FAIRY TAIL~魔女の罪~   作:十握剣

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冥府の門(タルタロス)とか凄い闇ギルドがまた出てきましたね!
でも最強の闇ギルドは『悪魔の心臓(グリモアハート )』だと思ってます(勝手な妄想)


今回のザンクロウはどうなのだろう(((・・;)

読者の皆様の反応が怖いです


第8話「大魔闘演武予選、開始」

「流石はフィオーレ王国が首都・花咲く都《クロッカス》! ものすげぇ活気だってよ」

 

 年の一度の大祭である『大魔闘演舞(だいまとうえんぶ)』翌日の王都では、正に賑わいが大盛況となり見物人や観光客などで大いに賑わっていた。

 そんな賑わいの声が大いに張り巡る中、漆黒のフードをマントのように靡かせて歩くのは金色の髪を獅子の(たてがみ)のように尖らせ、紅色の渦巻き状の瞳をギラつかせているのは元最強の闇ギルド《悪魔の心臓(グリモアハート)》の七眷属が一人、『炎の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)』であるザンクロウであった。

 そんなザンクロウはまるで周囲の目を気にすることもなく堂々と首都・クロッカスの中央区へと続く中央道を笑みを浮かばせながら歩いていた。

 本来ならばザンクロウが取っている行動は自ら『捕まえてください』と自己アピールをしていることになるのだが、俗に言う逆手にとる方法でザンクロウは首都を守護する騎士隊や警備隊に見られても見咎められないようになっているのだ。

 

 その堂々とした理由の一つは、

 

「おい。そこのお前」

 

「あん? オレっちの事かい?」

 

 ザンクロウは中央道に広がる露店などを眺めながら歩いていると、人の群れから一際目立つ騎士甲冑を纏った一人がザンクロウに話しかけてきた。

 

「お前・・・どこかで見たような顔だな」

 

「おっ! オレっちを知ってるのか! いやぁ、やっぱりモテるワイルドなオレっちには何処に行ってもバレてしまうもんだってよ」

 

「あー違う違う。お前の有名云々の話ではない」

 

「あっ? じゃ男がオレっちに惚れたのか?」

 

「なぜ惚れる前提なのだ! どちらかと言うとお前悪人面だ!」

 

「オイィてめぇ! 初対面に言う台詞かコラァ!」

 

 明らかに自ら悪化させていくザンクロウに、何故か騎士は怯む。

 

「ま、待て。事を荒立てる訳にはいかない」

 

「おー? そいつァはナンデだぁ?」

 

 言葉に詰まる騎士に、ザンクロウは傍らまで近付き騎士の首に腕を回す。騎士にしか聞こえない声量でザンクロウは笑みを浮かばせて呟く。

 

「(アーその理由ってーのは・・・・明日の『大魔闘演舞』関連なんじゃありませんかねぇ?)」

 

「・・・・・ッッ!?・・・」

 

 明らかに怯んだ騎士に、ザンクロウは腕に力を入れて揺れる甲冑を静かにさせる。

 

「(そして、それは騎士隊の不備(・・)によるモンだ。違うか?)」

 

「(な・・・・なにを言う)」

 

「(アッハッハ・・・・しらばっくれんなよォ。オメェも小声になった時点でソレは確定しただろ、その不備の件はよォ)」

 

「・・・・グッ」

 

「(本来、騎士隊と警備隊が連携して明日に開かれる祭の会場の整理や警備を命じられていたお前らは、ある不出来を起こした。アァそれはこの一週間の間かァ? まぁどっちでも良いが、何故それが今日まで問題にならなかったと言うと、それはとても簡単に済む話だったからだ)」

 

 ザンクロウの言うように、王都・クロッカスで開かれるであろう『大魔闘演舞』の会場となるクロッカス西方の山に作られた演舞会場『ドムス・フラウ』の警備を任されたのは王国に仕える『騎士隊』と街の治安維持などを主とした魔導士たちが集う『警備隊』の二つの部隊だった。

 だが、大なり小なりこの二つの部隊は軋轢(あつれき)を産む衝突は王のお膝元である《クロッカス》でも多少起きていた。だが、それを上手く鎮静にへと繋ぐ為、王と重臣たちはこの二つの部隊を同時に今大会の目玉でもある『大魔闘演舞』会場のドムス・フラウの協力体勢で警備を任せた。という話が城下町まで広がっている情報だった。

