FAIRY TAIL~魔女の罪~   作:十握剣

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久しぶりの投稿。読んでくださってる人には大変申し訳なく思います(T-T)
今回もオリジナル展開し過ぎて申し訳なく(T-T)

てかアニメ進むの早いよ!
えっ? もうタルタロス編やっちゃってるよ!
こっちはまだ大魔闘演武だというに! えっ、お前が書くの停滞すっから悪いんだろ?
…………正にその通りです(T-T)


第14話「それぞれの出会い」

 

 

 魔水晶(ラクリマ)ビジョンのように、《大魔闘演武》を遠方から眺めている者たちが居た。

 それは闇ギルドを次々と壊滅させていく独立ギルド《魔女の罪(クリムソルシエール)》のメンバー。

 

 その中で、ちょこんと正座を崩したように座っている美しい女性二人は、演武の進行に驚いていた。

 まさか魔女の罪(クリムソルシエール)に属して、王国でも凶悪屈指の名で指名手配を受けている逃亡犯・ジェラールが妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチームとして参加していたからだった。

 

「……ちょ……」

 

「ヒィハッハッハッハッ!!!」

 

「ザンクロウうるさい! またウルに氷浸けにされるよ」

 

 先程まで勝手な行動をするな、ときつく叱った後だと言うのに、ジェラールが勝手な行動をしていた。

 まるで母親が、言うこと聞かない子供を叱り、やっと宥めた思った矢先に父親が悪い手本の如く先行して好き勝手やっているのを目撃したような反応だった。

 メルディもまるで母親に刺激を与えぬようお馬鹿な兄を止めようとしている妹の図と化しているのだが、お構い無しにザンクロウは笑い転げている。

 ピクピクと震えているウルティアを横に、メルディは『ヒハハハハ! ヒィ腹痛い!』と笑い転げているザンクロウに飛び込んで口元を押さえ込もうとするも、ザンクロウは好機とばかりメルディに抱きつく。

 どさくさに紛れて太股やら胸にやらちょんちょんと問答無用に触ってくるザンクロウにメルディは顔を赤くして本気で酸素を取り込めないほど強く口を押さえようと行動に出るが、体力でザンクロウに勝てる訳がなく、抱きつかれたまま体の自由を奪われてしまう。

 (はた)から見たらイチャイチャしてるとしか見えないのだが、ウルティアからすれば兄妹がじゃれあってる風にしか見えてないらしい。

 

「ちょっと、笑いが止まったなら(じゃ)れ合ってないでちゃんと見ときなさい。何処かに私たちが見落とした箇所があって、そこから得られる謎の魔力の手がかりがあるかも」

 

「待って!! これ(じゃ)れあってるって範疇なの!? そう見えてるのウル!? ちょぉ! ザンクロウ本気で怒るよォ!!」

 

「デヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ」

 

「ダメだぁ!! 目が変わってる! 目がっ、目がなんかハートっぽい何かに変わってるぅ!!」

 

 メルディは両拳を力一杯振りかざし、ザンクロウの視力を奪いかかる。だが、この男。メルディが編み出した対ザンクロウ必殺技の一つ『目殺(めっさつ)グリグリ拳』を繰り出しても離そうとしない。物理的に眼球を瞼越しとはいえグリグリ押し潰しにかかっているのにこの男若い女の子の身体

触りたいのに必死だったのだ。

 その必死さに戦慄し、そろそろ魔法を行使しようかと思えば、ガバッ!! とザンクロウが体勢を立て直したのだ。

 さっきまで変態行動をしていた(ゆる)んだ顔では無く、まさに真剣そのものの顔に変化し、何事かとウルティアと一緒にザンクロウに問うかと口を開きかけた瞬間、

 

「チィッ!」

 

 ボォォオッ!! とザンクロウの腕から黒い炎がメルディの眼前まで迫り、『何か』を弾き返した。

 高速に飛来してきた『何か』を気付く以前に、メルディ達がその『何か』を飛来させた何者かの接(・ ・ ・ ・ ・)近をここ(・ ・ ・ ・)まで許した(・ ・ ・ ・ ・)ことに気付く。

 

「何だってよォ、こっちは幸せイチャパラしてたっつーのにこんな湿気(シケ)た襲撃してくる奴の相手してやんねぇといけねぇんだって」

 

「ザンクロウ、何に気付いたの」

 

「一瞬、さっきの攻撃してくるとき『殺意』を感じた」

 

 なるほど、とウルティアは立ち上がり、手にした水晶を宙に浮かせる。

 

「私の『視覚』から逃れ、更にはこんな接近まで探知させなかったなんて……余程の腕の持ち主ね」

 

「待って……確かに襲撃してきたことや、ザンクロウに助けられたことには凄く感謝してる。けど、えっ? なんでここ(・ ・)に居るってバレたの?」

 

