FAIRY TAIL~魔女の罪~   作:十握剣

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凄い長期不定期更新(;´д`)


第6話「炎の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)」

ジュウゥゥゥ・・・────

 

 

森で最も嗅ぎたくない、何かが燃え、焦げた臭い。

 

炎が弧を描くように赤く燃える中、火の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)・ナツが放つその拳撃は周囲に火の粉を漂わせていた。

 

「ヒハッ」

 

だが、その火竜の拳撃を食らった“炎”の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)は何事も無かったかのように笑い顔を浮かばせていた。

 

「仕方無ぇ・・・・仕方無ぇったら仕方無ぇよ。そんなにバトりてーなら遊んでやるってよォ」

 

滅神魔導士・ザンクロウは嗜好な笑みを浮かばせる。

 

ただ笑う。

 

 

ただそれだけで、

 

(・・・・ッッぅっ!?・・・・・・・・)

 

「ヒハハハ!!」

 

ガァグッッ! とナツの腹部にいきなり重い衝撃が掛かる。ザンクロウが瞬時に移動し、鋭い蹴りが突き上げられたのだ。

 

普段からのナツであればそのような蹴り一つくらいで怯むことなく追撃の炎を放つのだが、

 

「ぐぅはぁ!?」

 

「オラどォしたぁ!」

 

呼吸が一気に苦しくなった。あきらかに息を止めさせる急所狙い。追撃に手を加えることが出来なかったナツにザンクロウは更に振るう。

 

「まだだろゥ!」

 

ナツは拳に炎を纏わせ、得意の拳撃を再度放つ。

 

「火竜のォ! 鉄拳ッ!!」

 

「キタキタぁ!!」

 

だが放たれた拳撃にザンクロウは(おもむろ)に顔を向けたと思えば、瞬間的に顔面で火竜の鉄拳を食らう。

 

ガチンッ! と顔面に響いた拳の一撃にナツは勿論、突如始まった闘いに呆然としながら見ていたルーシィ達も驚きの声を上げた。

 

「自分からナツのパンチを受けた!?」

 

「あわわわ、ナツさん勢い凄いです」

 

「いや、待て! アレ見ろ!」

 

ナツの拳撃、つまりは『炎』を纏った鉄拳がザンクロウの顔面に食らった。

 

 

 

そう“食らった”。

 

 

 

「これだこれだァ!!」

 

ガブガブガブガブッッ!! とナツの炎を美味しそうに“食べている”のだ。ナツが得意とする相手の炎を食べ、己の魔法力として蓄える能力。

 

「アイツも、食べるのか! 火を!」

 

「あぁ~まえ戦ったのにナツったらダメダメだねぇー」

 

「もっと頭使いなさいよ」

 

「うるせぇ!」

 

外野から飛んでくる野次に集中を乱されながらも、すぐにザンクロウから距離を置く。だが鱈腹飲み込んだ炎にザンクロウは満足そうな笑みを浮かばせてケラケラと口を開く。

 

「荒々しいな、だが本当に美味(うめ)ぇ炎だ。竜の炎は神を満足させる味付けだってよォ」

 

そう言って、ザンクロウはただ一つ、拳一つを構えるだけ。

 

「だがなァ。本当に力があまり成長してねーよ。してねーしてねー」

 

「あァ?」

 

「構えろよ」

 

ザンクロウの表情は変わらない。獰猛にも見え、愉快に見え、嘲笑にも見えるその笑顔(かお)が僅かに動く。

 

「おおおおおぉぉらあああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

(なぁぁぁあああああ──────!!!)

 

ナツの目に映ったのは、距離を置いた先にあるふざけた笑い顔が“瞬時に近付いた”事象だった。

 

そして目前まで迫ったと思った瞬間、胴体が打ち上げられる拳撃をナツは防御も構えも無しに急所、鳩尾に食らった。

 

口から大量の胃液を吐き出して、打ち上げられた身体が重力に従って地に落ちる。

 

「「「ナツ(さん)!!」」」

 

ルーシィ、グレイ、ウェンディがナツの元に近寄る。どこか怪我ないかナツの身体を調べているが特になにもない。殴打によるボコボコな身体だけだ。

 

ゲホッゲホッ! と咳き込みながら必死に呼吸を整える。

 

「人間の体してる限り、急所がある。そこを突かァりゃあ火竜(ヒトカゲ)も堪ったもんじゃねってなァ! ヒハハハッッ────」

 

「「馬鹿あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

「────ハハ? ハアブゥッ!!!?」

 

メルディとウルティアの見事にダブルラリアットを打ち込ませた。何故かザンクロウも呼吸困難に陥る。

 

「何やってる訳!? どうして闘ってる訳!?」

 

「そうよバカっ! 何やってんの上半身裸バカっ!」

 

「ゲホッゲホッ! うぶぉっふぉ!」

 

道理で闘っている中で中断してこなかった訳だ。馬鹿は闘い終わらせてから説教した方が効率良く、早急且つ簡単に収拾付くと考えたのだろう。

 

だが問題はそっちでは無かった。

 

「嘘でしょ・・・ナツを簡単に倒したのにも驚いたけど、それよりも───」

 

「あぁ、アイツ。炎を食べやがった」

 

闘うと聞いたので遠くから見ていたレビィたちも急いでやって来た。レビィ達もルーシィたち同様に困惑している様子だった。

 

「ちく、しょう」

 

ナツは息がやっと整ってきたが、腹部に走る激痛は無くならかった。

 

