ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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 いやぁ、私情と他の人の作品に夢中になるあまり、とうとう一週間一話投稿すら出来なくなってしまいました。楽しみにしておられた方々(居るのでしょうか?)……実にすいません。
 ちなみに、今自分がはまっているのは、『ZEROⅡ』さんの『LYRICAL TAIL』という小説です。

 それはそうと、通算UAがとうとう一万を超えました〜。
うん、素直に嬉しいです。


Chapter.12:十六の月夜に眠る黒猫と騎士

 

 

 第二十五層のボス攻略から三日経った、二○二三年五月十六日。

 一日の攻略を終えた俺達――俺とマースさんの二人――は、突然送られて来たメールの指示に従い、現在の攻略最前線である第二十六層の主街区《エイダム》のとある宿屋へと向かっている。メールの送り主は……スリーピング・ナイツのリーダーのランちゃん。各ギルドとの連携も必要だという理由から、フレンド登録しておいたのだ。他にも風林火山リーダーのクラインや、KoB団長のヒースクリフ、軍のリーダーのディアベルに、聖竜のリーダーの《ドレア》さんなど、主にリーダー格のプレイヤーとフレンド登録をしている。……あくまでギルド間の連携が目的で、ぶっちゃけそこまで親しいという訳でもない。

 それ以外にも多少縁の有る奴とフレンド登録をしているが、数は少ない方だ。理由は、まあ……察してくれ。

 

「おう、来たか」

 

「すいません、エギルさん。今からが一番の稼ぎ時なのに、急に呼び出しちゃったりして……」

 

「なーに、気にすんな。ギルドメンバー全員集合って話なんだろ?」

 

 さて。メールの内容によると、何でも両ギルドのメンバー全員で話し合いたい事が有るとの事だったので、早い段階からプレイヤー同士の商売を営んでいるエギルにも、多くのプレイヤーが攻略から帰って来て戦利品を売却するという一番の稼ぎ時である今この時間に店を空けてもらい、集まってもらったのだ。

 

「にしても、何なんスかね。俺ら全員を集めて話し合いたい事って…?」

 

「さあな? まあ、全員揃って話し合うって事は、余程重要な話なんだろうな」

 

「でしょうね。まあ、どんな内容にせよ、今は全員が揃うのを待ちましょ。話はそれからですし」

 

「「だな(そうッスね)」」

 

 その後、足元に二匹のオオカミ、両隣に二人の巨漢というメンバーでベンチに腰掛けながら、指定された宿屋の前で残りのメンバーが揃うのを待つのだった。……シュール? ほっとけ!

 

 

     ◆ ◆ ◆

 

 

「あっ! オオカミのお兄さん達、やっほー!」

 

 しばらくして黒猫団のメンバー全員が揃った所で宿屋一階のレストランへと向かうと、そこにはスリーピング・ナイツのメンバー十人全員が揃っており、俺達を見付けたらしいユウキが手を振って声を掛けて来た。……何気に俺の呼び方が変わっているんだが、まあ特には気にするまい。

 その場所へと向かい、アスナの指示の下それぞれ席に着く俺達。団長である俺と、副団長的ポジションのケイタ、年長者代表のエギルは、向こうの代表格らしきメンバー三人と向かい合う様に六人掛けのテーブルに。残りのメンバーは、俺達の周りのテーブルに自由に腰掛けている。

 因みに、向こうの代表格らしきメンバーは、団長のランちゃんに、アスナ、そして向こうの年長者代表の、黒いストレートの髪を両肩に長く垂らし、長い睫毛の下に穏やかそうな棗型の綺麗な眼をした女性プレイヤー《シウネー》さんの三人である。

 

「えぇ、ではこれより、ギルド《スリーピング・ナイツ》と《月夜の黒猫団》による会談を始めたいと思います」

 

 代表してアスナが切り出した事により、俺達黒猫団メンバーの周りに緊張の空気が漂い始める。対し、スリーピング・ナイツの面々は会談の内容を知っている様で、こちらよりも雰囲気が落ち着いている。

 果たして、一体どんな内容なのだろうか…?