 現在、ウルティア、メルディ、ザンクロウの魔女の罪(クリムソルシエール)の残りメンバーは王都クロッカスが栄える都から離れた、《大魔闘演武》が見える山中に潜んでいたのだ。

 都から離れ、正しく何か情報を得られてなければ絶対に見つかる筈もなかった場所。

 

(…………城に向かおうとしてたオレっちに、手だして奴ら……っていう線でも無さそうだなァ。こんな小細工無しにしてあの強さを誇ってんだ。こんはセコいことしてくるとは考えられねぇって)

 

 考えるが、思い付かない。

 ウルティアも幾つか推測を立てるが、どれもウルティアにとって絶対に気付く(・ ・ ・)行動に魔法が関係してくる。

 

「…………少し移動するわよ。周囲の警戒を怠らないで、クロッカス西方にある都市近辺の山に向かいましょう。ジェラールとは連絡の取り合いも出来るからそこで合流することもできるわ」

 

「あ? なんでその山なんだ? もっと遠くの方が怪しまれないし、今の襲撃者も詮索する範囲が広がって誤魔化せることも出来っぜ?」

 

「確実性をもってここに襲撃してきたのよ。だったら遠くても意味も無いし、西方だと木々に囲まれた薄暗い森が広がって、身を隠しながらすぐ都に入れるようになっている。……勿論、この西方の森にさっきの襲撃者が居たとしても、互いに視認することが困難とする場所でもあるわ。これはこちらも動きを制限されるけど向こうも同じ。それを魔法でカバーしたとしても二度も私がそれを感知出来ない筈もない」

 

「何かを飛来させたり、飛び道具あるいは魔法だとしても木々がある森の中だと遮るものがある。だからそこなんだね! さすがウル!」

 

 勿論、一体何を飛来させたのか分からない。それに居場所を感知されるならその都市近辺の山中も安心出来はしない。だが、だからと言って離れすぎると王都の謎の魔力が判明した際、駆けつけるのにどうしても時間がかかってしまう。

 襲撃者の強さも分からない。使用した魔法も分からない。何の目的なのかも、こちらの正体を分かった上での攻撃なのか? 色々な憶測が憶測を呼んでしまう。

 

「…………続けて襲撃してくる気配も無いし、相手のしたいことも分からない。じゃあどうすんの? 答えは突き進む! そういう(ノリ)にするのが相手の狙い所だったって話になってたら、こりゃ大変だってよ。ヒハハハ」

 

「ハァ……他人事じゃないのよ? まぁでも、これは……全く新し(・ ・ ・ ・)い進展(・ ・ ・)よ」

 

「そうだね。去年とか襲撃(こういうこと)は一切無かった」

 

 時を見て、ジェラールに連絡しておきましょう。ウルティアがそう言って、ザンクロウたちは旅の荷物を背負い、その場から離れ、王都の西方に構える森林に繋がる山に身を潜めに向かった。

 

 それを遠くから、遥か向こう側であろう喧騒(・ ・)の中から(・ ・ ・ ・)眺め(・ ・)視て(・ ・)いた者が居ることに気づかずに、ザンクロウたちは移動していった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「まったく……覗いた(・ ・ ・)瞬間に、君が悪戯なんかするから彼らが移動してしまったじゃないか」

 

『……………………不語(かたらず)

 

「試してみたかった、そんな所?」

 

『……………………………………』

 

「あれあれ~? 居ないのですか~? 消えちゃいましたかゴーストさん」

 

 狭い煉瓦で作られてあるであろう通路を、黒いスーツを着こなした少年が独り言(・ ・ ・)を話しているかのように歩いていた。

 少年の周りには誰も居ない。だと言うのに、まるで誰か居るかのように語りかけて喋っているこの少年に、不審に思うのはしょうがないだろう。

 当の本人はそんなこと気にもせず、静かな足取りで〝ある場所〟にへと向かっていた。

 

「しつこく言ってたから何処かに飛んでちゃったかな? でもしょうがないでしょう、僕は元来お喋りだから口が止まらないんだから。そりゃ独り言もブツブツとブツブツと言ってるけど、これは決して寂しいとか、話し相手ほしいなとか、独りだと怖いとかそんなんじゃ…………なんでブツブツ二回言ったんだろう……アレ? 自分で言って不思議なんですけど…………」

 

 カタンッ。

 

「うわあああぁぁぁッ!! ななななななッッ!! なになになになになになになになになになにィィーー!? 怖いんだけど何なんだけど怖いんだけど何なんだけど怖いんだけどォォォーー! スゲェ死ぬほどやめて欲しいんだけどぉ!!」

 

 スーツを着込んだ少年はごろんごろん! と転びながらも音を確かめる。

 確かめると、普通に老朽化した煉瓦の一部分(欠片)落ちていた。

 

「…………………………………………………………」

 

 スクッ! とまるで何事もなかったかのように歩き出す少年。だが顔は羞恥の色に染まっている。

 

