魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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今回からはサウンドステージ02です


第23話 ≪仮初の家族≫

なのはと綾人の2人がヴィヴィオの“親代わり”なってから2日後の早朝

 

 

【なのはSIDE】

 

~なのはとフェイトの部屋~

 

「じゃあ、ヴィヴィオ? 行ってくるね?」

「行ってきます」

 

部屋の入り口で、ヴィヴィオに挨拶をするなのはとフェイトだが・・・

 

「う~!!」

 

ヴィヴィオはぐずってしまっているようだ

 

「アイナさん。よろしくお願いします!」

「はい、了解!!」

 

そんなヴィヴィオを尻目に、寮母のアイナに頭を下げるなのは

 

「ほぅらヴィヴィオ? ママたちに「いってらっしゃい」って」

「う~!! ママ~!!」

 

ぐずりながらなのはに抱きつくヴィヴィオ

 

「あ~! も~、ヴィヴィオ~?」

「ダメだよ、ヴィヴィオ? なのはママ、お昼には帰ってくるから。ね?」

「う~!!」

 

フェイトがやんわりと注意するが、ヴィヴィオは尚もぐずる

 

「あ!・・・っと」

「おはようございま~・・・す」

「あ・・・スバル、ティアナ・・・」

「「おはようございます!!」」

「キャロ、エリオ・・・おはよう」

 

そこへフォワード陣がやってくる

 

「ほぅら、ヴィヴィオ?」

「うぅ・・・」

 

アイナに諭され、なのはから離れるヴィヴィオ

 

なのはは屈んでヴィヴィオと目線を合わせる

 

「お昼は一緒にお散歩しようね? ママと海を見ながらのんびりお昼」

「ホント~?」

 

なのはの言葉に少しだけ明るくなるヴィヴィオ

 

「ヴィヴィオがいい子で待ってたらね~? いい子にしてないと、綾人パパも来ないかもしれないよ?」

 

何気に綾人の名前を利用するなのは

 

ヴィヴィオは綾人にかなり懐いているので、こう言うと基本的にヴィヴィオはいい子になるのだ

 

「いい子で待ってる!!」

 

笑顔で約束するヴィヴィオ

 

「うん! じゃあ行ってきます、ヴィヴィオ」

「行ってきます」

「いってらっしゃ~い!」

 

なのはとフェイトを見送るヴィヴィオ

 

「ほら、スバルやキャロ達にも「いってらっしゃい」って」

「いってらっしゃ~い!!」

「「「「は~い、行ってきま~す!」」」」

 

アイナに言われてスバル達にも手を振ると、スバル達も手を振り替えして去っていった

 

 

数分後

 

「ふぅ・・・」

「おつかれ」

 

給湯室での作業を終えて一息つくなのはに労いの一言をかけるフェイト

 

その後ろではスバル達がひかえていた

 

「む~・・・なんで皆待ってるの~? 先に行ってていいのに・・・」

 

少し困った表情で皆を見るなのは

 

「あ~・・・その・・・なんていうか・・・」

「その・・・なんか面白い・・・もとい!」

 

苦笑いのスバルと、発言が綾人みたいになりかけたティアナ

 

綾人ならば言い切る・・・間違いなく

 

「『なにか手伝えるかな?』って」

「一応待機を・・・」

 

素でそう思っているエリオとキャロ

 

「うぅ・・・」

 

なのはも少し顔を紅くして俯く

 

「さ! 出勤時間だよ? お仕事お仕事!」

「「「「はい!」」」」

「は~い!」

 

フェイトが手を叩きながら全員に告げると、フォワード陣となのはも答えてオフィスへと向かう

 

 

「フェイトさんも、大変ですか?」

 

途中、不意にそんな質問をするキャロ

 

「私は別に・・・ヴィヴィオが本当のママだと思ってるのは、なのはの方みたいだから」

「そうなんですか?」

「「フェイトママも好き~!」って言ってましたけどね」

 

そう答えるフェイトに、エリオとスバルが以前一緒に遊んだ際にヴィヴィオが言っていたことを教える

 

ヴィヴィオは、自分に特別優しくしてくれる存在を親だと認識しており、そのせいなのかフェイトの事も『ママ』と呼んで懐いているのだ

 

そのことに対してなのはも綾人もヴィヴィオの事情を考えて何も言わないのだが、フェイトとしてはどこか複雑な思いがあるようだ

 

「あはは・・・それは、嬉しいけど・・・」

 

フェイトも少し笑いながら答える

 

「ま、ヴィヴィオがあんまりフェイトママのことを「好き好き大好き~!」だと、どっかのちびっ子2人が嫉妬するかもしれないしね~?」

「「えぇっ!?」」

 

