ソードアート・オンライン 〜The Parallel Game〜 《更新凍結、新作投稿中》   作:和狼

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 本当に一週間に一話になってしまった……。

 という訳で、本編第十一話です。どうぞ。


Chapter.11:加速する激闘!

 

 

 苦難の末に、第二十五層のボス《ザ・ヘビィクラッジ・ゴーレム》の五本有るHPゲージのうちの一本を消す事に成功した瞬間、その出来事は起こった。

 

「ゴ、ゴオッ、ゴオオオオオ……」

 

 ボスの身体が急に光を放ち出し、ボスが徐々に光に包まれて行く。何かが起こると思い、俺達は全員ボスの周りから急いで離れる。だが……

 

「? な、何も起きねぇぞ…?」

 

「な、何や。ただの虚仮威しかいな」

 

 クラインの言う通り何事も起こる事は無く、光も徐々に消えて行く。

 

「ゴオオオオオオオォ――!!」

 

 キバオウさんの言う通り、ただの虚仮威しかと油断したその時だった。ボスの咆哮と共にボスの身体を覆っていた岩が四方八方へと弾け飛び、俺達攻略メンバーを襲ったのだった。

 

「うわあッ…!?」

「きゃあッ…!?」

「ぐあッ…!?」

 

 ボスの思わぬ攻撃に反応出来ず、殆どのプレイヤーが飛んで来た岩の直撃を受けて吹き飛ばされた。かく言う俺も同様だ。

 

「くっ…! 大分削られたなぁ……」

 

 HPを見れば、今ので一気にレッドゾーン手前まで削られている。加えて、岩の直撃を受けたという痛みから上手く身体を起こす事が出来ない。

 

「「クウゥン……」」

 

「お、俺は何とか大丈夫だ。それよりシリカは…!?」

 

 上手く躱して大ダメージは避けられたのであろうリトとスーナが駆け寄って来て、俺の事を心配そうに見詰めて来る。そんな彼らに多少虚勢を張って平気であると告げてから、急いでシリカの安否を確かめるべく周りを見渡す。

 

「きゅるア〜」

 

「うぅッ……。ありがとう…ピナ……」

 

 どうやら無事だった様で、見付けた時にはピナが持つ回復技《ヒールブレス》でHPを回復させている所だった。

 一番の不安が解消された事で周りを見る余裕が出来た俺は、次に他のプレイヤーの状態を確認する。幸いな事に死者は出ていない様だが、殆どのプレイヤーがイエローゾーンやレッドゾーンにまでHPを削られている。ヒースクリフだけは何とか反応出来た様で、大したダメージは受けずに済んだ様だ。

 

「……え?」

 

 そして、最後にこの状況を作り出した張本人たるボスを確認したのだが、途端にボスの様子に違和感を感じた……正確に言えば、先程までの姿と何処か違っている様に見えた。

 先ず、身体の大きさ――全体的に少し細くなり、先程まで天井に届かんばかりの高さだったのが、今は天井との間に一メートルくらいの隙間を生むくらいの高さになっている。天井の高さが変わるとは思えないので、ボスの方が縮んだのは間違いないだろう。

 次に、身体の色――先程までは殆ど黒に近い色に少し茶色が混ざった様な色だったのが、今では黒が薄れて代わりに茶色の成分が濃くなったダークブラウンの様な色に変わっている。

 

「ゴオオオオオオオォ――!!」

 

 とにもかくにも、今はボス攻略の真っ最中。何時までも倒れている訳にもいかないと思った俺は、ポーチの中から一つの結晶アイテムを取り出す。

 《回復結晶》――ポーションと並ぶHP回復用のアイテム……つまりはこのデスゲームに於ける重要な生命線で、ポーションが回復するまでに時間が掛かるのに対し、こちらは瞬時にゲージを全快にしてくれるというスーパーアイテムだ。だがその分、回復結晶はポーションよりも値段が張る為に、無闇やたらに使う事は出来ないのだ。

 だが、今は使う事を惜しんでいる場合ではない。殆どのプレイヤーが命の危険に晒されている今、一刻も早くボスの注意を引いて、皆が回復する時間を稼がなくてはならない。加えて、リトとスーナはピナの様な回復技は使えない為、どうしてもアイテムを使って回復するしかない。故に、俺は躊躇う事無く回復結晶を使ってHPを全快にし、ボスのターゲットを取るべくボスの許へと駆け出した。