「えっ? なに? 分かってるよ。独りだとこうなる。病的に怖がってしまうんだよ仕方ないだろ! おれだって、おれだって分かってる……」

 

 スーツを着た少年は、隻眼である片目に覆っている眼帯を指でなぞる。

 

「分かってるよ……今から行くもところはおれの個人的な、ところだから。『妖精』には後で行くつもりさ」

 

 なぞりながら、少年は漆黒の髪を揺らしてある部屋の前まで来ていた。

 少年が会いたくて会いたくて、待ち焦がれた少女に、

 

「………………………………………………………………………………」

 

 だが、少年はその部屋。大魔闘演武会場である闘技場の各ギルドが借り受け、入り組んだ深部にある『医務室』前に来ていた。

 中では恐らく、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のチームとして出場を果たそうとしていたウェンディ・マーベルが寝ている。

 

「………………………………………………………………………………」

 

 まるで押し込むように、強く強く、眼帯を押し込んでいた。

 

(…………君を、一目見たい。でも……『眼』を使えば簡単に君を〝視て〟しまうだろう)

 

 押し込んだ指を戻し、そのまま拳を強く握り締めて作る。

 笑ってしまうほど、今の自分の姿を情けなく感じてしまった少年の目から涙が流れている。

 

(……気持ち悪い……涙を、流すなんて…………気持ち悪い)

 

 気持ち悪いより、男として情けなくて、悔しくて、涙を流したせいで少年な感情的になりつつある心を落ち着けようも、再び闇が広がる廊下にへと戻る。

 感情が爆発しそうだ。

 

「わがっでるよ……っ。…………わがっでるげど、なぐんだよぢぐじょう」

 

 昔から泣き虫だと馬鹿にされていたことを思いだし、少年はまた独り言を呟きながら、力強く腕で涙を払った。

 

 涙を払い、〝眼〟を見開く。

 

 少年がやることは、正しく眼前に、光の道筋のように明確に決まっているから、迷わずその足を踏み出せた。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 王都クロッカスの巡る巡るところそこかしこに、《大魔闘演武 一日目結果(リザルト)》が魔法文字となった〈光字〉が壁やら、店の屋根からに書かれてあった。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)……妖精の尻尾(フェアリーテイル)……」

 

 そんな文字を呼んでいるのは、忍者装束に身に包んだ素顔を隠した男・フウキ。つい一日の競技パートで観客たちを湧かせた《黄昏の鬼(トワイライトオウガ)》の『戦鬼』の一人として数えられる強者(ツワモノ)の男である。

 忍者(シノビ)なのに派手であろうその姿に、お祭り騒ぎに広がる夜空の下の王都では目立ちに目立っていた。

 皆が立ち止まり、その黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のフウキにどう声を掛けるか迷っている者までいるし、魔水晶(ラクリマ)製に作られた写真で撮っている者まで居る。

 これが《大魔闘演武》に参加した証とも言える知名度だろう。少なからず好成績を残した魔導士は皆に注目されるし、ファンも増えることになる。簡単に言ってしまえば好奇の的となるだろう。

 

 フウキはそのカラフルに輝く〈光字〉を目で追いかけて、彼がファンだと公言した妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名をやはり追っていた。

 

「むう……皆は妖精の尻尾(フェアリーテイル)を馬鹿にしているが、必ずや巻き返すでござろう! 油断など出来ぬでごさるなぁ!! ワクワク!」

 

「……会いに行っても、その、大丈夫なのでしょうか」

 

「オニマルよ。そんなに臆することもないでござる。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さまも話を聞いて下さるだろう。それにオニマルは自ら行動を起こし、怪我をしてまで示してみせたのだ。話を聞きに言っても(ばち)は当たらんと思うでござる」

 

 オニマル。そう呼ばれた青年は『恐縮です』と言いながらフウキに頭を下げた。

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に莫大な利子を叩きつけ、借金地獄にさせた『(ニセモノ)』が起こした事件に、少なからず関わっていたであろう黒髪 トゲトゲしく逆立てた好青年が、鉄網で作った忍者装束(シノビスタイル)をじゃらじゃら鳴らしたフウキに申し訳なさそうな顔で頭を掻く。

 

「……まさか自分が黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のリザーブメンバーとして選ばれるなんて」

 

「むむむ。リザーブメンバーだけで納得してきゃいけないでござる。もっと志を高くでごさるね───」

 

「ぶふぉぉおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ」

 

「えっなっ酒臭ぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっっっ!!!??」

 

 突然とフウキの肩に顔を乗っからせて、そこから肺から行き渡った息を吐き出しながらやって来たのは、髪を後頭部に団子(シニヨン)にして、上半身をプロテクターで囲んでおいて、鍛え抜かれた筋肉を出し惜しみなく露にしている屈強な男がフウキの口やら鼻孔にまで口の臭いを嗅がせると、

