FAIRY TAIL~魔女の罪~   作:十握剣

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第3話「妖精を喰う妖怪」

アースランド。

 

X791年。

 

 

 

もうその時代に(おい)て、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』という魔導士ギルドが弱小の道に辿っているのが、誰の目にもそう見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

【X784年12月16日】

 

【天狼島、アクノロギアにより“消滅”】

 

 

 

アースランドに残された【黙示録】に記されてあった『黒き龍・アクノロギア』。

 

その黒き龍の咆哮はどこまでも地を揺るがし、生ける者総てを臆らせ。

その黒き龍の黒鱗を目を向けた刹那にその身を寒慄(かんりつ)させる。

 

その“絶対的”な破壊により、人間が目にする日など古来の時代にしか無かった。

 

だから記したのだ。

 

その破壊(つよさ)を記す【黙示録】を、

 

決して人間が敵う筈が無いことを記録したのだ。

 

黙示録筆者曰く、黒き龍・アクノロギアを一目見たその時は、【死】を覚悟せよ。

 

黙示録筆者曰く、死して、その絶望から逃れよ。

 

 

天狼島を消滅させた黒き龍・アクノロギアは再び姿を消した。

 

その後、半年にわたり近海の調査を行なったが、

 

生存者は確認できず、

 

 

 

 

 

そして“7年”の月日が流れたのだ。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ひゃっはっはっは! 見ろよこの大金! ついさっき軽く護衛の依頼を受けてきたらこんなに貰っちまったよ!」

 

「良いねぇ良いねぇ! 今夜は豪華にいくか!?」

 

「バーカ、先週も今週も毎日豪華フルコースに酒盛りパーティーやってんだろうがよォ!!」

 

ギャハハハハ! と外まで聞こえてくる喧騒。その騒ぎ立てる建物はフィオーレ王国東方にある街「マグノリア」を代表とする魔導士ギルド『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』のアジトからだった。

 

豪華施設に作られているアジトの中で一人、中々特徴的な顔をしている男が豪奢に作られたソファーに両手両膝に添えて座っていた。顎がとてもカクカクとしており、人間の皮膚的にまったく考えられないのだが四角っぽく出来上がっている顎と、サングラスが似合い過ぎる壮年は目の前で堂々と綺麗な女性に膝枕をしてもらいながら横になっている『仮面を付けた少年』に頭を下げていた(・・・・・・・)

 

「へへへ、どうですか? オレが切り盛りした今の『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』は? 完全に景気が良いでしょうョ?」

 

少年と対峙して座る身体が大きい男性は自信に満ち溢れた顔でそう言う。すると仮面を付けた少年は相変わらず横になりなが『コクリ』と頷いた。

 

余りにも失礼不相応過ぎる態度の仮面を付けた少年に、微塵に不満を覚えていないようにその男性は話を続ける。

 

「フィオーレ王国から受ける依頼も年々多く寄せられ、信頼も信用も着々と築いていってる。況してや他の都市や市街に於(おい)て我が『黄昏の鬼』のギルド名を知らない奴は居ないと週刊ソーサラーにまで載った! 魔法が(うて)ぇあの漁業が盛んなハルジオンにさえ『黄昏の鬼』の話が上がる!」

 

男性は段々と弁に熱が入ってきたのか腰を上へ上へと上げていき、身を乗り出すように少年に語る。

 

「もうこりゃギルドマスターたるこのオレ様、バナボスタの敏腕があってこその『黄昏の鬼』だ! 誰にも“知らない”“聞かない”“存じない”なんて言えねェ時代になったんだ!」

 

「マスター・バナボスタ、熱が入り過ぎじゃありませんこと?」

 

「おいおい、堅ぇこと言うなよ」

 

立ち上がれば相手を見下ろしてしまいそうな程に長身で、とても体が大きい男性はマスター・バナボスタと呼ばれた声主に顔を向き、答える。

 