 

 王の大言を無下にする騎士や魔導士たちは居らず、当初不安に煽られていた二隊協力体勢だったが、この大祭翌日まで何事もなく続いてきたことは今の街中の賑わいが証拠になっているだろう。だが、やはり小さな傷口から逃れる事は無かった。

 

「・・・・最初は睨み合ってた騎士隊と警備隊だったんだが、一緒に仕事をしていくにつれてどんどんと和解していったんだ。よく互いのことを知らなかったから衝突が多かったんだと知った。だが・・・次の問題が発生した」

 

 ザンクロウと騎士は中央道では目立つということから、脇の道端に展開されて露店型レストランで共にご飯を食べるという奇妙な構図を展開しつつ、出されたコーヒーを飲みながら騎士はザンクロウにへと語った。

 

「険悪だった騎士隊と警備隊の中で、その、れ・・・恋愛事が生じることが起きてしまったのだ」

 

「それが何がいけないってよ? 男と女が居りゃあそうなるや」

 

「・・・前までの私ならそれを咎めただろうな。騎士たる者が忠義以外で剣を抜くなと・・・・だが、私は、恋に落ちた」

 

「オッ、なんだ? ノロケか?」

 

 途端にザンクロウが『へっ・・・』と鼻を小指でほじりながら他所を向く。

 

「そう。私は魔導士の女性と恋に落ちた。その女性は警備隊と整備隊にも所属していて、ある晩、二人でデートをしていた時だった」

 

「オーオー早ぇな王都の騎士男子は、それで何で不備(・・)が起きた。普通にデートでもしてりゃァ何のトラブルも起きそうに無ぇだろ」

 

「あの夜、彼女が整備担当していたであろう【宿屋】に泊まったのだ。彼女の仕事が終える前に熱い一時を・・情熱的な夜を─────」

 

「誰がテメェのチェリー卒業の話聞かせろ()ったよゴラァ! フビだ不備! 原因教えろ()ったんだよ! あぁー聞く気失せるぅー!」

 

「ど、どうして私が純潔たる騎士だったことをしっている!? きっ! 貴様もしやパパ上の差し金だな!?」

 

「とんだ坊っちゃんだってよォ! なぁにが純潔たる騎士だ! 純潔たる()()だろ!?」

 

「く、屈辱的なルビ!」

 

 脱線へ脱線へと、段々と騎士までもが店員や客たちに怪しい眼差しで見られてきた頃、騎士は真顔になって再び話を振る。

 

「話を戻すが───」

 

「テメェが脱線してんだろがァ」

 

「彼女と一夜を共にした後、朝一番に勤務にへと付いたのだ」

 

「アァ?」

 

「・・・そうだ。帰ってしまったのだ。整備(・・)をしないで・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 あのザンクロウが阿呆を見るような目でこの王都クロッカスを守護しているであろう騎士の一人に情けない眼差しを向けて大きな溜め息を吐いてやる。これは相当に情けない話である。

 下手をすれば騎士剥奪まで脅かす行為をしてしまったのだから、それも若さ故の過ちだとザンクロウは大分年老いた頭で、話して分かった若い騎士に言葉をかける。

 

「まぁぶっちゃけると知ってたわ」

 

「えっ?」

 

「先に彼女の方がオレっちの相方と会って話を聞いてる頃だろう。さっきも出てきたが、お前の父親からの依頼でもあった」

 

「なっ!」

 

「言いたいことは分かる。騎士にまでなって親に頼ることもそうだが何故彼女との付き合いまで知っていたのか。それも答えよう。お前の父親とはオレっちのお得意先でな・・・結構有名な魔法道具屋からの魔法道具を譲ってもらったりして今みたいに依頼を受けたりする。つまり──────」

 

「つまり、私や彼女たちの付き合いを調べたのも───」

 

「オレっち」

 

「さっき中央道で出会ったのも───」

 

「偶然じゃねぇ。オレっちがお前のパパ上から譲って貰った魔法道具で意図的にこうなった、という訳だ」

 

 騎士は机を叩き上げそうになるのを必死に堪えた。まさか騎士にまでなって親の手を借りるとは、と。

 

だが、

 

「でも・・・分かってたかもしれない。私の父親は異常なまでに神経質だから、周りに起きた出来事を最低限まで調べ尽くすから」

 