 

「うぅ……ヴゥブフっ!?」

 

「オゥッゥっふぅ……っゥォオふっ!!」

 

「あ、あの……お二人! だ、だめ! こんな公共の場でダっっ!!」

 

 オニマルは目の前の二人の顔が紫に変色した時点で諦め、後方に下がったと同時に、二人は一気に、

 

 

「「ぉうううぇええええええええええええええええええええッッッ!!!!」」

 

 二人は仲良くその場で胃の中身を吐いてしまった。

 

「おげぇぇぇえぇぉゴホッゴホッゴホ!!?」

 

「おぇおぇぉっおぇぅおえっおぇぇぇぇぇ」

 

 あと数秒でフウキは口に当てていたマスクをはずしてなければもっと悲惨な展開になっていた。

 もう一人の男、バッカス・グロウは吐いたお陰で大分回復したのか、既に立ち上がって目の焦点も合っていた。

 

「おぇぇぇ……うぷっ………っし、ぅっし、よォォーーし!! よっしゃゴラぁ次に行くぞ!!」

 

「うん!? うん!?」

 

 まるで行くのが当たり前みたいな空気でオニマルの肩に腕を回してきてバッカスに、オニマルは回避運動に出るが、

 

「くっ、くそ! がっちりと締め押さえ込んで逃げなくしている!? 上等だ! こんなめんどくさい酔っぱらいオヤジから逃げてやる!」

 

「ガッハッハッハ!! なんだ相撲か!? やろうぜやろうぜ! ヒューヒュー!」

 

「待て待てぇぇぇい! 今一番激おこプンプンなのは(それがし)だから!? めちゃめちゃ某だからだってそうでしょう!? だって某だって貰いゲ●しちゃったんだから!! 貰い●ロしちゃったせいで公法の場汚しちゃったんだからァァァァ!! あっはいあっ、すみません! 今すぐこの吐瀉物片付けますんでハイすみません!!」

 

 もう『王都』だと言うのにこの騒ぎまくりの始末なのだが、年に一度の大祭。広大な王都ではあっちこっちでそんな騒ぎが何件も上がってきている。

 だが、勿論、ここまで騒ぎ立てる者は大抵決まって〝ギルド〟者なのだが、他の人たちも笑いながらゲ●を掃除するフウキや、バッカスと相撲をとる為に互いに四股を踏んでいたオニマルたちを、大笑いして道行く人たちに溢れていた。

 

「ちょっと待て! ……ぅ~ぃちょつとまつて!」

 

「バッカスさん呂律が、呂律が回ってないよ」

 

「ふぅ~~……ふぅ~」

 

「危ないよね、飲み過ぎだよね」

 

「いや、オレは大丈夫だから妖精の尻尾(フェアリーテイル)に行くぞ! あそこにはベッピンさんが沢山居るんなら~!」

 

「最後までいくと呂律が可笑しくなるのか」

 

「行くぞオラァ!」

 

「フ、フウキさんは!?」

 

「くっ! すまないオニマル。某めっちゃ行きたいでござるが、そこの酒乱のゲ●を片付けなければ…………」

 

 そこまでするのか……。好い人過ぎるだろ、と改めてフウキの懐の大きさに感銘を覚えていると、首に回していたバッカスの腕がいつのまにか無くなっており、そしてこれもいつの間にかフウキの背後に立つバッカス。

 果てしなく嫌な予感がしたオニマルは、ニヤけだしたバッカスに、もうこれ駄目(アウト)のニヤけだと判断した時には既に遅し。

 がっしりと健気に雑巾っぽい道具で吐瀉物を掃除していたフウキの後頭部を容赦なく掴んだと思えば、これまた容赦なく、

 

「ワイルドぉぉぉぉぉぉぉ?」

 

 頭を掴まれた時、フウキと目が合った感じがして、そして同時に『あっ』と気の抜けた声がハモり、そして、

 

「フォーォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッやめブフジュ!?!?」

 フウキは黄色い(なんで?)ゲ●に頭から突っ込まされた。それはもう壮大に、

 

「ノリ悪いぜェ~、フウキよ~」

 

「うあああああああああ!?!? なにやってんだなにやってんだぁぁぁ!?」

 

「おっし!! もう目の前が妖精の尻尾(フェアリーテイル)が飲んでいる酒屋らしいから行くぞォ!」

 

「オィィィ!! そのまま行くのかこのド鬼畜外道!? あんたウチのギルドに喧嘩を堂々と、堂々と!」

 

 オニマルの意見など通る筈も無く。

 筋肉ムッキムキな兄貴に連れて行かれたのであった。

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「……大丈夫か?」

 

「おぉ、ひさしぶり……ラクサス」

 

 中に無理矢理連れて行かれた嵐のような男・バッカスは、入店したと同時に適当にオニマルをぶん投げて、後は放置して妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちが飲んでいるテーブルにへと向かっていっていた。