声主は仮面を付けた少年の膝枕をしてあげているとても綺麗な女性であった。黒い髪がとても(つや)やかで、その(あで)やかな黒髪から漂わせる甘い香りに一瞬だけバナボスタは意識が持っていかれてしまった。

 

その後はその女性と他愛の無い話を続けていたバナボスタだったが、脇から手下である『黄昏の鬼』の一員・金棒使いのティーボが耳打ちする。

 

「何ィ? まだ借金の返済がまだ、だァ?」

 

「へ、へい。 これから行こうと思ってたんですが・・・・」

 

ドカンッ! バナボスタは思いきり机を殴り付けた。

 

「遅ぇぞ、ティーボ! ちゃっちゃっと終わらせて来いやァ!!」

 

バナボスタが怒鳴り付けると、ティーボは『は、はいぃぃ!』と縮み込むようにしながら数名のギルドメンバーを引き連れてアジトから出て行った。

 

まったく、といった感じに懐から一本の葉巻(シガー)を取り出して点火部に火を着ける。

 

「新しい葉巻ですの?」

 

「アグノリアの薬師屋から調達してもらったもんでなァ、こいつァ前みてぇに臭くねぇから大丈夫だぜ?」

 

アースランドにも多数の葉巻が存在している中、フィオーレ王国にも国産物のシガーブランドが多々あるのだが、バナボスタが好んで吸っていた葉巻は吸い口や味も良かったのだが、匂いがどうやら不評であったらしく『黄昏の鬼』のギルドメンバー、主に女性陣に文句を叩きつけられていたバナボスタはしょうがなく別のシガーブランドの葉巻にしたのだ。

前の葉巻と同じ形態と構造で巻いてあるのだが、葉を変えたことで匂いが別段に良くなっていた。

 

だが葉巻と臭い煙を嫌うこの黒髪の女性は葉巻の話を折り、膝に頭を乗せている仮面の少年の頭を撫でながらバナボスタに先程部下に言った言葉を聞く。

 

借金(・・)とは?」

 

「ああ? あぁ、弱小ギルド『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の借金返済だよォ。」

 

『妖精の尻尾』の単語に反応する仮面の少年。

 

「きっちりと借りた分のお金は返してもらんとこっちもギルドのメンツにかかわることだからなァ」

 

プハァ~、と白煙を口から吐き出し、指で葉巻(シガー)を挟みながらバナボスタはニヤリと極上の笑顔を浮かばせ、

 

「これからの『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』の為にも、なァ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャァン!! と高い金属が割れる音が響く。

 

「昼間っからしんみりしてっからオレらが騒ぎ立ててやってんだからよォ? きっちりと貸した金を返してもらいてぇんだがなぁ? えぇ~? マスター、マカオ・コンボルトよぉ?」

 

ガキンッ! とまた何かを割れる音がアジト内に虚しく響いた。

 

「これだから弱小ギルド(・・・・・)はやだよなー」

 

そう堂々と声を高らかに喋っているのは、先程『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』のマスターに耳打ちをしていた背に黒い金棒を背負っているティーボだった。

 

「かつてはフィオーレ最強だったかどうか知らねーけど、もうオマエらの時代は終わってんだよ」

 

ティーボは正面に対するように構えている妖精の尻尾のギルドメンバーたちを見下しながら続ける。

 

「建ってるのがやっとのこのボロ酒場と、新しい時代の魔導士ギルド『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』じゃどちらがよりマグノリアの発展と向上に役立ってるか一目瞭然の事実だろ?」

 

鬼を示すかのような角飾りを揺らしてティーボは悔しく歯軋りをしている『妖精の尻尾』メンバーを眺める。

 

妖精の尻尾メンバーの一員であるマックス・アローゼが呟く。

 

「でけえだけのギルドが偉そうに」

 

「そうだ!! オレたちには魂があるんだよ」

 