「だがそれだけじゃねぇってのも分かるだろ? オメェの父親は息子が悪い連中に命狙われてねぇか心配だったんだからよォ」

 

 ザンクロウが王都でも堂々と巡り歩けたのはある人物との繋がりかあったからだった。その者から魔法道具を譲り受け、自由闊歩することを可能にしていたのだった。

 

 そのザンクロウの協力者は、魔法界全体の秩序を保つためにルールを取り決めている機関【評議院】議員の一人だった。

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 ザンクロウと若い騎士が互いに話し合っている頃、その騎士と付き合っている女性と、ザンクロウと同じく『悪魔の心臓(グリモアハート)』に七眷属に居た伸びたピンク色の髪をポニーテールに纏めたメルディが整備をしなかったであろう宿屋の前まで来ていた。

 

「ここがそうなの?」

 

「あっ・・・はい。ここです」

 

 先程、赤裸々に話した内容からずっと口ごもっている女性に、メルディもどのような反応をしていいのか分からず仕舞いだった。

 そもそも、王都クロッカスに入ること事態メルディは了承せずにザンクロウに連れて来られたかと思えば、いきなり『依頼を手伝って欲しいってよ』とか言ってきた時は、【魔力の剣(マギルティ=ソドム)】を突き刺してやろうかと思ったが、折角都に来れたのだから観光もしたいという欲求に負け、ザンクロウの手伝いをしてしまっている。

 

(はぁ~・・・せっかくならウルと来たかったよ~)

 

 よくもあの二人も承認したものだと、メルディは都を巡ってるときに思った。まずウルティアがザンクロウを叱るのかと思っていたのだが、逆にザンクロウの案を喜び、メルディに勧めて行かせてくれたのだった。

 

「あ、あの整備終わりました!」

 

「ひゃあ! び、びっくりした」

 

 思考に耽っていたメルディに思いっきり大声で整備完了の報告してきた女性に思わず可愛い声を上げてしまい。一人赤くして彼女と向き合う。

 

「あ、あの! 本当にありがとうございました! ずっっと気になってて安心して眠ることが出来ませんでした! ワタシの不注意で彼を騎士隊を辞めさせるくらいまでのご迷惑を掛けて本当に大勢の人を巻き込ませる問題にまで発展したことが心苦しくてつらくて、泣いちゃうくらいビクビクしてました・・・! だって・・・整備できるのはその日しか無くて、他の時間帯では宿屋の許可が下りることも無くて、上司にも仲間にも、親にも話せなくて・・・でもそんなの自分がしっかりしてないで失敗したことだし・・・・・・うっう!」

 

「大丈夫よ。もう大丈夫。安心していいの。だってアナタが今しっかり整備したんでしょ?」

 

「うっう・・・グス、はい」

 

「ならもう心配いらないじゃない。でも、絶対に次からはこんな事起きないようにするのよ? アナタだけじゃなく彼も、そしてもしかしたら大勢の人たちが迷惑を掛けたかもしれないのよ?」

 

 警備隊兼整備隊にも所属している彼女だから想像したのか、自ら起こした整備不備による被害を連想させてまたも涙声になって一人謝る整備隊の彼女。メルディは優しい声色で頭を撫でて上げる。

 

「だから、次は失敗しないようにね? そんなに泣かないで、アナタは自分のした失敗を真正面から受けて、反省し、次はしないことを学んだわ。だったらもう泣くんじゃなくて・・・前を向こうよ」

 

 ぎゅっ、と彼女の手を握って、メルディがこの7年間感じ学んだことを彼女にも伝える。数年前までは感情なんて入らないと考えていたというのに、

 

「ね?」

 

「・・・グス、うん。絶対に失敗しない」

 

 うん、とメルディも自然と笑顔となった。

 ハッキリと言って、このような依頼は久しぶりだった。

 

 ザンクロウと同じく正規でも闇ギルドでもない独立ギルド『魔女の罪(クリムソルシエール)』での依頼はやはり闇ギルドの討伐や、ゼレフの情報収集など裏による仕事が多かった。

 勿論、メルディたちが行ってきた罪を考えればそれは罪滅ぼしになるかならないかと問われたら小さな行為だったかもしれない。しかしメルディも常に気を張っているのには疲れていたらしい。今日受けたこの依頼は、少なくとも整備隊の彼女に悪いが普段請け負う依頼よりあらゆる【悪】が無く、気が楽になったような気がした。

