魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃   作:sufia

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今回は綾人君の得意技が炸裂します


第19話 ≪少女との出会い、綾人の隠れた才能≫

~機動六課医務室~

 

「う・・・ん・・・・?」

 

ベッドの上で目を覚ます綾人

 

「こ・・・こは・・・?」

「あ、綾人君! 気が付いたのね!?」

 

綾人の声に反応し駆け寄ってくるシャマル

 

「シャマル先生・・・?・・・ここは・・・隊舎の医務室ですか・・・」

「ええ、そうよ。気が付いてよかったわ・・・随分と眠ってたわ・・・」

「えっと・・・どれくらいですか・・・?」

「そうね・・・約5時間ぐらいかしら?」

 

指折り数えながら計算し、そう教えるシャマル

 

「5時間・・・それじゃあもう・・・夕方ですね・・・」

「ええ」

 

医務室の窓から空を見ると、空は赤く染まっていた

 

 

「あ、そうだ。はやてちゃんに報告しなきゃ! ちょっと待っててね?」

「あ・・・はい・・・」

 

シャマルは立ち上がり、はやてに通信を行う

 

「あ、シャマルです! 綾人君が目を覚ましました・・・はい・・・はい、お待ちしてます!」

 

通信を終え、ベッドに戻ってくるシャマル

 

「はやてちゃんが、詳しく情報を聞きたいそうだから・・・」

「分かりました・・・それじゃ、部隊長室へ・・・」

 

そう言って、立ち上がろうとするが

 

「あ、駄目よ!! まだ動いちゃ・・・」

「大丈夫ですよ・・・傷もないし・・・」

「それでも駄目です! ここでは、先生の言うことを聞いてもらいます! はやてちゃんがこっちに来るから、おとなしく待ってなさい!」

 

腰に手をあてながら叱るシャマル

 

綾人も渋々ながら頷く

 

 

数分後、はやてがやってくる

 

「綾人君? 大丈夫か?」

「はい、ご迷惑をおかけしました」

「ええよ、無事やっただけで・・・十分や」

 

笑顔で答えるはやてだが、すぐに真剣な表情になる

 

「それで・・・合流まで何があったか・・・話してくれるか?」

「はい・・・」

 

綾人も真剣な表情になり、結界内での戦いのことを話した

 

突然結界内に閉じ込められ、そこで『ゼスト』と名乗る男に襲われたこと

 

彼の容姿、所持していたデバイス、言った言葉

 

一通り話し終えてはやてが神妙な顔になる

 

「綾人君の足止めが目的やったってことか・・・」

「はい・・・よく分かりませんが・・・それは間違いなさそうですね・・・」

「それともう1つ・・・ヘリが砲撃されてから後の事・・・覚えてる?」

 

様子がおかしくなったのをモニタで見ていたはやてとシャマル

 

フェイト達からも話を聞いているが、本人の話も聞いておきたかったのだが・・・

 

「え?・・・俺、ヘリ守った後に意識失ったんじゃ・・・?」

 

綾人からは信じられない返答が来た

 

「何言ってるん? フェイトちゃん追い越して犯人2人追いかけたんやで? それでその後、フェイトちゃんとなのはちゃんに止められて気絶したんや・・・」

「そんな・・・まったく覚えてません・・・爆発が起きたのは覚えてますけど・・・そこから先は・・・」

 

まったく噛み合わない会話

 

はやても少し考えた後、腰を上げる

 

「わかった。とりあえず、覚えてる限りの詳細を明日にでも纏めて、報告してな? その『ゼスト』って男の事も」

「了解です」

 

情報をもう一度纏めるため・・・そして、綾人を休ませる意味で話を終わらせるはやて

 

「そんなら、今日はもうゆっくり休みな? シャマル、後、よろしくな?」

「は~い!」

 

はやての言葉に手を挙げて答えるシャマル

 

そして、はやては部隊長室へと戻っていった後

 

「あの・・・シャマル先生」

「何?」

「エリオ達が保護したって女の子・・・大丈夫なんですか?」

「ええ、今は聖王病院で簡易的な検査が行われていると思うわ」

「そうですか・・・よかった・・・」

 

ほっとため息をつく綾人

 

「さ、お話はここまで! 今日はこのベッド使っていいから、もう眠りなさい?」

「はい・・・それじゃ、失礼します・・・」

「ええ。あ、それと・・・」

「はい?」

「助けてくれてありがとう・・・綾人君が間に合わなかったら私とヴァイス君・・・どうなっていたか・・・」

「・・・・・・守れてよかったです」

 

笑顔で礼を行ってくるシャマルに対して綾人も笑顔で答える

 

