デジモンアドベンチャー~Future~   作:優雅

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こんなに遅れてしまい申し訳ありません!
溜まっていたすることも終えたので、投稿します


第15話 新たな光

 

 

 

 

 

 

「太一!」

「ヤマト!」

 

デジタルワールドにやってきてから、数十分が経った。

その間、ずっと森の中を歩いてきた太一たちは森の突き当たり、崖まで来るとそこには金髪の青年、石田ヤマトがいたのだった。

 

「ヤマト…ガブモンのことは…」

「…光子郎から聞いてる。太一、もしもの時は…お前に頼みたい」

「………ああ、わかった」

「ちょ、待ってください!太一さん!ヤマトさん!」

 

ヤマトの頭の中には、既に最悪のパターンがよぎっていた。

もしもそうなれば、今来てくれた内の誰かにガブモンを倒させる事になるだろう。そうなった時の罪の意識を誰かに負わせる事はヤマトは許せなかった。だからこそ、一番の親友である太一にその役目を頼んだのだった。

けれど、大輔はそんな事を認められなかった。

 

「きっとガブモンも無事ですよ!もし何かあっても、なんとかなります!だから、そんな覚悟しないでください!」

「大輔…だけど、他に方法はあるっていうのか!?今までのパターンからイービルリングのような物で操られている訳じゃない!純粋な闇の力に飲み込まれてるんだ!それで一体、何体のデジモンを救えなかったと思ってるんだよ!!」

「ッ!!そんな……」

 

食ってかかる大輔だったが、逆にヤマトに胸ぐらを掴まれ今のデジタルワールドの現状を告げられる。

本当に方法がないことも、そして今まで同じような事が何度も起き、救えていなかった事を告げられてしまうのだった。

 

「そんな…そんなの、あんまりだよ……」

「俺たちに伝えられていなかったのは、色々と配慮されてたからかもな」

「ええ…太一さん、大輔くん、一夏くんの登場でIS学園も色々と混乱していたから。そんな中、何度も私たちが授業を抜け出したら、明らかに怪しまれる。それを避けるためね…」

 

予想よりも酷い状況に、簪は涙を流してしまうのだった。

太一や楯無は冷静に状況を分析しているように見えるが、両手は血が出るのではないのかと思うほど赤くなるくらい握りしめていた。

 

「ヤマトさん…おれ…俺…ッ!」

「………悪い、大輔。ガブモンを失うかもしれないって思ってたせいで、気が立ってた」

「そんな!俺も、何も知らない癖にあんなこと言ってすみません……」

 

叫んだ事で頭が冷えたのか、ヤマトはゆっくりと掴んでいた服を離した。そして、お互いに今のできごとについて謝罪をするのだった。

ヤマトはポケットをあさり、ある物を取り出すのだった。

 

「みんな…これ、ゲンナイさんからだ」

「これって!」

「タグに紋章!?」

 

太一と楯無に手渡されたのは、かつての冒険で完全体に進化するために必要だったアイテムだ。

太一に手渡されたのは山吹色に太陽のようなマークが描かれた勇気の紋章。

楯無に手渡されたのは紺色に二重の円、円の間に幾つもの円が描かれている自由の紋章。

 

「そして、これは大輔たちにだ」

「お、俺の紋章?」

「ああ。奇跡の紋章と絆の紋章だ」

「これが…私の紋章…」

 

大輔に渡されたのは金色にMのような文字、上と下の左右に菱形を描かれた奇跡の紋章。

簪に渡されたのは藍色に五つの菱形が星を描くように並べられた絆の紋章。

それらが、それぞれ渡されるのだった。

 

「これらは擬似的な紋章でしかない。精々デジヴァイスの力を一時的に上げる程度の物らしいけどな」

「いや、助かる。あとは任せてくれ」

「うん。後は僕たちにまかせて~」

「気絶させてでもガブモンは連れてきてあげるわ」

「いや、ルナモン?物騒だぞ」

「いっしし、まっあ、まかせといてよー!」

 