 

「今回黒猫団の皆さんに集まって頂いたのは、皆さんにとある提案を持ち掛ける為です」

 

「……提案?」

 

 アスナの勿体振る様な言い方に多少眉を寄せながら聞き返すと、彼女はようやく会談の内容を明かした。

 

「わたし達のギルドと、合併する気は有りませんか?」

 

 合併――つまりは、俺達黒猫団とランちゃん達スリーピング・ナイツで一緒に攻略をしないか? という事か。

 

「にしても、何でうちと合併をしようと?」

 

「ほら、うちとあなた達って、此処最近ボス攻略でよく連合を組んでるでしょ? なら、いっその事合併して一つのギルドになっても良いんじゃないかと考えたのよ」

 

「ふぅん」

 

 理由になっているのかどうか微妙な所だが、理由なんてのは大抵そういうものなのだろうと納得する事に。だが、俺はそこでとある事に気付いた。

 

「ん? なら、何でクライン達は誘わなかったんだ? あいつらとだって連合組んでるだろ」

 

「えっ!? ええと、その……そう! クラインさん達とはまだフレンド登録してないのよ! だから連絡しようにも出来なくて……」

 

「あれ? まだしてなかったっけか?」

 

「え、ええ。そうなの……」

 

「ふぅん……まあ、ならしゃーないか」

 

 俺の疑問に対するアスナの答えは何処か急に思い付いた様な感じもしたが、何だかこれ以上詮索してはいけない様な気がしたので、彼女の答えに納得する事にした。

 ……それはそうと、アスナ以外のスリーピング・ナイツのメンバーがニヤニヤしている様に見えるのは、気のせいだろうか?

 

「んー……ギルドメンバーの人数が増えるのは嬉しいが、それまでのお互いのギルドの方針ややり方が崩れるのはなぁ……」

 

 さて。人数が増えれば攻略の効率は上がるだろうし、連携が取り易くなる為にボス攻略に於いても有利に動けるだろう。

 が、合併するという事はそんな良い事ばかりという訳でもない。合併する以上は方針ややり方を一つに纏める必要が有る訳で、そうなるとそれまでのやり方が崩れてしまったり、考え方の違いから下手をすれば内部分裂が起こったりもするだろう。

 

「確かにそうですよねぇ……」

 

「なら、それについてはお互いが納得出来るものを考えるとして、参考までにそちらの方針ややり方について教えてもらえないかしら?」

 

 俺の言い分に同意するランちゃんに対して、前向きな提案をしてくるアスナ。更に続けてこちらのギルド事情についても尋ねて来る。……えらく積極的だなぁ。

 

「うちは基本攻略重視の方針だけど、活動内容に関しては各々の好きな様にやらせてる……つまりは自由だ」

 

「自由…ですか…?」

 

 俺の説明に、シウネーさんは驚いた様な表情をしながら問い返して来る。見ればシウネーさんだけではなく、ランちゃんやアスナを含めた他のギルドメンバーも同様の表情をしている。

 

「攻略に励むも良し。クエストに挑戦してアイテムや情報を入手するも良し。アイテム調達に行くも良し。休むも良し……せっかくゲームの世界に来ている訳なんですから、楽しむとまではいかないにしても、自由にやりたい様にさせてあげないと。勿論犯罪行為は禁止してますし、攻略に参加する意思の有るメンバーにはちゃんとレベルを上げる様に言ってありますよ」

 

「へぇー、中々良いギルドじゃん。アタシだったら迷わず入りたくなるよ」

 

「僕も僕も!」

 

 俺の説明が終わると、他のテーブルに着いていた、太陽の様に広がった黒髪に浅黒い肌、きりりとした両目に、骨太な体格をした女性プレイヤー《ノリ》がいの一番に口を開き、次いで、頭の後ろで小さな尻尾を結んだ髪をアイテムでオレンジ色に染めたのであろう、見た目シリカやランちゃん、ユウキと同い年くらいの小柄な少年《ジュン》が声を上げる。そして、他のメンバーも二人に賛同する様に頷いている。

 

「攻略の効率としても悪くないやり方だわ」

 

「それに、何より気持ち的に実にやり易そうですね」

 

「アスナさん……いっその事、もうこのやり方で決定で良いんじゃないですか? 少なくとも、わたしはそう考えているんですが……」

 

「うん、そうね。わたしもそれで良いと思うの」

 

 どうやら、うちのやり方は向こうの代表格にも好評の様で、向こうで勝手に話が纏まりつつある様だ。

 

「という訳で、わたし達はそちらのやり方に賛同します。ですので、うちと合併しませんか?」

 

「えっと……本当にうちのやり方で良いのか?」

 

「はい。寧ろそちらのやり方でやらせて下さい」

 

 再度のアスナ達からの勧誘に対して俺が確認の質問を投げ掛けると、ランちゃんが代表して肯定の意思を返して来た。

 

「分かった。そこまで言われたら、合併せざるを得ないっしょ」

 

 それを聞いた俺も、一度黒猫団の皆の反応を窺った後、彼女達からの合併の提案を受け入れる事にした。

 

「本当…!?」

 

「ああ。これから宜しくな」

 

「ええ! 一緒に頑張りましょう!」

 

 あれ? 何故だろう……アスナがやけに嬉しそうに見えるのは…?