 もう思考を巡らすことに何の意味もなさないあの男に、破壊されたテーブルに埋もれて天井を眺めながらもうふて寝しようかなどうしようかな、としていたオニマルに、声をかけてきた相手の顔を見て安堵する。

 屈強な男となったラクサスだった。

 

「子供の頃、ミラと一緒に遊んでた記憶は残ってたか? もうすっかり忘れられていたもんだと思ったよ」

 

「……ふん。それより席に座ったらどうだ。そこは邪魔だ」

 

「そんなにハッキリ言うなよ! 分かってたよなんだよオレは本当は真面目なんだよ! いきなりの展開に弱いんだよなんだよ貸せよその酒ごくんオェェェェ!!」

 

「一体どうした!?」

 

 やけくそ気味にオニマルは涙垂らして、ラクサスが飲んでいたであろうボトルのお酒を奪い取るが、余りにもアルコール度数が高かったのか飲み込んだ瞬間胸が焼く感覚に襲われ、脳も蒸気しそうな感覚になる。

 バシンバシン! とテーブルを叩きながらもがくオニマルのところに、水を持ってきたミラジェーンが優しく飲ませてくれた。

 

「ラクサスのは少し強めのやつよ? きっとオニマルはお酒を余りにも飲んでなかったからきつかったのね」

 

「ゴクッゴクッ……プハァ! はぁはぁ……くそぉ、相変わらずラクサスは強くて、ミラは…………優しいなぁ……」

 

 ミラとしては、久しぶりに会った時と印象が大分違ったオニマルに戸惑いを見せていたが、今の言葉を聞いて思わず頬を弛ませてしまった。

 

「それ、昔遊んでた公園で言ってた言葉ね」

 

「……あぁ、そういや言ってたな」

 

 グビッとオニマルから返されたボトルの酒を飲んだラクサスは、懐かしそうに目を細めた。

 

 ギルドの家庭で育ったラクサスは、幼少時代から何かとギルドのトラブル。父の除名。祖父との言い争いなどで少しずつ心を荒んでいったあの頃。

 故郷で受けた迫害により居場所を無くしたミラジェーンは新しい家族(ギルド)に優しく迎い入れられながらも、やはり身の内に潜む【魔】に苦しみ悩んでいたあの頃。

 

 このオニマルという少年に出会った。

 

 オニマルはマグノリアにあるギルドの家族の一人なんだと、そして自分の魔法は凄いんだと自慢気に話していた子供時代。ラクサスとミラジェーンは当時、全く同じといっていいほどこのオニマルという少年を毛嫌いしていた。

 言うまでもなく、二人の琴線に触れる大部分を逆撫でするような言動を起こしていたから。

 もし、もし一定以上その琴線に触れていたりした瞬間、叩き潰そうと、ラクサスはそう思い。ミラジェーンは話しかけられても空気のように無視すると己の内で決めていた。

 公園に来ていたのもただの気紛れで訪れ、偶然オニマルと会っていたから。

 よく話すオニマルだったが、よくよく話を聞いていけば、不遇な扱いを度々受けていたと吐露し始めていた。オニマルの祖父やギルドの仲間たちは優しくも、両親は違っていたり、己の中に眠る【力】にずっと怯えて日々眠れない夜を過ごして居るなどと、ずっとオニマルは一人喋り続けていた。

 二人はとくに反応してる訳でもないというのに、とくに言葉らしきものを送ったことも無いというのに、どうしてそんなに話すのかと正直に疑問に思ったという。

 

───なんでそんな話をしたんだって? ん~なんで、なんでって、う~ん。…………ほらなんか、なんかねぇ。別に話してもいいかなって思ったから。

 

 その時のほど唖然とした時は無かったな、とラクサスもミラジェーンも思い出していた。

 その話を聞いてから、本当に徐々に、徐々にラクサスもミラジェーンも話すようになったのだ。

 だが、その後、ラクサスもミラジェーンも色々なことが起こってしまい、連絡が互いに不通になったのがのいつ頃だったのかさえ思い出せないくらい前だった。

 

「本当にあの日以来だった。ラクサスは性格がとんでもなくなるわ。ミラはその、妹さんの件もあって、話しかけ辛くなってね」

 

 オニマルは二人に顔を向けないで、ぽつりぽつりと語った。

 

「ここの酒場に来るのにも……その、連れの人が言ってくれなきゃ多分ずっと来れなかった」

 

「連れの人って……あの人のこと?」

 

「バッカスさん? あぁ、違うよ。あの人のオレの師匠でさ」

 

「師匠だぁ?」

 

「バッカスさんのギルド《四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)》は空中迷路でかなり上位まで登り詰めていたんだけど、ウチの……《黄昏の鬼(トワイライトオウガ)》が直前に戦って、ボロボロにしちゃったんだよね。バッカスさん空中迷路に出てなかったし」

