デジモンアドベンチャー~Future~   作:優雅

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ほぼ1年ぶりの投稿。
エタってないよ~…


第16話  青き幻竜!ブイドラモン

 

 

 

 

 

 

デジタルワールドの奥深く、そこに一人の少女がいた。

 

「………大丈夫、あなたたちなら理想を叶えることができるよ。そのために、私が動いてるんだもの」

 

少女の目の前には、大きなモニターが映し出されていた。

そのモニターには、大輔、簪、太一、楯無の4人が映し出されている。

 

「少しだけ待ってて、今、行くから………だいすけ」

 

そう呟いて、少女の体は0と1のデータへと変換され消えるのだった。

 

 

 

* * *

 

 

 

深い森の中、ガルルモンはただ力任せに暴れていた。

その牙で、ブレードの様な体毛で、鋭い爪で木々を次々と砕き、切り裂き、なぎ倒していく。先ほど、大輔たちとの戦闘がガルルモンの中にある膨れ上がった闘争本能を刺激した結果だろう。

ガルルモンが暴れるたび、木々に隠れていた昆虫型デジモンや植物に擬態していた植物型デジモンが逃げまどっている。

だが、木々に飛び移りガルルモンに接近するデジモンもいた。

 

「ガルルモンこっちだ!」

「や~い、お前なんかぜんっぜん怖くないもんね~!」

 

ブイモンとコロナモンだ。

二人はガルルモンを挑発しながら、木々を飛び乗り逃げていく。

今みたいに馬鹿にしながら、時には地面に降り石ころを投げつけながらだ。

そうすることで、無差別に暴れていたガルルモンはブイモンとコロナモンにのみ狙いを定め、他への被害が一気に減るのだ。

そして、そのまましばらく逃げていくとその先には大輔が立っていた。

ブイフォースを純真のデジメンタルで進化した姿。白いアーマーに木の様な材質に見える籠手と木刀のような二刀のブレードを持ったヤシャフォームだ。

 

「さあ、来い!」

 

駆け抜けてくるガルルモンをすれ違う様に躱し、一瞬の隙を見てその木刀でガルルモンの足をはらう。

先ほどまで、全速力で駆け抜けていたガルルモンは、バランスを崩し転倒。獣型であるが故に、受け身をとる事ができず慣性の法則に従って転がっていく。

ガルルモンが転がって行く先には電気を帯びたネットが木々の間に設置されネットになっていた。

 

「グルッ!ガァァァァァァ!!!!」

 

そのネットにガルルモンが絡まると、木々の上から幾つもの糸がガルルモンに向かって放たれる。

その糸にガルルモンがあたるたび、体にまとわりつきガルルモンの自由を奪っていく。

 

「…やった!みんな、ありがとう!」

『イィーーーー!』

 

糸により自由を奪われ、帯びている電気で痺れているガルルモン。

そんなガルルモンの上空から、打鉄弐式を纏った簪が降りてい来る。

簪の言葉を聞くと、先ほど糸が放たれた木々から黄色の幼虫型デジモンのクネモンが姿を現した。

 

「にしても、まさか他のデジモンに協力を頼むとは思わなかったな」

「その…クネモンのデータを見た時…きっとこの状況でいい方向に持ってけると思って」

 

クネモン

成長期 幼虫型 ウィルス種

全身にイナズマの模様が入った幼虫型デジモン。顔と思われる部分にあるイナズマの模様は目にあたる器官なのかは解明されていないが、感情によって形を変えるところから、恐らく目ではないかと言われているらしい。必殺技は硬い嘴から吐き出される電気を帯びた糸『エレクトリックスレッド』。この糸に絡まると強烈な電撃で気絶してしまうぞ。

 

「いくら成熟期とはいえ、何匹ものクネモンの糸を受けたんだ。これで動けないはずだな!」

「おうよ!さすが、俺のパートナーだぜ!」

 

見事、ガルルモンの捕獲に成功したことでブイモンとコロナモンがお互いに手を組み合わせ、らんらんと歌いながら踊っている。

 

「よっし、後はゲンナイさんにガルルモンを渡せばきっとなんとかなる!」

「大事なところは人任せになっちゃうけど…私たちにできるのはここまでだよね」

 