マックスに続くように緑を主体とした服装を着込んでいる男、ウォーレン・ラッコーが少し冷や汗を滴(たらし)ながら吐き付けるが、ティーボはそれでも見下す姿勢を変えずに言う。

 

「魂じゃメシ食えねえんだョ」

 

「何しに来たんだティーボ」

 

妖精の尻尾の四代目マスターであるマカオが皆の代表としてティーボに聞く。するとティーボは笑みを浮かばせてマカオに言い放つ。

 

「今月分の金だよ」

 

それを聞いた瞬間に四代目マスターの補佐として席を置いてあるワカバ・ミネが反応する。

 

「まだ払ってなかったのかマカオ!」

 

「マスターって呼べっつってんだろ!!」

 

互いに怒鳴り合う二人の中年親父共を相変わらず見下したままティーボの横立っていた大きい男が口を開く。

 

「借金の返済が遅れてるぜアンタら」

 

「今月はいい仕事が回ってこなかったんだよ!!」

 

「来月まとめて払うから待ってやがれってんだ!」

 

言ったきた『黄昏の鬼』の一員にワカバが吠え、マカオがまるで借りた側の反応とは思えない対応で伝える。

 

「おやおや? 潰れる寸前だったこのボロ酒場を救ってやったのは誰だっけかな?」

 

黄昏の鬼(オレたち)がてめえらの借金肩代わりしてやったんだろーが!!」

 

妖精の尻尾側に不利な条件を突き出して言ってくる『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』の男たちに妖精の尻尾メンバーのジェットが反抗する。

 

「あんなバカげた利子だって知ってたらオマエらなんかに頼らなかったのに・・・・」

 

睨むように言ってくるジェットに勿論良い気などせず、『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』の肥満体質とリーゼントが特徴的な男がジェットに食いかかる。

 

「何か言ったかコノヤロウ!!」

 

やはり自分よりバカでアホで弱い奴にデカイ態度を取られるのに我慢が出来なくなりそうになったジェットが身を乗りだそうとしたが、若い奴らより少し冷静ににっていた四代目マスターのマカオは『よせ、ジェット』と止めに入り、ジェットも今の状況を改めて認識し、歯を思いきり軋めさせる。

 

「来月まで待ってくれや、ちゃんと払うからよォ」

 

マカオが代表として結論をティーボに伝えれば、ティーボはマスター・バナボスタ直伝の手段に行動を移す。

 

“暴行”だ。

 

7年間やってきた行動だった為に向こうも構えているが、あちらはこっちに手出し出来ないから、やり放題だった。

手も足も出してこない元最強ギルド『妖精の尻尾(フェリーテイル)』のギルドを蹂躙出来るのが癖になり始めてきた『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』の若い奴らは、ニヤケ面を包み隠さず表しながら暴行に移ろうとするティーボの蹴りがマカオに襲うとした時だった。

 

「待てッ!!」

 

バンッ!! と『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のアジトの扉が何者かに勢い良く開けられ、そこには一人の青年が居た。

反応は各々違うようだったが、『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』の連中は全員不愉快の顔に変わっていた。

 

 

「・・・・てめえ、オニマル! 何しに来やがった!」

 

何しに来やがった(・・・・・・・・)、だと?」

 

オニマルと呼ばれた青年は黒い髪を逆立てるように刺々しくなった頭髪に、青年の文字がとても似合う凛々しく勇ましそうな顔立ちの好青年だった。

オニマルは暴行に移そうとしていたティーボ達を一瞥して『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のメンバーに顔を向ける。

 

これから向けられそうになった無骨な暴力の矛先を、彼らは耐えようとしていた姿勢に感動すら覚えそうになったオニマルは目縁に涙が溜まりそうになりながらも、“懐かしい顔”たちに頭を下げる。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さん、事情はアジトで聞きました。これまで『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に行なってきた暴挙等様々な面で黄昏の鬼(トワイライトオウガ)は欺瞞(ぎまん)的にアナタ方を陥れていました・・・・許される行為では無いでしょう・・・ですが謝罪させて下さい、申し訳ありませんでした!!」