 

「そうか、お前……」

 

「…………妖精の尻尾(フェアリーテイル)に行ってきた悪どい商法をしておいて……どの面下げてきたのかって言われても何も言えないけど、正真正銘実力で勝ちたかったんだ」

 

「オニマル……」

 

 ミラジェーンはマカロフと共に、黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のアジトにまで赴き、されてきたであろう暴行などされただ(・ ・ ・ ・)け返した(・ ・ ・ ・)のだ。

 その証拠に、マスターの地位に一時とはいえ就いたであろう大男・バナボスタが独断でおこなっていたということで、アジトを奪い返し、そしてボコボコにして返したということで今回は手打ちとなった筈なのだ。

 それでも、オニマルは『申し訳ない』『恨まれて当然』の気構えでやって来ている。

 

(真面目なんだよね。オニマル)

 

 ミラジェーンは微笑して、静かにオニマルが飲んでいた空いたコップに水を注いだ。

 

「今回の件はそれでけじめが着いたんだろうが、だったら後は何もない。いつまでメソメソしてやがる。男だったら顔を上げていろよオニマル」

 

 ラクサスはボトルの酒を飲み干し、まだ少ししか酔っていない頭で、オニマルに言う。

 

「勝負となったらそこには何も後腐れもねぇんだよ。なんのしがらみもねぇ。勝つか負けるかの世界だ。そこに何かを持ち込むって言うんなら、それは気概ぐらいなもんだろうが、それ以外になにがある」

 

「……ラクサス」

 

「だからオニマル。例え俺たち妖精の尻尾(フェアリーテイル)と戦うことになったとしても……それは全力を以て戦え。それを俺たちは全力で返してやっからよ」

 

 ラクサスはそれだけ言うと、新たなお酒の注文をウェイトレスに頼んでいた。

 オニマルはミラジェーンと顔を合わせれば、満面な笑顔で頷き、思わず涙腺が壊れそうになったオニマル。ほんの昔では考えられない。この友の繋がりに、確信をもった繋がりを感じたからだった。

 だが、そんな感動的な場面を、打ち壊すかのようにワァアッ!! と歓声が酒場を支配した。

 オニマルは『まさか』と思いながら音の元を辿れば、そこに居たのは、

 

「またかよ、バッカス師匠ォォォ~~!!!」

 

 《四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)》のバッカスが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)自慢の酒豪・カナと酒飲み比べ対決をしていた所だった。

 勝負はもう決着がつくところで、バタン! と倒れたのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)メンバーが全員が驚いた。なんとカナの方が負けてしまったのだ。

 

「バ、バッカスさんと飲み比べなんて……あり得ない。よくあんなに飲み対決が出来たもんだ……ウチの頭領(マスター)と良い勝負を張れるくらいなんだぞ。バッカスさん」

 

「なんだ? 黄昏の鬼(トワイライトオウガ)のマスターも酒豪なのか?」

 

「酒豪というより、酒造ってるからなぁウチのは。皆酒には強くなる。オレは何故か例外として…………」

 

「えぇ!? うそ! ト、黄昏の鬼(トワイライトオウガ)が?」

 

「本当に本当。バッカスさんが使う最強の魔法格闘術《(すい)()()(しょう)》に使う清酒、酒銘『鬼哭酔』は黄昏の鬼(トワイライトオウガ)産だよ」

 

 衝撃的な話にラクサスもミラジェーンも驚いているが、まさか《黄昏の鬼(トワイライトオウガ)》が酒造まで手を伸ばしているなんて思いもしたかっただろう。

 

「最初は祖父たちが自分たちで呑みたい、という理由から始まったらしいんだけど、酒好きが酒好きに酒を売ってるだけの話なんだよ」

 

「まさかあの《鬼の名》シリーズの清酒がオウガが造ってたなんて、知らなかったぜ。オレも知ってる有名な名酒じゃねぇか」

 

「王さまにも献上しています」

 

「本当に凄いじゃない!」

 

「ただ本当にマニアにしか飲まないのがあの《鬼哭酔》なんだ。……妖怪の中の妖怪さえ酔わす酒として造られたもので、国が指定するほど危険性上位の超高度アルコールを誇った清酒。魔物に飲ませば酔い狂い、脳ミソが焼けるとまで言われてるんだ」

 

「なぜそこまで追求したのか、お酒に対する愛を感じるわね。もはやそれはただの薬物よ」

 

「だが、人間の適性効果みたいなのがあって、飲める人は飲めるんだよ……。でもそれを飲めたのはウチの黄昏の鬼(トワイライトオウガ)頭領(マスター)と、あの人(バッカス)だけだ」

 

 恐れ入る、とは違う。呆れ果てたような感じであった。なぜそこまで強い酒を飲みたいのかミラジェーンは少し分からない様子だったが、男ならきっとそうなのよね、と何故か収集がつかない結論でそう終わらせるも、その肝心のバッカスが敗者であるカナからなんと胸のビキニを貰っていたのだった。

