デジモンアドベンチャー~Future~   作:優雅

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第17話 燃えよ!ファイラモン

新たなデジヴァイスを手に入れた大輔たち、その力は新たな闇にも負けはしなかった。

その力で洗脳されたガブモンを救出し、他にも操られれいたデジモンたちを開放した一同。だが、彼らの戦いはまだ終わってはいない。そう、戦いは始まったばかりである。今も、彼は戦い続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へい!フルーツミックス~これぞフルーツバスケット・クレープ~に特製バナナタルト!夕張メロンケーキお待ち!!」

「こっちはオムライスにシーフードピザ、からあげにフライドポテトできたぞ!」

 

彼らは戦っている。

厨房で。

授業のボイコットの罰として。

 

 

 

* * *

 

 

 

大輔と太一が教室に戻ってこれたのは、すでに放課後だった。

もちろん、その間の授業は一切受けてなく、千冬もせいぜい午前中には戻ってくるだろうと思っていたけれど、放課後まで戻ってこなかった二人を無罪放免とはしなかった。

最初はISを背負ってグランド100周を命じようとした。ただでさえ、ISを背負うことなどできはしないのに1周10キロもあるグランドを100周だ。日が暮れるどころか、何日かかるかもわからない。そこで止めに入ったのが麻耶だった。

麻耶からの提案は本日行われる太一のクラス委員就任パーティーで、料理をつくることだった。

あんな地獄のメニューの後で麻耶からだした提案はまさしく天国。二人には麻耶が女神に見えただろう。

そんなこともあって、今大輔と太一は次々と料理を作っているのだった。だが、一部の者は納得いかなかった。

そう、同じく授業をボイコットしてしまった簪と楯無だ。

二人は大輔たちと違ってお咎めなし。

元々更識家が暗部であることも相まって、二人がいなくなっても家の事情だと黙認されていたのだった。

そのため、二人は大輔たちを手伝おうとしたものの、これは罰であるが故千冬が許すはずもなく、大輔自身元からやろうとしていたことなので手伝うことができなかったのだった。

そんなこともあって、太一のクラス代表就任パーティーが始まった。

 

『八神くん、クラス代表おめでとう~~~~!!!』

「はは……自分で準備したせいか、嬉しくねえ…」

「まあまあ、そう言わないでくださいよ太一さん」

 

パーティーが始まってさっそく、太一は今までの疲れでうなだれているのだった。

 

「にしても、本当に太一さんは強かったよな。俺は戦えなかったけど、勝てる自信がねえや」

「ああ。無手に盾、さらにはライフルまで操っていたからな。対策をしても、別の武器で潰されるだろう」

「まったくですわ。しかもIS自身を自由に進化までさせて…底が見えませんわ」

「さすがたっくんだよ~!」

 

現在、太一たちのいるテーブルには太一、大輔、一夏、箒、セシリア、本音がいる。

開始前に楯無と簪を誘ったのだが、準備を手伝えなかったことを思って遠慮したのだった。

その変わり、今度別にパーティーをしようと話し合ったのだった。

 

「はいはいは~い、新聞部で~す!今、IS学園で最も有名な1年生【八神太一】くんにインタビューでーす」

 

パーティーが進む中、一人の女生徒がやってきた。

胸元のリボンを見れば、その女生徒が2年生であることが分かった。

 

「ではずばり!八神くん、クラス代表になった感想をどうぞ!」

「あーっと、とにかくやれえるとこまで頑張ります」

「ん~、もう一声欲しいわね~」

「たっくんたっくん、そこはお嬢様のために頑張る~って言ってほしかったな~」

「ばっ、本音何言って!!」

 

無難に答えた太一だったが、本音の爆弾発言により顔を真っ赤にするのだった。

そして、その瞬間を新聞部は見逃さなかった。その眼は、獲物を目前とした鷹のように鋭く太一を見ている。

 

「ほうほうほう!!これは、素晴らしい記事が書けそうです!タイトルとしては

『発覚!?男性操縦者八神太一とIS学園生徒会長更識楯無の熱愛疑惑!』ですね!!!」

「おい、馬鹿!やめろーー!!」

 

全力で暴走する新聞部に、太一も止めようとメモを書き留めていく手帳に手を伸ばす。

だが、新聞部は蝶のごとくひらりひらりと太一の手を躱していく。

そして、その場にいた大輔と一夏は自身の身の危険を感じその場を離れようとする。

 

「ふ、フフフ……こうなりゃ自棄だ!大輔!一夏!お前らも犠牲になりやがれーーー!!!」

「ぎゃーーー!太一さん!頼みます、離してください!!」

「な、なんで俺までーー!!!」

 

