速僕は命蓮寺の方へ歩き出す。道は覚えているから、問題は無い。しばらく歩いていると森を抜けた。もうすぐ命蓮寺である。歩幅を大きくして歩き続ける。
「………………?」
ここで、僕は紫色の唐傘を見つけた。結構ボロボロ。何でこんなところに捨ててあるのだろう?あんまり人間はこの辺りにはこないのに………まぁいっか。それにしても勿体ない。まだまだ使えるじゃないか。この傘も可哀想に………
「……よっ。」
折角だから、使わせてもらおう。最近傘が欲しいかなーと思っていたところだし、この傘もきっと使ってもらって嬉しい……筈。一石二鳥だ、きっとそうだ。その傘を持ちながら、僕は上機嫌で命蓮寺に帰るのだった。
~~~~~~~~~~~~
「………もう寝てるね、皆。仕方ない、いつもの居間で夜を越そう。ついでに傘の修理もしよ。」
案の定、皆寝ていた。今日は聖さんのとこで寝る日だったけど、今の時間から入ったら起こしちゃうかもしれないし、びっくりするかもだしね。さて、傘の修理…………
「………君、誰?」
「わからない?わちきは貴方が拾った傘だよ。」
「そのキャラ作り、似合ってないよ。やめな。」
「そう?じゃあやめる。」
気づいたら傘が青い髪の少女になっていた。どういうことだろう。いや、まあ、彼女が持ってる傘に目と舌があることから見て確実に妖怪なんだろうけど。じゃあ、それこそどうしてあんなとこでボロボロになってたんだ?
「君があの唐傘だってことはわかった。でも、何であんなところでボロボ…」
まで言いかけたところで、彼女の腹の虫がぐぅぅ~~となる。赤くなる少女。まさかお腹が空いてあんなところに転がっていたのか?そいつは大変だ。能力で林檎を出して彼女に渡す。
「え?」
「食べなよ、お腹空いてるんでしょ?見たところ唐傘お化けのようだから人を驚かせた時が一番お腹が溜まるんだろうけど、今は驚かせる人がいないしね。」
「……ありがとうっ!」
僕の感謝を述べると同時にムシャムシャと林檎にかぶりつく少女。よっぽどお腹が空いていたんだろう。あっという間に完食してしまった。少女の顔は笑顔に溢れている。良かった良かった。
「美味しかったー!お兄さんありがとう!私は多々良小傘!宜しくね!」
「小傘ちゃんだね。僕は黒橋想也。宜しく。」
自己紹介を済ませると共に抱きついて来る小傘ちゃん。妹みたいで可愛い。なんかこう、年下の子に抱きつかれたりすると、守ってあげたくなる的な何かが出てくるよね。母性本能的な何かが。……僕は母親か。
「私、傘の時に、随分前に捨てられたの。それから誰も気にもしてくれなくて、拾ってくれたのは想也お兄さんが初めてなんだ!だから、私ずっと想也お兄さんの傘として着いてくよ!」
「あはは!ありがとう。」
なんと健気で可愛い子だろう。ていうか、小さい子は健気な子が多いよね。純粋って言うか。そういえば前世の時も妹とかがいる友達の家に行くとすごいなつかれてたんだよね。友達に「お前は小さい子からもモテんのかよ…」って言われてたけど、どういうことなんだろう。とにかく、小さい子は純粋だから健気。だから可愛いんだね。ロリコンじゃないよ。小さい子は純粋で健気だから可愛いって思ってるだけだよ。
「とりあえず、小傘ちゃんも眠いでしょ?寝たら?」
「うん、そうだね…お休み…」
「え、ここで?」
僕が言うと、小傘ちゃんは同意したあと僕の膝の上に頭を乗っけて眠ってしまった。………これ、僕寝れないや。
結局僕は、このまま小傘ちゃんが起きるまでずっと膝枕をしているのだった。まぁ11時頃まで寝てたしね。因みに最後の方は膝が超痛かったです。
そして夜が明けると、聖さん達の「何処へ行ってたんですか?」とか、「その子は誰?」とかの質問の嵐が吹き荒れ、僕は非常に疲れたのでありました。