ティアナが意地悪くエリオとキャロに言うと、2人も驚きで同時に声を挙げる

 

「えへへ~! ちょうどよかったのかな~?」

 

スバルも同じようにからかう

 

(なんか、綾人君みたい・・・)

 

後ろで聞いてたなのははふと、そう思っていた

 

「別に、嫉妬なんかしませんよ!」

「子供じゃないんですから・・・」

 

キャロとエリオが少しむくれながら答える

 

「いや・・・子供・・・」

「あはは!・・・なんか2人とも、ピシッとしてるね?」

「どうしちゃったのかしら・・・」

 

突っ込みが中途半端になったが、2人の様子に驚くスバルとティアナ

 

 

それを見ていたフェイトは少しだけ暗い顔をしていた

 

「あの、フェイトさん?」

「どうかしました?」

 

不思議に思い、フェイトに声をかけるキャロとエリオ

 

「あ、ごめんごめん。 なんでもないよ」

「そうですか・・・」

「?」

 

少し、ぎこちない笑顔で答えるフェイトに2人も顔を見合わせてしまう

 

 

「それにしても、ヴィヴィオって先輩には特別懐いてますよね?」

 

しばらくした後、ティアナが先ほどのヴィヴィオの様子を思い出しながらなのはに聞く

 

「うん。綾人君の名前出すだけで笑顔になっちゃってね・・・少し、悪いって思ってるけどね」

 

なのはも苦笑いしながら答える

 

「綾人さんって普段から、やさしいですもんね?」

「うん。僕達も、良くしてもらってます」

 

エリオとキャロも頷く

 

「先輩って、子供に甘いところあるよね~?」

「そうね・・・本人は、自然に接してるだけだと思うけどね」

 

会話はすっかり綾人の話にすり替わっていた

 

 

「あ、おはようございます」

 

オフィスの入り口で、綾人と合流し挨拶をする

 

「おはよう! 綾人君!」

「おはよう」

 

なのはとフェイトも挨拶を返す

 

「あれ? フェイトさん、どうかしました?」

「え?」

 

フェイトの顔を見るなりそう聞いてくる綾人

 

「どうして?」

「いや、なんかいつもと声の感じが違いましたから」

 

一言でフェイトの様子に気付いた綾人

 

フェイトも一瞬たじろぎ、一瞬動きが鈍ってしまい綾人に手を取られてしまった

 

 

「ふむ・・・・・・体調には問題無いか・・・」

「だ、大丈夫だよ! ほら、お仕事お仕事!!」

 

それだけ言って振り払ってオフィスに入っていった

 

「ふむ・・・エリオ、キャロ。何かあったか?」

「いえ・・・」

「得には・・・」

「そうか・・・」

 

エリオ達に聞き、スバル達にも目線を向けるが、全員首を振っている

 

「少し、気をつけとくか・・・」

 

 

その後、仕事中何度かフェイトはボーッとしていて、綾人やなのはが声をかけて再起動といった状態になった

 

確認するたびに「大丈夫」と言い張ってしまうため、なのはも綾人もなにも言えなかった

 

 

そして、昼食の時間になった

 

「綾人君。悪いんだけど、今日もいいかな?」

「ええ。もちろん」

 

昼食のベルが鳴るとほぼ同時、なのはが綾人に確認を取り、綾人も頷き返す

 

なのはのお願いとはもちろん、ヴィヴィオとの昼食である

 

なのはは綾人の名前を最初に使い始めた頃、昼食時に綾人が来ないと分かると、ヴィヴィオは泣きそうな顔になり、急遽、綾人を呼び出すハメになってしまった

 

綾人も、父親としてヴィヴィオを泣かせたまま昼食などしたくないので、よっぽどのことが無い限り一緒に昼食を摂ると約束している

 

「いつもごめんね?」

「いえいえ。可愛い娘のためですし」

 

そういってなのはと一緒にオフィスを出て行く綾人

 

その様子を見ていたスバル達は

 

「なんか、ヴィヴィオのお父さんが板に付いて来たね・・・」

「そうね・・・」

 

スバルの感想にティアナも頷く

 

「フフ・・・エリオ、キャロ? もう直ぐ出るから、行こうか?」

「「はい!!」」

 

笑顔で見送りながら2人を連れて行くフェイト

 

フェイト達は、シャーリーと共に近隣の捜査部周りと、警備打ち合わせに向かった

 

 

【綾人SIDE】

 

 

「お~。なのはちゃんと綾人君。これからお昼か?」

「あ、はやてちゃん!」

「お疲れさまです」

 

隊舎の入り口で車に乗り込もうとしているはやてが綾人の手にあるものを見て声をかけてくる

 