 

 何故だろう……またしてもスリーピング・ナイツのメンバーがニヤニヤしている様に見えるのは…?

 

 そして何故だろう……後ろから殺気の様なものを二つも感じるのは…?

 

「んで、新しいギルドのリーダーは誰がやるんだ?」

 

 そんな疑問を抱いていると、隣に座っているエギルが口を開き、次いでランちゃんが言葉を口にした。

 

「あ、そういえばそうですよね。後、ギルドの名前とかも考えないといけませんよね。合併する以上は」

 

「まあ、とりあえずまずは新しいギルドのリーダーから決め……」

 

 それに続いて俺も口を開くが、思わず途中で言葉を止めて止めてしまう。それは何故かと言うと……

 

「……ええと、何故皆さん俺の事を見詰めてらっしゃるのでしょうか…?」

 

 何故か、両ギルドのメンバー全員の視線が俺に集中しているからだ。自意識過剰とかではなくマジで。……それとケイタ……俺の肩に乗せているこの手は何でしょうか…?

 

「……まさかとは思いますが、俺にリーダーをやれという事でしょうか…?」

 

「「「うん(はい)(ああ)(ええ)(おう)!!」」」

 

「まさかの即答かつ満場一致!?」

 

 嫌な予感を覚えてつい丁寧口調で尋ねてみれば、全員が声を揃えて肯定の言葉を返して来た。ランちゃんやアスナも例外ではない。

 

「何でだ!? 何で全員で俺を推してるんだ!? 適任な奴は俺以外にも居るよなぁ!?」

 

 そう思い、ランちゃん、アスナ、ユウキ、キリト、エギルと、俺の中では適任だと思われる人物達に視線を向ける。え? 最後までやり通すポリシーはどうしたって? いや、ギルド新しくなるんだから良いじゃん! あれはあくまで黒猫団の団長としてであって、新しいギルドには反映されません!

 

「い、いやぁ……ほら、俺ってコミュ症じゃん? つー訳で無理」

 

 ポリポリと頬を掻くキリト。コミュ症を理由に逃げんな! それを言ったら俺だってコミュニケーション能力低いから辞退したいよ!

 

「悪いな。俺には店が有るからな」

 

 むぅ…。エギルはまあ仕方あるまい……。

 

「姉ちゃんを差し置いてボクがリーダーになるなんて出来ないよ」

 

 くっ…。ユウキもまあ…仕方あるまいか……。

 

「わたしは……ほら、やっぱり経験の有る人がやるべきかなぁ…って」

 

 と、経験の有無を理由に逃れようとするアスナ。いやだから、経験の有無なんてそんなに関係無いと思うんですが。

 

「確かにわたしもスリーピング・ナイツのリーダーを務めていましたので経験は有りますが、けどやはり、年下の者があまりでしゃばるのは良くないと思いまして」

 

 ではと、同じくリーダーの経験の有るランちゃんへと視線を向けるが、自身の年齢を理由に俺にリーダーの役目を押し付け様としている。……何かずるいぞ。

 てか何ですかもぉー! そこまでして俺をリーダーにしたいんですか!? お前ら密かに結託してるんじゃないですか!?

 

「まあ、皆さん色々と理由をおっしゃってはいますが、あなたを推薦する一番の理由としては、やはりカミヤさんの皆さんを守ろうとする姿勢故…でしょうかね」

 

 と、五人の言い分を聞いたの直後に、シウネーさんからようやくまともな理由を聞く事が出来た。……しかし、やはり理由はそれなのか。

 

「初日の演説もあるが、先日のボス攻略の時だってそうだ」

 

「そうですね。崩壊した僕ら攻略メンバーを守る為に、一人でボスの注意を引いてくれていましたしね」

 

「うんうん! 凄くかっこよかったよ、カミやん!」

 

 シウネーさんの言葉に続き、エギル、ケイタ、そしてスリーピング・ナイツのメンバーの一人で、ショートの金髪に深緑色の大きな瞳、鼻の所に横一筋のペイントを入れた、褐色肌の細身な少女《イヴ》が口を揃えて先日のボス攻略の際の事を話す。