 

「シリカ! 俺がボスのターゲットを取り続ける! その間にピナを連れて皆の回復に廻ってくれ!」

 

 その途中で、シリカに向けて皆の回復に廻る様にと一方的に指示を出し、彼女の反応を待たずにボスの許へと向かう。

 

「ゴオ……」

 

 そして、どうやら狙い通りに俺をターゲットに見定めてくれた様で、ボスは攻撃の構えを取る。

 

「……え?」

 

 ……だが、此処で思わぬ誤算が生じてしまった。

 

(さ、さっきよりも動きが速い…!?)

 

 どういう訳なのか、ボスの動きが先程までよりも速くなっていたのだ。

 

「オオオオオォ――!!」

 

 やはり先程よりも速いスピードで振り下ろされるボスの拳。何とか攻撃の範囲内から離れる事は出来たが、ボスの動きの速さに驚いて一瞬反応が遅れた為、充分な距離を稼ぐ事は出来なかった。一瞬だけとは言え強い揺れに襲われる……

 

「……あれ?」

 

 ……そう思っていたのだが、今度は良い意味で誤算が生じた。

 

(距離が短いはずなのに、揺れの強さがそんなに大きくない…?)

 

 これまたどういう訳なのか、ボスとの距離の割に受ける揺れの強さが思っていたよりも小さいのだ。それこそ、距離を置いた場所で受けた揺れの強さと同じくらいだ。

 

(何がどうなってんだ…?)

 

 ボスが岩を飛ばしてからというもの、ボスの身体が急に小さくなった様に見えたり、急に動きが速くなったり、急に揺れの強さが小さくなったり。まるでスリムになって素早さが上がった分、攻撃力が下がったかの様な――

 

(ッ…!?)

 

 そこまで考えた所で、俺はとある推測に行き着いた。

 

「だとしたら……」

 

 それを確かめるべく直ぐ様ボスの足元へと走り、弱点ではない場所へと攻撃を叩き込む。すると、今まで大したダメージを与えられなかったはずの攻撃は、僅かにだが今までよりも大きくHPを削っていた。

 

(やっぱりそうだ!)

 

 それにより、俺の推測はより確かなものへと変わった。

 

「聞いてくれ!」

 

 そしてそれを攻略メンバーに伝えるべく、声を上げて叫ぶ。

 

「さっきの岩を飛ばす攻撃……どうやらあれは、ボス自身の身体を削ってのものみたいだ!」

 

 ボスの身体が小さく、細くなった事から考えるに、ほぼそれで間違いないだろう。

 

「そしてその影響で動きが速くなった分、攻撃力と防御力は落ちたと思われる!」

 

 身体……岩が削れた事で重量が軽減し、それにより動き易くなった事でスピードは上昇。一方で、鉱物特有の堅さは減弱して防御力は落ちた。攻撃力に関しては、恐らくは岩の重量を攻撃に用いていたが為に、その重量が減少した所為で減少したのだろう。

 まあ、それが分かった所で、戦法が大きく変わるという訳でもないが。

 

「うっしゃあ! 今まで大したダメージを与えられなかった分、ガンガン削ってやっからなぁ! 覚悟しろよゴーレム野郎!」

 

 周りを見渡せば、多くの攻略メンバーが戦闘に復帰出来るまでにHPの回復を終わらせた様で、続々と立ち上がって武器を構えている。クラインに至っては気合い充分といった感じで、ボスに向けて威勢良く叫んでいる。

 

 それじゃあまあ、そろそろ反撃…行かせてもらうとしましょうか!

