家が無くなった。
否、木片になった。まぁどっちみち同じである。住むとこが無い。いや、怒ってはいないけど。聖さんが「すいません!すいません!」って涙目になりながら言ってくる状況で怒る気になれる人がいるのか。いや、いない。少なくとも僕は怒る気になれない。そもそも怒ってないし。
しかし困ったな、住居が無いというのは死活問題だ。能力で作ってもいいんだけれど、都の家建築を仕事としている人に儲けさせてあげたいんだよな。かと言って、その間どうする。寒さを凌ぐ場所が無い。能力使ってもいいけど、この世界に来てから能力に頼ってばかりだし………
僕があれこれ迷っていると。
「あ!だったら家ができるまで命蓮寺で住めばいいんじゃない!?」
と、村紗が言った。それはどうなんだろうか。多分名前からしてお寺なわけだし、僕がいたら迷惑なんじゃないだろうか。精進料理は好きだけどさ。修学旅行で食べた時美味しかったし。
…これはあれだな。聖さんに聞こう。
「聖さん。」
「ひゃい!?」
声が裏返ってた気がする。よく見たらすっごい顔赤いんだけど。え?どうしたんだ聖さん。熱?ついさっきまで真剣に村紗を探していたから、その疲れが来たのか?一応聞いとこう。
「あの…大丈夫ですか?顔も赤いし、なんか声も裏返ってたし…」
「あ、だ、大丈夫です!何ですか!?」
…?本当に大丈夫なんだろうか。なんか焦って返したようにも聞こえるし、心配させたくないのだろうか。
僕がそう考えている時、気づかなかったけれど村紗が悪い顔をした。そして、こう言った。
「本当?もしかしたら大丈夫じゃないかもしれないし、本当に熱があるか確かめてみてよ想也!」
と。
確かに口で大丈夫と言っていても実は大丈夫じゃ無かったっていうのはよくあるパターンだな。うん、ナイスアイディア。
「む、むむむむむ村紗ぁぁあ!?」
「それもそうだね。確かめよう。」
「えぇ!?」
どうして聖さんは焦っているのだろう。やっぱり心配させたくないのか。そんな気遣いしなくてもいいのに。そう思いながら聖さんの額に僕の額をつける。………んー。
「あわわわわわ………」
「やばいよ。みるみる熱が上がってる。早く看びょ………どうしたの村紗?」
村紗の方を向いたら後ろを向いて小刻みに震えていた。何がどうしたんだろう。腹痛?随分とカオスな空間になってない、これ。聖さんは熱(と、想也は思っている)、村紗は腹痛と怪我(と、想也は思っている。半分は正解だけど)、周りにあるのは砕け散った木片。
…うん。まさに混沌。とりあえず。
「ねぇ村紗。命蓮寺まで案内して。」
「うん、わかった!でも動けないから背負ってね!」
「あれ。聖さん気絶しちゃった。どうやって二人連れてこう。」
試行錯誤した末、女の子(村紗)を背負って女性(聖さん)をお姫様抱っこして飛ぶ少年(僕)という、奇妙な状況が出来上がったのだった。
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「もうすぐだよ!」
村紗の声がうっすらと聞こえました。あれ?私は何を?
そう思った私は状況確認をしようと目を開けて。
「…あれ?あ、目が覚めたんですね聖さ………あれ?聖さん?聖さーん!?」
また意識が飛びました。
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あ、ありのまま今起こった事を話すよ!
『僕は聖さんが起きたと思って声をかけたらまた気絶してしまった。』
何を言ってるかわからないと思うけれど僕も何が起こったのかわからなかった……
気のせいとかそういうものじゃ断じてない、もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ………
と、安定のポル○レフネタをしたところ、僕は馬鹿じゃないのかと思った。
それにしても、聖さんはどうしたんだ。起きたと思ったらまた気絶しちゃうし、村紗は村紗でなんか爆笑してるし。
まぁいい。見えてきたぞ。
「あれだよね?」
「うん!彼処が『命蓮寺』だよ!」
というわけで、遂に勇者ソウヤ一行(?)は最強の武器が眠る場所(大嘘)、命蓮寺へ辿り着いたのだった。