 

「おーい。そっちは終わったかー?」

 

「あ、ザンクロウ!」

 

 涙流す警備隊の女性に、メルディはハンカチを取り出して涙を拭ってあげる。

 

「もー長くない? もう終わっちゃったよ?」

 

「あぁ? 終わっちまったか。仕方ねぇな、あの騎士くんもすぐそばまで来てたから行ってあげなよ姉ちゃん」

 

 メルディに感謝の言葉を送ってからザンクロウの言葉に、警備隊の彼女は反応する。

 

「わ、分かりました! す、すぐに説明して・・・───」

 

「そしたら二人はもう通常勤務に戻ってオッケー。これにてオレっちたちも観光に戻るってことでオッケー終いだぁ」

 

 メルディも依頼に関しては説明していたが、騎士の彼と共に二人で改めて礼が言いたいと言ってきたが、ザンクロウがやんわりと断った。

 ザンクロウから貰った魔法道具『不可侵の耳飾り(ミラージュ・イヤリング)』の効力もあり、余り長時間使用することが出来ないのだ。

 

 大丈夫だから、とメルディの言葉にも重なったことで整備隊の彼女も深く頭を下げて、彼の元へと戻って行った。

 

「《不可侵の耳飾り(ミラージュ・イヤリング)》は使用者から発した声量領域から認識を戻されるが、ある程度時間を置いたり、相手を一瞬でも気を逸らすと気配や認識を消えることが出来る魔法道具。かなりの高額だったんだぜ」

 

「よく手に入ったものよ」

 

 宿屋の前は人通りも少なく、熱気が溢れる街中とは違う落ち着き払った通路で、メルディとザンクロウは二人で座れる場所を探しながら話した。

 

「この依頼。メルディも分かったようだが、明日の『大魔闘演舞』の〝予選〟の為の〝競争〟が行われる」

 

「えっ? そんなの前回の大魔闘演舞では無かったわよ?」

 

「そうだようなァ、普通は事前に通達やら知らせをする筈なんだが、主催者側は一切何も情報を開示していない。不可解な段取りになってるってよ」

 

 適当な小さな公園を見つけたザンクロウはメルディより先に木の椅子に座り何故かドヤ顔になりながらメルディを見るが、後になって椅子に鳥の糞があったことを尻からの感触で感じながら続ける。

 

「FTの、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の復活もそうだが今年から色々と細工をしているらしいのをオレっちの方で知ったのよ。だァからジェラールやウルティアさんに前もって話して、祭り前日の今日を下調べに再度訪れたってワケだ。ヒハハハハ、ホント行ったり来たりで大変だったぜ?」

 

 メルディも空いてる綺麗な木製の長椅子に座り、ザンクロウの知られざる働きに開いた口が閉じなかった。

 

 前もっての事前調査や秘密の人脈。表ではまずお目にかかれない高額の魔法道具。そしてそれを伴った核心を突く内容。メルディは段々とザンクロウの認識が〝また変わった〟。

 

(ザンクロウって、意外に頭使ってるのよねぇ。悔しいけど・・・)

 

 メルディは軽く頬を膨らませて、意外と自分より仕事をしていたザンクロウに少し軽い嫉妬のようなものを覚える。だが、それを眺めていたザンクロウへ直ぐ何かを悟り、昔とは違う獰猛(どうもう)な笑みでは無く、穏やかでありながら野性味ある笑顔を向けてメルディの頭に手を乗せる。

 

「っちゅーワケでだ。もう調べものは終わったことだし、万能道具もあることだし、デートの続きでもしようってよォ!」

 

「ちょ・・・はぁ?!」

 

「お金もたんまりあるし大丈夫だってよォ」

 

 グイグイとメルディの手を引きながらザンクロウは中央道にへと続く道を進む。だが『その前にズボンだけでも変えて!』とメルディはザンクロウの尻に大量にくっついてあった鳥の糞を見ながら必死に叫んだ。

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 夕暮れの日が王都を照らす頃には、ザンクロウとメルディは思う存分に祭りの露店や建造物やフィオーレ王国の遺産などを見て回ることが出来ていた。

 

「まだ1000(ジュエル)残ってるってよ! クロッカス名産『サフランピッザ』を買おうって!」

 

