魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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裏話的な話は難しいですね


第31話 ≪恩師と教え子≫

【マークSIDE】

 

~陸士225隊・部隊長室~

 

ティアナ・キャロペアとクレイ・ハンスペア、綾人とグレンの模擬戦がそれぞれ行われる少し前・・・

 

部隊長室には機動六課の隊長陣が勢ぞろいしていた

 

「久しぶり・・・という訳でもないな・・・特に八神に関しては・・・」

「そうですね・・・」

 

ソファに座り、出されたお茶を飲みながら答えるはやて

 

「さて・・・それでは仕事の話を始めるとしようか・・・まずは後日行われる『公開意見陳述会』の警備関連について」

「「「「「はい!」」」」」

 

資料を取り出しながらマークが確認すると、はやて達も表情を改める

 

 

簡単な警備の配置、人員数などの最終確認を済ませる

 

「こんなものか・・・ご苦労だったな?」

「いえ・・・」

「この事は、こちらからレジアス中将に報告しておく・・・」

 

モニタを閉じながらそう伝えるマーク

 

「次は・・・綾人を襲った『ゼスト・グランガイツ』についてか・・・」

「マーク少将なら知っていると綾人君に言ってましたけど・・・どうなんですか?」

 

はやての質問に少し目を閉じる

 

「かつて管理局に所属していた魔導師だ」

「!!?」

「地上本部の部隊の所属だったのだが、数年前に行方不明になった・・・」

 

ゼストが元局員ということに驚きを隠せないはやて達

 

「それで・・・マーク少将とはどういう・・・?」

「俺が地上本部に所属していた時に何度か顔を合わせた程度だ」

「そ、それだけですか?」

 

もう少し関係があると思っていたはやてだが、思いの外浅い関係だったことに少し驚く

 

「地上本部にもいくつか分隊がある。分隊同士での共同訓練程度でしか会ったことがないな」

「そう・・・ですか・・・」

 

それ以上は聞けないと思ったはやては黙ってしまう

 

「俺の権限で見られる程度のデータは用意した・・・とはいえさっきの話以上の物はあまりないがな」

 

データの入った端末をはやてに手渡す

 

「ありがとうございます」

「構わん。それで、高町達は綾人達のところだな?」

「はい!」

「ま、お前達にもいい勉強になると思う・・・しっかり見てきてくれ・・・」

「はい! それじゃ、失礼します!!」

「リインも行くです~!」

 

敬礼し、部屋を出ていくなのは、フェイト、シグナム、ヴィータ、リインの5人

 

「まったく・・・笑顔だけは変わらんな・・・高町は・・・」

「あはは! それがなのはちゃんの良いところですし・・・あ、もしかしてなのはちゃんのこと・・・気になります?」

 

少しからかうように聞いてくるはやて

 

「多少はな・・・教え子はどれだけ経っても教え子だ・・・そういう意味では、お前もそこそこ心配だがな」

「お~・・・これは不倫宣言ですか~?」

「生憎と、俺は妻以外に心惹かれることは無い」

「断言ですか・・・」

 

からかいを含んだはやての言葉に、はっきりと答えるマーク

 

「ふっ・・・年上をからかうなら、もう少し修行を積むことだ・・・そうだな・・・キール元帥やミュゼット提督をからかえるぐらいにはな」

「いやいや・・・それは少将ぐらいです・・・」

 

笑いながらとんでもないことを言っているマークに冷静にツッコミを入れるはやて

 

この男は、何気に三提督ともそこそこ仲がいいのである

 

「さて・・・それで?」

「はぇ?」

 

急にトーンを変えて聞いてくるマークに変な返事を返すはやて

 

「まだ他に何かあるのだろう? だから、残ったのでは無いのか?」

「あ~・・・さすがはマーク少将・・・鋭いですね・・・」

 

はやても姿勢を整え、向き直す

 

「その・・・綾人君のことで・・・」

「綾人?・・・あいつに何か問題があったか?」

「えっと・・・その・・・」

 

はやては迷っていた・・・

 

綾人の『瞳』についての疑いを包み隠さず言うか、遠まわしに言うか

 

「俺に気を遣うな・・・言ってみろ?」

「はい・・・それじゃ・・・綾人君の・・・」

 

はやてが話そうとするとマークが

 

「待て・・・」

「はい?」

 

手で制し、目を瞑る

 

「話はあとだな・・・少し出る」

「あ・・・少将!?」

 

部屋を出ていくマーク

 

はやても慌てて追いかける

 

~225隊・訓練場~

 

「あれは・・・綾人君!?」

「相手はグレンか・・・む?」

 

訓練場につくと、綾人とグレンが模擬戦をしていて、綾人が一方的にグレンを攻撃していた

 

「『オーディン』・・・」

 

静かに、自身のデバイスを起動させるマーク

 

手に槍にしては少し短く、斧とも違う複雑な武器が握られる

 

 

そして、一気に跳躍し、綾人とグレンの間に割り込む

 

ちょうど、綾人がグレンのイグニスを弾き飛ばした瞬間

 

