魔法少女リリカルなのはStrikerS 信念の刃 作:sufia
今回から2.3話ほど準備編になります
~地上本部~
「“思い立ったが吉日”とは言うが・・・まさかその日の内に取次ぐことになるとはな・・・」
「はは・・・ごめん・・・」
「気にするな・・・こちらも早めに話をつけねばならんからな」
廊下を歩いている綾人とマーク
綾人はあの後すぐに取次ぎを依頼し、翌日に会いに行くことにしたのだ
もちろんはやても驚いていたが、なんとか予定を空けてもらえたのである
「ここだな・・・」
指定された部屋へ入ると、茶髪のショートカットの女性が出迎えた
「ああ、少将。お疲れ様です」
「突然すまんな・・・八神」
「いえいえ。気にせんといて下さい。確かにビックリしましたけど・・・」
謝るマークに、本局捜査官『八神はやて』も笑顔で答える
「はやてさん、ご無沙汰してます」
「そやね。もう5年ぐらいか? おっきくなったなぁ、綾人君?」
「2歳しか違わないでしょ・・・というか・・・はやてさんの方は縮みました?」
「縮んでない! 周りが大きくなりすぎてんねや!!」
綾人の一言に両手を振り上げてはやてが叫ぶ
これが、綾人の放つ『要らぬ一言』である
綾人は思ったことはまず間違いなく口に出してしまうので、今まで幾多の人間が綾人の何気ない一言に沈められていったのだ・・・
ただ、綾人自身は思ったことをポロっと言ってしまっているだけで、悪意は全くないのだから質が悪い
「はぁ・・・もうすぐ他の隊長達も来ると思うんで・・・」
ため息と共にソファに腰掛けるはやて
それと同時に綾人とマークの後ろの扉が開く
「「失礼します」」
「お、噂をすれば・・・やね」
「あ、はやてちゃん。先生達・・・は・・・」
白い制服にブルーのスカート、栗色の髪を片側で結ってサイドポニーにしている女性と、黒い制服の金髪のロングヘアーで背の高い女性が部屋へと入ってくる
そして、栗色の髪の女性がはやてに確認しようとする途中に、マークと綾人を見て黙ってしまった
「久しぶりだな。高町」
「ご無沙汰してます。なのはさん」
「先生! 綾人君!!」
その女性・・・『高町なのは』は2人の顔を見ると笑顔で近づく
「うわぁ・・・綾人君、おっきぃ!! 私よりも背が高~い!!」
「まあ、男なんで・・・それに、最後に会ったの6年前ですし・・・」
「なんや? この差は・・・私の時と対応が違うやん・・・」
綾人の様子を見て頬を膨らませるはやて
自分には「縮んだ」などと言ってきたのに対し、なのはにはその辺の一言がない
「はやて? どうかした?」
「ああ、うん・・・なんでもないよ・・・フェイトちゃん」
そんなはやての様子に気付いた金髪の女性が聞いてくるが、はやては苦笑いしながら答える
女性は首をかしげながらも、自分の目的を果たすために一歩前に出る
「えっと・・・初めまして・・・『フェイト・テスタロッサ・ハラオウン』執務官です」
「ああ。陸士225隊部隊長、マーク・グリード少将だ」
「同じく、225隊所属、天童綾人一等陸士です」
「綾人君には話したことあったよね? 私とはやてちゃんの親友の子」
「ああ・・・そういえばそうですね」
「よろしくね」
「はい」
フェイトが手を差し出し、綾人も握り返す
その様子を見ていたなのは、はやての2人は「あっ」と声を漏らした
「ふむ・・・ちょっと変わった魔力ですね」
「え・・・?」
手を握ったまま、綾人がそう告げるとフェイトも首を傾げる
「それにこれは・・・変換資質・・・ですか」
「え・・・な、なんで・・・?」
放たれた一言にフェイトも驚く
今日初めて出会い、自分の魔法についてなんの話しもしていない・・・ただ自己紹介と握手をしただけの相手にいきなりそこまで見抜かれ、少しの恐怖も覚えた
「あ~・・・そういえば、言うの忘れてたな」
「うん・・・」
後ろで苦笑いしているはやてとなのは
フェイトはますます混乱して慌て始める
「綾人は触れた相手の身体状況や魔力の有無、そして能力なんかを見極められる」
「といっても・・・大体のコトだけで能力の中身まではわからないんですけどね・・・事実、執務官の変換資質も、何に変換するのかはわからないですし」
「凄い・・・でも、どうして・・・?」
「まあ、ちょっとした秘密がありまして」
「わたしの時は『魔力の中に別の物が混ざってます』って言ってたな?」
「私は『見た目に似合わない程の膨大な魔力ですね』って言われた・・・」
どちらもすでに綾人との握手によって体験している
発言に相変わらず容赦が無かったため、なのはは少しだけショックを受けたのも事実だったりする
