魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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物語も終盤に近づいています


第34話 ≪目覚めの予兆≫

新暦75年・9月10日

 

 

「綾人との模擬戦は初めてだね?」

「そうですね・・・不思議とやってないもんですね」

 

デバイスを構えながら向き合うフェイトと綾人

 

たまには違う模擬戦を見てみたいというフォワードの要望により、急遽組まれた2人の模擬戦

 

フェイトとしても綾人との模擬戦は少し楽しみにしていた部分もあったので喜んで引き受けたのだ

 

「それじゃ・・・始めるよ? レディ・・・ゴー!!」

 

なのはの合図の瞬間、2人同時に姿を消して金属音だけが響きわたった

 

 

 

「はぁ!!」

「くっ・・・は!」

 

フェイトのバルディッシュを防ぎながら、攻撃を行う綾人

 

2人の鍔迫り合いも、すでに何合打ち込んだのか数えきれていない

 

「バルディッシュ!」

{Haken Saber}

 

バルディッシュから放たれる金色の魔力斬撃が綾人に向かっていく

 

「くっ!!」

 

間一髪で回避に成功する綾人だが

 

{マスター!!}

「っ!? ちぃ!!」

 

回避したはずの斬撃が軌道を変えて戻ってくる

 

「『六の花・破』・・・『断』!!」

 

思い切り振りかぶって斬撃を切り落とす綾人

 

{Plasma Lancer}

「な・・・」

 

その後ろから響くバルディッシュの一言

 

振り向くと、フェイトの周囲に6発の魔力弾が形成されていた

 

「ファイア!!」

 

フェイトの合図で一斉に放たれる魔力弾

 

「くぅ・・・なら!!」

 

回避しきれないと踏んだ綾人は、身体を思い切り回転させ始めた

 

「“輪舞”!!」

 

身体を回転させながら、フェイトのプラズマランサーをたたき落としていく

 

{Haken form}

「はぁ!!」

「ちっ!!」

 

それを見ていたフェイトもすかさず接近すると、綾人はたたき落とした勢いでバルディッシュを受け止める

 

「さすがだね・・・その反射神経・・・」

「どうも・・・これでも、『剣王』に扱かれてますから・・・ね!!」

 

フェイトに答えながら後方へと弾き飛ばす綾人

 

「・・・守ってばっかじゃだめだな・・・たまには攻めて見ますか・・・」

{Load Cartridge.}

 

綾人に応え、カートリッジを2発排出するバルムンク

 

「行きますよ・・・フェイトさん・・・」

 

綾人は腰をおとし、バルムンクを両腰に添える

 

「閃の太刀・・・“十六夜(いざよい)”!!」

「!!」

 

声と共に猛スピードでフェイトに突撃する綾人

 

「はぁ!!」

「くっ!!」

 

腕を広げながらフェイトの後ろまで通り抜ける綾人

 

フェイトは間一髪で斬撃を受け流したが、数箇所は切られてしまっている

 

「幾つか捌かれたか・・・」

 

振り返ってフェイトを見る綾人

 

「凄いね・・・一瞬で16回切り込んできた・・・」

「ま、“十六夜”なんて名前を付けるんですから、それぐらい出来ないといけませんからね」

 

綾人の攻撃回数をしっかりと数えたフェイト

 

 

「なら次は・・・うっ!?」

 

次の行動に移ろうとする綾人だが、頭を押さえ始める

 

「・・・? 綾人?」

 

フェイトや、そばで見ていたなのは達も不思議に思って近づこうとするが、綾人が手で止める

 

「来ちゃ・・・いけない・・・くぅ!!」

 

頭を押さえながら痛みに耐えようとする

 

わずかに開いた瞳の色が真紅に染まっていた

 

「綾人君!?」

「ぐっ・・・あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

綾人が叫ぶと、大量の魔力が溢れ出した

 

「なんだ!?」

「これは・・・綾人の魔力・・・?」

「綾人君!!」

 

あふれた魔力は周囲の木々を吹き飛ばし、なのは達にも襲いかかる

 

「うわぁ!?」

「きゃぁ!!」

「キャロ!!」

 

スバルやエリオ達も慌てて回避していく

 

「くっ!! レイジングハート!!」

「バルディッシュ!!」

 

なのは、フェイト、ヴィータとシグナムはデバイスを構えて応戦する

 

だが、魔力に向かっての砲撃も斬撃も意味は無くすり抜けて行く

 

 

「どうしたら・・・」

「なのは!! 綾人だ!!」

「え・・・?」

 

なのはが考えるとヴィータが叫ぶ

 

「この魔力の原因は綾人だ・・・ならば、綾人を止めればあるいは・・・」

「あ・・・」

 