「・・・そこまでだ・・・綾人・・・」

 

そう言って、綾人を思い切り吹き飛ばしたマーク

 

綾人はそのまま訓練場の壁に突っ込んだ

 

「まったく・・・熱くなりすぎだな・・・」

「あ・・・ぶ、部隊長・・・」

 

模擬戦をしていたグレンも驚いている

 

「どうして・・・?」

「なにやら不穏な空気を感じてな・・・それがまさか綾人とは思わなかったが・・・」

 

グレンに答えながら綾人の突っ込んだ壁に近づくマーク

 

綾人は、壁の破片の中で伸びていた・・・

 

「ふむ・・・トビー! イルム!」

「「はい」」

「トビーは医務室に連絡、イルムは運ぶのを手伝え!」

「「了解!」」

 

マークの指示に的確に行動する2人

 

「お~い綾人~? 大丈夫・・・だな・・・うん」

「足を頼む」

「ういっす!」

 

腕を抱えながらイルムに指示を出すマーク

 

2人で一緒に綾人を運び地面に寝かせると、他の隊員が運んできた担架に乗せられ、綾人は医務室へ運ばれた・・・

 

 

「なにがあったの!?」

「あ、なのは・・・はやて・・・」

 

その様子を見ていたフェイト達になのは達後衛組とはやてが近づいてくる

 

「えっと・・・実は・・・」

 

フェイトは先程の状況を簡単に説明した

 

「綾人君の『瞳』が・・・」

「うん・・・」

 

考え込む隊長陣

 

「あの~・・・なのはさん?」

「綾人さんの目が・・・どうかしたんですか? なんか紅かったですけど・・・」

 

首を傾げながら聞いてくるスバルとエリオ

 

ティアナとキャロも同じ様子だった

 

「少しね・・・」

 

そんな4人には、そう短く答えるなのは

 

さすがに予言について言う訳にもいかないので、答えることもできないのだ

 

「八神・・・」

「あ・・・少将・・・」

 

そんな六課メンバーに近づくマーク

 

「八神、綾人について話しがあるのだろう?」

「あ・・・はい・・・」

 

マークの言葉に頷くはやて

 

「その・・・できれば・・・私と少将・・・それになのは隊長、フェイト隊長の4人だけで・・・」

「ならば30分後、部隊長室に来い・・・俺は、しばらく医務室にいるのでな・・・」

 

それだけ話すと立ち去るマーク

 

「お前達は、このまま訓練を再開しろ」

[はい!!]

 

マークの指示に返事を返す隊員達

 

「お前達もだ・・・何かあれば知らせる」

「「「「はい・・・」」」」

 

フォワード陣にも、そう言うと改めて医務室に向かうマーク

 

 

30分後・・・

 

「待たせた・・・」

「いえ・・・それで・・・綾人君は?」

「よく眠っている・・・・・・報告通りだな・・・」

「報告?」

「ああ・・・先日、リョウから報告が来ている・・・バルムンクのデータを送ってくるのと一緒にな・・・こちら様々な方面で調べているが・・・未だはっきりとした原因はわからん・・・」

 

なのはに答え、そのままはやてに視線を移す

 

「お前達の話というのは・・・それ絡みか?」

「はい・・・・・・実は・・・」

 

それから、はやてはマークにすべて話した

 

カリムの予言に出てきた『竜王』と『武王』という存在

 

その存在と綾人の持っている『瞳』が関係している可能性があること

 

それらを聞いている間、マークは一切口を挟まず、黙って聞いていた

 

「ふむ・・・なるほど・・・例の『予言』か・・・・・・まったく迷惑な・・・」

 

眉間に皺を寄せて愚痴るマーク

 

「それで・・・お前達は綾人をどうするつもりだ?」

「え・・・?」

 

聞き返してくるマークに、はやてはまたしても変な声を出す

 

「このままあいつを放っておくのか・・・本局のそれなりの研究機関で調べるのか・・・“危険分子”の一言で逮捕、若しくは拘束するか・・・」

「そんなこと!!」

 

反論しようとするはやてにマークは

 

「させると思うか? この俺が・・・」

「あ・・・」

 

先回りでそう言う

 

「お前達が綾人に害を及ぼすつもりなら・・・たとえ教え子であっても容赦はしない・・・俺は、家族のためなら・・・管理局をも敵に回す覚悟がある・・・」

 

まっすぐに見つめ、そう宣言するマーク

 

「まあ、もし逆に綾人が“その道”に入ったのなら・・・親として止める事もあるだろうがな・・・」

「少将・・・」

「先生・・・」

 

苦笑いしながら話すマークに驚いているはやてとなのは

 

そしてはやては顔を上げ

 

「そんなことしません・・・私は・・・綾人君のことを信じてます! 私だけじゃなくて、なのはちゃんもフェイトちゃんも皆です! 綾人君は・・・機動六課の大切な仲間です!!」

 

マークにそう反論する

 

なのはとフェイトも力強く頷く

 