 

突然現れた青年にマカオや他のメンバー達も面食らっている中、沸々と歪んでいく顔たちがあった。

 

それは同じ仲間である黄昏の鬼(トワイライトオウガ)からだった。

 

「・・・・・・・・何してんだ、オニマル。あァ? 何してんだゴラァオニマル!」

 

「何勝手やっちゃってくれてんだこのガキッ!」

 

頭を下げていたオニマルの頭に容赦無く近くにあった酒瓶で殴り付けた。

 

ガシャアアァァァアアン!! と頭蓋に容赦にぶつけられた酒瓶は勢い良く割れ、オニマルは殴り付けられたまま床に頭をぶつける。

 

「きゃああああああっ!?」

 

「は、はぁ!? なな、何してんだアイツら!!」

 

「ひ、酷いである!!」

 

唖然としていた|妖精の尻尾(フェリーテイル)の面々たちは突然仲間であるオニマルに容赦無く暴力、というより殺すような勢いで襲っていた。

 

 

その光景に眼鏡を掛けたポニーテールの女性、ラキ・オリエッタが悲鳴を上げ、民族衣装のような服装を着ているナブ・ラサロは驚愕し、|踊り子(ダンサー)であるビジター・エコーもナブと同様に驚いていた。

 

何故、仲間であるオニマルを襲っているのか分からないのだ。

 

「オイてめえオニマル! てめえ本当に何してやがんだ? マスターの許可無く露呈しようとしてんじゃねぇぞゴラァ!!」

 

ティーボは背に背負ってあった金棒を持ち上げ、その黒く鈍色に染まる鉄塊を、またも容赦の欠片も無く降り下ろした。

 

ガシャアアァァァアアン!!! とオニマルの頭を狙い落とした。一切の加減の無い一撃だった。

 

「オイッ!!! お前ら人のギルドで何してんだッ!!?」

 

そこでマカオが止めに入り、ワカバやジェット、ドロイ、ウォーレンも間に入った。

 

マカオとワカバ、ジェットとが|黄昏の鬼(トワイライトオウガ)の連中を突け放して、ドロイとウォーレンがオニマルの様子を見る。すると、案の定オニマルは頭から大量に流血していた。

 

「こりゃひでぇ・・・・」

 

「意識あるか!?」

 

ドロイがオニマルを立たせようとすると、

 

「チッ! 興醒めだ、オイッ! コイツ連れて来い!」

 

ティーボが他のメンバーにそう言うと、数人が頷き、ドロイからオニマルを奪うように連れて行く。

 

「忘れんなよ妖精の尻尾さんよォ? 来月だ」

 

そう言ってティーボはオニマルを荒々しく引き摺りながら出ていった。

 

 

そして数分の沈黙。

 

一番に口を開いたのはマカオだ。

 

「あの・・・・オニマルっつう男、何か言ってたよな?」

 

ワカバに訪ねるように聞いたマカオは、葉巻を吸って白煙を吹かすワカバは分かりきったように言う。

 

「欺瞞ねぇ、それも分かりきってたことだが、それを理解してもオウガは聞き入れやしねえさ。泥沼に嵌まったままってーのは変わりはしねえ」

 

「でも、あんな人、オウガにも居たんだね。真正面から謝ってくるなんてさ・・・・」

 

大丈夫なのかしら・・・、とラキは心配そうに先程流血していたオニマルを思い出す。

 

『黄昏の鬼』という妖怪は弱った妖精の尾を掴み、(かじ)り、(むさぼ)り、舐め回す。

 

 

そんな鬼に、妖精たちに報復される日が来ようとは・・・微塵も思ってもいないだろう。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