シグナムの言葉に綾人を見るなのは

 

綾人は未だに苦しみながら魔力を放出していた

 

 

「タイミングは一瞬・・・その一撃で止めるよ・・・レイジングハート?」

{All right my master.}

 

なのはの言葉に輝きで答えるレイジングハート

 

 

真っ直ぐ構え、意識を集中させる

 

 

そして、あふれる魔力の間から綾人の姿が見えた

 

「なのは!」

「今だ!!」

「ディバイーン・・・バスター!!!!」

 

その一瞬に綾人へ向かって放たれるディバインバスターは、何の妨害もなく綾人を直撃した

 

 

「綾人君!!」

「綾人!」

 

爆発の後、溢れる魔力も止まり煙塵だけが広がっていた・・・

 

「ぐっ・・・うぅ・・・!!」

「え・・・?」

 

煙塵の中からくぐもった声が聞こえてくる

 

やがて晴れると、中から綾人が姿を現したのだが・・・

 

「そんな・・・」

「む、無傷・・・?」

 

綾人にはダメージらしいものがまったく見えていなかった・・・

 

「うぅ・・・」

 

小さくうめき声を上げ、静かに倒れる綾人

 

「綾人君!!」

 

慌てて駆け寄るなのは達

 

その後、大急ぎで医務室に運ばれた綾人だった

 

 

【はやてSIDE】

 

次の日

 

~部隊長室~

 

「綾人君の容態は?」

「まだ、なんとも言えません・・・この間と違うようで・・・目を覚ます気配が感じられません」

 

シャマルとの通信で綾人の様子を聞いているはやて

 

「そうか・・・厳しいけど・・・今回は綾人君抜きやね・・・マーク少将にも伝えんとな・・・」

 

通信を終え、225隊へと繋げ人員の変更を告げるはやてだった・・・

 

 

それから数分後

 

綾人以外の前線メンバーを集めて最終ミーティングを行うことになった

 

「と、いう訳で・・・明日はいよいよ公開意見陳述会や。明日14時からの開会に備えて、現場の警備は、225隊を中心にもう始まってる。なのは隊長とヴィータ副隊長、リイン曹長とフォワード4名はこれから出発。ナイトシフトで任務開始」

「皆、ちゃんと仮眠とった?」

「「「「はい・・・」」」」

 

フェイトの確認に、小さく答えるフォワード陣

 

「・・・・・・皆の考えてる事はわかってる・・・綾人君のことやね?」

 

それを見たはやてがそう確認する

 

ティアナ達も静かに頷く

 

「シャマルの話やと、命にまで別状は無いし・・・多分、疲労が溜まってたんかもって事やから・・・心配はないよ?」

 

はやてが説明するが、それでも納得はしにくいフォワード陣

 

「・・・まぁ、綾人君のことやから、またひょっこり起きて医務室抜け出して、戻ってきた頃にはシャマルにお説教もらってるかもしれへんしな?」

 

おどけてそう言うはやて

 

なによりも、綾人なら本当にそうなってそうなのだが

 

「ともかく、綾人君の事は信じて待ってよ? 今回は任務に集中やね?」

「「「「はい」」」」

 

そう締めくくると、フォワード陣は先程よりも少し明るく答える

 

「それじゃ、説明に戻るな? 私とフェイト隊長、シグナム副隊長は明日の早朝に中央入りする。それまでの間、よろしくな?」

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

「それと・・・今回は特別にもう1人同行する予定や」

「もう1人?」

「お待たせしました」

 

はやての言葉に首を傾げるティアナ達の後ろから聞きなれた青年の声がした

 

「リョウ先輩!?」

「おう、ティアナ・・・今回の警備、綾人の代わりに行くことになったからな」

「マーク少将に報告したら、“代わりに連れて来い”って言われたからな・・・ま、綾人君のパートナーやってたんやし、実力も十分やろうしね」

「ええ。綾人の穴埋めれるかどうかは正直わかりませんがね・・・」

 

軽く答えるリョウだが、ティアナとスバルは実力をよく知っているため不安は無い様子だった

 

「それじゃ改めて、機動六課前線メンバー・・・出撃や」

 

はやての号令で屋上ヘリポートへと向かう先行組

 

 

【シャマルSIDE】

 

~医務室~

 

「そろそろ、なのはちゃん達は出発の時間ね」

「ああ・・・綾人の様子はどうだ?」

「何も変化なし・・・眠ってるだけね・・・」

 

時間を確認しながら綾人の容態を見るシャマルとザフィーラ

 

「失礼します」

「あら? フェイトちゃん? それにヴィヴィオも」

 