「あ、でも・・・今後はあんな無茶しちゃダメだからね?」

「はい・・・気をつけます」

 

 

しっかりと釘を刺されながら、綾人はそのまま眠りについた

 

 

【リョウSIDE】

 

~デバイスルーム~

 

「・・・こいつは・・・一体何なんだ・・・?」

 

バルムンクから抜き出した映像を見ながら1人呟くリョウ

 

そのモニタには、瞳を真紅に染めた綾人の映像が映し出されている

 

「こんな状態・・・今まで無かった・・・・・・少なくとも、訓練校にいる間も・・・225隊にいた頃にも・・・」

 

異常があるならすぐに分かるこの症状

 

しかし、今まで一度も見たことの無い綾人のこの状態には謎しかなかった

 

「とりあえず・・・マー姉ちゃんにも報告しとくか・・・あと少将にも・・・」

 

そう言って、データを本局のマリエルと225隊のマークの元に送るリョウだった・・・

 

 

【綾人SIDE】

 

~次の日~

 

早くに目を覚ました綾人は医務室を抜け出し、隊舎の中を歩いていた

 

「あれ? なのはさん?」

 

入り口で車に乗り込もうとしているなのはに声をかける

 

「え? あ、綾人君!?」

「お前、大丈夫なのか?」

 

なのはと運転席に座っていたシグナムも驚く

 

「はい、もう大丈夫です。こんな朝早くにお出かけですか?」

「うん。ちょっと聖王病院まで・・・」

 

少し、俯きながら言うなのは

 

「昨日保護した女の子のところですか?」

「そうだが・・・誰に聞いた?」

「シャマル先生です」

 

綾人の答えにシグナムは「そうか・・・」と短く唸る

 

「そう言うわけだから、今日の訓練もお休みで良いからね?」

「はあ・・・あ、それじゃあ・・・」

 

なのはが謝りながらそう言うと、綾人は何かを思いつきそれを2人に聞いてみる

 

 

~移動中の車中~

 

「すいません、シグナムさん。車、出してもらっちゃって・・・」

「車はテスタロッサからの借り物だし、向こうには『シスター・シャッハ』がいらっしゃる。私が仲介をしたほうがいいだろう」

「はい・・・」

「しかし、お前まで来るとわな・・・綾人?」

「あはは・・・」

 

車のバックミラーから後部座席を見るシグナム

 

そこには、苦笑いしている綾人がいた

 

「いやぁ、どんな子なのか会ってみたくって・・・」

「にゃはは・・・」

 

頭をかきながら言う綾人になのはも苦笑いしてしまう

 

「まあ、会うだけなら問題あるまい。しかし、検査が終わってなにかしらの白黒がついたとして・・・あの子はどうなるのだろうな?」

 

シグナムの言葉に顔を引き締めるなのはと綾人

 

「当面は、六課か教会で預かるしかないでしょうね。受け入れ先を探すにしても、長期の安全が取れてから出ないと」

「難しいですよね、そういうのは」

 

なのはと綾人がそう言うと、通信が入る

 

『騎士シグナム! 聖王教会『シャッハ・ヌエラ』です!』

「どうされました?」

『すいません!こちらの不手際がありまして・・・検査の合間にあの子が姿を消してしまいました!!』

「「「!?」」」

「本当ですか!?」

『はい・・・』

「とにかく、急ぎそちらに向かいます!」

『は、はい! お待ちしております!』

 

通信が切れ、なのは達は急いで病院へと向かった

 

 

~聖王教会・病院~

 

到着後、入り口からシャッハがかけてくる

 

「申し訳ありません!!」

「状況はどうなってますか?」

 

到着と同時に謝罪してくるシャッハに確認をとるなのは

 

「特別病棟とその周辺の封鎖と非難は済んでいます。今のところ飛行や転移、侵入者の反応は見つかっておりません・・・」

「外には出てないみたいですね」

「ええ・・・」

 

綾人の確認に頷くシャッハ

 

「では、手分けして探しましょう。シグナム副隊長」

「はい」

「シスターと一緒に建物の中を」

「了解」

「天童一等陸士」

「はい」

「私と一緒に外を」

「了解です!」

 

そう指示を出し、二手に分かれるなのは達

 

~病院内・中庭~

 

 

「う~ん・・・いないねぇ」

「そうですね・・・」

 

あたりを見渡しながら確認していく綾人となのは

 

「なのはさん、もうちょっと向こうを見てきます」

「うん。お願いね?」

 

中庭の端のほうを指差しながら言う綾人に許可を出すなのは

 

綾人は左右を見渡しながら駆けていく

 

「やっぱ・・・いないか・・・」

 

そう呟いたとき、草むらから音が聞こえた

 

「ん?」

 

音のほうに目をやると、ウサギのぬいぐるみを抱いた女の子がいた

 

(もしかして・・・この子が・・・?)