「まあ、分かる条件も“相手の地肌に直接触れる”必要があるので・・・手袋とか服の上とかからだと分からないんですが・・・」
「一番自然に出来る情報収集が握手という訳だ」
「握手・・・あ・・・」
フェイトは未だに繋がれている自分の手を見る
「そういうことです」
綾人はニッコリと笑いながら頷く
「さて、それじゃそろそろ話を始めましょか?」
「そうだな・・・時間も惜しい・・・」
「それじゃ綾人君・・・六課について色々詰めていこか? いい返事が聞ける事を期待してるよ?」
「わかりました・・・」
全員の顔つきも変わり、真剣な話をする空気に変わった
その後、はやてから機動六課についての詳しい説明がなされる
「まずは人員やけど・・・現場担当の前線メンバー、なのはちゃんを隊長とした『スターズ分隊』とフェイトちゃんを隊長とした『ライトニング分隊』、それに私と一緒に指揮系統全般を担当する後方部隊『ロングアーチ部隊』・・・そして、バックヤード・・・」
「人数としてはあまり多くなかったですよね?」
「せやね・・・量よりも質を重視した感じやね・・・で、綾人君には・・・なのはちゃんの補佐をして欲しいんや」
「補佐?」
そのはやての言葉に、視線をなのはへ移す
「うん、綾人君は『教導官』を志望って先生から聞いててね? それなら、ただ教材を読んだりするよりも、実際に目で見ることで学べることは多いと思うし・・・アドバイスにも乗ってあげられると思うし」
「“習うより慣れろ”・・・という事ですか」
「そうだね・・・それに、月に何回かは、綾人君主体でやってもらう事も考えてるし」
「ですが、俺まだ『教官資格』すら持って・・・」
「その辺は、資格を持った者が監修していれば問題はない。それに、なにも新人達の訓練内容まで考える必要もない。高町の行う教導を自分なりに学んでいけばいい・・・高町のやってる事を丸々真似するもよし、違った角度からやってみるのもいいだろう」
「流石に危ないと感じたら止めるけどね?」
こういうことは、教導官に限らず資格に関してはよくあることなのだ
『執務官』を目指す者が、『補佐官』になるのと同じことである
「あの、訓練の時になのはさんの補佐はいいとして・・・出動の場合は?」
「その時はフォワードチームに入ってもらうよ。私や副隊長がいつもそばにいれる訳でもないからね・・・そういう時には綾人君が指示を出して欲しいんだ」
「わかりました・・・それと・・・もう一つ質問があります・・・よろしいですか?」
「うん。なに?」
「資料には・・・フォワードのメンバーに10歳の子供が2人・・・配属予定になってますよね?」
「うん・・・エリオにキャロのことだね」
綾人の質問に2人の保護責任者でもあるフェイトが頷く
「これは・・・・・・止めたんですか?」
「うん・・・・・・もちろん・・・でも、それは2人の選んだ道だから・・・」
「・・・・・・」
「綾人の言いたいこともわかってるよ・・・私も心配は心配・・・でも・・・」
フェイトは不安気な顔で俯いてしまう
「・・・・・・わかりました・・・受けます」
綾人は静かに、はやてへそう告げた・・・
「え・・・?」
驚きに顔を上げるフェイト
はやてとなのはも驚いていた
フェイトに対して、何か言うのかと思っていたからだ
「俺だって・・・みなさんが無理にこの子達を入れただなんて思ってません・・・ただ、“どう思ってるのかな”って聞いてみたかったんで」
「綾人君・・・」
「一緒の部隊なら、面倒も見やすい・・・技術面でも、生活面でも・・・できるだけフォローしてみます・・・年上として、先輩としてね・・・」
「そうか・・・それじゃ、よろしくお願いするよ?」
「はい。よろしくお願いします」
互いに握手する綾人とはやて
「ふむ・・・」
「うん?」
「身長に比べてウエストがやや太い・・・?」
「やかましい!!」
余談だが、綾人は魔力や体調などの他に体重や身長、スリーサイズなども把握するのだ・・・
どうも
というわけでメイン3人とのお話でした
遠慮と容赦のない綾人君・・・きっと大物になれると信じています
知り合いの知り合いに当人同士が知らない内に知り合っている・・・これが『綾人マジック』です
今後もこういう状況がいくつか現れますのでお楽しみに
では次回予告を
出向の準備が進み、稼働前の機動六課の隊舎へと趣いた綾人
そこではやてから、気になる情報が与えられる・・・
「綾人君の1年後輩になるな」
「まさか・・・な・・・」
久しぶりの友人達との語らい
「珍しいですね? 先輩から通信入れてくるなんて」
『ちょうど暇だったんで・・・ラウスで遊ぼうと』
次回、『出向準備』
思いのままに行動する青年がそこにいた
ではまた次回!