それぞれのデジモンたちもヤマトに励ましの声を送った。

太一たちはそれぞれ、ISを展開するとパートナーたちを抱き上げ崖の下に降りていった。

 

「まかせたぜ、みんな…」

 

ヤマト一人だけになった崖の上で、その声だけが木霊した。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

崖の下もそこは森の中だった。

けれど、あたり一面が黒い霧に覆われていて視界がとても悪い。

 

「ここがガブモンの連絡が途絶えた場所か…」

「大輔くん、かんちゃん気をつけて。何が出てくるかわからないわ」

「いや、その必要はねぇ。早速お出ましだ!」

「スピット・ファイアー!」

 

太一の掛け声とともに、アグモンが小さな炎を何発も吐いた。

吐き出された炎はまっすぐに飛び、近くの茂みに飛ぶと、茂みから何かが飛び出してきた。

 

「ギチギチィ!」

「昆虫型デジモンか」

「ちょ…ちょっと待ってて!………出た!」

 

現れた昆虫型デジモンを視認すると、簪が目の前に現れたディスプレイを操作し始める。

すると、

コカブテリモン

成長期 昆虫型デジモン ウィルス種

小柄だがとても力の強いデジモン。大きな角と前足により恐れられているものの、優しく温和なデジモンだ。必殺技は、自慢のツノで敵をすくい上げて弾き飛ばす『スクープスマッシュ』と大きな前足から繰り出す『ビートルラリアット』だ。

と、音声が流れた。

 

「なるほど、デジモンアナライザーか!」

「見事、光子郎くんの役目を担ってるわねかんちゃん!」

「簪ちゃんすっげ~……よーし、成長期なら!いけぇ、ブイモン!」

「わかった!」

 

明らかに敵意の篭った目で睨んでくるコカブテリモン。大きな前足を振り回し、近くの木を砕き威嚇していくる。

大輔から指示を受けたブイモンは、コカブテリモンに接近していく。

ブイモンの接近に気づいたコカブテリモンは羽を開き、浮かび上がった。そのまま上空に行こうとするが、ブイモンは近くの枝に飛び乗り枝を移りながら接近していく。

 

「『ブイモンヘッド』!」

「ギギィ!!」

 

ある程度まで近づくと、ブイモンは木に生えていた蔓と掴み、ターザンの様にぶら下がりコカブテリモン目掛けて飛び込んだ。予想外の行動に驚き動きを止めたコカブテリモンにブイモンは『ブイモンヘッド』で叩き落とすのだった。

叩き落とされ地面に衝突したコカブテリモンは、目をぐるぐると回してしまっていた。

 

「よっしゃ、ナイスだ!ブイモン!」

「へへん、どんなもんだ!」

 

一撃でコカブテリモンを戦闘不能にしたことで、ハイタッチをする大輔とブイモンだった。

コカブテリモンは頭を強く打った事で気絶したようで、特に怪我はしていなかった。

 

「ひどいわね…本当は大人しいデジモンなのに…」

「まるでイービルリングや黒い歯車で操られたデジモンたちみたいだったよ」

「その割には、特に見た目に変化はねぇよな」

「(ピクンッ)みんな、なにかくるよ!」

 

気絶しているコカブテリモンを見て、操られているデジモンたちの状態を確認する太一たちだったが、デジモンの中でも高い聴覚を持つルナモンが何かを感じ取った。

すると、黒い霧の中からゆっくりとあるデジモンが近づいてきた。

 

「グルルルルルッ」

「黒い…ガルルモン?」

 

現れたのはガルルモンだった。それも、本来なら白い毛並みに青い模様を持つのではなく、黒い毛並みに灰色の模様を持つガルルモンだ。

 