逃げようとする大輔と一夏を暗黒進化した太一に捕縛されるのだった。

捕まった二人は恋愛以上について強制的に語らされるのだった。

二人に逃げ場はない。なぜなら、女子高生とはこの手の話が大好物だからだ。興味ない振りをしている箒とセシリアも、何気に二人の背後に立ち逃げ道を塞いでいる。

大輔は初恋の少女である光のこと、失恋中のこと、今一番大輔の傍にいる簪のことなど聞かれ、所々太一と本音が余計な事を言っては場を盛り上げた。

一夏は一夏で、幼馴染である箒のこと、先日戦ったセシリアのこと、千冬の私生活についてなどを聞かれまくった。

その結果、IS学園において、太一の嫁は楯無、大輔の嫁は簪、一夏はシスコンのと語り継がれるんであった。

 

 

 

* * *

 

 

 

そんな風に1年寮の食堂が盛り上がる中、IS学園に一人の少女がやってきていた。

その少女の名は、|鳳鈴音«ファン・リンイン»。高難関であるIS学園の編入試験を受け見事合格した中国の代表候補性だ。

だが、そんな彼女は今悩んでいた。それは

 

「ここはどこなのよーーーー!!!」

 

迷子になっているからだ。

IS学園は広い。それこそ、某千葉にあるのに東京と名前にあるテーマパークよりも広い。

毎年、IS学園に迷子が続出しているレベルなのだ。

 

「あー、もう!なんでこんな時に限って誰も通らないのよ!そうすれば、直ぐに本校舎の事務室までいけるのに………あれ?」

 

愚痴を言いながら歩く鈴音に、遠くからこちらに歩いてくる人影が見えた。

見えた瞬間ラッキー!と内心小躍りしそうな鈴音だったが、その人影を見てみると不審な点に気付く。

その人影は小さいのだ。

同年代よりも小さい鈴音。だが、その鈴音の胸元くらいまでしかない身長にやけにふら付いた足取り、帽子にサングラスにマスクに全身を隠すコートと不審者感まるだしな上、見えている肌はオレンジ色でやけに毛深いのだ。

だが、鈴音からしたらそんなことどうだってよかった。

何かあっても自身の専用機で返り討ちにできるから。

 

「あ、すみません!本校舎の事務室ってどこにありますか?」

「うぇ!?お、俺に聞いてるのか?」

「え、そうだけど…」

 

不審者に声をかけたらやけに挙動不審な対応を取られた。

そのあとも、突然後ろを向いたかと思うと、

「お、おい、どうするよルナモン!」

「どうするもこうするも、何とかするしかないじゃないコロナモン!」

なんて、二人分の話声が聞こえた。

 

「こ、コホン!ど、どうかしたかね、お嬢さん?」

「いや、だから道案内を頼みたいんだけど」

「お、お嬢さん?本校舎なら、そこの一番高い建物よ。受け付けは正面玄関から入れば、直ぐあるわ」

「そ、そう、ありがとう」

 

鈴音がお礼を言うといそいそと不審者は去っていった。

そんな不審者を見て、鈴音はつい思ったことを口にした。

 

「IS学園って変なところね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにだが、人影の正体はコロナモンとルナモンだった。

いつもそばに入れるアグモンとブイモンが羨ましくなり、ついデジタルワールドから帰るときにこっそり付いてきて、夜になると肩車にコートを着て変装して出てきたのだった。

その姿は、この近くを歩いていた楯無に見つかり、簪と共にこってり叱られた後、アグモンたち同様ISの中に入るのだった。

 

 

 

* * *

 

 

 

翌日、IS学園は幾つもの噂が流れていた。

曰く、八神太一と更識楯無は婚姻関係である。

曰く、織斑一夏はブラコン過ぎて千冬様以外興味がない。

曰く、中国から代表候補性が転校してくる。

そして、本宮大輔と更識簪は恋人同士である、と。

 

(き、きゃ~~~~~!!!ど……どうして、私と大輔さんが…その、付き合ってる……なんて噂が流れてるの…!///)

 

先ほどから、噂について周りから囁かれている簪は赤面しながら机に顔を伏せていた。

既に耳まで真っ赤な簪。このままでは、顔から火が出てしまうのではと思わせる程だった。

 

『いっしっしっし!いいじゃん、簪。そうやって、大輔の事確保しとけばよ』

「!!!!!?……こ、コロナモン…周りに人がいるから黙ってて…!」

 