綾人の手には、ヴィヴィオと食べる昼食が入ったバスケットが握られている(もちろん、綾人特製である)

 

「あ、聖王教会だっけ?」

「そうや。シグナムたちの健康診断と捜査の打ち合わせや」

 

なのはがはやての予定を思い出しながら確認すると、はやても頷き答える

 

「それにしても、すっかり夫婦みたいになったなぁ?」

「えぇ!?」

 

ニヤニヤと話すはやてに顔を真っ赤にしてしまうなのは

 

「いくら親代わりとはいえ、そこまで仲良くなるなんてな?」

「そりゃ、仲良くはするでしょ・・・子供にも影響ある事ですし・・・なのはさんと仲悪くなる理由もないですからね」

 

シレっと答える綾人

 

なのはとしては自分だけ恥ずかしがっているのが妙な気分になっていた

 

「綾人君的にはどうなん? なのはちゃんのこと」

「どうとは?」

「恋愛対象として?」

「な、なに言ってるの!?」

 

意地悪な顔で綾人に聞いてくるはやて

 

「そりゃ、なのはさんが恋人だったら毎日楽しそうですし・・・悪くは無いんじゃないですか?」

 

しかし、綾人は顔色1つ変えずに答える

 

「料理も上手ですし、真面目ですし、なにより美人ですしね?」

「あ、綾人君!?」

 

真顔でそう答える綾人になのはの方が堪らず止めに入る

 

聞いた本人も、まさかここまで答えられるとは思っていなかったのか苦笑いである

 

「そ・・・そうか・・・ほ、ほんなら、行ってきます」

「ああ、うん・・・行ってらっしゃい」

「お気をつけて」

 

直ぐに笑顔になり、車に乗り込み出発するはやて

 

なのはと綾人も敬礼で送り出す

 

「それじゃ、行こっか?」

「はい」

 

車が見えなくなり、改めてヴィヴィオの待つ部屋へと向かうなのはと綾人

 

 

~なのは・フェイト・ヴィヴィオの部屋~

 

 

「ただいま! ヴィヴィオ!」

「お邪魔します」

「ママ~! パパ~!!」

 

入るなり、なのはに飛びついてくるヴィヴィオ

 

「いい子にしてた?」

「うん!!」

 

なのはのいつもの質問に満面の笑顔で頷くヴィヴィオ

 

「えらいぞ~?」

「えへへ~!!」

 

そんなヴィヴィオの頭を撫でる綾人

 

「それじゃ、お昼食べよっか?」

「は~い!」

「はい」

 

テラスに出て、海の近くのテーブルにて食事をしているなのは達

 

「あ~・・・あむ!」

 

サンドイッチをとてもおいしそうに頬張るヴィヴィオ

 

「おいしい?」

「うん!!」

「それはなによりだ。作ったかいがある」

 

なのはに笑顔で答えるヴィヴィオに綾人も嬉しくなる

 

「あっと・・・ヴィヴィオ、動くなよ?」

「ん?」

 

そう言うと、ヴィヴィオの頬に触れる綾人

 

「付いてたぞ?」

 

そう言って人差し指を見せると、サンドイッチに使われていたマヨネーズが付いていて、綾人は何の気なしにそれを舐める

 

「こぼさないでね? ヴィヴィオ」

「は~い。あ、ママ。あ~ん」

「ん? あ~ん!」

 

ヴィヴィオが差し出すサンドイッチを口に入れるなのは

 

そして、お互いに笑い合う

 

「おいしい?」

「うん! おいしい」

「えへへ!!」

 

2人でまた笑いあう

 

それを見ていた綾人は

 

(この2人はホント・・・こんな些細なことでも笑顔になるよな・・・)

 

と、思っていた

 

これなら、口に出してもいいはずなのだが

 

どうしてこの男は要らんことだけは躊躇なく口にするのか・・・

 

「あ、ママ。これな~に?」

 

ヴィヴィオはなのはの傍に置かれていたビンを指差して聞く

 

「あ~。給湯室で作った『キャラメルミルク』」

 

教えながらビンの蓋を開くなのは

 

「わぁ~! 甘くていい匂~い!!」

「でしょ~? このサンドイッチ、全部食べてからのお楽しみね?」

「うん!!」

 

昼食後のお楽しみがあると分かると、また食べ始めるヴィヴィオ

 

「だからって、あんまり急いで食べるんじゃないぞ? 喉に詰まらせたら大変だからな?」

「は~い!」

 

やんわり注意する綾人に返事を返し、よく噛んで食べ始めるヴィヴィオ

 

しばらく食べていると、ヴィヴィオが口を開く

 