 

「普段の攻略の時でもそうだ。俺達は勿論の事、たとえ相手が知らないプレイヤーや他のギルドのプレイヤーだろうと、ピンチに至っていれば助けに入る」

 

「そんなカミヤ君だからこそ、リーダーに相応しいと私達は思っているし、此処まで付いて来たんだよね」

 

「「「ああ(おう)(ええ)(うん)!」」」

 

 更に、うちのメンバーである、常に白いフードを目深に被った男性プレイヤー《トシユキ》、そしてサチが言葉を引き継ぎ、サチの言葉に黒猫団メンバーが声に出して頷く。

 

「そういう訳だから、カミヤ君…新しいギルドでも君にリーダーになって欲しいの」

 

 そう言って真っ直ぐに俺の事を見詰めるサチ。そして周りを見回せば、スリーピング・ナイツのメンバーも含めて全員が頷いている。……はあ、まったく……

 

「……ようやく楽出来ると思ったんだけどなぁ」

 

「え…? それじゃあ…!?」

 

「ああ、やるよ。やってやるよ。そこまで信頼されてるとあっちゃ、応えない訳にはいかないだろうが」

 

 愚痴を零しつつも、結局俺はまた彼らの押しに負けて、リーダーの役目を引き受けてしまった。……ほんと俺、こういうのに弱いなぁ。

 

「その代わり、今回は俺がギルド名を決めさせて貰うからな? そのくらいの我が儘は認めろよな」

 

「まあ、そのくらいの権利は有っても良いわよね」

 

「はい。宜しくお願いしますね」

 

「出来るだけカッコイイのを頼むぜ!」

 

「心配要りませんよ。お兄ちゃんって、意外とネーミングセンス有りますから」

 

 シノン、ランちゃん、ダッカー、シリカの反応を聞いてから、俺は新しいギルド名を考える。そして、しばらくの思考……途中でメニューを開いてある事を確認した後――

 

「うし、決まった。新しいギルドの名前は《十六夜(いざよい)騎士団》だ」

 

 俺の頭の中で纏まった案を、メンバーに発表する。

 

「十六夜…騎士団……」

 

「うおー! カッケー!」

 

「中々良いんじゃない」

 

「ええ。ところで、何で十六夜騎士団なの…?」

 

「スリーピング・ナイツの《スリーピング》……つまりは《眠る》って言葉から、月夜の黒猫団とも共通する《夜》って言葉を連想してな。そこから夜に関係する言葉を探していく内に《十六夜》って言葉が浮かんで、そういえば今日は十六日だって事を思い出して、ちょうどピッタリだと思って《十六夜騎士団》にしたんだ」

 

「へぇー。成る程ね」

 

 俺が考えたギルド名を皆が称賛する中、名前の由来を尋ねて来たアスナ。それに対して俺が由来を説明すると、アスナが……メンバー全員が納得した様に頷いた。

 

「さてと……」

 

 と、此処で一言呟いた俺は、座っていた椅子から立ち上がり、表情を真剣なものに変えてからメンバー全員に向けて口を開いた。

 

「良いかお前ら……このデスゲームが終わるその日まで、誰一人として死んでくれるなよ? それが俺達十六夜騎士団の、絶対に守るべき最重要規則だからな!」

 

「「「おう(ああ)(はい)(うん)(ええ)!!」」」

 

 第一層の頃から煩く言い続けて来た言葉に、元・黒猫団のメンバーは勿論、元・スリーピング・ナイツのメンバーも真剣な表情をして頷いたのだった。

 

 その後、ギルドのマークやシンボルカラーなんかを決めた後、ギルド合併を祝ってのパーティーが行われ、皆大いに楽しんだのだった。




 という訳で、黒猫団とスリーピング・ナイツを合併させてしまいました。うん……ご都合主義全開ですね。すいません……。
 けど、これで本格的にアスナさんもヒロインとして活躍させられる訳ですよ。

 ……けど、自分の小説……ヒロイン要素が少な過ぎる様な気がするんだよなぁ。此処から頑張らねば……。

 さて、次回は二○二三年内の話を書く予定なのですが、内容が未だに決まっていないのです(汗)
 という訳で、次回更新までに時間が掛かるやもしれません。当小説を楽しみにしておられる方々(居るのでしょうか?)……申し訳ありませんが、あまり期待せずにお待ち下さいませ。なるべく早く更新出来る様…努力は致します。

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