簪の指に付けられた打鉄弐式の待機状態である指輪から声が漏れる。そう、コロナモンの声だ。

ISの中に入っているコロナモンは、今の様に時々声をかけてくる。

しかも、声を出すことで自分が見つかるんじゃないかというスリルと簪のうろたえる姿を楽しみたいからとたちの悪いことだ。

このままでは噂とコロナモンのせいで、自分の心が持たないと思った簪は熱くなっている自分を冷まそうと席を立つのだった。

近くの水道で顔を洗う。ちょうどいい冷たい水が自身の熱を覚めるのを感じていた。

 

『おい!簪!』

「こ、コロナモン…だから、しゃべっちゃ…」

『んなこと言ってる暇じゃねえ!デジモンだ!!近くにいるぞ!』

「えっ!?」

 

何故リアルワールドにデジモンが?

そんな疑問がわくが、すぐさまISの通信を使って楯無たちに連絡を取ろうとするが手を止めた。

自分だって、選ばれし子供なのだ。ならば、これくらい自分たちで頑張ろう。そう思ったのだ。

 

「コロナモン!場所を教えて!」

『了解!』

 

コロナモンの指示に従い、走り出す簪。

昇降口で靴を履き替え、走り続ける。

そして、IS学園の敷地の隅にある森の様な所にそれはいた。

白いつなぎのような服に魔法使いを思わせる杖、マント、帽子。杖には氷の結晶のような装飾がされていた。これを太一と楯無が見たらこうつぶやくだろう、ウィザーモンと。

簪は眼鏡型のディスプレイからデジアナライザーを使い、データを見た。

 

「ソーサリモン 成熟期 魔人型 ワクチン種

別次元のデジタルワールドからやってきたウィザーモンの仲間のデジモン。光と氷の魔術を操り、祈りをささげると聖なる力で傷を癒す。必殺技は雪の結晶のついたツエから雪雲を呼び出し、凄い吹雪を起こす『クリスタルクラウド』

成熟期…」

「見ろ、簪。あいつもガブモンと一緒だ。所々黒く変色してやがる!」

「このままじゃ…ソーサリモンが危ない…!おねがい、コロナモン!」

「おっしゃー!まかせとけ!」

 

簪の一言でコロナモンが飛び出した。

先制攻撃だ!と言わんばかりに、突撃し頭突きをかますコロナモンだったが、ソーサリモンの体をすり抜け木にぶつかってします。

 

「あだぁ!?な、なんでだ」

「…そっか!ソーサリモンは光の魔術を使う…だとしたら、あのソーサリモンは光が生み出した幻影!本物は別のところにいる!」

「へっ、ならあぶりだしてやるよ!『コロナフレイム』!」

 

コロナモンが額に炎を集中させて放つと、その炎は何もない空間から放たれた氷により打ち砕かれた。

 

「…コロナモン!4時の方向!距離は3メーター!」

「了解!『コロナックル』!!」

「『クリスタルクラウド』!」

「う、うわーーー!!」

 

簪の指示により言われた場所に殴りかかるコロナモンだったが、姿を現したソーサリモンの必殺技『クリスタルクラウド』により吹き飛ばされてしまう。

 

「コロナモン!」

「へっ、俺は大丈夫だ!今度はこいつだ!『コロナフレイム』!!」

 

再び『コロナフレイム』を放つが直前に氷の盾を作られ、蒸発により発生した水蒸気があたりを隠した。

水蒸気が晴れるころには、そこにはもうソーサリモンがいなくなっていた。

 

「…逃げたの?」

「いや、また隠れただけだ!」

 

ソーサリモンがいなくなったため、周囲を見渡し探すがやはり見つからない。

今、敵はどこにいるのか。そんな緊張感が高まる中、簪は自身の上に作られた氷に気付いていない。

 

「簪、あぶねえ!」

「きゃ…コロナモン!」

 

簪を庇い、落ちてきた氷を受けてしまうコロナモン。

その体は既にボロボロだ。

 

「コロナモン…!ごめんなさい…私のせいで!」

「へっ、これくらいへっちゃらさ!それよりも、サポート頼むぜ!」

「……無理だよ」

「あん?」

 

コロナモンは既にダメージを多く受けているが、ソーサリモンは無傷なうえどこにいるかわからない。

さらに、コロナモンの足手まといになってしまっている簪は、自身に自信が持てなくなってきていた。

 

「やっぱり、お姉ちゃんを呼ぼう…私がいたんじゃ、コロナモンが勝てなくなっちゃうよ…」

「簪……馬鹿言ってんじゃねえ!やっと、やっと楽しくなってきたところじゃねえか!」

「………えっ?」

 

うつむき、今にも泣きそうな簪の胸倉を掴みコロナモンは叫んだ。

そんなコロナモンの表情はいつになく輝いた笑顔をしていた。

 