 これに反応したのはミラジェーン……だと思ったオニマルは止めに入ろうと身構えるが、

 

「あ、あれ? 殴り込むのかと思ったんだけど……」

 

「やり過ぎだけど、あれは飲みすぎのカナも悪いと思うの」

 

「……もう昔のミラじゃないんだな。安心したのか、それとも少し味気ないのか……、なんか、不完全燃焼」

 

「何をミラに求めてんだおめぇ」

 

 グビグビと飲むラクサスも冷静に見ている。

 この二人昔はむき出しの刃みたいな奴らだったというのに、今は凄い大人になった感じがした。

 

「と、と言うかもう! あの人は何してんだ!」

 

 オニマルは憤慨して、バッカスを叱りに向かおうとすると、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドの者たちが、これは喧嘩を売られたと思ったのか、それとも仲間思いからきた怒りだったのか分からないが、マカオとワカバがバッカスに詰め寄ろうとしていた。

 

「危ない!」

 

 思わず叫ぶオニマルだったが、既にモーション(・ ・ ・ ・ ・)に入っているバッカスに、駆け寄ろうとするが間に合わず、マカオのパンチがバッカスの頬に目掛けて飛び出るが、酔い転びそれを避け『ウィ~~~♪』と言いながらもまるで流れるように迫り来るマカオとワカバをバチイィン!! と掌底(しょうてい)を食らわせた。

 木の床にめり込むほど強かった掌底だったが、何故か二人も大怪我するほどではなかった。が、完全に読まれて(・ ・ ・ ・)いた(・ ・)。手加減されてることも受けた本人たちが一番分かっているはずだ。

 

「ぐももも」

 

「いででで」

 

「何してるんですかバッカスさん!」

 

「ウィ~」

 

「ウィ~、じゃないですよ!! ホラ、謝ってくださいよ! すみません、本当にすみません!」

 

 オニマルは地につくほど謝りながらマカオとワカバ二人を起き上がらせ、カナの(ビキニ)もきちんと寝てる本人に律儀に返す。

 

「バッカスと一緒に居るとは……、オウガは《四つ首の番犬(クワトロケルベロス)》とも交流があるのだな」

 

「エルザ・スカーレットさん!」

 

 オニマルは綺麗な緋色の髪をした女性、エルザに恐れ多く謝罪した。

 

「いや、そんなに謝れてしまってもこちらも何も言わないさ。返してもらったしな。だが、まさかこの男とつるんでいるとは」

 

 エルザの思案顔に、ルーシィが不思議がっていると、復活したバッカスがエルザを見ると否や嬉しそうに立ち上がり駆け寄った。

 

「よぉう! エルザじゃねぇかヒック、相変わらずいい女だねぇ」

 

「久しぶりだな」

 

「7年も姿をくらませてたんだって?」

 

「まぁ色々とあってな……。しかし、おまえは大魔闘演武に参加していないようだが……」

 

「わはははっ!! 今回は若ぇ連中に任せておこうと思ってたんだけどよォ! そしたらコイツのギルドにボコボッコにされてよぉ、もうやけ酒飲むしか出来ねぇぜワッハッハッハ!!」

 

 バシバシッ! と近くに居たオニマルを叩きまくるバッカスに、とても気まずそうな顔になって叩かれてる本人は、エルザとバッカスの関係性を思案している。

 

「だからよォ、丁度弟子取ってたこともあってよォ、リザーブメンバー枠に入ってるオニマル(こいつ)使って、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に一発打ってこいって訳でここに来たのよオ! ヒック」

 

 魂が震えてくらァ、と酔いながらも目が猛々しく、朦朧と揺らぐこともなく、しっかりとエルザを捉えていた瞳に、エルザも思わず唾を飲み込んでしまう。

 

「まァこんなの方便(ホーベン)だがよォ、やっぱ悔しいんだわオレは……」

 

 ペシペシとオニマルの頭を叩きながらそう語るバッカスの声は、本当に悔しいと感じ取れるモノだった。

 

四つ首の番犬(クワトロケルベロス)はまた来年に吠えるとするぜ。……だがよォエルザ」

 

 ヒック、と吃逆(しゃっくり)を繰り返しながらも、その声にはズッシリと重みが増すことを感じ、バッカスは最高の笑みを浮かばせてそれを言う。

 

(オニ)(つえ)ーぞ?」

 

 たったそれだけ。

 ただ擁護の言葉だと思うかもしれないそれは、エルザ以外にはそう感じたかもしれない。

 だが、エルザは純粋に、そして少し『焦り』を覚えてしまった。

 大抵のことには決して油断などせず全力を以て対峙するエルザだが、この男から改めてその言葉を送られてしまうと、これほど【脅威】かもしれないと危惧することはなかっただろう。