 

 

     ◆ ◆ ◆

 

 

「ゴ、ゴオッ、ゴオオオオオ……」

 

 完全に態勢を立て直し、攻略を再開してから数十分。途中腕で薙ぎ払う、両拳を合わせて振り下ろすなどといった新たな攻撃パターンが出現したが、それらを無事に乗り切った上で、ようやく五本有るゲージのうちの四本を消す事に成功した。

 

「総員退避! 防御部隊…構え!」

 

 そして、四度目となるボスの岩飛ばし攻撃への対応も万全。聖竜連合を中心としたタンクプレイヤーが盾を構えて周囲に展開し、その後ろにその他のプレイヤーが避難する。

 

「ゴオオオオオオオォ――!!」

 

 攻撃が止むのを待ち(中には飛んで来る岩をソードスキルで迎撃しているプレイヤーも居る)、止んだ所で攻撃に転じるべくタンクプレイヤーの陰から出て、タンクプレイヤーはHPを回復させるべく後ろへと移動させる。

 何時でも行ける様にと構えていると、今では四メートル程にまで縮み、赤褐色に染まったボスが新たな動きを見せた。

 

「ゴ? ゴオッ!? ゴオオオオオオオォ――!!」

 

 自身の身体を見詰めて慌てふためいた(?)かと思えば、重量が大いに軽くなった為にかなり速くなった動き――それでも普通のゴーレム並の速さ――で、ボス部屋の奥……石造りのハンマーの許へと慌てて駆け寄って行った。……何のギャグ演出だ?

 

「ゴオオオオオオオォ――!!」

 

 さて。そんなギャグ演出をしてくれたボスは石造りのハンマーを持ち上げると、こちらへと振り返り今一度大きな咆哮を上げる。やはりあのハンマーはボスが使う武器だった様だ。だが、ハンマーの存在を確認していた時点でそれは予想出来ていた事。故にハンマー系統のスキルの対策もしてあり、皆慌てる事無く身構える。

 

「ゴオ……」

 

「来るぞ! 衝撃には気をつけたまえ!」

 

 振り下ろし系統の攻撃は後退、若しくは左右に躱すなどして回避し、ボスが次の構えを取るまで攻撃。

 

「スイング系の通常攻撃、来るぞ!」

 

「防御部隊…構え!」

 

 スイング系の攻撃は、ソードスキルならば後退して回避し、普通攻撃ならば複数人のタンクプレイヤーで防御。

 

「うおおらあああァ――!!」

 

 受け止めた所を重武器で打ち返し、その隙に他のプレイヤーが攻撃を仕掛ける。

 幸いナミング――麻痺攻撃はして来ない様なので、衝撃にさえ持ち堪えれば後はこちらのもの。数にものを言わせて一気に攻め込むのみだ。

 

 そうした戦闘を続ける事十数分、ボスの最後のHPゲージがようやく三割を下回り、長かったボス攻略もいよいよ大詰めとなる。

 

「畳み掛けるぞ! 総員全力攻撃!」

 

 ボスの攻撃を躱した直後、ヒースクリフの指示の下全プレイヤーで一斉にボスへと攻撃を仕掛ける。

 

「ゴオ……」

 

 だが、ボスもこのまま大人しく倒させるつもりは無いらしく、最後の足掻きとばかりにソードスキルを振り下ろさんと構える。

 

「「ワオオオオオォ――ン!!」」

 

「ゴオッ…!?」

 

 だが、突如リトとスーナが吠えた事に驚いた様で、発動させようとしたソードスキルを途中で解除する。

 

「ナイスだ! リト、スーナ!」

 

「「ワオッ!」」

 

 リトとスーナが作ってくれたその決定的な隙を逃すはずもなく、残り僅かとなったHPを一気に削りに掛かる。入れ代わり立ち代わりに、色とりどり、多種多様なソードスキルがボスの身体に叩き込まれる。そして――

 

「カミヤ…スイッチ!」

 

「了解!」

 

 ケイタと入れ代わり、ソードスキルを発動させてボスへと斬り掛かる。

 

「ゴオッ……」

 

 上から右下への袈裟斬り、上から左下への袈裟斬り、そして左から右への水平斬りという、三角形を描く様な軌跡で放たれる片手剣三連撃ソードスキル《トリニティ・スラッシュ》。他のプレイヤーが放ったスキルとほぼ同時にそれが決まった直後、ボスの残り僅かだったHPは全て無くなり、HPゲージは消滅。

 

「ゴ…ゴ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」

 

 ボスの身体は五度光に包まれ、そして――

 

「ゴオオオオオオオォ――!!」

 

 今まで以上に大きな咆哮を上げて、第二十五層フロアボス《ザ・ヘビィクラッジ・ゴーレム》はド派手にポリゴン片を爆散させて消滅。青白い光が降り注ぐボス部屋の上空には、【Congratulations】という文字が表示された。

