魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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今回は弱シリアスです


シリアスは個人的に書くのは苦手です


第20話 ≪命の価値≫

 

【なのはSIDE】

 

ヴィヴィオを綾人に任せ、なのははフェイト、はやてとともに聖王教会に向かっていた

 

「ごめんね? お騒がせして・・・」

「いや~、ええもん見せて貰ったよ?」

 

謝りながら席に着くなのはに笑いながら答えるはやて

 

「しかし・・・あの子はどうしよか? なんなら、教会に預けとくんでもええけど・・・」

「平気。帰ったら私がもう少し話して、なんとかするよ」

「そうか・・・」

「今は、周りに頼れる人がいなくって、不安なだけだと思うから・・・」

 

ヴィヴィオの心情を考えて言うなのは

 

「そやな・・・それにしても、すっかり綾人君に懐いたみたいやね?」

「うん・・・ヴィヴィオをあやすの、すごい上手だった」

 

綾人がヴィヴィオを説得していたときを思い出しているフェイト

 

この間の出張の際に子供の扱いが上手いとは聞いていたが、あそこまで巧みにこなす姿は想像出来なかった

 

「さて、綾人君はどうやってヴィヴィオの相手するんやろか?」

「ああ、少し気になるかも・・・」

 

はやてが不意にそう呟き、フェイトも考えてみる

 

「う~ん・・・何か遊び道具とか用意するのかな?」

「いやいや、絵本とか読んだりとか違うかな?」

「もしかしたら・・・」

 

と、2人で勝手に想像している

 

その後なのはも加わり、移動中はそんな会話に華を咲かせていた

 

 

しかし、なのは達は知っておくべきだった・・・綾人の“趣味”を・・・

 

 

【綾人SIDE】

 

なのは達がヘリで出発した後、綾人はヴィヴィオ、エリオ、キャロの3人となのはの部屋で過ごすことになった

 

何をしようかと考えていたときに、ヴィヴィオが「お話が聞きたい!」とリクエストしてきたので、絵本か何か用意しようとしたキャロを止め、自分の持っている本を持ってきて読み出した綾人

 

その本の内容を聞いた途端、エリオとキャロの顔色が変わった・・・

 

 

綾人が持ってきた本とは・・・

 

 

『武王』の本である

 

子供相手にチョイスする本ではないと思われるだろうが

 

この男、武王に関する本は様々持っている

 

それこそ小説やら文献、果ては何故存在しているのかわからない子供向けの絵本まで持っているのだ

 

そして、その中の一冊を抜粋しヴィヴィオに読み聞かせている

 

エリオとキャロもすぐにヴィヴィオが飽きるだろうと思い、別の絵本を探してきたのだが、なんとヴィヴィオは綾人の膝の上で夢中になって聞いていた

 

それこそ、すごく面白そうに聞いているので2人は

 

((毒された!?))

 

などと失礼なことを思っていた

 

 

~数時間後~

 

綾人の長い『武王談義』の後、4人で色々遊んでいた最中ヴィヴィオが眠ってしまったので、ベッドに寝かしつけた綾人達

 

「ふぅ・・・よく眠ってますね・・・」

「うん」

「そうだな」

 

ヴィヴィオの寝顔を見ながら小声で話す3人

 

「でも、本当に普通の子供だよね?」

「うん・・・」

 

キャロの質問に少し暗い顔で答えるエリオ

 

綾人はその変化に気付いた

 

「・・・キャロ?」

「はい?」

「コップ洗ってくるから、ヴィヴィオを頼む。エリオ、手伝ってくれ?」

「は、はい・・・」

「じゃあ、頼むな? キャロ」

「分かりました」

 

そう言って、エリオと2人きりになる綾人

 

ジュースの入ったコップを洗い場に持って行く途中、綾人がきりだす

 

「なあ、エリオ?」

「なんですか?」

「ヴィヴィオに関して、何か気になることでもあるのか?」

「え・・・?」

 

突然の質問で訳の分かっていないエリオ

 

綾人はそれに構わず続ける

 

「まあ、俺もあの子の手を握った時に少し違和感があったからな。お前やフェイトさんとはまた違う違和感だ・・・」

「あ・・・」

 

綾人の言葉に目を見開くエリオ

 

最初に手を握った時には変換資質ぐらいは言い当てていたがその他には何も言っていなかった綾人

 

能力を聞いた後、自分の秘密までは知れないんだと思い込んでいたのだが、綾人はしっかりと把握していた

 

言いよどんでしまうエリオに綾人は

 

「その違和感についてお前が話せることなら、言ってくれればいい。話せないなら、無理に聞く気は無いよ・・・別に気にしないし」

 

そう言って頭を撫でる

 