「簪、俺たちがパートナーになったとき、大輔たちがべリアルヴァンデモンを倒したのを覚えてるか?」

「うん…あの日のことは、絶対に忘れない…大輔さんの言葉も、コロナモンに会えた感動も…」

「なら覚えてるだろ!あの日した約束をよ!何時か必ず!楯無がした以上の大冒険を一緒にしようって!!今俺たちは、大輔が!太一が!!楯無が!!!やってきた冒険の入り口に立ってるんだ!もう楽しくて楽しくて止まらない!あの日のワクワクを思い出せよ!!」

「あの日の…ワクワク…」

 

あの日、コロナモンに会えて自分は何を思った。

デジモンにあえて、自分も特別になれた?違う。

やっと、更識楯無の妹という舞台から抜け出した?違う。

自分はどんな冒険ができるのか、だ!

何故忘れていたのだろう。あの日のワクワクを。

だけど、なんとなくだが理解した。ノルンと名乗った少女の言いたいことが!

簪の眼には先ほどまでの諦めた感情はなかった。その眼にはかつてない程の情熱が宿っていた。

 

「コロナモン…こんな状況で…不謹慎かもしれないけど、精一杯楽しもう!!」

「おう!!」

 

瞬間、簪の右手に藍色の炎が灯る。

大輔とは色違いだが、間違いなくこの炎はデジソウルだ!

 

「いくよコロナモン…最初の…」

「ああ…俺の…俺たちの初めての!」

「「進化だ!」」

 

今に至るまで、コロナモンは自力で進化してきた。

だが、今この場で!二人の絆が新たなステージへの扉を開いた!

 

「デジソウル…チャージ!」

「コロナモン進化!」

 

デジヴァイスICから放たれたデジソウルを浴び、コロナモンは体を分解されていく。

今まで子供の様なコロナモンは、翼の生えた獅子へと進化した!

 

「ファイラモン!」

「ファイラモン 成熟期 獣型 ワクチン種

”空を駆る獅子”と異名を持つ獣型デジモン。デジタルワールドのとある遺跡を守護すると言われ、面倒見のいいリーダー的存在でもある。必殺技は全身に炎を纏い、上空から突撃する『フレイムダイブ』と炎を纏った前足で敵を切り裂く『ファイラクロー』、額に全身の炎を集中させた火炎爆弾『ファイラボム』

これが、コロナモンの進化…!」

「すげえ、力がみなぎる!もう負けないぞ!」

 

ファイラモンが翼を使い空を舞う。

翼を羽ばたかせるたび、火の粉が舞い落ちると、一部の空間が歪んで見えた。

 

「見つけた!ファイラモン!そのまま急降下!」

「ああ!止めれるものなら止めてみろ!『フレイムダイブ』!!」

 

炎を纏ったファイラモンが歪んだ空間めがけて急降下する。

そこから現れたソーサリモンが『クリスタルクラウド』で反撃するが先ほどと違い、ファイラモンの炎が吹雪を溶かしながら進んでいく。

『フレイムダイブ』を直撃し、倒れるソーサリモン。決めるには今しかなかった。

 

「簪!」

「わかってる!チャージ!」

「こいつで決まりだ!『ファイラボム』!!!」

 

ファイラモンの全身の炎を集中した炎が獅子の顔をしてソーサリモンに放たれた。

『ファイラボム』はソーサリモンに触れた瞬間、爆発を起こし炎の柱を生み出した。

炎の柱が消えた瞬間、そこには変色した箇所が元に戻ったソーサリモンが残っていた。

すぐさま、医療用キットを取り出した簪はソーサリモンを治療するのだった。

 

「うっ…私は…?」

「動かないでください、今治療します」

「いや、構わない。自分で治すことができる」

 

正気に戻ったソーサリモンが片膝をつき祈りをささげると、光があふれソーサリモンの体とファイラモンの体を癒した。

 

「綺麗…」

「選ばれし子供よ、すまない。迷惑をかけたようだ」

「ううん、大丈夫。平気そうでよかった」

「へっ、いいってことよ」

「まさか、私が闇の力に飲まれるとは…修業が足りないな」

「デジタルワールドへのゲート、開きますか?」

「すまない、頼む」

 

ソーサリモンは簪が開いたゲートに入り、デジタルワールドへと帰って行った。

その様子を、晴れ晴れとした表情で簪は見送っていた。

 

「へっ、ちった良い表情をするようになったじゃないか」

「そうかな?」

「おう!」

 

簪の表情は、今までで一番良い笑顔をしていた。


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