とある教師の業務日誌   作:ダレンカー

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第5話

 

 

 

凸月○日

 

 

 

織斑先生に、生徒の悩みをよく聞いているそうだなって言われた。

はて、そうだろうか?

 

 

楯無ちゃんとか簪ちゃんとは最近よく話している気がするけれどそれだけだと思う。

そういうと、その二人の悩みが聞けるだけで十分だと言われた。

 

 

いや、それは単に俺が暇だっただけだと思うんだけど…。

 

 

 

そんな風に思う俺に織斑先生は、学園長が川村恭一のお悩み相談室!

なるものの設置を検討しているらしいと告げた。

 

 

 

うん、あの爺さん。たまにアホだよね。

とうとうボケたのかな?

 

 

 

頭を抱える俺を尻目に織斑先生はニヤニヤ笑っているし、真耶ちゃんも様子は楽しげだ。

 

 

ホント、勘弁してよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

凸月△日

 

 

 

 

本当に実施が決まってしまった。三日間だけのお試しだけど。

まったく、どこの不定愁訴外来だ。

…このネタはさすがに誰にも分からないか。

 

 

 

 

 

空き教室を利用して、悩みがある生徒の相談を受けろだそうだ。

いや、暇だからいいんだけどね?

そういうのは専門のカウンセラーみたいな人がやるべきなんじゃないの?

 

 

俺の疑問に学園長は、そういう堅苦しいものではなく

学園生活を豊かにするためのアドバイスを与えて上げて欲しいのだと言った。

 

 

そういわれるとやるしかないではないか。

まぁ、やることはいつもと変わらないし気楽にやって行こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凸月×日

 

 

 

 

相談室一日目。

受ける時間は休み時間と放課後。

でも、先生方が思うほど来ないと思うんだよね。

俺、男だし。ISも使えないから見下している生徒も多いだろうし。

 

 

 

 

そんな風に待っていると、早速一人目の相談者が。

記念すべき一人目は、なんと織斑君だった。

 

 

 

折角の男同士、一番に来てみたそうだ。

 

さりげなく頬を赤くするのはやめてほしい。気のせいだと思い込もう。

 

 

 

 

相談内容は、近くの女友達が暴力的で困っている。というものだった。

なんでも、言葉を聞き返したり行動の理由を聞いたりすると一変して殴られるのだそうだ。

 

 

何ともコメントに困る質問だった。

いや、彼女たちの気持ちも分かるし、状況が分からぬままの織斑君の境遇にも同情してしまう。

 

とりあえず、俺からも言い含めておくことを約束した。

彼女たちにとっても、これ以上やると嫌われかねないピンチだろうし。

織斑君には、視野を広く持つようにと、あと自分が思っていることが相手と共通認識だと思わないことと伝えておいた。

 

俺には、これぐらいが限界だと思う。

 

 

 

 

 

二人目の相談者は、鈴ちゃんだった。

開口一番言われた言葉はアンタホモだったの?だったけれど。

 

 

 

 

とりあえず落ち着かせて誤解を解いた。

そして改めて相談を聞いた。

 

 

と、友達の話なんだけど…。とかいうベタな入りからされたのは当然のごとく

恋愛相談だった。

好きな人が友達としか見てくれないからどうすれば?とのこと。

 

 

 

これまたベタな質問だけどこういうのが一番難しかったりするんだよね。

何せ相手の意識を変えなくてはならないのだ。こちらがいくら努力したところで

相手次第なのが難しい。

 

 

 

ともかく異性として意識させないことには始まらない。

なのでそういうアプローチを薦めてみたけど途端に顔を真っ赤にしてしまった。

これは前途多難かもね…。

 

 

参考になったと鈴ちゃんは去って行った。

はぁ、こんなのがあと二日も残っているのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凸月●日

 

 

 

今日一人目の相談者は、篠ノ之さんだった。

織斑君に、様子を聞いて来てみたらしい。

 

 

 

正直意外だった。てっきりあまり好かれてはいないものだと思っていたから。

そう伝えると、自分はあまり人付き合いが得意ではないのだと言われた。

 

 

 

まぁ、篠ノ之さん真面目そうだしね。確かに苦労していそうだ。

肝心の相談内容は、好きな相手に素直になるには?だった。

 

 

 

これまた俺に恋愛相談をしてくるとは驚いた。

なんでも、この間の出来事で多少の信頼を得ていたらしい。

 

 

まぁ相談に対する答えは、いくら素直になれないのだとしても暴力は厳禁だということ。

もう少し、気持ちに余裕を持つことを伝えた。

 

 

嫌われては本末転倒だし、相手は相手なりの考えで動いているのだ。

それを自分の意に反するからといって大げさに反応していてもしょうがないということ。

 

そういうと難しい顔をしていたけど、最後は納得した表情で退室していった。

少しは参考にしてくれるといいんだけどね。

 

 

 

 

 

 

放課後の相談者は、オルコットさんだった。

なんか流れ的に読めていたのでそこまで驚きはしなかった。

 

 

相談内容は、好きな人がいるのだがいかんせんライバルが多い。

一歩抜きんでるにはどうすればいいのか?とのことだ。

 

 

いつから俺は恋愛相談塾を立ち上げたのか疑問に思ったけれど、

まぁしょうがない。

年頃の女の子の悩みなど八割は色恋沙汰だろうしね。

 

 

相談に対する答えは、いくらライバルを意識したところでどうしようもないということ。

 

戦っているのはあくまで意中の相手であり恋敵ではないことに気づくべきだと伝えた。

そういうとまるで天啓を受けたような表情をしていた。

 

 

 

そして盛大にお礼を言われ名前で呼ぶことを許してもらった。

この子、割とアホだったんだね…。

 

 

やっと二日目終了、あと一日だ。

 

 

 

 

 

 

 

凸月▼日

 

 

 

最終日、最初の相談者は名前も名乗らずこう言った。

 

『織斑君と川村先生の恋を成就させるにはどうすればいいですか!?』

 

 

うん、色々頭おかしいと思う。

相談内容もそうだし相談相手も間違ってるしうんホントこの学園大丈夫かな?

 

 

 

すぐさま織斑先生を召喚した。これもばれたら殴られるかな?

ともかく、信じられない相手だった。

 

 

 

 

 

 

 

お試し相談室最後の相手は、楯無ちゃんだった。

これも驚いた。てっきり来ないものだと思っていたから。

 

 

 

相談内容は、妹と仲直りしたい。昔、守るためとはいえ酷いことを言ってしまったんだそうだ。

 

 

 

最後なのにすごく簡単な相談に肩透かしをくらう。

不思議そうな楯無ちゃんに、

 

 

 

 

 

きちんと、謝ること。

 

 

 

 

と伝えた。

そしたら、何とも言えない顔になって。

でも結局、笑顔で退出していった。

 

 

 

 

ようやくこの妙な取り組みも終わった。

もう御免だという俺に不定期開催を学園長が申しだしてきた。

 

 

答えは、とりあえず保留。

まぁ、皆がやってほしければ、やるしかないんだろうなぁ…。

 


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