「ぼく・・・は・・・・・・」

 

話を聞くために別室に移動した2人

 

そこでエリオは重い口を開いた

 

「僕は・・・特殊クローン・・・なんです・・・」

 

俯き、そして、静かに話し出す

 

「クローン?」

「はい・・・本当の『エリオ・モンディアル』は、もう随分前に死んでいます。僕は・・・あるプロジェクトによって創られたんです」

「プロジェクト?」

「はい。プロジェクト・・・F・・・」

 

そのまま、エリオは『プロジェクトF』について語り出す

 

プロジェクトF

 

記憶転写型クローンを作り出す研究

 

その研究を用いて生み出された人間は、基になった人物の記憶を引き継いで生まれてくる

 

しかし、魔力資質、利き手、性格等は完全にコピーされることは無い

 

 

そして、違法であるクローン技術によって生まれたエリオの存在をしった管理局局員によりエリオは両親と離れ離れになった

 

エリオの両親は最初抵抗していたが、違法である事実を突きつけられたと同時に抵抗を止めてしまった

 

その後、エリオは施設で育てられたが人間不信に陥ってしまったが、施設を訪れたフェイトの捨て身の説得により保護された

 

それらを語った後、エリオはヴィヴィオについても話し出す

 

「ヴィヴィオは、人造魔道師素体にしては知識や言語がはっきりしすぎていると思うんです。人工授精児なら、ああはなりません・・・多分、基になった人物の記憶があるんだと思います」

「基になった人物・・・」

「プロジェクトFは・・・まだどこかで・・・続いているんだと思います」

 

エリオ話し終えた後、2人の間にはしばらく沈黙が続いた

 

「なるほどな・・・確かに、少し特殊な魔力だと思ったが・・・そういう事情だったか。つまり、フェイトさんも・・・か・・・」

 

フェイトとエリオから似た違和感を覚えていた綾人

 

エリオの話で合点がいったようだ

 

「はい。あ、あの・・・綾人さん・・・それで・・・」

「ん?」

「僕のこと・・・どう、思いますか・・・?」

 

おずおずと聞いてくるエリオ

 

若干身体が震えている

 

「どうって・・・?」

「『変だ』とか・・・『気持ち悪い』とか・・・あう!!」

 

全部言い終わる前にデコピンを喰らうエリオ

 

「そんな事で、お前のこと『気持ち悪い』って思ったり、嫌ったりするわけないだろ?」

 

呆れながら言う綾人

 

そのままエリオの頭を撫でる

 

「いいか? お前がクローンだってな、そんなことどうだっていいんだよ。俺が、俺達が出会った『エリオ・モンディアル』はお前だけなんだから・・・俺達にとっちゃ、お前だけが本物だよ」

 

真っ直ぐにエリオを見つめそう言う

 

エリオは頭を押さえながら目を見開き、やがて目に涙が溜まっていく

 

「綾人・・・さん・・・」

「自信持て・・・男だろ?」

「う・・・っく・・・うぅ・・・」

 

少し乱暴に頭を撫でる綾人

 

エリオは綾人に抱きつき自分よりも広い胸の中で、声を押し殺して静かに泣いた

 

「どんな事情だって、“それ”はお前の命なんだ。誰かに何か言われたら言え・・・そいつ、ぶん殴ってやるから・・・」

 

綾人は泣き止むまで胸を貸した

 

 

~数秒後~

 

「・・・落ち着いたか?」

「はい・・・」

 

エリオの嗚咽が小さくなってきたので話しかける綾人

 

顔を離し、頷くエリオの顔はぐしゃぐしゃになっていた

 

「まったく、そんな顔でキャロのところ行く気か?」

「あう・・・」

 

顔を赤くし俯くエリオ

 

「とりあえず、コップ洗うついでに顔も洗え。いい加減キャロのこと放っときすぎだ」

「そうですね」

 

苦笑いし、洗面台でコップとエリオの顔を洗い、キャロの待つ部屋へと戻る

 

すると、ヴィヴィオが丁度起きており、小さいお腹を鳴らしていた

 

「お腹空いた・・・」

「ふむ・・・丁度いい時間だし、なんかおやつでも作るか?」

 

時間は丁度午後3時ほど、日本では所謂「3時のおやつ」の時間である

 

「おやつ・・・?」

「ああ、おいしいぞ。食べるか?」

「うん!!」

 

綾人の“おいしい”の一言に笑顔で頷くヴィヴィオ

 

「エリオとキャロも食うだろ?」

「「はい!!」」

 

綾人の腕前を知っているので2人も楽しみで笑顔になる

 

 

 

「さて・・・何を作るかな・・・」

 