扉が開き、フェイトに手を引かれてヴィヴィオも入ってくる

 

「どうしたの? どこかケガでもしたの?」

「ヴィヴィオが『綾人のところに行きたい』って・・・」

「そう・・・」

 

フェイトがシャマルに説明している間に綾人のそばに駆け寄るヴィヴィオ

 

その横にザフィーラもスタンバイする

 

「パパ・・・起きないね」

「そうね・・・早く起きたらいいのにね」

「パパ・・・ママが『帰ってきたらキャラメルミルク作ってくれる』って・・・パパのケーキも食べたい」

 

眠っている綾人に優しく語りかけるヴィヴィオ

 

綾人は、静かに寝息を立てて眠っていた・・・

 

 

【綾人SIDE】

 

一面真っ白な空間・・・

 

その中に一つの影が浮かんでいた・・・

 

 

「ん・・・・・・ここは・・・どこだ・・・?」

 

その人物・・・綾人が目を開け、周囲を見渡す

 

「確か・・・フェイトさんとの模擬戦の最中に・・・頭が・・・」

『よう・・・やっと起きたかよ・・・』

 

綾人が考えていると、不意に後ろから声がする

 

振り返ると、そこには銀色の髪に真紅の瞳の男が胡座をかいて座っていた

 

『まったく・・・ここまで来るのに17年・・・随分と待たせてくれるじゃねぇか』

「あなたは・・・?」

 

にやりと笑いながら綾人に語りかける男

 

『俺か? そうだな・・・俺の名前を言ったところでお前にゃわからねぇだろうが・・・ま、『武王』って言やぁわかるか?』

「な!?」

 

男の出した単語に言葉を失う綾人

 

「『武王』・・・あなたが・・・」

『ああ・・・一部の連中には『竜王』と名乗ったがな・・・って、こっちの方が何気にカッコイイと思わね?』

 

笑いながらとんでもない事を言っている男

 

「じゃあ・・・ 『武王』と『竜王』と言うのは・・・」

『あぁ・・・どっちも俺だよ・・・聖王や覇王に『武』を教えたのも・・・聖王家を滅ぼしたのもな・・・』

 

同じように笑っている顔だが、声の色は変わっていた

 

「それで・・・ここはどこですか・・・?」

『ここは、お前の精神世界だ』

「そこになんで『武王』が・・・」

『まぁ、簡単に言やぁ・・・俺が呼んだからだな』

「はぁ・・・」

 

綾人も短く答えるしかない

 

『お前に、色々と教えなきゃいけねぇからな・・・“力”も含めてな』

「“力”・・・?」

『お前・・・まだ使いこなせてないだろ?』

「・・・あの『瞳』の事ですか・・・?」

『そんなの、ただのきっかけに過ぎねぇよ・・・ま、そこで躓いてる時点でやべぇんだけどな?』

 

ケラケラと笑いながら、そう答える武王

 

『ま、俺ぁ小難しい話が苦手だからよ・・・直接見せたほうが速ぇやな・・・ほれ』

「っ!!」

 

武王が手を翳すと、綾人の頭の中に映像が流れ込んでくる

 

「こ・・・これ・・・は・・・」

『よく見とけよ・・・天童綾人・・・・・・この俺様の“全て”を・・・な・・・』

 

そのまま、2人を光が包んだ・・・

 

 

~???~

 

『う・・・ん・・・?』

 

綾人が目を開けると、そこには緑あふれる敷地が広がっており、後ろには巨大な屋敷が佇んでいた

 

『ここは・・・どこだ・・・?』

 

全く見覚えのない景色に首を傾げるしかない綾人

 

 

その視界の端・・・1人の人物が横切った

 

慌ててその方向に視線を向けると、肩を露出させたドレスを身にまとい、頭を後頭部で“お団子”にしている金髪の女性がいた

 

『ヴィヴィオ・・・? いや、違う・・・あれは・・・『聖王』・・・?』

 

綾人がその人物をそう呼んだ・・・

 

彼女は『オリヴィエ・ゼーゲブレヒト』・・・伝承において『最後のゆりかごの聖王』と呼ばれる人物である

 

『なんで彼女がここに・・・』

 

綾人がそうつぶやくと、オリヴィエは綾人の方を向きにっこりと笑いながら近づいてきた

 

「あぁ! お待ちしておりました!!」

『え・・・?』

 

オリヴィエにそう言われ首を傾げる綾人だが、すぐに彼女の視線が少し違うところを見ているのに気づく

 

彼女の見ていたのは綾人の後ろ・・・そして、綾人はそこに顔を向ける

 

「今日も元気だよな~・・・お前は・・・」

「もちろんです武王様! だってこんなにいい天気なんですから」

 