大輔はブイフォースをヤシャフォームからライドラフォームへ移行する。

ガルルモンは今も、クネモンのエレクトリックスレッドに絡まっているのだ。少しでも負荷を下げる為に、雷の力を持つライドラフォームになったのだ。

 

「ガッ…グワァアアアアアアアア!!!!」

「どわぁ!?」

「な、なんだいきなり!?」

 

大輔がガルルモンを持ち上げようとした瞬間、ガルルモンから黒いオーラが噴出した。

噴出したオーラの力はすさまじく、持ち上げるために近くにいた大輔を吹き飛ばすほどだ。大輔が情けない悲鳴を上げたことで、先ほどから踊っていたブイモンたちもこの異常に気付くのだった。

 

「そんな…糸が切れた」

「おいおいおいおい、これじゃ振り出しじゃねぇか」

 

どうやら噴出したオーラの勢いでエレクトリックスレッドが吹き飛ばされたようだ。

ガルルモンは、今だ呆然として動かない簪に向かって駆け出し、その爪を振るうのだった。

 

「簪ちゃん、逃げて!」

「あっ…」

 

気付いた時にはもう遅かった。

振るわれた爪が打鉄弐式の装甲を切り裂いたのだ。

続いてもう一度と言わんばかりに振るわれる爪は、簪から見れば命を刈り取る鎌にも見えた。

 

「今度はやらせねぇ!」

 

速力の早いライドラフォームでの瞬時加速で、一瞬で間に入り込みサンダーブレイドで爪を受け止めるのだった。

 

「そのまま抑えてろよ、大輔!『トゲハンマー』!」

「かんちゃんを傷つけた罪は重いわよ、ラスティー・ネイル!」

「いっくよ~!」

「せーの~!」

 

突如聞こえた頼れる先輩たちの声に従い、大輔はサンダーブレイドにより力を加える。

すると、蛇腹剣がガルルモンの体に巻き付き、その蛇腹剣のワイヤーをアグモンとルナモンが掴み、思いっきり回転した。その回転の勢いで、ガルルモンは大輔たちから引き離されていき、向かう先には赤い柄にサボテンの様な形をしたハンマーを持った太一が待ち構えていた。

 

「痛いの我慢しろよ!『チクチクバンバン』!」

 

太一の言ったキーワードにより、より硬質化したハンマーを振り切り、ガルルモンを殴り飛ばした。

太一が使ったハンマーは、デジローダーをトゲモンのカードで変化したハンマー、トゲハンマーだ。細かいトゲを持つハンマーで、普通に使うだけでもトゲが刺さり痛い。けれど、キーワード『チクチクバンバン』と唱えることで、より硬質化させるほかそのまま飛ばすこともできるのだ。

そんな撲殺武装で殴られたガルルモンだったが、やはり人の力では大ダメージを与えることはできなかったのかまだ立ち上がるのだった。

 

「太一さん!アグモンも!」

「お姉ちゃん!ルナモンも来てくれたの?」

「あたりまえだろ!俺だって、ベストな未来を掴みたいんだ!」

「難しく考えるのはもう辞めね。今まで通り、今できることに全力を尽くすだけよ」

 

先ほど喧嘩した先輩たちの登場に、大輔たちのテンションはもうマックスに近いだろう。

だが、よりオーラを増しているガルルモンの体がもつか不安を抱き始めていた。

先ほどから受けている過剰なダメージ、さらに全力に近い能力値を出されているかの様な姿。いくら、ヤマトのガブモンとはいえ、限界は近いだろう。

そんな時、大輔たちの前に一人の少女が現れた。

 

「なっ!?女の子!!?」

「危ない!逃げて!!」

「ガァアアアアア!!!」

 

突然現れた少女に大輔は困惑し、楯無はガルルモンが少女を襲おうとしていることに逸早く気づき逃げるようにと叫んだ。

だが、少女はそんな楯無に一度微笑むと一言呟いた。

 

「『サンクチュアリバインド』」

 

その一言で少女の目の前に、小さな光が生まれる。

光は二手に分かれ、それぞれがガルルモンの体を巻き付くように動き、両端が交差すると光の帯となってガルルモンを縛り上げていた。

 

「な、なんでペガスモンとネフェルティモンの合体技をあの子が使えるんだ?」

 

そう、少女が使った光は大輔の仲間タケルとヒカリのパートナーがアーマー進化したデジモンたちが得意とする技だ。デジモンの使う技は例外を除けば他のデジモンも使えるという訳ではない。ましては、人間と思わしき少女がデジモンの技を使えること事態不思議でならない。

少女は本当に人間なのか?それとも、人型のデジモンなのか?