「太一!あのガルルモンから、ヤマトのガブモンと同じ匂いがする!」

「なんだって!それじゃあ、あのガルルモンはヤマトの!」

「…でも、色が違う?」

「おそらく、暗黒進化の影響ね…以前、アグモンもイービルスパイラルで進化したメタルグレイモンの色が違ってたわ」

「ブイモン!あのガルルモンを捕まえるぞ!」

「おう!大輔、進化させてくれ!」

「よっしゃ、任せとけ!」

 

現れたガルルモンから、ヤマトのガブモンと同じ匂いがすることを感じ取ったアグモンは、その事を直ぐさま太一に伝えた。そして、今までのことからガルルモンの変化を推測するのだった。

ガルルモンを見て、特攻隊長とも言える大輔はさっそく捕獲しようとブイモンを進化させるべくD-3を構えた。

 

「ブイモン進化!エクスブイモン!………あり?」

「なっ!進化できない!?」

「まさか…アグモン!お前はどうだ!?」

「アグモン進化~!グレイモン!…だめだ、進化できないよ!」

「そんな…ダークタワーもないのに…」

 

ブイモンやアグモンだけでなくコロナモンやルナモンも進化を試してみるも、進化することができなかった。まさにこれは、進化を阻害するダークタワーと同じ効果がこの一面に広がっていたのだった。

だったらと、大輔はダークタワーの効果を受けない例外を試す。

 

「だったらブイモン!アーマー進化だ!デジメンタルアーップ!」

「ああ!ブイモンアーマー進化!フレイドラモン!…まじかよ」

「何で…アーマー進化もダメなの…?」

 

アーマー進化はデジメンタルを用いることで進化できる疑似進化。故に、ダークタワーの進化阻害効果でも進化することができた。だが、この場ではアーマー進化すら阻害する程の力があるようだ。

 

「ガアァァァァァァァ!!!」

「くっ…皆!ここは一旦撤退だ!」

 

このままでは分が悪いと判断した太一は、体制を整える為に一度撤退することを提案した。

楯無と簪は声に出さないものの、無言でうなずく。けれど、大輔だけは拳を握りしめガルルモンをにらみ続けていた。

 

「………だっ!」

「大輔さん…!早く…!」

「俺はぁっ!」

「おっ、おい…大輔!?」

「ちょっと、大輔くん!?」

 

睨み付けていた大輔は、急にガルルモンに向かって走り出した。

いきなりの出来事で、太一もブイモンも固まって動けなかった。

 

「ブイフォース!デジメンタルアーーーーップ!!!」

 

走りながらISを展開すると、そのままアーマーシフトを行う。

大輔の目の前に、紺色のデジメンタル-誠実のデジメンタルが現れると同時に光に包まれる。そのまま光を突き抜けると青色と白色のアーマーをまとい、ダイバーと人魚を合わせたようなデジモン-デプスモンに近い姿へと変わった。

 

「アーマーシフト!デプスフォーム!おらぁ!!」

 

デプスフォームに変化した大輔は、勢いを乗せガルルモンに飛びついた。

背中に飛び乗られたガルルモンは大輔を振り払おうと暴れ始める。そのたびに、ブイフォースはガルルモンの体毛に触れる。

ガルルモンの体毛はミスリルの様に硬く、特にブレードとなっている部分はあらゆる物を切断する程だ。その体毛に何度も触れれば、大抵のISは直ぐにボロボロになってしまうだろう。だが、ブイフォームのデプスフォームは違った。いくら体毛に触れようとも、傷一つついていない。

それは、元となったデプスモンの影響である。

デプスモンは水中を得意としとり、耐水・耐圧に優れている。その潜水能力は同じ人型のハンギョモンを上回り、ホエーモン並だと言われている。その高い耐圧能力は、圧倒的な防御力を誇るのだ。だが、その反面陸上での活動ではかなり遅くなってしまうのだ。

 

「馬鹿野郎!何やってんだ!」

「大輔、無茶だ!すぐに手を放せって!」

「大輔くん!」

「大輔さん!」

 

太一たちが呼びかける中、大輔は一層離さないように力をこめる。

だが、いくらISを纏っているとはいえ成熟期の力に敵う筈がなくどんどんと力が抜けていく。

そして…

 