「名産って言ってる割りに普通のピザだったからアレはもういいわ。それより私は【華灯宮(かとうきゅう)メルクリアス】が壮観だったと思う!」

 

 二人は自分たちが指名手配犯並の有名人だということを忘れているぐらいに大いにはしゃいでいた。一日では回りきれない花咲く都《クロッカス》を堪能した二人は、しっかりとジェラールやウルティアのお土産も買ったことを確認して、クロッカス付近の山頂にて待機している場所に帰ろうとすると、ふとメルディが疑問に思っていたことを口にした。

 

「そう言えば、どうして〝宿屋〟なんかに整備隊がわざわざ来て、何を整備していたりしたのかしら?」

 

「メルディはまだ聞かされちゃいなかったか?」

 

 やはりザンクロウは知っていたか、とメルディはまたも軽く嫉妬する。情報の仕入れは一体どうやって? と。

 

「今日請け負った依頼から察するに、宿屋に何かしらの整備する『仕込み』がありそうな感じだったけど、あの整備隊の彼女から『・・・今回の祭りにとって最初で一番大切な整備(しごと)』と言ってから・・・・ザンクロウの言ってた〝予選〟や〝競技 〟関係するもの、かなって」

 

「さっすがメルディ! 頭が回って可愛いってよォ! まさか今日それを考えてたのか?」

 

「と、途中まではね・・・ふとアレ? って思ったのよ。整備隊の彼女にもなるべく内容を教えるのは避けたいという願いもあったから深く追求はしなかったから」

 

 律儀に考えていた整備隊の女性にザンクロウは笑みを浮かばせてはメルディに買ってきていた露店の飴菓子を渡しながら説明も付け加える。

 

「メルディの考察の通り、今日請け負った依頼の宿屋には『仕掛け』があったんだってよ。それも今日(・・)起きるぜ」

 

「えっ? 今日!?」

 

 ザンクロウは不敵な笑みを浮かべて夕暮れに染まる都を眺め、これから起きるであろう祭りを、ただただ面白げに笑っているだけだった。

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 真夜中の12時に差し掛かった時、王都を震わせる鐘の音が響き渡った。どこまでも響かせるような鐘の音が鳴動し、きっちり鐘の音が響き渡った後、王都《クロッカス》の上空にて光学映像魔法を使ったとても巨大なカボチャの被り物をした人が現れた。立体映像による開始予告をするカボチャの進行役は色々な動きをしては説明に入る。

 

『大魔闘演舞にお集まりのギルドの皆さん♪ おはようございます♪ これより参加チーム113を8つにしぼる為の〝予選〟を開始しま~す♪♪』

 

 『大魔闘演舞』に参加しようとしていたギルド達はきっと驚愕に満ちていたであろう。それは今年に限って初めての試みだったからだ。前年度までそのような『予選』などという参加資格を会得する必要も無かったというのに。

 

『毎年参加ギルドが増えて~内容が薄くなってるとの指摘をいただき~今年の本線を8チームのみで行う事になりました~♪ 予選のルールは簡単!!』

 

 カボチャの進行役がそう言えば、途端に王都の各区にありとあらゆる点在する宿屋が突如、ゴゴゴゴゴゴッッッ!! と建物を機械設備によって上へ上へと盛り上がっていった。

 

『これから皆さんには競争をしてもらいます♪ ゴールは本線会場でもある《ドムス・フラウ》~♪ 先着8チームの本線出場となりま~す♪』

 

 ガチンゴチン、と宿屋を持ち上げていた機械設備が次々と変型し、各宿屋が予選のスタート地点となっている。

 

『魔法の使用は自由制限はありません♪ 早くゴールした上位8チームのみ予選突破となりま~す♪ ただし〝五人全員〟そろってゴールしないと失格♪ そ・れ・と♪ 【迷宮】で命を落としても責任はとりませんのでご了承を~♪』

 

 【迷宮】それが予選によって行われる挑戦。街中から出てくる喧騒から、これから始まるであろう真夜中の迷宮挑戦に活気の声が夜空へ響く。

 

『ではでは~♪ 皆様が盛り上がってきたところではじめましょ~う! ──────大魔闘演舞予選!!!! 《空中(スカイ)迷宮(ラビリンス)》!! 開始ッッ!!!!』




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