大輔たちには不思議でならなかった。

その時、少女は大輔たちにむかって無邪気な笑顔を見せた。

 

「大丈夫。わたしはあなたたちを傷つけないよ」

「あんたは…一体?」

「わたしの名前はノルン。イグドラシルに仕える者よ」

「イグドラシル?それって…何?」

「いろいろと疑問に思ってるけど、ごめんね。時間がないの。みんなのデジヴァイスを出して」

 

突然現れた謎だらけの少女が、突然デジヴァイスを出せと言っても、太一たちは直ぐに頷くことはできなかった。あまりにも怪しすぎて、何を考えているかわからないからだ。

だが、この男は違った。

 

「ほれ、これでいいのか?」

「お、おい!大輔!?そう簡単にデジヴァイスを出す奴があるか!?」

「そうよ!この子、あまりにも怪しすぎるでしょ!」

 

無警戒に言われた通りデジヴァイスを取り出す大輔に、太一と楯無は慌てていた。

一方で、あまりにも信用がないようでノルンは人知れず落ち込んでいた。

 

「確かにちょっと怪しいところがあるかもしれないけどさ、この子は俺たちを助けてくれたんだ。だったら、信じたっていいんじゃないかって思うんだけど」

「確かに、そうだけど……」

「それに、この子は俺たちを嵌めたりしない!そう感じたんだ」

 

大輔の言い分に、太一たちも一度お互いを見合うとデジヴァイスを取り出した。

これが本宮大輔という男だ。頭で考えるよりも直勘に身を任せて、ヘマをする。だが、その勘が人に向かうときはどこまでも信用できる。大輔の仲間である賢は依然犯した罪で他の選ばれし子供たちからの信用は全くなかった。けれど、大輔だけは聞こえたという紋章の声を信じ、賢を信じていきジョグレス進化できるまで心を開かせたのだ。

 

「その、悪ぃな。あんなに疑っちまって」

「ううん、いいよ。それじゃあ、始めるよ」

 

ノルンの前に出された4つのデジヴァイス。

ノルンはデジヴァイスに片手を向け、目をつぶるとデジヴァイスがそれぞれ光始めた。

すると、デジヴァイスの形が変わり始めた。太一と楯無のデジヴァイス、大輔と簪のD-3はそれぞれ同じ形に変わっていく。

光が消えると、そこには新たなデジヴァイスが生まれたのだった。

 

「これは『デジヴァイスIC』。新しいデジヴァイスだよ」

「デジヴァイスIC……これがあれば、ガルルモンを助けられるのか!?」

「そう。このデジヴァイスは、あの暗黒の力にたいこうするために作られたデジヴァイス。ここの黒い霧はデジヴァイスの聖なる力をも上回るほどの闇を持っていたから進化ができなかった。聖なる力を持たないD-3ならなおさらだね。でも、デジヴァイスICなら進化ができる」

「っしゃ!なら、さっそく行くぞ!ブイモン!」

 

デジヴァイスICを構えた大輔は、さっきからガルルモンを見張っていたブイモンに声をかける。

だが、そこから先はまったくといって動かなかった。

 

「で……どうすりゃ、進化できるだ?」

「大輔くん、わからずに進化させようとしたの!?」

「あ、あはは……デジヴァイスICに必要なのは、デジソウルと呼ばれるエネルギー。デジソウルを生み出すのは大輔たち、選ばれし子供の思い。あなたたちが成長するにつれ忘れてしまった心が必要なの」

「私たちが…忘れてしまった心?」

 

ノルンの言葉に、簪は自身のデジヴァイスを見つめる。

簪は大輔たちとは違い、べリアルヴァンデモンとの戦いで選ばれし子供になったため、今までデジタルワールドを救うための冒険をしたことがなかった。けれど、ノルンの言い分から簪にもデジソウルを生み出す心があったことがわかる。

