とある教師の業務日誌 作:ダレンカー
凹月○日
あの恋愛相談室、もといお悩み相談室を行ってから相談を受けた生徒からの態度が良くなっている気がする。
それまではあまり話しかけてくることはなかったセシリアさん。…ちゃん呼びは憚られた。
は積極的に話しかけてくるし、篠ノ之さんも笑顔を見せてくれるようになった。
鈴ちゃんは変わらず気安げに接してくれている。そして織斑君は。
以前の対抗戦で約束した部屋への訪問を再度お願いしてきた。
…ちょっと心配になった自分がいたのは否定できない。
まぁ、結局たまに訪ねるくらいならいいと教えたけど。
俺は織斑君を信じてるよ!
凸月△日
また一年に転入生が来るらしい。
しかも二人、それもなんと一人は男性操縦者だそうだ。
これにはさすがに驚いた。でもいいことだよね。
やっと織斑君に同年代の同性が現れるんだから。
仲良くなってくれることを祈ろう。
そしてなんだか織斑先生が難しい顔をしていたので訳を聞くと、もう一人の転入生はかつての教え子なんだそうだ。昔ドイツ軍にいた時の。
ドイツ軍かぁ、俺も昔少しの間いた事あったっけ…。
ということはもう少し在籍していたら織斑先生の教え子になってたかもしれないのか。
なんか、面白いね。
その教え子がちょっと問題児らしい。根は真面目なのだが少し愚直なんだとか。
出来る限りフォローしますと言ったら礼を言われた。珍しい。
そんなに厄介な相手なのか…。不安になった。
凸月×日
真耶ちゃんが寮の調整でてんてこ舞いになっていた。
相談室の時の意趣返しとして高笑いしていたら織斑先生に実習の手伝いを命じられた。
ちくしょう。最近言うほど暇じゃない気がするよ。
そして転入生二人が職員室にやってきた。
綺麗な金髪を靡かせて男子の制服を纏ったシャルル・デュノア君と、
小柄な体に銀髪と眼帯を身に着けたラウラ・ボーデヴィッヒさん。
どちらも一年一組に所属するそうだ。
その流れで教室に。
そしてデュノア君の登場にどよめく生徒達。まぁ気持ちは分かる。
でももっと驚いたのはその後だ。
ボーデヴィッヒさんが、いきなり織斑君を殴りつけたのだ。
織斑先生の心配は、見事に的中してしまった。
そのあとすったもんだあって俺がボーデヴィッヒさんをアリーナに案内することになった。
IS学園に男がいることにわずかに違和感を覚えたようだったけれど、彼女にとって織斑先生は絶対のようで素直に従ってくれた。
途中、ボーデヴィッヒさんの眼帯をどこかで見たことがあった気がしたので
色々聞いてみたらなんと隊の副長はあのクラリッサなんだそうだ。
ドイツ軍のクラリッサといえば間違いはないだろう。
数年前ドイツ軍にいた頃すごく仲良くなった友人だ。
俺が日本人だと知るととても友好的に接してきてくれた。
その後趣味的な意味でも意気投合したのだ。
そう伝えるといくらか険悪な雰囲気は安らいだ。
知り合いの知り合いというのはやっぱり警戒を解くんだね。
彼女との関係を少し聞かれた後俺のことについて聞かれた。
ISも使えない脆弱な存在の分際でなぜここにいるのだと。
うん、俺にも分からない。そう答えると変な顔をしていた。
そして一組二組の合同実習。
その前の真耶ちゃんの迷走には思わず笑ってしまったけど。
いや、ISがあることだし織斑君の無事は保障されていたしね。
でもまさか公衆の面前で真耶ちゃんの胸を揉みしだくとは思わなかった。
相変わらずの不思議体質だね。
その後鈴ちゃんセシリアさん対真耶ちゃんの演習も行われたけど割愛。
これは何の面白味もなく順当に終わったからだ。
真耶ちゃん、何気に優秀だし。
そして候補生ごとに一般生徒を指導することになったんだけど、
何故か俺はボーデヴィッヒさんのサポートにつけられた。
でも割と織斑先生の顔がマジだったのが印象的だ。
予想通り何もしないボーデヴィッヒさんに織斑先生に言いつけるよ?
っていうと途端に態度を変えた。やっぱりここが攻めどころみたいだ。
でも授業後すごい顔で睨まれた。…何もないといいなぁ。
凸月●日
今日はデュノア君と初めて話した。
礼儀正しくてどこか高貴な印象を受ける彼だけど、男にしては華奢に感じた。
それに歩く時の姿勢とかも少し違和感を覚えた。
気のせいだといいのだけれど…。
折角できた織斑君の同性の友達を失わせたくはない。
そして放課後、ボーデヴィッヒさんに連れ出された。
要件は織斑先生との関係について。
なんと答えるか悩んでいると、丁度織斑先生が通りかかった。
俺たちに何をしているか問いかけるとボーデヴィッヒさんは滝汗をかいていた。
なんでもないというと織斑先生は去って行った。
汗を拭うボーデヴィッヒさんについ芽生えた悪戯心で、
俺は好きな時に織斑先生を召喚できるんだよって言ってみた。
その言葉に数秒、いや数十秒固まった後、
『貴方が神か!』
と叫んで固まってしまった。
まさか引っかかるとは思っていなかっただけに爆笑していたら、
何故か織斑先生が戻ってきた。いわく虫の知らせで。
爆笑する俺を尻目にボーデヴィッヒさんに事情を聞いた先生は俺の心臓に向けて
コークスクリューブローをかましてきた。
俗にいうハートブレイクショットだった。
マジで時が止まった。
死ぬかと思った。
今度から、ネタは選ぼうと決意したよ俺は。