そして場所が変わり、マグノリアの代表とする魔導士ギルド『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』のアジトにはまた、マスターであるバナボスタと、相変わらず横になったままである仮面を付けた少年が相対するように座っていた。

 

「そ、それじゃ! 本当にこのギルド・・・! 『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』の正規(・・)マスターは! オレで良いって事ですかィ!?」

 

コクリ、と頷く仮面の少年。その動作を見た瞬間にバナボスタは驚喜に満ち溢れてきた。

 

バナボスタの心境は喜びにより絶頂していた。

あのマグノリア1のギルド『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』が“自分の物”となると、

 

(やった! やったァ! やったやったやったやった・・・やったぞこの野郎!! これでまたオレは金儲けを“隠さず”やれるってもんだ!)

 

このバナボスタという大男は、見かけによらず、とても交渉やら運営面、更に裏では目をつけた店やギルドには弱みを握り恐喝し、脅迫し、利用するというやり取りまで完全に網羅している大男なのだ。先代のマスターには無い才能だったのだ、だからマスターにまで抜擢され、マスター代理としてやってきたバナボスタ。ここにきて正式にマスターとなれた。

 

(この御人から譲り受けたんだ! きっとオレにも! オレにも“鬼才”があるってことかッ!?)

 

笑顔が消えなくて逆に困っているバナボスタは心を落ち着かせるように懐から葉巻(シガー)と取り出そうとするが、目の前に居られる(・・・・)御人の前で吸う訳にはいかず、懐に戻した。

 

そして自分が座っている近くに、数人の気配があることに気付いた。

 

正面で横になっている仮面の少年の後ろ、そこには六人の人影があった。

 

バナボスタは知っていた。

 

この“六人”が、この“六人”が居たからこそ『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』はマグノリア1のギルドになれたことに……この“六人”が居たから『妖精の尻尾(フェリーテイル)』を足蹴に出来たことを記憶に鮮明に刻まれているから。

 

「あ、あなた方もオレにお祝いに・・・?」

 

例え違っても良いから何か口にしたかった。

でないと“息が止まる”。

 

六人にから漂う異様な空気がバナボスタや、『黄昏の鬼(トワイライトオウガ)』のアジトを包み込んでいたからだ。

 

圧倒的な威圧感。

 

絶対的な存在感。

 

必然的な運命感。

 

何を取っても、この仮面を付けた少年の背後にいる六人から感じ取られていた。

 

六人は無反応、かわりに仮面の少年がコクリと再び頷き、それだけでバナボスタは息をまた吐いて吸えた。

 

そして、聞く。バナボスタは正面の“声”を。

 

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「────ッ!?──」

 

バナボスタは確かに聞こえた。だが直接聴覚を使って聴こえた訳では無く、脳内に反響するように聴こえたのだ。

 

その“声”はとても幼く聞こえ、

 

その“声”はとても若く聞こえ、

 

その“声”はとても嗄れて聞こえ、

 

その“声”はとても老いて聞こえ、

 

その“声”はとても異常に聞こえた。

 

(つんざ)くように脳を刺激されたその“声”に、バナボスタは自然と従うように呟いた。

 

絶対的に逆らわないように、(こうべ)を垂れた。

 

 

 

 

「──────仰せのままに・・・“マスター”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄昏時の大鬼よ

 

妖精を喰う妖怪よ

 

異浄で異常な化物よ

 

闇夜が覆う夕暮れの

 

盛りに過ぎし終焉に

 

近う寄ろう黄昏月

 

鬼よ、呟け、邪に

 

見分けを惑わし終極(おわり)(しまう)

 

()(かれ)は」と

 

鬼が空言(ソレ)を、

 

呟いた。




オリキャラ登場Σ(-∀-;)

オリキャラが苦手な方はすみません(汗)
ですが、残念ながらどんどんと絡ませていきますよ、妖精の尻尾と(´Д`)

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