 それだけこのバッカスという男は強いのだ。

 エルザと勝負をつけられない、果てしなく続く闘いをしたとしてもそれは拮抗するだけのもの。

 

「明日以降ぶつかる事があるかもしれねぇなぁヒック。まぁオレは純粋にこの魔闘を肴に酒でも飲んでるぜわはははは!!」

 

 フラフラと千鳥足で外に向かうバッカスに、オニマルは妖精の尻尾(フェアリーテイル)メンバーに謝りながら着いて行く。

 だが何かを思い出したのか、バッカスは笑いながらエルザに振り向きながら、

 

「魂はいつでも……ワイルドォォォォ?」

 

「…………フォー」

 

「ノリ(わり)ィよエルザァ! わはははははっ!」

 

 

 

 水路に落ちそうになるバッカスを抱えて、再度謝罪を込めたお辞儀をしてその場を後にした。

 嵐のように騒いでいなくなったバッカスだったが、それは妖精の尻尾(フェアリーテイル)に挨拶を済ますようにしたバッカスの配慮も入っていたかもしれない、そう感じたオニマルだったが、完全に爆睡モードに入り、おんぶして帰路に付いていたオニマルは、どれだけ妖精の尻尾(フェアリーテイル)に迷惑かけてしまうのだろうかと思い悩んでいた。

 街中を歩きながら、オニマルは背中で寝る師に愚痴を聞かせる。

 

「《酔いの鷹》もどこまで酔えば気が済むんでしょうかねぇ。わざわざこれ《四つ首の番犬(クワトロケルベロス)》が泊まってる宿屋まで行く感じですよね? まったく」

 

 背中から感じる師の酒臭さに、妙に懐かしさを感じてしまうオニマル。

 他のギルドだと言うのに、わざわざ教示してくれるこの師匠には返しきれないほど恩がある。

 

「……妖精の尻尾(フェアリーテイル)には悪いけど……、オレが勝つ。《(すい)()()(しょう)》は強いことを示すんだ」

 

 オニマルが師匠に返せる恩と言えばそれだと思い至ったことを満足そうにしていると、なんと目の前に突如影から現れた人物に思わず『あっ』と声を出してしまう。

 

「……フウキさん」

 

 忘れてた、マジで。

 風の如く、空気のように忘れ去られていたフウキは、帰る二人を見つけたのだろう。珍しく『潜影(もぐりかげ)』の術を使って現れた。

 

「……………………………………帰るで、ござるか」

 

「……はい」

 

「……………………………………そう」

 

 凄く声が震えているが、もうオニマルには戻る気力は無い。バッカスのせいで、

 

「……………………ハァ…………」

 

 フウキの落胆さは計り知れないだろう。

 あんなに楽しみにしていたのに、バッカスにゲ●を頭なら吐きつけられた挙げ句、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の酒場で待っていることもしないで、勝手やって好きにやって、そして帰っているのだから。

 フウキは何故かオニマルからバッカスをおんぶするの変わると連呼して呼び続けてくれるが、オニマルは不安な部分を拭えないし、王都の近場には川やら水路もあるし、落っことせば死ぬくらいの高さを誇る場所もある。

 それ故に変わることは出来ないが、フウキにも同情するし、何よりもオニマルもこの師には恩はあるが、多大な迷惑をかけられたことが多々あるの。命に関わることさえあった。

 

「目が覚ましてからなら殺しに向かっても良いですけど、酔いつぶれてるところ叩くのはどうかと……」

 

「某ィ……暗殺者(ニンジャ)ですがァ?」

 

 さっそく暗器(クナイ)持ち出してプルプルし始めるフウキは完全に犯罪者に見えてしまう。顔隠れてるし。

 しょうがない、ここは自分に任せて下さいとオニマルはフウキを落ち着かせる。

 

「フシュー……フシュー……どうするのでござる」

 

「いやクナイ置いて下さい。めっちゃ怖いですから。……えーとですね、ささやかですが……吊るしておきましょうよ。昔は悪いことをした子をヒモで吊るして晒し者にすることで、悪事はいけないことなのだと教育する習慣があったらしいので」

 

「今の世じゃ、それは罪人に課せられるものじゃ……ゴホンゴホン! あーなんでもないでござる!」

 

 オニマルとフウキは早速魔法を帯びた縄を購入し、伸縮性バツグンのそれをバッカスを簀巻(すま)きの如く縛りまくって《四つ首の番犬(クワトロケルベロス)》が泊まる宿屋前に分かるよう、吊るしたのだった。





感想やコメントお待ちしています!

最近は雨が多くて大変ですね、まさか地震までダブルで来られた時には人間どうしようもないですよね。
この妖精の尻尾(フェアリーテイル)の世界の方が遥かに危険ですが(+_+)

余計な話でしたね(;´д`)
気軽に感想やコメントお待ちしております(>_<)

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