 

 

 ――俺達は、無事第二十五層フロアボスに勝利したのだ。

 

 

「……ん?」

 

 空中に浮かぶ文字を眺め、ボス攻略が終わった事に安堵していると、突如俺の視界にシステムメッセージが表示された。まさかと思ってメッセージを確認すると、そこには案の定【You got the Last Attack!!】という文字……つまり、俺がLAボーナスを手に入れたという内容が書かれていた。今までのボス攻略では殆ど他の奴――主にキリト――に譲っていた為、まさか自分が取る事になるとは思ってもいなかった。その為、俺は内心かなり驚いている。その半面、LAボーナスをゲット出来た事への嬉しさも勿論有る訳で、今にも口角が上がってしまいそうだ。

 因みに、手に入れたアイテムは《ブラックスチル・インゴット》。LAボーナスであるが故に、恐らくは高い確率で強力な武器が出来上がる事だろう。強化したばかりだが、今日明日にでもあいつに頼んで新調してもらう事にしよう。

 

「お疲れ、カミヤ」

 

「ん? ああ。お疲れさん」

 

 そんな事を考えていると、ケイタを始めとした黒猫団のメンバーが続々と集まって来て、それぞれに労いの言葉を掛け合う。

 

「「ワオッ!」」

 

「おお! お前達もお疲れさんだったな。リト、スーナ」

 

「「くうぅん♪」」

 

 そして、皆と一緒にやって来たリトとスーナへも労いの言葉を掛けながら、両手でそれぞれの頭を撫でてやる。こいつらも、ボスへの攻撃や最後の威嚇など、皆に負けず劣らずと頑張ってくれたのだから。

 

「「…………(ジー)」」

 

 ところで、シリカとサチが何だか羨ましそうな目でこちらを見詰めているのだが、一体これはどういう事なのでしょうか?

 

「えーっと、二人ともどうかしたのか…?」

 

「「撫でて」」」

 

「……え?」

 

「「あたし(私)達も頑張ったから撫でて!////」」

 

「ええェ〜〜!?」

 

 何なのかと思って二人に尋ねてみれば、ほんのり頬を染めながら揃って自分達も撫でて欲しいと言い出して来た。てかお前ら……頭撫でるのと同じか、以上に恥ずかしい事ほぼ毎晩の様にしてるんだから、今更そんな顔すんなよ。こっちまで恥ずかしくなるだろうが。てか周り…ニヤニヤすんな! 特にマースさん…あんた普段は無表情なくせに、こういう時だけそういう顔しないで! それとキリトお前もだ! 俺と同類のお前にだけはそんな顔されたくねぇよ!

 

「わ、分かった分かった!」

 

 やがて、シリカとサチからの無言の圧力、周りからの視線の両方に耐えられなくなった俺は、恥ずかしいのを抑えながら二人の頭を撫でてやる事に。……その際、別の場所からも二人と同じ様な視線を感じた様な気がしたが、気のせいだと判断して無視する事にした。

 

 こうして第二十五層フロアボス攻略は、最後にちょっとした騒動(?)が有ったものの、無事に終了したのだった。




 そういえば、『ホロウ・フラグメント』にてサチちゃん復活ですよ! よかったねぇ(泣)

 ……まあ恐らく、本当に復活という訳じゃないと思いますが。それでも何か嬉しいですね。……そして何だか切ない。

 他にも、アルゴやキバオウさんも登場するご様子で。

ディアベル「あれ? 俺の出番は…?」

ケイタ「僕達…出番有るのかな…?」
「「「…………」」」

クラディール「ヒャハハハハ!! 今度こそ黒の小僧を殺して、俺様がアスナ様の隣に――」
「「「お前(あなた)(貴様)(てめぇ)は出て来るな!!」
クラディール「ぐあっ…!?」

 ――クラディールは、永久ログアウトしました。


 そして、PoHの声はまさかの藤原啓治さんですよ。木いいい原くうううううんですよ。いやぁ、アニメの声も渋くてよかったですけど、藤原さんの声も中々に良さそうですね。

 ……やる予定はおろか、Vitaすら無いんですけどね(汗)

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