「うわぁ!?」

 

ついに、ガルルモンから振り落とされてしまった。

振り落とされた影響で、ブイフォースはデプスフォームが解除されてしまう。

倒れた大輔に対し、ガルルモンはゆっくりと近づいてくる。

 

「『ティアーシュート』!」

「『コロナフレイム』!」

「『|清き熱情«クリア・パッション»』!」

「大輔さん!捕まって!」

 

ゆっくりと近づくガルルモンに、ルナモンとコロナモンの必殺技が飛ぶ。

二つの技は、お互いにぶつかり合い白い水蒸気を発生させる。

さらに、楯無のクリア・パッションを応用した霧でガルルモンを覆う。

いきなり周囲を霧で覆われたガルルモンは大輔を見失い、その隙に簪が打鉄弐式で大輔を救出したのだった。

簪に連れられ、大輔は今いた所から1k程離れた場所にいる。

 

「馬鹿野郎!お前…何やってんだよ!」

「太一さん…俺…やっぱり無理なんです、ガブモンを見捨てるのが」

「だからって、あんな無茶する奴があるか!下手したら、怪我じゃすまなかったんだぞ!!」

 

怒りをあらわにする太一は、大輔の胸元を掴み怒鳴る。

この怒りは、無茶をした大輔を戒めるためのものでもあり心配しているからこその怒りだ。

 

「だったら太一さんは…今まで危険だからって戦わなかったことがありますか!?」

「ッ!!」

「俺は戦います!ブイモンが進化できなくても、絶対に諦めない!」

 

そう言い放った大輔は、太一の腕を払い痛む体を無視してゆっくりと歩き始める。

そんな大輔の体を支える者たちがいた。

 

「大輔、俺を忘れるなよ。進化できなくても、俺は大輔のパートナ-だろ。大輔が行くなら、俺は地獄の底までだってついていくぜ!」

「ブイモン…」

「大輔さん…私はガブモンを助けられるのか分からない。でも、私も諦めたくない。諦めなければ何でもできるって知ってるから」

「簪ちゃん…」

「もちろん、俺も行くぜ!」

「コロナモン…ああ、行こう!」

 

後輩組が離れていく中、太一は近くの木にもたれかかった。

そんな太一を心配し、アグモンと楯無は近寄っていた。

 

「太一さん…大丈夫?」

「ああ………ったく、情けねぇよなぁ……本当」

 

上を向き、独り言のように呟く太一。

その顔は前髪がかかっていて表情が見えない。

 

「大輔の言うとおりだ……昔の俺なら、きっと大輔みたいに諦めたりしなかった。………でも、今の俺は…より現実を知って、何もかも思い通りにならない事を知っているから…|理想«ベスト»よりも|現実«ベター»を取ろうとした。………俺たちには夢をかなえる力がある筈なのに」

「でも、太一さんはそれに気付けた」

「………刀奈?」

「だったら、今から変わればいいじゃない………ううん、今から戻れば」

 

そう、諭してくれる刀奈の姿は…どことなく、自分の幼馴染であり初恋の相手である竹ノ内空を思わせた。

だが、太一は頭を振って考えを否定する。今ここにいるのは空ではなく、ずっとこんな自分といてくれた刀奈だから。

顔を上げる太一の眼は、今までのような落ち着いた眼ではなく子供の様な自分の描く夢を見る様な眼をしている。

 

「そう…だな。それに、後輩にばっか恰好つけさえておけるか!」

「うんうん~、それでこそ太一だよ」

「っしゃ、行くぞ!刀奈!アグモン!ルナモン!」

「ええ!」

「うん!」

「当然ね!」

 

後輩たちを追い、走り出す太一たち。

彼らの胸には、先ほどまでの不安は一切ない。あるのは、未来を描く希望だけ。

彼らはまだ気づいていない、自身のISとデジヴァイス、そして紋章が輝いていたことを。


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