そこには、先程の男・・・『武王』が立っていて、オリヴィエと仲睦まじく会話を始めた

 

「その元気も・・・あと数刻で無くなってるからな? オリヴィエ」

「もう! 私だって、日々精進してますから・・・もう、初日のような事はありません!!」

 

『武王』の言葉にむくれながら反論するオリヴィエ

 

『なんか・・・イメージと違うな・・・普通の女の子だ・・・・・・ヴィヴィオが成長したらこんな感じか?』

 

そんな様子を見ていた綾人は、彼女にそんな印象を覚えた

 

“戦乱の世に武技において最強を誇った王”・・・そんな言葉とはかけ離れた今の聖王の姿・・・

 

だが、これが本来の彼女なのだろうと綾人は直感的に感じたのだった・・・

 

「クラウスと“黒スケ”は?」

「“エレミア”はわかりませんが、クラウスはもうじきいらっしゃいます・・・・・・それまでは・・・私と組み手をお願いします!!」

「いつも言ってるだろ? 見てやるのは同時だ・・・いい加減覚えろ」

「だって・・・今日こそ勝てる気がするんです!!」

「いつもそれ言ってるからな?」

 

肩をすかしながらオリヴィエに注意する武王だが、オリヴィエの根拠もない言葉にさらにため息を吐く

 

「オリヴィエ! 武王様!! お待たせしました!!」

 

綾人の後ろから、碧銀の髪でローブのような服を纏った一人の青年がかけてくる

 

『あれは・・・夢で見た・・・『覇王』・・・』

 

綾人はその青年をそう呼んだ・・・

 

『クラウス・G・S・イングヴァルト』・・・『覇王』の異名を持ち、聖王と並ぶほどの実力を持っていると言われており、この地・・・シュトゥラを治める王でもある

 

 

「クラウスも来たな・・・“黒スケ”はほっときゃ来るだろ・・・そんじゃ2人共、さっそく始めようか・・・?」

「「はい!!」」

 

並んで武王に答え、構えるオリヴィエとクラウス

 

『これは・・・やっぱり・・・『武王』の・・・』

 

綾人はその光景にある確信を持っていた・・・

 

 

 

 

【なのはSIDE】

 

~中央管理局・地上本部~

 

ヘリに揺られて数分・・・「公開意見陳述会」の行われる会場へと到着したなのは達

 

「あ、高町一尉・・・それにみなさんも・・・お疲れ様です」

 

近くで指示を出していたトビーが近づく

 

「お疲れ様です! 機動六課前線メンバー一陣、ただいま現着しました!」

 

なのはの後ろで、ヴィータやリイン、フォワード陣も敬礼する

 

「今回はよろしくお願いします」

「ええ。こちらこそ・・・期待のエースさん達の活躍・・・近くで見られるのを楽しみにしてますよ・・・さて・・・それでは・・・」

 

一言そう告げ、表情を引き締めるトビー

 

「これから各自は所定の位置で指示があるまで待機をお願いします。何か異常が見受けられた場合、すぐに報告をしてください、決して勝手な行動はしないように・・・それじゃ皆さん、警備をお願いします。担当区域は、そちらの曹長さんに通達してありますので・・・それでは・・・」

 

指示を残して去っていくトビーだった・・・

 

 

その後、それぞれ分散して外周警備を開始したなのは達

 

特別なにも起こることなく夜明けが近づき、スバルとギンガの2人と回っていたなのはが振り向く

 

「それじゃ、私も中の警備に移るからね?」

「あ、はい!」

「でね? 内部警備に、デバイスを持ち込めないから・・・スバル、レイジングハートの事お願いできる?」

 

そう言って、ポケットからレイジングハートを取り出し、スバルに手渡す

 

「前線の皆で、フェイト隊長達の分も預かっておいてね?」

「は、はい!!」

 

なのはの笑顔で告げられる指示に、緊張気味に答えるスバル

 

 

そして、夜明けとほぼ同時に本部内部へと入っていくなのはだった・・・




どうも

肝心なところにいない綾人君

そして代わりにリョウ君が参戦しました

綾人君と武王の関係も徐々に明らかになっていくことになります


では、次回予告


内部の警備を行うなのは

そこでマークと出会う

「先生・・・少しお時間いいですか?」
「ああ・・・わかった」

綾人についての報告、そしてマークからあることを告げられる


そして・・・

「これは!?」
「落ち着け・・・これはおそらく合図だ・・・本命が・・・来た!!」」

最初の“宴”が始まる・・・・・・

次回、『綾人の隠された秘密』


青年は、一体どれだけの謎を持っているのか・・・?

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