天狼島では実質的に勝ちはしたが、かなり苦戦させられた。それが数年経ったとはいえ手も足も出せずに終わった。

それだけの理由があれば十分にナツは悔しがり、ザンクロウに対して睨むだけしかできない。

 

「喉がー。喉が痛いってよ」

 

ザンクロウは首筋を撫でながら、奇異の目で見てくるルーシィやレビィたちに気付くと、何やらまた違う笑みを浮かばせてルーシィたちに近寄る。

 

「何よ何だよ何だってんよォ? そんなにオレっちの強さに惚れちまったか? ヒィハハハ! だよなだよなァ! オレっち強えーから惚れちまって困るよなァ!」

 

見当違いな発言をしてきた。

 

「まぁぁったくしょーがねーなー! だったらまずは一緒に飯にでも食べに行くってよォ。オレっちの小粋なトークで沸かせてやんよォ!」

 

「えっ、何急に!」

 

「さっきまでメチャクチャ獰猛な顔だったのに、今じゃゆるっゆるの下心満載ユル顔になっちゃってるね」

 

ナツの近くに居たルーシィとレビィに対し、先ほどまでと打って変わった笑みで(にじ)り寄るようにザンクロウに若干引きつつ、ウェンディの視線に気付くザンクロウ。

 

「ヒヒヒ。どうした、美少女ちゃん?」

 

「えっ!」

 

「随分と驚いた顔してたからよォ」

 

あわあわ、と突然話を振られてきたので焦るウェンディだったが、すぐに気持ちを立て直して聞く。

 

「ほ、本当に“あの”ザンクロウ・・・・さん。なんですか?」

 

ウェンディの発言にザンクロウより、後ろから取り押さえようとしていたメルディとウルティアが異様に反応を示した。

 

ウェンディとシャルル、ハッピーはこの『悪魔の心臓(グリモアハート)』七眷属の一人であるザンクロウを知ってるからだ。

 

どう答えてくるか、それだけを緊張したまま待ち続けたウェンディに対し、ザンクロウは未だに笑みは絶やさず、口角を吊り上げたまま答えた。

 

「“残忍で気性が荒くて好戦的でちょっと冷たい”オレっちが前のザンクロウだ。今のオレっちは新生ザンクロウ様だっつーワケだってよォ」

 

ザンクロウが言った言葉に、メルディはピクリと反応してみせた。

天狼島の脱する時、ザンクロウに言ったメルディの言葉だった。

 

「美少女たちと飯に洒落込みてぇが、そうもいかないんでしょ。ウルティアさァんよ」

 

ザンクロウに問われ、ウルティアは一瞬ポカンとしていたが、すぐに意識を取り戻してザンクロウに憤慨する。

 

「元はと言えばザンクロウが!」

 

「ウヒヒヒ! 待て待ってってよォ。これにも理由があるんだぜ?」

 

「理由?」

 

「まず一つ、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の実力ってーのを調べた。火竜だけ闘ったのはオレっち的にも闘い易かったのと、実力的に火竜がズバ抜けて強ぇからだ」

 

と、そこでピクリと反応する者一人。グレイだった。

 

「ちょっと待て、なんでナツがズバ抜けて強ぇ事になってやがる。このバカよりはオレの方が強いぜ」

 

「ア? そんなん闘ってねーから適当(テケトー)にオレっちが言っただけだってよォ。気にすんな」

 

手をパタパタとするだけの雑な反応にグレイは少しイラッときたが話は進む。

 

「ウルティアさんに第二魔法源(セカンドオリジン)潜在能力(かくれてるちから)見つけて開花(きょうか)させちまっても意味が無ぇ。んだったらどれほど力量あんのか確かめてからやった方がコイツらは強ォくなると考えたっつーワケだって」

 

ナツは完全にどれほどの力量が備わっているか確認したので、ウルティアの『時のアーク』の底上げ加減も分かった。それはすなわちナツの体力的負担を緻密に計算し抑え込み、最良のまま魔力強化が出来るようになるのと、ナツ自身の“限界寸前”まで上げられる。

 

本来なら全員と軽く手合わせくらいやれば良いのだが、長く駐在出来ない独立ギルド『魔女の罪(クリムソルシエール)』の決まりだったが為に、ナツ基準とその個人個人による体内に備わる自律魔力調整で『第二魔法源(セカンドオリジン)』で良しとする方向となった。

 

 

上手い具合にナツと闘うように一人芝居をしていたザンクロウだったが、昔のザンクロウでは無いことは確められた。

 

それはナツやルーシィたちにその話をした後だった。

ザンクロウは数日で痛みを引く拳撃をナツに放ったのだが、それは数日後には無くなるという意味でやられた今日は激痛に堪えないといけないということ。

 

それをザンクロウは頭を下げはしなかったがナツに向けて真正面から『悪かったな、すまなかった』と笑ったままだったがきちんと謝罪したザンクロウに、前の彼を知るナツたちにとって不気味だった。

 

だがナツは本質というより、中身を肌で感じ取ったのか。ザンクロウが真剣に謝ったことを理解する。

 

それが分かった瞬間、ナツはザンクロウの傍まで近寄ると、睨むようにして力強く言った。

 

「次は勝つぞオラァァァアアアア!!!」

 

「上等だオラァァァアアアア!!!」

 

「「「うるさいっ!!」」」

 

炎を操るこの二人に、暑苦しく無い日々が来るのは誰も分からなかった。




ザンクロウが死ななかったから絶対強敵枠

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