準備の為に自室に戻った綾人は、小型冷蔵庫の中を見ながら唸る

 

「やっぱ、無難にホットケーキかな・・・」

 

呟きながら材料を取り出し、食堂に戻る

 

 

「さて、それじゃあ、パパっと作りますか・・・」

「綾人さん、なにか手伝います!」

「僕も!!」

「ヴィヴィオも~!!」

 

キャロの言葉に手を挙げるエリオとヴィヴィオ

 

「そうだな・・・なら、皿とか用意しててくれ」

 

綾人の指示に3人で皿やフォークなどを用意していエリオ達

 

綾人は手際よくホットケーキの素を混ぜ、フライパンで焼いていく

 

フライパンを振ってホットケーキをひっくり返すパフォーマンスに大喜びしたり、出来上がる少し前、報告書を書き終え食堂から漏れる甘いにおいに誘われてフラフラとやってきたスバルやティアナの2人も誘った

 

 

味はもちろん大好評で、ヴィヴィオも「また食べたい」と笑顔で言っていた

 

 

それからまた4人で部屋に戻り、積み木で遊んだり絵を描いたりしながら過ごしすっかり日も落ちたころ・・・

 

「「ただいま~!」」

「!!」

 

部屋に入ってくるなのは達の声に反応し、一目散に走っていくヴィヴィオ

 

なのはは、そんなヴィヴィオを抱き上げる

 

 

「ヴィヴィオ、ただいま。いい子にしてた?」

「うん!!」

 

笑顔で答え、なのはに抱きつくヴィヴィオ

 

「ありがとね? 3人とも・・・」

 

抱きつくヴィヴィオの頭を撫でながら声をかけるフェイト

 

「いえ・・・」

「ヴィヴィオ、いい子でしたよ?」

「俺達も、結構楽しかったですしね」

「そう・・・」

 

綾人達の言葉に、一安心のなのは

 

「それじゃあな・・・ヴィヴィオ・・・」

「うん・・・」

 

部屋の前で、挨拶している綾人と淋しそうにしているヴィヴィオ

 

「また明日な?」

 

そう言って、ヴィヴィオの頭を撫でる

 

すると、ヴィヴィオも笑顔になって頷いた

 

「それじゃあ、なのはさん、フェイトさん。俺はこれで・・・」

「うん!!」

「また明日」

 

2人にも挨拶を済ませ、部屋に帰っていく綾人

 

 

【なのはSIDE】

 

「さ、お風呂に入って、寝ちゃおっか?」

「うん・・・あれ? この本は・・・!? な、なのは!!」

 

なのはの言葉に頷きながら、テーブルの上にある本に気付き手に取り題名を見ると、フェイトは慌てたようになのはを呼ぶ

 

「どうしたの?・・・え!?」

 

なのはも本を見て驚いていた

 

「“ぶおうの”・・・“ぼうけん”・・・」

 

それは、綾人がヴィヴィオに読んで聞かせていた武王の絵本だった

 

「ん~??」

 

そこに、ヴィヴィオが首をかしげながら入ってくる

 

「ヴィヴィオ・・・この絵本なんだけど、誰のかな?」

「あやとおにいちゃんの・・・ヴィヴィオにくれるって・・・」

「綾人君が!?」

「うん・・・」

 

綾人が良かったらとヴィヴィオにプレゼントしたものだった

 

「そう・・・綾人君が・・・」

 

ヴィヴィオの答えに考え込むなのは

 

「なのは・・・」

「うん・・・明日、はやてちゃんに報告して・・・綾人君に話を聞こう・・・」

 

2人は頷きあい、その日はそのまま眠りについた・・・




どうも

綾人君の天性の能力は『人たらし』です

これでエリオにもフラグが立ったわけだ・・・キャロ危うし!!

序盤のなのはさん達の部分はいったかどうか微妙ですが、まあある意味伏線チックになったのではないでしょうか

『余計な一言』に定評がある綾人君ですが、相手の重大な秘密だと感じた場合にのみ抑えます

女性の体重とかはいいのかと思われますが、そのへんはギャグ補正だとお思いください


では次回予告


綾人とヴィヴィオ達が過ごしている時と同じく、なのはとフェイトは聖王教会へと訪れていた


「お兄ちゃん、元気だった?」
「!!・・・それはよせ! お互い、もういい歳だぞ?」

その“お兄ちゃん”達が語る六課の真実

そして・・・

「それと・・・最近、また新たな予言が出てきたの・・・」

果たして予言の内容とは・・・

次回、『六課の真実・武王と竜王』


その存在は、何を意味するのか・・・



※先日、『信念』のお気に入り登録が100人に到達いたしました!

登録してくれた皆様、本当にありがとうございます

今後もよろしくお願いします

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