「あのね、ママ、パパ?」

「「ん?」」

「なのはママと綾人パパ、ホントのママとパパじゃないけど、ホントのママとパパより大好き!!」

「っ!!」

「・・・・・・」

 

ヴィヴィオの言葉に目を見開くなのはと、少し暗い表情になる綾人

 

なのはは小さく笑いヴィヴィオの頭を撫でる

 

「ありがと・・・ヴィヴィオ・・・」

「んふふ~!」

 

ヴィヴィオは撫でられて気持ちよさそうにしている

 

「でもヴィヴィオ、ホントのママとパパのこと、まだ思い出せなんでしょ?・・・だったら、比べるのおかしくないかな?」

「ん~・・・」

 

なのはは言葉を続ける

 

ヴィヴィオに伝えるように、自分に言い聞かせるように

 

「ヴィヴィオのホントのママ達・・・きっと、どこかにいるんだし・・・いつか急に、思い出すかも知れないし・・・」

「ホントのママとパパ・・・いるのかな・・・?」

「・・・・・・いるよ・・・きっと・・・」

 

俯くヴィヴィオにそう答えるなのは

 

「なのはママと綾人パパが・・・ヴィヴィオのホントのママとパパならいいのに・・・」

「・・・うん・・・そうだね・・・私もそう思う・・・」

「ぇ?」

 

なのはも俯いてしまい、ヴィヴィオがなのはを見上げる

 

「私も・・・ヴィヴィオとずっと一緒に居たいよ? でも、私がちゃんとお仕事しないと困っちゃう人がいるしね?・・・スバルにティアナ・・・エリオにキャロ・・・フェイトママとか・・・はやてちゃんとか・・・綾人君とかね・・・」

「うん・・・」

 

一瞬、綾人に目を向けるヴィヴィオ

 

綾人も、何も言わないで小さく笑いかける

 

「なのはママ達のお仕事・・・困ってる人を助けるお仕事だから・・・ヴィヴィオにも・・・どうしても色々・・・寂しい思いさせちゃうんだ・・・」

「うん・・・」

「でも、きっとどこかに居る・・・ヴィヴィオのホントのママ達なら、ずっと一緒に居てくれる・・・ヴィヴィオが寂しいときにも・・・泣きたいときにも・・・ね?」

「ヴィヴィオ、泣かないよ! 寂しくないよ!」

 

なのはの言葉にそう言い返すヴィヴィオ

 

なのはも少し苦笑いする

 

「ホントかな~?」

「ホント~!」

 

なるべく明るくからかうなのはに、しっかりと答えるヴィヴィオ

 

それを確認した綾人は、バスケットの中のサンドイッチを取り出しヴィヴィオに差し出す

 

「ほら、ヴィヴィオ? 最後の一個だぞ?」

「あ~ん!」

 

しっかりと噛み、飲み込む

 

「さ、食べ終わったら?」

「ごちそうさまでした!」

 

綾人の一言にしっかりと手を合わせるヴィヴィオ

 

「いただきます」と「ごちそうさま」などの基本的な挨拶はしっかりと教え込んでいる綾人

 

「はい! じゃあ、お楽しみの『キャラメルミルク』、いってみようか?」

「わ~!!」

 

なのはがビンを持ち上げると、ヴィヴィオの目が光りだす

 

なのはお手製の『キャラメルミルク』にヴィヴィオは

 

「パパのホットケーキよりおいしい!!」

 

との感想を言い、それを聞いた綾人は

 

「確かに・・・・・・流石はパティシエの娘・・・・・・よし、今度はこれを越えてみるか・・・」

「にゃはは・・・」

 

などと、勝手に対抗意識を燃やしていたのだった




どうも

序盤からいきなりシリアスになっちゃった・・・でも仕方ない!!


というよりも、ここから先はほぼシリアスですからね・・・お覚悟を



ドラマCDだとティアナの言葉に色々とツッコミどころがあるんですよね・・・

綾人君いなくても彼女のセリフは変わりません


今回のお話、EDにこのドラマCDに収録されているなのはさんのキャラソン『あなたの笑顔に』になるように話しを区切りました

最後の綾人君のセリフでイメージしにくいかもしれませんけどね


では、次回予告

街に出ていたライトニングチームと綾人の元に緊急通信が来る


『海岸線にガジェットが出現! Ⅰ型15機、航空Ⅱ型の20機!! 位置は、第七海岸区画!!』
「住民区画の近くか・・・」

戦闘はすぐに終わったが、代わりに別の問題が・・・

「フェイトさん・・・なんだか・・・」
「うん・・・」


様子のおかしいフェイトへの同様を隠せないエリオとキャロ


次回、『緊急出撃、途惑い』

こっちの家族も、色々と複雑である

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