<なのはさん・・・?>

<居た?>

<はい、それっぽい子がいますが・・・確認してもらえます?>

<あ、そっか・・・顔知らないんだっけ? うん、すぐに行くから待っててね?>

<はい、お願いします>

 

念話を終え、女の子に近づこうとすると

 

綾人の後ろの窓から大きな音と共にバリアジャケットに身を包み、戦闘体勢のシャッハが居た

 

「あ・・・ああ・・・」

 

女の子は驚き、腰を抜かしてしまった

 

「あ・・・」

「はぁ・・・」

 

泣きそうになる女の子を見て、シャッハも動揺してしまう

 

そして、綾人は何か言いたそうに大きめに溜息を吐いてシャッハを見る

 

「シスターシャッハ・・・少し、よろしいでしょうか?」

「あ、なのはさん・・・」

 

綾人からの報告を受けてやってきたなのはがそのまま女の子に向かっていく

 

「ごめんね・・・びっくりしたよね?・・・大丈夫・・・?」

 

女の子が落したぬいぐるみの土を払い、手渡しながら聞くなのは

 

「あ・・・」

「立てる?」

 

なのはにそう聞かれて、ゆっくりと立ち上がる女の子

 

なのはは服についた土を払ってやる

 

「とりあえず、緊急の危険はなさそうです・・・武器を仕舞ってください」

「そうみたいですね・・・」

 

綾人の言葉に戦闘体勢をとくシャッハ

 

それを見ながらなのはは女の子と会話を始める

 

「初めまして、高町なのはって言います。お名前・・・言える?」

「『ヴィヴィオ』・・・」

 

なのはの質問に小さいながらも答えるヴィヴィオ

 

「ヴィヴィオ・・・いいね、可愛い名前だ。ヴィヴィオ、どこか行きたかった?」

「ママ・・・いないの・・・」

「!?」

 

ヴィヴィオの答えに目を見開くなのはだが、すぐに表情を元に戻す

 

「ああ、それは大変・・・じゃあ、一緒に探そうか?」

「・・・・・・うん・・・」

 

笑顔で言うなのはに頷き返すヴィヴィオ

 

なのはに手を握られながら、綾人やシグナムの下へと来る(シャッハは綾人の提案で席をはずした)

 

「初めまして、ヴィヴィオ・・・天童綾人です」

 

腰を落とし、ヴィヴィオと同じ目線になって自己紹介する綾人

 

「・・・うん」

 

綾人にも涙目のまま頷くヴィヴィオ

 

「はは・・・それでなのはさん・・・この子、どうするんですか?」

「うん・・・とりあえず、六課に連れて行こうか」

「そうだな・・・あそこなら安心だろう」

 

なのはの提案に頷き、車のところへ戻る綾人達

 

シャッハは見送りの間ずっと頭を下げていた

 

隊舎に到着し、とりあえずなのはは自分の部屋にヴィヴィオを連れて行くことに

 

綾人はというと・・・

 

「もう! 勝手に抜け出したりしちゃ駄目でしょ!?」

「はい・・・すいません・・・」

「はやてちゃんやスバル達も心配してたんだから!!」

「本当にすいません・・・」

 

戻ってすぐにシャマルに見つかり、医務室でお説教されていた

 

 

数分後

 

シャマルのお説教から開放された綾人はオフィスに向かっていた

 

はやてに言われた報告書を作るためである

 

「綾人」

「どうやら、シャマルのお説教も終わったみたいやね?」

「フェイトさんにはやてさん。はい、すいません勝手に。それとフェイトさん、昨日はありがとうございました」

「いいよ・・・それより昨日の事、覚えてないんだよね?」

「はい・・・。ところで、どうしたんですか? こんなところで」

「ああ、うん・・・実はね?」

 

フェイトに説明されて綾人も一緒に着いていくことに・・・

 

~なのはとフェイトの部屋~

 

 

「行っちゃやだーー!!」

 

部屋の中でヴィヴィオがなのはにしがみついて大泣きしていた

 

「あ~ん、もう、ヴィヴィオ。泣かないで~」

「ホ、ホラ! お姉ちゃん達と一緒に遊ぼ!?」

 

なのはやスバル、キャロが必死で宥めている

 

「フフ! 『エース・オブ・エース』にも勝てへん相手はおるもんやね?」

「八神部隊長・・・フェイトさん」

 