「そうか・・・それならいい」

「え・・・?」

 

はやての回答に笑いながら頷くマーク

 

「お前達が綾人を信じてくれてるなら・・・俺も別段何も言わん」

「先生・・・」

 

表情を緩めてそういうマークに、なのはもホッと胸を撫で下ろす

 

「しかし・・・『あれ』を初めて見た印象だが・・・本当に綾人かと疑ったな・・・」

「どういうことですか?」

「纏う雰囲気・・・綾人風に言えば『闘気』か・・・それが普段とはかなり変わる印象があった・・・」

「そう・・・ですね・・・私も一瞬だけでしたけど・・・空気が変わった感じはしました・・・」

「さっきも、確かになにか違ってましたね・・・」

 

以前見たことのあるなのはとフェイト

 

「なんにせよ、ここで頭をひねってもなにも出ん・・・高町とハラオウン執務官は、準備をしに行くといい・・・」

「はい・・・あ、でもその前に・・・」

 

 

【???SIDE】

 

 

「何故です!? ・・・様!! 何故このような・・・」

(これは・・・あの時の・・・?)

 

以前見たことのある青年がこちらを見ながら叫んでいる

 

「あなたに何があったというのです!!」

『何もない・・・ただ・・・気に入らなかっただけだ・・・』

(これは・・・俺の・・・声?)

 

自分の見ている視点から、別の声がしている

 

どうやら、青年の見ている相手が話しているようだ

 

「気に入らない・・・? たったそれだけで・・・これだけのことをしたというのか!!」

(これだけ・・・?)

 

回りを見ようとするが、肝心の視点は動かない

 

『・・・・・・もはや言葉はいらないだろう?』

「・・・・・・そうですね・・・もはやあなたに言葉は届かない・・・」

 

青年がまっすぐ睨みつけてくる

 

「あなたとの調練により鍛えられた我が奥義・・・あなたに向けて使うことになろうとは・・・」

『気にすることはない・・・全力で来ることだな・・・』

(なんだ・・・何があった!?)

 

ただ黙って見ているしかない

 

「来い・・・『覇王』!!」

「『武王』! 覚悟!!」

 

青年がそう叫びまっすぐ突っ込んでくる

 

 

【綾人SIDE】

 

 

「はっ!?」

 

目を開けて思い切り起き上がる綾人

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

顔中に汗が浮かんでいた

 

「綾人君!?」

「大丈夫!?」

「あ・・・なのはさんにフェイトさん・・・もう来てたんですね・・・って・・・あれ?」

 

なのはとフェイトが慌てて飛び込んできたのを見たあと、辺りを見渡すと見覚えのある部屋にいることに気づいた綾人

 

「ここは・・・医務室?」

「そうだ・・・」

「あ、父さん・・・はやてさんも・・・もしかして・・・俺、また・・・?」

 

少し遅れて入ってきたマークとはやてにも気づき、自分に何が起こったのかを大体認識した綾人

 

「どこまで覚えている?」

「えっと・・・グレンの炎が迫って来てシールド張った所までは・・・シールドが割れた瞬間から記憶が曖昧です・・・」

 

頭を押さえながら思い出している綾人

 

やはり『瞳』が発動している間は何も覚えていないようだ

 

「体の調子は?」

「そうですね・・・わりといいです・・・頭と肩の辺りが少し痛みますけど・・・それ以外は・・・」

「・・・疲れはどうだ?」

「寝てたからですかね・・・そんなには残ってないです」

 

なのはとマークの質問にも普通に答える綾人

 

「動けるな?」

「はい」

「なら、これを返しておく」

「あ、バルムンク・・・」

 

マークが差し出したのは綾人のデバイス

 

「一応、簡易に検査もしてある・・・異常は無し・・・だ」

「はい・・・」

 

受け取り、首に下げる綾人

 

「高町、ハラオウン執務官、それに八神・・・お前達は準備をしておけ」

「あ・・・はい・・・」

「わかりました・・・」

「失礼します・・・」

 

マークの言葉に頷き、部屋を出ていくなのは達

 

「準備って?」

「なに・・・ちょっと模擬戦をな・・・」

「模擬戦・・・?」

 

マークの言葉に首を傾げる綾人

 

「ああ・・・俺と、六課の隊長陣・・・1対5の模擬戦だ・・・」

 

 

にやりと笑って答えるマークだった・・・




どうも

ゼストとマークさんの関係が少し出てきましたが

先に言います

こんな浅い関係ではありません

ですがそれはまだ先のお楽しみです


マークさんのデバイスについてはまた次回に説明をしていきたいと思います


といったところで次回予告

目を覚ました綾人とティアナ達は、マークとなのは達の模擬戦を見ることに


「審判は、トビーとイルムがやる・・・そちらはそこの空曹長だな?」
「はいです!!」

目の前で見る最強の男の戦いにフォワード達はなにを学ぶのか・・・

「おまえ達の行動は・・・“風に乗って”手に取るようにわかる・・・」


次回、『剣王 マーク・グリード』


最強の名は、飾りではない

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