つまり、今までの冒険の有無を問わずに持っていた心が必要なのだ。ならばそれは、子供なら誰もがもっていたものなのだ。

 

「へっ、それがどうした」

「大輔?何かわかったのか?」

「俺は他のみんなと違って、馬鹿だ。姉ちゃんからよく言われるんだ。あんたは何も変わってないって。でも、馬鹿だからこそ!俺は、俺がこうなって欲しい未来のために進むんだ!!」

 

大輔の叫びと共に、大輔の右腕に青いオーラが灯りだす。

いきなりの出来事に、太一たちは驚くもノルンだけは笑っていた。

大輔は直観的に分かった。この光がデジソウルだと。

 

「うわぁ!?太一~、まずいよ!ガルルモンの体が崩れ始めてる!」

「そんな…予想よりも、暗黒のエネルギーが大きい?大輔!デジソウルをデジヴァイスICにチャージして!!」

 

突如声を上げるアグモン。

アグモンの言う通り、ガルルモンの体は一部が少しずつぶれ始めていた。これは、デジモンのデータが体を保つことができないときにおこる現象である。さらに、サンクチュアリバインドも壊れる寸前だ。今ガルルモンが暴れだしたら、データが崩壊し死んでしまう。

 

「ああ!行くぜブイモン!」

「OK!大輔!」

「デジソウルチャージ!」

 

デジソウルをデジヴァイスICにチャージさせる。すると、画面からデジソウルが飛び出しブイモンの体を包み込む。

 

「ブイモン進化!」

 

ブイモンの手足が一度分解されると、新たな手足に、体に、再構築されていく。

光の中から現れたのは、フレイドラモンでも、ライドラモンでも、エクスブイモンでもない新たな姿。

 

「ブイドラモン!」

 

エクスブイモンと比べ、よりガッチリと重量感を持つ肉体。白く鋭い3本の角。そして、胸にはXではなくVの文字。

ブイモンは新たな進化を遂げるのだった。

 

「エクスブイモンじゃない?」

「ちょ、ちょっと待って……出た!

ブイドラモン 成熟期 幻竜型 ワクチン種

ブイモンが原種であるエクスブイモンではなく派生して進化したデジモン。広大なデジタルワールドでもフォルダ大陸にしか存在しない幻の古代種。胸にある「V」型の模様からブイドラモンと呼ばれる以外その生態は謎に包まれている。必殺技は口から吐き出す高熱『ブイブレスアロー』」

「派生進化だって?」

 

今までとは違う進化を遂げたブイモン。

その進化は太一と楯無には覚えがあった。太一が紋章を手にして直ぐの出来事、完全体に進化できるのは自分たちだけだという思いから無理に進化させてしまった完全体デジモン『スカルグレイモン』だ。だが、大輔のブイドラモンは暗黒進化のスカルグレイモンではなく、正規の進化で別の進化をさせたのだった。

 

「もう時間がない!デジソウルをもう一度チャージしてブイドラモンに力を!」

「ああ!まかせたぜ、ブイドラモン!チャージ!!」

「ガルルモン、こいつで元に戻れ!『ブイブレスアロー』!!」

 

放たれた青い炎の矢はガルルモンに当たると燃え広がった。だが、その炎は直ぐに消え残ったのは本来の青い毛並みのガブモンだった。

 

「い、い!い!!」

「「「「「「「「いやったーーーーー!!!」」」」」」」」」

 

ガブモンを元に戻すことに成功した大輔たちは喜び合った。

ブイドラモンにはアグモンとコロナモンが飛びつき、ルナモンがその光景を微笑ましそうに見ている。

感極まった太一は大輔にヘッドロックをかけているが、かけられている大輔も笑顔だ。そんな大輔を簪は物語のヒーローのように思い、楯無は傷ついたガブモンを丈から学んだ医術で治療していく。

そして、ノルンはすでにこの場から消えているのだった。





この作品でのデジヴァイスICはセイバースのものとはだいぶ違います。
なので、バーストモードはなく、セイバース次元名物のマサルダイモンみたいに人間をやめるようなことはありませんのであしからず
そして、新キャラのノルンは元ネタはデジモンネクストです。ネクストの設定に、オリ設定を混ぜたのがうちのノルンちゃんです。

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