はやてとフェイトが入ってくる。その後ろには

 

「よ、ティアナ、エリオ」

「せ、先輩!?」

「綾人さん!!」

「心配かけたな?」

「いえ・・・安心しました」

「ありがと」

 

ティアナに答えながら泣き叫ぶヴィヴィオを見る綾人

 

「ふむ・・・」

<スバル、キャロ?>

<え? あ、綾人先輩!?>

<綾人さん!?>

<2人共、俺がやってみるから代われ>

<<はい>>

 

綾人の指示に渋々頷き、離れるスバルとキャロ

 

綾人はそのままヴィヴィオに近付いていく

 

「ヴィヴィオ? どうした?」

「あ・・・」

 

見知った顔を見つけ、泣き止むヴィヴィオ

 

「ほらこれ、ヴィヴィオの友達だろ?」

 

ウサギのぬいぐるみをちらつかせながらそう聞く

 

ヴィヴィオはぬいぐるみを目で追っている

 

<なんか、離れてくれなくて>

<なるほど、懐かれましたか>

 

ヴィヴィオの気を引きながら念話で会話するなのはと綾人

 

「ヴィヴィオは、なのはさんと一緒に居たいのか?」

「・・・うん」

 

なのはにしがみつきながら頷くヴィヴィオ

 

「でもなのはさん、大事な用があるのにヴィヴィオがわがまま言ったら困っちゃうだろ?」

 

ウサギのぬいぐるみを操りながらそう言う綾人

 

ヴィヴィオがまた泣きそうな顔になる

 

「ヴィヴィオは、なのはさんを困らせたいわけじゃないんだよな?」

「うん・・・」

 

<なんか綾人、手馴れた感じがするね?>

<すごいです・・・>

<いつ見ても見事よね・・・>

<うん・・・>

<そういえば、子供の扱い上手いって言ってたな?>

 

ヴィヴィオをあやしている綾人の後ろ、念話でそんな会話をしているスバル達

 

なのはも驚いていた

 

「なのはさんが帰ってくるまで、俺が一緒に居てあげるから・・・だから、いい子で待ってような?」

 

そう言いながらぬいぐるみを手渡す綾人

 

ヴィヴィオも頷きながら受け取る

 

「ありがとう、綾人君。ヴィヴィオ、ちょっとお出かけしてくるだけだから・・・」

「・・・うん・・・」

 

謝るなのはに泣きそうになりながら頷くヴィヴィオ

 

 

~六課・へリポート~

 

「それじゃあ、綾人君・・・悪いんだけど・・・」

「はい、お任せ下さい。はやてさん、レポートは・・・」

「別に構わへんよ?」

「エリオとキャロもお願いね?」

「「はい!」」

 

仕事のため外に出るなのは達をヴィヴィオの手を握りながら見送る綾人

 

スバルとティアナの2人は先日の戦闘の報告書の作成を行い、綾人とライトニングはヴィヴィオの相手をすることになった

 

一応、最初は綾人1人で子守りをする予定だったが、“歳が近い”という理由でエリオとキャロも手伝うことになった

 

 

「ヴィヴィオ? それじゃ、行ってくるね?」

「うん・・・」

 

そう言って、ヘリは飛び立っていく

 

「ヴィヴィオ・・・ほぅら!」

「ひゃぁ!?」

 

おもむろにヴィヴィオを肩に担ぐ綾人

 

ヴィヴィオは驚きのあまり目を閉じる

 

「どうだ?」

「?・・・うわぁ!! 高~い!!」

 

綾人に聞かれ、恐る恐る目を開けると、少しだけ目線が高くなり明るくなるヴィヴィオ

 

「楽しいか?」

「うん!!」

 

綾人の質問に笑顔で答えるヴィヴィオ

 

なのはの前でも見せなかった笑顔だ

 

「それじゃ部屋に戻るか、2人共?」

「「はい!」」

 

2人と共になのはの部屋に戻る綾人だった・・・

 




どうも

というわけでヴィヴィオとの初対面でした


前にも書きましたが、綾人君の前で泣き続けれる子供はそうはいないです

子供好きのレベルはフェイトさんすら凌駕すると思ってます


ここから『伯爵』の実力がどんどん出ていくことでしょうね・・・


では次回予告を・・・


聖王教会へと向かうなのは達を見送った綾人はヴィヴィオの面倒を見ることに


その際、不意に見せたエリオの表情に気づく綾人

「あの・・・綾人さん・・・」
「ん?」
「僕のこと・・・どう・・・思いますか・・・?」

この質問の意味は・・・?


次回、『命の価値』


彼にその質問は、ある意味愚問である

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